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-第一章-スプリングフィールド王国編-
-第一章四十節 リンデの実と浄化の力とトラウマ-
しおりを挟むマサツグが頭から木の実を受け取りに行って?…見事に失敗し動かなくなったのを
モツが見て硬直するも、自分の足元にその木の実が転がって来て爪先に当たると、
モツが気が付いた様子で木の実を手を取って目的の木の実かどうかを確かめ
始める。この森に来て何度目となるか分からない鑑定を掛けるとその手に
取った木の実の詳細が表記され、それと同時に気になる説明を見つけるとモツは
その内容に目を通し始める。
__…コロコロ…コツッ……ッ!……スッ…
「……鑑定。」
__ピピピ!…ヴウン!…
----------------------------------------------------------------------
浄化の実 リンデ
レア度 unknown
浄化樹・リンデに生る木の実でありとあらゆる瘴気や呪い…魔素を
中和し正常化させる能力を持つ不思議な木の実。樹自体にも辺りを
浄化する能力が備わっているのだが、何故か浄化能力に関しては
木の実の方が強く、瘴気の溜まって居る所或いは不浄な場所に
持って行くと独りでに輝いては自防で浄化する性質を持っている。
効果:瘴気・魔素・呪いの浄化
----------------------------------------------------------------------
「瘴気の浄化……
なるほど…だからこの辺りだけ瘴気の負荷効果を受けないのか…
…恐らくはこれがクエスト巻物に書かれてあった
指定のアイテムだと思うんだが…」
「……ッ!!!…だああぁぁぁぁぁ!!!…」
「うわあぁぁぁ!?…ビックリしたぁ!?…」
モツがリンデの実の効果読んでその木の辺りが瘴気の影響を受けていない理由に
ついて理解していると、マサツグが小刻みに動き痙攣し始め…突如気が付いた
様子で声を挙げては再起動し始める。その際マサツグの額には漫画の様な丸い
たん瘤が出来上がって、更にHPもマサツグの体力の一割が削れていると言った
様子を見せるのだが、突如奇声を上げて起き上がったマサツグに対してモツが
驚いていると、その騒ぎを聞きつけてか人キメラがリンデの光に戸惑いながら
も姿を現し始める!
__ガサガサ!…ガサガサ!…ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァ…
「ッ!?…人キメラ!?…何で急に現れ!?……ッ!!…
そうかダンジョンBOSSを倒したから!!…」
「いっっったぁぁぁぁ!!……
俺少しの間気を失って居た気がするんだが?…」
「ッ!!…マサツグ!!とにかく構えろ!!…敵襲!!……」
突如現れた人キメラにモツが戸惑い剣を構え始めると、何故今まで人キメラが
出て来なかったのかを考え始めるのだが、その答えは直ぐに出て来る。
このゲームでダンジョンと言うのは少し変わった構造をしており、ボスが居る
場所・フロアの近くには雑魚敵が湧かない様に設定されている事が多々ある
のである。恐らくはBOSSが居ると言う事を自覚させる為、もう一つはBOSSに
挑む前の準備期間を設ける為で、そのBOSSを倒してしまえばその必要も
無くなり雑魚敵が湧き始めると言う仕様にモツが改めて気付いたからである。
そのモツの後ろではマサツグがたん瘤を摩っては困惑した様子で話し始め、
モツが若干焦った様子でマサツグに緊急事態である事を告げるのだが、次の瞬間
モツの持っているリンデの実が突如人キメラに反応するよう激しく光り出す!
