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-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章五十九節 驚異のニンジンとリコの届け物と宝石の実-

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リンの協力?…も有ってか何とか最初の一本目のバニーガールキャロットを

手に入れたマサツグとモツ、その後今度は二人で二本…三本…と挑戦し、

何とか五本一束のバニーガールキャロットを捕獲する事に成功するのだが、

ほぼオーバーワークで消耗したせいか捕獲後一同は畑を後にすると近くに

有った木陰へと移動し、腰を下ろすと直ぐに休憩し始める。直ぐ傍では今だ

マサツグ達が格闘して居た畑が見えており、その畑では農家のおじさんの

代わりにリコがニンジンを収穫していて、その様子を見詰めながら脱力し

黄昏ているとリンが徐にマサツグに話し掛け始める。


「ふぅ…マサツグさん!モツさん!…

取り敢えず色々有りましたがお疲れさまでした!

いやぁ~…大変でしたね?ニンジンの収穫?…」


「あぁ…違う意味で本当にな?…」


「あははは……

で、休まれて居る時にこう言うのも何ですが…

一度ギルドに戻ってマスターオーダーの報告に戻られてはどうですか?

今戻ればまず一番乗りで報告が出来ると思いますよ?」


リンがマサツグとモツの挟まれる様に座っては二人を労わる様に声を掛け出し、

マサツグがその言葉に対して完全に疲れ切った様子で返事をすると、

リンは苦笑いをする。そしてダラけ切っているマサツグとモツに酷だと

思いつつもギルドに戻る事を提案するのだが、モツが今まで一番ハード

だったと言わんばかりに疲れた様子で木にもたれ掛かっては、その前に

休ませてくれ…と訴え始める。


「……まぁ…それもそうなんだが…とにかく今は休ませてくれ…

何回も何回も刹那を発動したから反動が…

……にしてもあれは本当にニンジンなのか?…

何かアレだけ走り回る脚力を持っていると如何にも?…」


「…何なら今鑑定してみるか?……このニンジン…もう動く気配無いし…」


「……確かにちょっと興味あるな……」


ダラけた様子で休むモツはリンに休ませてくれと頼む一方で、ふとバニーガール

キャロットが本当にニンジンなのか如何かと言う疑問を持ち始める。

あんな機敏に動き回るニンジン…はぐれでメタルなアイツに匹敵する機敏さに

味や食感等…本当に美味しいのかこれ?と言った疑問が生まれるとマスター

オーダーのクエスト巻物スクロールを徐に取り出しては疑問を持ち出し、その疑問の

言葉を聞いたマサツグがアイテムポーチからバニーガールキャロットの束を

取り出すと、モツに鑑定する様に促し始める。そのマサツグの言葉にモツが

乗り気をなったのか興味を持った様子でバニーガールキャロットの束を

受け取り、いつもの様に鑑定アプレェィザァルを発動するとそこには驚くべき表記が

されていた。


鑑定アプレェィザァル!…」


__ピピピ!…ヴウン!…

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 「バニーガールキャロット」  

 Lv.45

   HP 400 ATK  150   DEF  50

       MATK   0  MDEF  0


 SKILL

 閃光の脚癖 Lv.7 健脚 Lv.15 悪路走行 Lv.13

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           バニーガールキャロット

              レア度 A

 「レッグキャロット」の突然変異種。

 何が原因でこの様に育ったのかは未だ解明されておらず、色々な

 物議がなされている高級ニンジン。収穫する際自身の葉を切って

 逃げようとする性質が有り、栽培するに当たって逃げられないよう

 対策をしておかないと簡単に逃げられてしまう。

 また追い込まれた際は誰であろうと立ち向かうと言った好戦的な

 面もあり、生半可な覚悟で挑めば返り討ちに遭う等の被害も多数

 出て居る、ある意味有名な食材でも有る。しかしその苦労に

 見合っただけの価値・美味さ等を有しており、とある美食家が

 大金を払ってでも買う程の人気を誇っている。


 因みに味はほんのり甘く…青臭さを感じない優しい味わいで、

 ニンジンが嫌いな子供でもこれなら食べられると言われる程の

 食材で在り、一度食べれば忘れられない良い意味で軽い中毒性も

 有している。
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「……やっぱりモンスターなんだな?…」


「……何この「閃光の脚癖」の脚癖って?…

明らか普通のニンジンに付いているスキルじゃねぇよ?…

それに「健脚」に「悪路走行」って!…

完全に脚力お化けじゃん!…」


「脚力お化け!……」


モツがバニーガールキャロットの束に対して鑑定アプレェィザァルを発動すると、

表示スクリーンが二つ投影される。一つはモンスターとしてのステータス画面…

もう一つはアイテムとしての説明画面なのだがその双方の画面の説明が

如何にも可笑しい…まずはステータス画面、一見パッと見るだけでは

何も違和感を感じる事は無いのだが、このステータス画面はあくまでも

ニンジンのステータス画面!…最初のあのレッグニンジンですらレベルは25で

あったにも関わらず、こっちは45と20も格上!…マサツグとモツが今まで

相手をして来た司祭達にライモンドにエイブレント…彼らよりレベルが上と

言う事を知るとまずはそこで驚き、更にスキルが全部脚力に全振りと

言わんばかりのスキル構成で、オマケにレベルも高いと更に驚かされる!

