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-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章三十五節 クレーターと自爆特攻と誰かの手記-

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抜けない刀の話をしながら森の奥へと進んで行くと、マサツグ達はいつしか

大きさにして野球のグラウンド位は有るだろうかと言った開けた場所へと

辿り着く…その場所には誰かが野宿でもしていたのか、幾つかの焚火の後に

テントの残骸、と人が居た痕跡が多々見られ、更に先ほどまで誰かが居たのか

人キメラらしき足跡と共に人の足跡も詳細に残されていた。跡から推測するに

戦闘が有ったのだとマサツグ達が野営地を観察し、何かしらの嫌な予感を

感じて警戒を強める。


「……こんな所に野宿跡?…

しかも放置されてから大分経っているな…」


「…後を見る限りあの化け物に襲われたくちだな?……

人の足跡と狼の足跡が大分と踏み荒らす様に重なり合って滅茶苦茶だし…

何より…」


「……アレだろ?…」


現状に残されている状態から色々と推測し、一応人が居るかどうかを

見渡し確認するが何処にも人影はなく、ただ周りの状態を確認して居ると

人では無くある物を見つける。それは明らかに魔法等の類で出来た物じゃない

何かが爆発して出来たクレーターで、マサツグとモツの二人がそのクレーターを

見つけるや否や警戒した様子で会話をしながら、互いにそのクレーターが

有る野営地へと恐る恐る足を踏み入れる。周りからは奇妙な気配と独特の静寂が

訪れ、不気味さを醸し出してはマサツグ達の恐怖心を煽り始め、その不気味な

雰囲気にマサツグが嫌な予感を感じると言葉を漏らす。


「……な~んか嫌予感がすんだよなぁ~?…」


「…奇遇だな…俺もだ…

一応さっきから「感知サーチ」を使ってるけど何も反応ないし…

敵がいないにしてもここは不気味過ぎるし…

感知外に敵が待ち構えて居るとしたら面倒この上ないぞ?…」


「…だとしたらアレか?…

俺達が丁度この広場の中心部位に来てから奇襲とか…」


「……あんまりフラグめいた事は言わない様に頼む!…

マサツグが言うと何となく現実に…」


互いに警戒しつつ野営地の先にある道を見つけてはその道に向かって歩き続け、

マサツグが余りの静かさと不気味さからフラグめいた事を言い始めると、モツが

そう言う事を言わない様にと戸惑いながら注意をする。ただでさえ不気味で

開けた場所に野営地跡…ここにボスが居ましたぁ~と言っても違和感がない

某心を折るダークファンタジーの様な風景に、モツが戸惑って居るとそろそろ

二人は野営地の中心部に差し掛かろうとしていた。


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


「…とりあえずここまで来てみたけど……」


「…何だ?…これ?…」


__ヒュウゥゥゥゥ…


マサツグ達が野営地跡の中心部に差し掛かり、ある物を目の前にすると思わず

足を止めて戸惑ってしまう。何故ならそこにあったのはこの野営地で

戦っていた人達であろう遺体がであり、この野営地で一番大きなクレーターの

真ん中に密集する様に転がってヤ〇チャして居たからであった。その遺体は

人の形も辛うじて留めて居るも何処の誰かも…性別も分からない程真っ黒に

焼け焦げ、そのクレーターからまるで風葬をしているかの様な悲しい音を立てて

風が流れては、異様さを物語っていた。その余りの光景にマサツグとモツは

戸惑ってしまいクレーターを見下ろす様に呆然と立ち尽くし、ただ見詰める

事しか出来ないで居ると、突如モツの感知サーチに反応が出る!


__……パパパパパ!…ガサガサ!!…バ!!…


「ッ!?…マサツグの言った通りになったみたいだぞ!?…敵だ!!!

マサツグがあんな事言うから現実になったじゃねぇか!!」


「やっぱ出て来ますよね!?コンチキショウ!!!…」


「とにかく向こうの通路まで逃げるぞ!!!」


マサツグ達が野営地中心で敵の反応に気が付くと、その中心部に近い

草むら・樹の影から最初に襲って来た物同様の、狼型の人キメラが

突如奇襲を掛けるよう飛び出して来ては唸り声を上げて、一直線に

マサツグ達の方へと走って来る!それを見てモツがマサツグのフラグ建築に

文句を言っては野営地の奥に有る道の方へと走り出し、それを追い掛ける様に

マサツグも戸惑い人キメラから逃げるよう道の方へと走り出すと、

追いかけっこ状態になる。その際自分のせいなのか!?と思いつつも

人キメラが出て来た事にマサツグが文句を言い出し、モツがとにかく

急ぐようマサツグに指示を出すと野営地の奥へと更に走り続けるのだが、

事態はそう上手く解決する筈が無く更に困難が押し寄せて来る!