__パアアアアァァァァァ!!!…
「ッ!!!…今度は何!?…」
__ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァ!!!…バッ!!!…
「ッ!!……?…え?…」
モツが突如光り出したリンデの実に戸惑い眉を顰めて目を細め、リンデの実に
視線を向けているとその光に人キメラ達は悲鳴に似た声を挙げ始めると、慌てた
様子でその場を後にし始める。その光景を目の前にしたモツが光に戸惑いながら
も人キメラの様子に困惑し、人キメラ達が草陰の中へと引っ込むよう完全に姿を
消すとリンデの実の光も落ち着きを取り戻し始める。そしてマサツグも自身の
足元に落ちていたリンデの実を拾っては大剣を手にモツの所まで歩いて行き、
モツに何が起きたのかを質問し始める。
__……ジャキン!…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「…モツ?…さっきのは?…」
「……分からない…けど…退魔っぽい力が有る事に違いないと思う…
説明文を見た限りでは…」
「……へぇ~~…ッ!…」
マサツグも先程の人キメラが光に怯えた様子を見せた事に戸惑いを覚えてモツに
話し掛け、モツも先程の光景に困惑した様子で立ち尽くしてはマサツグに返事を
すると、ただリンデの実にあった説明文を例に話し始める。モツからその話を
聞いてマサツグが戸惑いながらも返事をすると、徐にライモンドの大剣に目を
向けて、ある事に気が付き感心し驚いた様子で言葉を呟き始める。
「……この大剣大したモンだな!…」
「……え?…」
「いや、モツに手加減無しで大分攻撃されてたってのに傷一つ付いてないし…
刀身も曲がってないし…相当頑丈だな!…って…」
「…何の脈絡も無かったんだが?……」
突然のマサツグの言葉にモツが戸惑い、マサツグがライモンドの大剣を片手で
持ち上げては頭上に掲げ、傷等が付いていない事を確認すると改めて感じた
感想を口にし始める。幾ら木の実を取る為とは言え初っ端から乱暴に扱った
と言うのに、全く損傷していない大剣の頑丈さにマサツグは感動を覚えた
表情で大剣を見詰め続けていると、モツが戸惑った様子でマサツグにツッコミを
入れては自身の剣も気になったのか、一旦リンデの実をアイテムポーチの中に
仕舞うと自身が譲り受けた剣を鞘から抜いて状態を確認し始める。
__……スッ……チャキ!…スラァ…
「……確かに何とも無い…結構な使い方をしたのに刃毀れ一つして居ない…
トンデモナイな…これ!…」
「…かなり良い物を貰っちまったなぁ……」
そうして二人が揃ってエイブレントとライモンドから譲り受けた武器の性能に
改めて驚かされつつも、目的を果たし更にBOSSも倒した事でいつでもこの森から
脱出出来る状態にすると、農村へ戻る準備を整え始める。モツがマサツグより
先に準備を整え終え、マサツグの準備が終わるのを待っているのだが、マサツグは
何故かこの時…帰りの支度をするのではなく、近くにあった樹の丸太を適当な
サイズに斬っては突如何かを作り出し始めていた。
「よし、大体こんなもんだろ?…マサツグの方は?…」
__スコ~ン!!…スコ~ン!!…ガッ!ガッ!!…
「……マサツグさん?…何をしておいでで?…」
「え?…木刀作ってる。」
マサツグが何かを作って居る事にモツが気が付き、何を作っているのかと戸惑い
呆れた様子で尋ねると、マサツグは何食わぬ顔でモツの方に振り返っては素直に
木刀と答える。その答えを聞いてモツが困惑するとマサツグの作っている木刀に
目をやるのだが、その木刀は何処かで見覚えの有る形状に器用に作り
出されており、モツが何かに気が付いた表情を見せるとマサツグの木刀作りに
協力し始める。
「……ッ!…マサツグ!…」
「ん?…何だ?…」
「エイブレントの方は俺がやる!…マサツグはライモンドで…」
「ッ!……了解!…」
モツは最初マサツグは帰りの武器を制作ているのか?とコボルト冒険記の話を
思い出して悩むのだが、大剣に刀とモツ以上に武器を持って居る為その心配は
無いと考えると更に困惑し始める。悩みつつもそれを踏まえてマサツグの作って
いる木刀に目をやると、マサツグの作ろうとしている木刀は明らかに
ブロードソードとグレートソード位の木材二本で、それを見たモツが察したのか
マサツグに手伝うと言い出すと、ブロードソードの方の木材を手に取る。
その際マサツグが考えていたであろう事を口にして取って行き、マサツグが
ハッとした様子でモツを見詰めては笑顔で返事をする。その間リンデの樹が
近くにあるお陰か人キメラに襲われる様子も無く着々と作業を続け、二人が
それぞれエイブレントとライモンドが持っていた剣に似せた木刀を作り上げると、
リンデの樹に供えるよう地面に突き刺す!