そしてお次はアイテムとしての説明画面なのだが…如何にも読んだ限りでは

研究レポートの様な説明文に被害報告と如何にもアイテムらしからぬ説明文…

ただやはり食材なのか最後の方ではリンが話していた通りの事が書かれており、

一応食材である事を改めて確認するのだが、如何にも両画面の説明を見る限り

そうだとは言い切れない…そんな画面を見てマサツグとモツが困惑した様子を

見せてリンが二人の言葉で戸惑って居ると、畑ではリコがハッと何かを思い出した

様子でニンジン捕獲を中断しては、マサツグ達の居る木陰の方を見詰め始める。


「ッ!…そうだ!…そうだった!!…

ニンジンのお手伝いに来たんじゃなくて!!……おじさん!!…

ちょっと休憩するね!?…」


「ん?…おぉ!…いいぞ!!…と言うより…

何時も手伝ってくれて悪いなぁ!!…

またニンジンを好きなだけ持って行ってくれぇ~!!」


「ありがとぉ~~!!!」


__ぴょいん!…タッタッタッタッタ!…


リコは自身の服のポケットに手をやって農家のおじさんに休憩すると

大きな声で伝えては手を振って見せ、そのリコの声に農家のおじさんが

ニンジンの箱詰め作業の手を止めて反応すると、振り返ってリコに快く

了承する。その際逆に手伝ってくれている事に感謝した様子でニンジンを

持って行く様に声を掛け、リコはその事にお礼の言葉を口にしながら

農家のおじさんに手を振り、畑の柵を器用に飛び越えて見せると一直線に

マサツグ達の方へと駆けて行く。そんな事に全然気づいていないマサツグと

モツは今だ説明画面を見ては困惑し、遠方から声を掛けて来るリコの存在に

気付けないで居た。


__……お~~い!…


「いやぁ…確かにある意味でライモンドより手強いって感じたけどさぁ?…」


「今までで一番戦って強かった奴は?…って聞かれてニンジンとは…」


「答え辛いですよねぇ?…」


__お~~い!!……ッ!…


徐々に近づくよう聞こえるリコの声に未だ気付かないマサツグとモツは、

今までで一番強い敵は?と聞かれた際の返答に「バニーガールキャロット」と

答えるしかない事実にショックを受けた様子で話し、その事にリンも

苦笑いした様子で同意し戸惑って居ると、漸く徐々に近づいて来るリコの

呼び声に三人が気付く。ステータス画面にアイテム説明画面…その両方を

閉じて声の聞こえる方を振り向くと、そこには笑顔で息を切らしこちらに

向かい手を振り走って来るリコの姿を見つける。


「お~~い!!!…お兄ちゃん達ぃ~!!!」


「…あれ?…リコちゃん?…何で?…

さっきまで畑仕事を手伝ってたんじゃ?…」


「はぁ!…はぁ!…お兄ちゃん達!…家を出て行く時!…これ!…

忘れて行ったでしょ!?…だから!…」


「へ?…ッ!…あぁ、なるほど!…」


こちらに向かって来るリコにマサツグ達が如何したのだろうと疑問を

持つ中、リコがマサツグ達の居る所まで走り切ると膝に手を着き息を切らす。

そして小休止を挟んだ後…ポケットに手を入れてはゴソゴソと中の物を

握り始め、それを見たマサツグ達が更に疑問を感じていると、リコは

マサツグ達に忘れ物と言ってはあの時宿屋の机の上に放置して行った木の実を

手渡し始める。それを戸惑った様子でマサツグが受け取っては何かを確認し、

木の実である事を確認すると納得した様子で受け取るのだが、その際机の上に

放置した時より明らかにデカくなった物も一緒に受け取る。


__ジャララッ!…ポワンッ!…ボスッ!…


「……え?…」×2


「…あれ?…こんなデカい奴あの小さい包みの中に有ったっけ?…」


「私のポケットにこんな大きい木の実ってあったっけ?……」


「……え?…」×2


さて…ここで例によって事件が起きる…マサツグがリコから木の実を

受け取った際、その木の実の内一つが明らかにあの妖精達に貰った包みより

デカい木の実が化けてリコから手渡されると、互いに戸惑いの声を漏らしては

その木の実を凝視し始める。マサツグはこんなデカい木の実があの机の上に

有ったか?と化けた事では無く有ったか如何かについて疑問を感じて困惑し、

リコもこんな大きい木の実を回収したっけか?と同じ様に化けた事では無く、

回収したかと如何かについてそのデカい木の実を見詰めては疑問を感じ始める。

そしてその疑問を互いに口にしてはまたもや互いにその言葉に疑問を感じ、

戸惑った様子でマサツグとリコが声を漏らしていると、そのデカい木の実に

食い付いたのは言わずもがな…リンであった。


「ッ!?…そ、それは!?…」


__バッ!!…


「へ?…リン何か知って……ッ!?…」


__ドサァ!?…


リンが酷く驚いた表情でその木の実を凝視しては許可を貰うより先に体が

動いた様子でマサツグに飛び掛かり、マサツグもそのリンが何か知っている

様子に気付いては何なのかを尋ねようと振り向くのだが、そのリンの

飛び掛かって来ている様子までは気付いていない様子でそのまま押し倒される。

その際…その時のリンの反応速度はバニーガールキャロットを越える反応速度で、

モツがその事に驚き戸惑って居るとマサツグが押し倒されたまま上半身を

起こし始める。


「いつつつ!…こ、今度は何なんだ?……ッ!?…」


「はぁ!…はぁ!…

す、すいません!!…その手に持っている木の実を!…

良く見せて貰えませんか!?…」


「り、リンさん?…何でそんなに目を見開いているのかな?…

それに何だか涎も出て居ますよ?…」


「気にしないで下さい!…それよりもその木の実を!!…」


リンはマサツグに馬乗りになって木の実を見せて貰おうとするのだが、

そのリンの様子はおかしく…まるで禁断症状の様に見える!…

息は荒く…目を見開き…口から涎を垂らしては一心にマサツグの手に

有る木の実を見詰め、そのリンの様子にマサツグが普通じゃない!と

感じてリンに対して恐怖を覚え始める!…そんなリンに対して

マサツグは恐る恐る話し掛けるも、リンは心ここに在らずと言った様子で

ただ木の実を見詰め続け、マサツグに木の実を見せるよう迫り始めると

マサツグが抵抗し始める!