__…パン、パン!!……スッ………
「……うし!…こんなもんで良いかな!」
「あぁ!結構良い感じじゃないか?」
マサツグとモツが作ったのはただの木刀ではなくエイブレントとライモンドの
墓標であり、二人を供養する為の墓であった。勿論二人の遺体は光りとなって
消え、遺骨も何も残ってはいないのだが…マサツグとモツはせめて二人の墓だけ
でも作ろうと考え、リンデの樹の近くにそれぞれの木刀型の墓標を突き刺し
二人の墓に見立て、パンパン!と二拍しては頭を下げて黙祷をする。そして
黙祷後頭を上げて満足したのかマサツグとモツは互いの出来を褒め合い、
その墓に背を向けると森の出口に向かい歩き出し始めるのだが、何処から
ともなく消えた筈の二人の声が聞こえて来てはマサツグとモツを振り返らせる。
__…ありがとう(ありがとよ)……
「ッ!…え?……」×2
__サアアァァァァ……
「……え?」×2
何処からともなくエイブレントとライモンドのお礼の言葉が聞こえた二人が
同じ反応を見せて振り返り、辺りを見渡すも在るのは先程作った墓と光り輝く
リンデの樹のみ、後は先程まで吹いていなかった風が吹き出した位でマサツグと
モツ以外に誰も居ない。その事を改めて確認しマサツグとモツが戸惑った様子で
その場を後にすると、まるでマサツグとモツを送り出す様に風が優しく
吹き出し始める。そんな心霊現象を体験しつつもマサツグとモツが森の出口に
向かい歩き出すのだが、この時二人はまだ知らないのであった…
マサツグとモツが作ったこの墓はこの後…このゲーム内において七不思議に
数えられるある隠しイベントの材料にされる事を…
そうしてマサツグとモツがリンデの樹の広場を後にし、元来た道を引き返し
始めるのだが当然…人キメラがまたもやウヨウヨと出て来るのだが、
その様子は何処かおかしくマサツグとモツから距離を取ってはジッとこちらの
様子を伺う様に並走して来るだけであった。恐らくはモツがアイテムポーチに
仕舞い、今現在進行形でマサツグが手に持っているリンデの実を警戒している
のだろうが、ただジッと薄気味悪い表情で更に死んだ魚の目で見られる事を
快く思ていないマサツグ達は徐々に苛立ちを覚え始める。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「……ずっと付いて来るね?…モツさん…」
「……こいつ等にとってリンデの実はかなりヤバい物だってのは
良く分かるんだが……何かイラっと来るものがあるな…
襲って来ないのは良いけど……如何にも…」
「あぁ…それ何となく分かる……だって今の俺がその状態だから…」
ただ何もする事無く人キメラ達が徒党を組んでマサツグ達の後を並走し、
その薄気味悪い顔でチラチラ見られる事に更に苛立ちを覚えると、
マサツグが刀に手を掛ける。いっそここで斬ってしまおうか?…と
考えつつも、モツと共に出口を目指し…何気無しに少し目を閉じ感知を
発動してみると恐ろしい光景を目にする!