「ッ!?…待てだ!リン!!待て!!!…」


「駄目です!!我慢できません!!!」


「リン落ち着け!?…今のリンはヤバいって!!!」


「至って正常です!!!

ただ目の前の探求物に対して知識欲が溢れ出していてぇ~~!!!」


「それが普通じゃねぇって言ってんだよ!?」


マサツグはまるでリンを犬の様に言い聞かせようとするのだがリンは言う事を

聞かず、リンもただ本能の赴くままにマサツグに抑えられながらも、木の実に

向かい前進し続けると必死に手を伸ばす!目の前でプロレスが始まった事に

リコは唖然とした様子でその場に立ち尽くし、モツもまぁた始まったと言った

様子で呆れては我関せずを取り始める。そしてマサツグが再度冷静になるよう

声を掛けては必死にリンを押さえ続けるのだが、リンは自分は大丈夫と明らかに

そうは見えない様子で一向に止まらない!…マサツグがリンの言葉に対して

ツッコミを入れる様に文句を口にするがリンは止まらず、その様子にマサツグは

困惑した様子でふと視線をモツに移す。


「ッ!!…ッ!!!……ッ!…」


__しら~~…ふふふ!…


「クッ!!…モツの奴!!…

こっちの事なんか知らないって位にスルーしてくれちゃってぇ~!!!…

ッ!!…ッ!…良いだろう!…そっちがその気なら!!…」


__バッ!!…ブン!!…


マサツグが視線をモツに移すとそこにはやはり我関せずを貫くモツの姿、

決して助けようとはせずただ隣でマサツグが襲われているのを見て見ぬ振りし、

遠い目をしてはいつもの事と言った様子で若干笑い黄昏る。その様子に

マサツグは不満を持ってはモツに対して文句を言うのだが反応せず、

その様子に更にマサツグが不満を覚えるとふと…ここである事を思い付く。

それは自身の手に握られているリンが迫って来る元凶の木の実をモツに

キラーパスすると言うもので、マサツグが迷わずリンの隙を突いて

モツに向かい…その元凶の木の実を投げ付けると、モツはそのマサツグから

投げられた物に気が付いては咄嗟に木の実を受け取る!


__ッ!…パシッ!!…


「ッ!?…無視してるのは悪かったけど、いきなり物を投げて!…

…って、ちょ!…これ!?…」


__クルゥリ!……


「ッ!?!?…ヤ…ヤブ!?…ちょっと待て!?」


モツが投げられた木の実を慌てて受け止め無視して居る事に謝罪し、

マサツグにいきなり物を投げるなとツッコミを入れる様に文句を口に

するのだが、その投げられた物が元凶の木の実である事をチラッと

確認すると、途端にモツの表情は戸惑いの色を見せ始める!…

それと同時に木の実がモツの手に渡った事をリンが理解し、押し倒した

マサツグからモツの方へとゆっくり振り向き出しては標的をモツへと

移し始める!…当然そのリンの様子を見たモツは慌ててふためき

マサツグに助けを求めようとするのだが、マサツグはリンに押し倒されたまま

その場に大の字で倒れて、モツに対し今までの報復と言った様子で

諦めるよう声を掛ける。


「…ぜぇ!……ぜぇ!……

い、今まで助けてくれなかった事と!…笑っていた罰だと思って!…

甘んじて受け取りなさい!…俺はもう…疲れた…」


「でえぇ!?…助けなかったって!?…如何助けろってんだよ!?…

確かに笑ってたのは認めるけど!?…」


__ジリジリ!…ジリジリ!…


「ッ!?…ちょ!?…ちょっと待て!?…

本当に如何したら良いんだこれ!?…」


マサツグの言葉にモツが本気で戸惑い慌てては今だしっかりと木の実を

握っており、今までの事を如何対処すれば良かったのかとリンを警戒した

様子で尋ねると、自身がマサツグの様子を見て楽しんで居た事を認める。

そうしてモツがマサツグに謝罪をする中、その間にもと言った様子で

リンが徐々に猫のようモツをロックオンしては四つん這いで詰め寄り出し、

その様子にモツが更に本気で慌て始めると如何したら良いか分からず、

マサツグに助言を求め始める!…しかしそのモツの助けを求める声に

対してマサツグはフッ…と笑うと、報復嫌がらせとばかりにこうモツに話し掛ける。


「……フッ…良かったなぁ~モツ?…

羨ましかったんだろ?この状況…」


「ッ!?…」


「さぁ!…思う存分味わうが良い!!…」


「うおおおおぉぉいいい!!!!」


この時のマサツグは完全に報復嫌がらせモードに入っており、

モツを助ける気は微塵も無い!…ただ状況が変わった事に対してモツに

話し掛けてはマサツグの態度にモツが戸惑い、マサツグがリンに合図を

出すよう最後の言葉を掛けると、リンはモツへと飛び掛かって襲い掛かり!…

モツは本気の戸惑った様子で叫んではリンに押し倒され悲鳴を辺りに

響かせる!…そしてマサツグもそれを言い終えた後…バニーガール

キャロットとの戦闘…及びリンに襲われての疲労からかウトウトとし出すと、

大陸の気候も相まってか襲われているモツを尻目に寝落ちしてしまう。

木の実を届けてくれたリコも眠くなってしまったのかマサツグの傍に

寄り添うようマサツグのお腹を枕代わりに一緒に昼寝をし、その間モツは

リンに襲われ抵抗し続ける!…


「どわああああぁぁぁぁぁ!!!…

ッ!?…まさかの寝落ち!?…嘘だろ!?…」


「モ~ツ~さ~ん~!!!!…」


「ッ!?…うおわぁぁぁ!?…大人しく出来んのか!?」


「そんな珍しい物を前にジッと何て出来ません~!!!」


__ドタバタドタバタ!……


……さて…マサツグとリコが寝落ちし、モツはリンと格闘…

傍から見れば謎の格闘が隣で行われている一方で、良く寝れるな…と

ツッコミを受けそうなものなのだが、それが数十分間続きマサツグが

徐に目を覚ますと辺りは静かになっていた。ただ感じるのは風の流れる

音と自身のお腹に軽い圧迫を感じるだけで、マサツグが視線を自身の

お腹に向けるとリコが可愛い寝顔を見せては寝息を立てていた。


__パチッ!……チラッ?…スゥ…スゥ……チラッ?…


「ぜぇ!…ぜぇ!…」


「ふおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!…間違いない間違いない!!…

まさかこれをここで見る事が出来るなんて!!!…

バニーガールキャロットや他の食材!!…それにこれも拝めるなんて!?…

今日はとってもラッキーデイです!!!!」


「……あぁ~っと?…モツさん?…大丈夫?…」


リンの様子にマサツグが思わずほっこりし、次にモツとリンが居た筈の場所に

視線を移すと、そこには大の字で倒れるモツの姿と、木の実を手にマジマジと