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「……チッ!!…感知!!!」
__パパパパパパ!!…
「ッ!?…何だよこれ!?…辺り一帯が真っ赤っかだぞ!?…」
マサツグが見た物…それは自身の周りが既に人キメラで一杯なのか感知範囲内に
赤い光が大量に感じられた光景であった。辛うじてモツの反応…青色の人型の光が
近くで感じられる中、そのモツの反応も周りの人キメラの反応と混ざり合う様に
投影されて紫に見えてしまい、その光景にマサツグが驚いて居る間にも更に数は
増え続ける!50位の人キメラが100に…100から150に…そんな人キメラの数に
マサツグがどれだけ居るんだ!?と困惑していると、マサツグとモツはあの肉の
塊が自爆して来た大きな広場へと戻って来る!
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ガサガサガサガサ!!…
「ッ!?…な!?…何じゃこりゃ!?…」
「リンデの実一つでこうなるのか!?…
…ってかこの森にどれだけ!…この化け物共が居んだよ!?…」
マサツグとモツが広場に入ると草むらからマサツグ達に並走し付いて来た
人キメラ達が、次々と出て来てはトンデモナイ大群で並走し続け、その大軍を
改めて見たマサツグが戸惑いの声を挙げると、モツはその大軍に戸惑った
反応を見せる。最終的にその大軍はざっと見た限りでは300は優に居り、
マサツグとモツの後ろ・両サイド・前にと完全包囲されていた。その状態は
もはやピ〇ミンの様に見えて来て恐怖など感じなくなってしまい、マサツグと
モツがただその状況に戸惑いつつも歩く事を止めず、広場の中心部辺りにまで
到達すると、突如後ろから思い何かが走って来る足音が聞こえ始める!…
__ドド!!…ドド!!…ドド!!…ドド!!…
「ッ!………モツさん?…
今俺猛烈に嫌な予感がしているのですが?…」
「……奇遇だな…俺も今猛烈に!…
しかも冷や汗まで掻いているんだが!?…」
__……チラッ?…×2
二人揃って後方より聞こえて来る足音に嫌な予感を感じて青い顔をし始め、
互いに嫌な予感がすると話しては恐る恐る後ろを振り返る!…するとそこには
マサツグとモツに向かい全力疾走するあの肉の塊が迫っており、あの時同様
膨張した乳房を点滅させてはこちらに向かい必死に手を伸ばす何とも醜い
化け物の姿が有った!…当然それを見たマサツグとモツは慌てて走り出し
逃げようとするのだが、それに反応するよう肉の塊も速度を上げるといよいよ
マサツグとモツの表情が必死になり更に青ざめ始める!
__ドド!!…ドド!!…ドド!!…ドド!!…
「ッ!?!?…ギャアアアァァァァァ!!!!!!
あの時の恐怖アゲイン!!!!!」
「もうおかわりはいらないですぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「…ニガ…ザ…ナイ!……」
またもやあの爆発に巻き込まれるのかと考えると、マサツグとモツは必死に
肉の塊から逃げ出し森の出口に向かって走り続け、それと一緒に人キメラ達も
依然必死になってマサツグ達の後を追い掛けるよう走り続けるのだが、
その様子は何処かおかしい…マサツグ達を追っての行動なのか?…はたまた
肉の塊の自爆に巻き込まれない様にする為か?…とにかくマサツグ達と同じ
方向に逃げては犬みたく息を切らし、青ざめるマサツグ達と共に全力疾走する
のだが、肉の塊の方が足が速いのか…徐々にその差を詰められる。
__ドド!!…ドド!!…ドド!!…ドド!!…
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
すぐ後ろにまで迫ってるぅぅぅぅ!!!!!」
__ポウ…ポウ…ポウ…ポウ…
「いやあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
自爆の秒読みまで開始してるうぅぅぅぅぅ!!!!!