好奇心の目で見詰め続けるリンの姿が有った。目を覚まして早々…取り敢えず

現状の様子にマサツグが困惑するとモツに声を掛け始めるのだが、モツは

ただ息を切らした様子でその場に倒れ、その様子を見たマサツグが沈黙して

しまうとモツに謝り始める。


「……えぇ~っと…何かゴメンな?…」


「ぜぇ!…ぜぇ!……い、いや…何と言うか……

良い経験になったよ……いろんな意味で…」


「ッ!…あっ!…マサツグさんにモツさん!…起きたんですね!?」


とにかくお互い動けない様子で会話してはその場の雰囲気が微妙に

なり始めるのだが、リンが二人の意識が戻った事を悟って声を掛け始めると、

モツが体に鞭を打っては素早く起き上がり警戒した様子を見せ始める。

余程トラウマになったのか何なのか慌しく起きるモツにマサツグが

戸惑いを覚えるも、その慌て様から何と無く察すると何も言わず見守る。

そしてそのモツ様子は当然リンの目にも映り、モツに困惑した様子で

話し出しては木の実を両手で抱えていた。


「……?…あれ?モツさん?…

何でそんなに私を見て警戒してるのですか?…

別に何もしてないじゃないですかぁ~?」


{…嘘つけ!!この物品フェチ!!!…
                           ×2
毎回毎回いきなり襲い掛かって来るんじゃぁない!!!…}


「…まぁ、そんな事は良いですが…

とにかく凄いんですこの木の実!!…」


「え?…何が如何凄い…」


リンは今までにあった事を忘れた様に…警戒を解くよう話し出しては

そのリンの言葉にマサツグとモツが心の中でツッコみを入れ、

若干文句有り気な表情を見せてしまうのだがリンは気にしていない

様子で自身の話を続ける。その際リコが持って来た木の実をマサツグと

モツの前に差し出し、凄い!!と好奇心に満ち溢れた表情で話し出すと

その言葉にマサツグが如何言う意味なのかと尋ね、リンがその言葉を

待ってました!とばかりに振り向き笑顔を見せると木の実の説明を

し始める!


__クルリッ!!…ッ!?…ザザ…スッ…


「良い質問です!!…何と!!この木の実はですね!……

実は宝石なんです!!!」


「……?…如何言う事だってばよ?…」×2


リンがテンション高めで突如振り向いた事にマサツグが驚きつつも、

リコを起こさない様に体を起こすとその場に座ってリコを膝枕する。

そうして座り直したマサツグにリンは簡単に木の実の説明をし始めると、

大興奮した様子で木の実をマサツグに突き出し目をキラキラとさせては

木の実の正体を宝石と答えるのだが、当然マサツグとモツの目には

何処からどう見てもただ木の実にしか見えず、何処かの忍者の様な

受け答えをしてしまう。そんな疑問の表情を見せる二人にリンは何故か

不敵に笑みを浮かべると、更に木の実の詳しい説明をし始めるのだが

それと同時にテンションも上がり始める!


「この木の実は通称「宝石の実」と呼ばれていまして文字通りランダムで

この木の実から宝石が取れる事からその名前が付きました!!

主に大樹・ジュエルムと言う樹になる木の実で宝石がなると言う樹の為、

乱獲されて今ではほぼ絶滅種に近いですが…取れた宝石は木の実の形で

出来て居る為、神秘的な宝石として貴族の方々に人気が高くて!!…

どの様な形の宝石でもオークションに出せばまず、1000万G~3000万G

スタートの物品になります!!

更にこれはまだ中身を確認していない未開封品なので、更に価値が高い上に

大きさもオータムマロン2つ分ソフトボール一個分位はあるので更に価値が上がります!!!

これで中身が魔宝石ならもはや特一等地に豪華な屋敷と別荘が建つ位の価値に

なります!!!」


「お…おう……で?…

これがトンデモナイと?…」


「はい!!!!…

世紀の大発見と言っても良い位の代物です!!!!!」


リンがマサツグにピー〇ブースタイルで詰め寄り、目を輝かせては必死にその

宝石の実についての説明を話し出す!滅多に見つからない・オークションに

出せば高値で落札される・大きさも申し分ないどころかデカ過ぎる!…

そんな風に大興奮でマサツグに話しては大発見と喜んで更に詰め寄り、

そのリンの圧力にマサツグが押され始める!…そうしてどれ程にこの宝石の実が

凄いのかを語った所でモツがその話に興味…疑問を持ったのか、リンに質問を

し始める。


「…ッ!…そうなると当然…魔宝石だっけか?