もうあんなフライ・イン・ザ・スカイしたくないぃぃぃぃぃ!!!!!」
マサツグ達を追い掛ける肉の塊は、次第にマサツグ達の後ろを走っていた狼型の
人キメラ達を蹴散らしながら進み、直ぐ後ろまで迫っている事にマサツグが悲鳴を
挙げてただ逃げ続けていると、更に距離を詰め出して乳房の点滅速度も狭くなり
始める。それを見ていたモツがヤバい!と感じると珍しくマサツグの様に
テンパり出し、その場の収拾がつかなくなり始めるとパンパンに張った乳房が
マサツグ達との距離…約5m圏内へと遂に入ってしまう!このままでは追い付かれ
自爆!…それどころかいつ自爆されても可笑しくない状態になり始め、いよいよ
ハリウッドクラスの回避行動に入らないと不味いと言う所まで来ると、突如
マサツグがハッ!と何かを思い付いたのか一瞬だけ目を見開くと、覚悟を決めた
様子で軽く深呼吸をし始める!
「……ッ!…一か八か!!……すぅ~…はぁ~…」
「ッ!?…マサツグ?…」
__……ッ!!…チャキ!!…クルッ!!…バッ!!!…
「ッ!?…な!?…何かん!!…」
逃げる最中に隣でマサツグがいきなり深呼吸をし始めた事にモツが気付くと
マサツグの方を振り向くのだが、モツが次に目にした光景はマサツグが突如
手に持っていたリンデの実を高く投げると春風刀を手にしては突如踵を返し、
逆に自爆寸前の肉の塊の方へと構え始める姿であった。その様子に当然モツは
酷く驚きマサツグに声を掛けようとするのだが、マサツグは迫って来る
肉の塊に冷や汗を掻いては急いだ様子で刹那を発動し始める!
「刹那!!!」
__ヴウン!!……チャキッ!…スラァ…
「え!?…」
モツはマサツグの突然の行動に戸惑いを覚えた様子でただ見詰め、マサツグに
背を向けながらも酷く戸惑い驚いた様子で足を止めようか止めまいかで
悩み始めていると、ある事に気が付く。それはマサツグが春風刀を握っていると
言う事…あれは特殊条件を達成しない限り絶対抜けない筈!!とモツが困惑し
マサツグの動向に目を向け続けていると、マサツグは何の引っ掛かりも感じない
様子でスッと刀を抜き始め、目の前で刀が抜かれた事にモツが驚いた反応を
見せていると、マサツグは抜刀したと同時に刀ではなく鞘を肉の塊に対して
向け始める!それも向けると言っても鞘で殴り掛かるとかではなく!…
刀を仕舞う為の入口…鯉口を突き付けたのである!
「いっけええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
__…バシュウウウウゥゥゥゥゥ!!!!!…
「ッ!?!?!?……」
マサツグが肉の塊に対して鞘を向けた時…モツは絶句する。心の中では恐らく…
{一体何を考えて居るんだと!?…}と間違いなく考えていたであろう…
その時のモツは驚きと戸惑いの表情でマサツグを見詰めて、完全に
足を止めてしまってマサツグの突然の奇行に目が離せないと言った様子を
見せて居た。しかしそんなモツの様子とは裏腹にマサツグは掛け声と一緒に
鞘を肉の塊に向けた瞬間!…鯉口から突風が突如噴出しその突風が肉の塊を
襲うとその足を止めるばかりか押し戻し始め、それを目にしたモツが
酷く驚いた表情を見せて居ると、遂にはその肉の塊の体を浮かせてそのまま
遥か後方へと吹き飛ばしてしまう!