それのレアリティによっては更に跳ね上がる訳なんだよな?…」


「ッ!…そうです!!!」


「でもその中身を確認しようにも木の実の殻を割らないといけない訳だよな?…

中身がただの石じゃ如何しようも無いんだし…

如何やって鑑定するんだ?…見た感じ殻だけだと判断も出来そうにないし…

やっぱり未開封で売るには無理が有るんじゃ?…

中に何が入っているか分からないと価値にバラつきが出て来る訳だから…」


モツが疑問を感じたのは中身の確認方法で、未開封でそれを判断する場合…

中身を確認しようにも何の変哲も無い木の実の殻だけでは判断出来そうに

無い事を指摘すると、やはり開封しないといけないのでは?と言う単純な

疑問をリンにぶつける。先程のリンの話を聞く限りでは中身を確認する

方法が有るから未開封でオークション等に出品されていると言う風に聞こえ、

値段のバラつき等を考えると更に疑問が深まると事なのだが、リンは不敵に

笑みを零し始めるとモツの疑問に答え始める。


「ふっふっふ!!…それが殻を割らなくても判断する方法が有るのです!!」


「え?…」


「判断の方法は簡単です!…

木の実を日の光に当てて下から覗けば良いのです!!

そうするとほら!…」


__ぱあああぁぁぁ!…ッ!?…


「こんな風に日の光が殻を通して中の宝石を透過して…

中の宝石の色を確認する事が出来るのです!!……」


リンが自信満々で振り返ってモツを見詰めると判断する方法が有ると答え、

モツがリンの行動一つ一つに身構えビクッと反応すると、マサツグが戸惑う。

それだけモツの中ではトラウマになっているのだろうが、リンは構わずその

鑑定方法を実践すると言っては木の実を日の光に向かって掲げ、木の実を

下から覗き込み光を確認出来ると答えると、リンは中身の光りを見て

若干困惑した表情を見せる。その際リンが覗く部分からは木の実の中身の

光りが漏れ出ており、リンの言う鑑定方法に嘘は無いと信じるのだが、

そのリンの表情を見たマサツグがすかさず疑問を覚える。


「ほう……っで?…何でそんな表情を見せるんだ?…」


「え?…」


「鑑定方法は分かったけど…今のリンの表情を見る限りまるで…

って言ってる様に見えるんだが?…」


「ッ!?…」


マサツグがリンの表情に疑問を持ちその事を指摘するとリンは戸惑った

表情を見せ、更にマサツグが素直に感じた事を口にすると、リンはハッと

した様子で戸惑いマサツグを見詰める。その時のリンはまるで気付いて

欲しくは無かったと言った表情を見せており、モツもそのマサツグの

指摘を聞いてリンの様子を伺うとリンは悩んだ様子を見せて居た。それは

あくまでもその宝石の実を盗もう等と考えている様子では無いのだが、

リンはとにかく悩んだ様子を見せており、マサツグの問い掛けに対しても

答えようとはせず、モツがジッとリンの事を見詰めてはある推測を立てると、

リンに問い掛ける。


「……ッ!…もしかして宝石に詳しくないとか?」


「ッ!?…それは違います!!…そんな訳無いじゃないですか!!

これでも選別眼はこの国一番ですし!!

更に言うとギルドに入ってからは一度として間違えた事無いですし!!!