__ゴウッ!!!…ッ!!…ッ!!!…バシュゥゥゥゥ!!!…
「オ゛ォ…オ゛オ゛ォォォ…」
__…ヒュウウゥゥゥゥ!!!……チュドォォォン!!!…
吹き飛んで行った肉の塊は後方…クレーターの有る方へと飛んで行き、
丁度そのクレーターの中に入るよう落下すると、落下の衝撃からか
大爆発を起こし爆風と硝煙を辺りに吹き轟かせる!それと同時に後方で
一緒に居た筈の狼型の人キメラ達も巻き込まれた形で宙を舞っては
肉の塊の後を追い、クレーターの中に入らずとも爆心地から近い場所に
落下してしまうと直ぐには動けず、爆風に巻き込まれると一掃される。
__……シュン…シュン…シュシュシュン……
「ッ!?…ッ!?……な!…何だ!?…今の!?…」
__ゴウッ!!!…ブワアァァ!!!…
「ッ!…ハアアアアァァァァァ!!!!」
刹那を使用しているとは言え一瞬の出来事にモツが困惑して居ると、爆風は
勿論マサツグ達の方にも吹き轟いて襲い掛かろうとする!それは目に見えて
分かるよう土埃を巻き上げは辺りにある物全てを襲い、爆心地に近い木々は
まるで芸術作品の様に反り返って、もはや葉も枝も丸裸になる勢いで
吹き飛ばされてあった。そんな爆風がマサツグ達に居る方に向かって伸びて
来るのだが、マサツグが両手で刀を握り真っ直ぐ頭上から上段に構えると、
爆風を切り裂くよう縦に一振りして見せる!
__フォン!!!…バサアアァァァァ!!!…
「ッ!?…ううぇ!?…ううぇえええぇぇぇ!?!?!?…」
__バサアアァァァァ!!!………フォン!!……パシッ!!…
マサツグが真っ直ぐ振り下ろした一太刀は見事に迫り来る爆風を斬って見せ、
斬った所から横に逃げるよう爆風が吹き荒れるとマサツグが立っている場所から
少し前あたりを起点に扇状…鋭角に影響を受けた様子を見せない場所が
出来上がる。勿論その範囲内に収まるようモツは立っており、その漫画の様な
光景を目にしてはただ戸惑うしか無いのだが、徐々に爆風が収まり始めそれに
合わせてマサツグがまるで血糊を振り払う様に刀を一振りすると、宙に投げた
リンデの実が丁度良い位置に落下して来てキャッチする。イケメン強キャラに
ある出来る回避行動をやって見せたマサツグにモツが思わず、
本当にマサツグなのか!?と疑ってしまうのだが、マサツグはこう言葉を
口にし始める!…
「……ふぅ!…し!…死ぬかと思った!!…あぁ!…あぶなかったぁ~……」
「……あっ…マサツグだわ…」
「え?…何!?……どっかダメージ受けた!?…」
「……いや、大丈夫だけど…」
その時のマサツグの表情は真っ青で…格好良く回避出来た事より乗り切った事に
安堵した様子を見せては後から恐怖が登って来たのか、今になって膝が笑って
いると言った様子が伺える。それを見てモツが間違いなく本人だと確信し、先程の
光景から一転…残念な物を見る様に冷めた目をしてしまいながら一言呟くと、
マサツグが慌てた様子で振り返っては緊張しました!と言わんばかりの強張った
顔を見せ、モツに負傷していないかを尋ね始める。その表情を見たモツが更に
残念と言わんばかりに苦笑いをしてはマサツグに返事をし、マサツグは今自分が
どんな顔をしているのかが分からないのか、表情そのままで疑問そうな様子を
見せる。
「……え?…」
「……とにかく…何であんな急に行動に打って出たんだ?…
その刀抜けるようになったのか?…」
マサツグの奇妙な反応にモツが笑いそうになるも、呆れた様子のまま今自分が
感じている疑問について質問し始めると、マサツグは若干表情が戻った様子で
モツの質問に答え始める。その際モツに見せられなかった春風刀の刀身を
見せたりしながら話し出すのだが、やはりその時になってもマサツグの膝は
若干笑いっぱなしで、モツの視線はチラチラとそちらの方に向けられそうになる。
「え?…あっ…あぁ!そうなんだよ!!…
ライモンドにやられそうになった時に咄嗟で
手に取ってみたら何か抜けちゃってさぁ~…
……で、アレに関してはぶっちゃけ行きあったりばったり…
せめてモツだけでもって思ってやってみたんだけど………
かなりSAN値持って行かれる……」
「……だろうな?……
とにかく助かった…サンキュ!…」
説明をしている内にマサツグも徐々に落ち着きを取り戻して来たのか膝の震えが
止まり始めるも、やはりさっきの咄嗟の行動を思い出しては恐怖を覚えたのか、
マサツグが青ざめ始める。その様子にモツがすかさずツッコミを入れると
呆れた様子を見せ、マサツグの肩を軽く叩くと助けて貰った事にお礼を言って
先を進み出し、それを聞いたマサツグがハッ!意識を取り直すと、先に森の
出口へと歩き出して行くモツの後を追い掛け始める。幾らゲームの中とは言え、
大爆発を体験した二人にはあの肉の塊はもはやトラウマになっており、森から
出るまでその肉の塊に不意打ちされない事を祈りながら出口を目指す。
「……もうあの化け物出て来ないよな?…」
「ッ!?…バッカ!!何でそんなフラグめいた事を!!…」
__ガサガサッ!!…ッ!?…ガサッ!!…
「……何だあの入口で出会ったキツネか…」
こうして物音に怯えマサツグとモツは人キメラに付き纏われながらも
無事狩人狩りの森を抜けては、一旦ブルーベルズの農村へと戻ろうと
するのだが、そのブルーベルズの農村より黒煙が昇っている事に
気が付くと、マサツグとモツの二人は戸惑った様子で駆け出して行く
のであった。
…さて、ここで余談なのだが…後日…マサツグとモツの知らない所ではこんな
噂話が出来上がっていた…それはマサツグとモツが作った二人の墓に対しての
コメント?である。
-怪奇!? 光る樹の間の決闘場!?-
狩人狩りの森の何処かに光り輝く樹と言う物が存在すると言う噂が
有るらしいのだが…何でもその光り輝く樹の生えている場所には
何故か誰の物か分からない木刀の様な墓標が二つあるらしい!!…
ゲーム内時間夜の11時にその光る樹の間に向かうと誰かと誰かが
決闘をしているのか激しい木刀のぶつかる音が聞えるらしく、
迂闊に確認しようと試みるものなら森の外に追いやられるとか!?…
結局誰と誰が決闘をしているのかが分からず、誰も確認した事が
無いまま真相は闇の中だが、朝確認に行くとそこには!!…
地面に刺さっていた筈の木刀型の墓標が何者かに抜かれて地面に
転がっているらしい!!
勿論その墓標をぞんざいに扱えば痛い目に遭い…最悪その光る樹の
広場に強制召喚されては騎士に戦いを挑まれボコボコにされるとか!?…
長期間に渡るデバフが付いて回る等色々良くない事に襲われるらしい!!!…
因みにその木刀の様な墓標はそれぞれブロードソードの形と
グレーソードの形をしており、やはり何度も打ち合った事が
あるのか傷が残って居るらしい!!過去にここで戦っていた騎士が
眠っており、起きて来ては決闘をしているのかと色々な憶測が飛ぶが
謎のまま…これは運営が仕込んだ仕様なのか!!…
それとも何かが原因で出来たバグなのか!!…
気になって私は七時間しか寝れない!!!…
----------------------------------------------------------------------
1.「名無しの冒険者」
いや結構寝てるじゃねぇかww
----------------------------------------------------------------------
以上…
-アルバスクロニクルオンラインの七不思議 調査求む!!-チャットルーム
一文より抜粋。
マサツグ達が作った木刀で夜な夜なエイブレントとライモンドが決闘を
しているのか?…この二人の存在を知らない冒険者達は今日も
せっせと狩人狩りの森へ足を踏み入れ、興味本位でこのゲームの七不思議を
調査をするのだとか…しかし今の所誰もその場所を見つけた者は居らず、
この投稿者は如何やってこの情報を手に入れたのか?と違う意味でも有名に
なっているのであった…
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たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
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嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
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王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
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ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
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残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
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蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
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これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
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