……ただ、見た事が無いんです…何度確認しても分からないんです…

それぞれの宝石の色にしては濃い色をしていて…

魔宝石にしては何故か魔力が感じられないですし…

何より私を悩ませさせる理由は七色に光る事です!!」


「え?…じゃあ…」


「……単純に分からないんです…色は光の加減でコロコロ変わって…

最初はシャイニーダイアモンドかなっと思ったんですけど…

それにしては色がクッキリと色が変わって…

赤の色なんかはレッドファイアルビーだし…

青ければディープブルーサファイア…

緑だとエリアルグリーンエメラルドになって…

黄色はスパーキングイエローシトリン…

オレンジだとガイアスオレンジガーネットに見えて…

これだけかと思えば最後に紫色のダクネスパープルアメジスト…

こんな七色に変わる宝石店今まで見た事が無いんです…もう何が何やら…」


モツの推測に対してリンが頬を膨らませ明らかに怒った様子を見せると猛反発し、

その反応にモツが困惑し再度理由を尋ねると、諦めた様子で悩んでいる理由に

ついてモツに話し始める。リンが悩んで居た理由は中身の宝石が何なのかが

分からないと言う事で、その物が分からないと言う事が彼女のマテリアルマニアと

してのプライドが許さなかったらしく…その事を悔しそうに話すとその宝石から

見えた色の特徴について語り始める。リンも分からない宝石の中身にモツが

戸惑った様子を見せ、マサツグがふとリンの話を聞いて有る事を疑問に持つと

再び質問をする。


「……じゃあその中に入っている物が宝石か魔宝石かも分からないの?…」


「ッ!…いえ!…中身は間違いなく魔宝石です!!…

魔宝石と言うのは普通の宝石より色鮮やかで濃い色をしています。

勿論品質によっては色に違いが出ますが魔宝石の場合はこれ以上薄い色は無いと

判断出来るクラスがありまして…その一つ一つの魔宝石にはそれぞれの属性が

紋様となって見えるのです!…で、見てみたら…」


「光の具合とその紋様が見えたと?…」


「…はい……」


マサツグが徐に魔宝石かどうかが気になった様子で中身の話しては、リンが

確証を持った様子で魔宝石と答える。その際…魔宝石と普通の宝石との違いを

語ってはマサツグの木の実にはその特徴が見て取れたと話し、更に悩み

悔しそうな表情を見せると、マサツグに宝石の実を返す。そんな話を聞いて

マサツグがティターニア達はトンデモナイ物をくれたな?と戸惑いつつも

木の実を受け取り、マジマジ見詰めては二人がその木の実を見詰める中、

徐に刀を抜いて見せては躊躇いも無く木の実を割ってみようとし始める!


__チャキッ!…スラァ…スッ…


「ッ!?!?!?…おい馬鹿止めろ!!!

何やってんだ気は確かか!?…」


「へ?…」


「そ…そうですよ!?

もしかしたらそれ一つでお屋敷が買えちゃうかも知れないんですよ!?

今ここで割って見るなんてトンデモナイ!!!…」


マサツグが躊躇いも無く木の実を刀で割ろうとすると、モツとリンが

慌ててマサツグの方へと駆け寄っては羽交い絞めにして止めに入る!

止められたマサツグは何事?…と言った様子で戸惑ってはキョトンとし、

モツはマサツグの意識がある事を心配した様子で確認しては、リンも

慌ててマサツグから刀を奪うと、一旦は地面に置いて見せる。そんな

慌てる二人を見て、マサツグは何をそんなに慌てて居るのやらと達観した

様子で不思議そうな表情を見せ、二人の事を交互に見ては取り敢えず

自身の考えを口にする。


「いや…俺宝石に興味無いし…何なら武器とかの方が…」


「いやそれとこれとは違うだろ!?…」


「でもでも!…今あんましお金(ゲーム内)に困ってないし…

お屋敷って言われてもピンと来ないし…これと言った感情はないし…

良いかなって思ったんだけど…」


「それにしたって額が違うんだぞ!?

そんじょそこいらの宝石とは訳が違うんだぞ!!

とにかく今は何もせず持っとけって!!…

邪魔になる様なもんじゃないだろ!?…」


マサツグが言い訳をする様に自身の考えを口にするのだがモツとリンは

考えられないと言った様子でマサツグを凝視し、モツに至ってはマサツグに

説教を始めるよう声を荒げ始める!そのモツの様子に戸惑いながらも

マサツグは興味ないと話すのだが、モツはマサツグに無頓着過ぎると更に

戸惑い呆れて怒った様子で文句を言ってはマサツグに説教をする!

そうして二人に説教をされるよ様な勢いで追いやられるマサツグは一人…


{これ…俺の持ち物だからとやかく言われる筋合いは無いんじゃ?…}


と考えてはショボンとするのであった。


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