__バシュ!!…ザシュ!!…ドシュ!!!…


「くっそ!!こいつ等本当にしぶとい!!!…

経験値も!!…ドロップ品も!!…どれも!!!…不味いってのに!!!!」


「狼の!!…体だけあって!!…足が速いから!!…

簡単には!!…振り切れない!!…ってか!?…」


__……ドスッ…ドスッ…ドスッ…ドスッ…


追い付かれ飛び掛かって来る人キメラを剣で切り伏せ薙ぎ払い、何とか

逃げながら対処しては文句を言いつつも、野営地の奥に有る道に向かって

走り続ける。ただこの場を斬る抜ける為に何も考えず奥地に向かう道の方へと

駆け抜けて行くのだが、その奥地に向かう道に近付いて行くに連れ…

奇妙な物が見えると同時に重い足音も聞こえ始める。その足音にマサツグと

モツも気が付き、その足音の聞こえる方を確認するよう振り返ると、そこには

見た事の無い肉の塊の化け物が一体立っており、マサツグ達の逃げ道を

断ち塞ぐ様にその場に立ち尽くしていた。


「な!?…こんな時に限って!?…」


「幸い逃げている最中だからフィールドは張られていない!!…

このままあの化け物もやり過ごす事が出来れば!!!…」


マサツグ達の前に現れた化け物は恐らく今後ろから追い掛けて来ている

人キメラと同種の化け物であろうもので、上半身は太った男性の体で

何も着ておらず、死んだ魚の目でこちらを見ては口から涎を垂らして

唸り始める。そして下半身は何処を如何見ても乳牛の体で乳房の部分が

異様なまでに発達膨張しては、何故か赤く点滅するよう乳房の中から

光を発していた。見た限りでは然程動きは早くは無いだろうとモツが

判断すると、横を通り抜けようとマサツグに提案をするのだが、

マサツグはその肉の塊の様な化け物の乳房から嫌な気配を感じ取ったのか、

鑑定アプレェィザァルをする。


__ポウ……ポウ……ポウ……ポウ……


「…ッ!?…念の為!!…鑑定アプレェィザァル!!…」


__ピピピ!…ヴウン!…

 -----------------------------------------------------------------------

 「人キメラ B-235型」  

 Lv.17

   HP 4560 ATK 190    DEF 80

        MATK   0 MDEF    0


 SKILL

 自爆 Lv.9

 -----------------------------------------------------------------------

マサツグの嫌な予感からの鑑定アプレェィザァルは見事に功を奏し、人キメラである事が

分かると同時に面倒なスキルを持って居る事に気が付く。それは言わずもがな…

マサツグが疑問に感じたあの見るからに怪しい点滅する乳房から分かる様に、

自爆持ちである事とそのレベルが9である事…このゲームにおいてスキルレベル

最高値は20で、自爆スキルでレベルが9と言う事は…お分かり頂けただろう…


「え?…じばく?…じばくって…あの自爆?…」


「ッ!?…ちょっと待て今自爆って言ったか!?…て事はまさか!?…

レ…レベルは!?…」


「……9。」


「きゅ…9ッ!?!?……撤退!!!!」


マサツグがそのスキルを目にすると戸惑いを隠せず、自分達がその化け物の方へと

今まさに走っている…と改めて認識させられると、マサツグが思わず思考を放棄し

自爆と言う言葉を呟き困惑し始める。そしてモツがそのマサツグの言葉を聞いて

慌て始めてはその自爆のレベルを尋ね始め、その問い掛けにマサツグが素直に何も

考えず答えると、モツは何かを理解した様子で青ざめ慌てて急ブレーキを掛けては

踵を返し、その肉の塊からダッシュで逃げるよう距離を離し始める。そしてそれに

反応して肉の塊もマサツグ達を追い掛ける様に走り出しては乳房を点滅させ、

上半身の男は必死にマサツグ達に向けて手を伸ばしては呻き声を上げ始める!


__ヴア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァ!!…ドッドッドッドッド!!…


「やっぱりかあぁぁぁ!!!

ッ!?…それに足意外と早い!?…

あの冒険者達も間違いなくコイツに!?…」


__ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァ!!!……


「ッ!?…クソが!!!…邪魔臭い!!!」


後ろから追って来る肉の塊はさすが牛なのか足が速く、徐々にマサツグ達との

距離を詰め始めては目一杯手を伸ばし呻き声を上げる。そんな肉の塊にモツは

間違いない!と先ほどの冒険者達が誰にやられたのか納得するのだが、今度は

逃げる為に先ほどまで背を向けていた人キメラ達を相手にしないと、いけないと

言う事に焦りと苛立ちを覚え始める。唸り声を上げては状況を理解していない

様子で襲い掛かり、マサツグとモツが焦りながらも必死に剣を振って薙ぎ払い

道を切り開くのだが、その人キメラ達も一筋縄では行かない様子で壁を作り、

マサツグ達の邪魔をしては更に肉の塊の接近を許させる。


「クソ!!!…さっさと退けーーーー!!!!」


「…ニガ…ザ…ナイ!……」


「ッ!?…ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

シャベッタアアアアアァァァァァ!!!!…

片言で喋ったあああぁぁぁ!!!!」


__ポウ…ポウ…ポウ…ポウ…


マサツグ達が苛立ちながら人キメラの壁を相手にし、逃走経路を塞がれ思う様に

逃げられないで居ると、後ろから掠れた濁声で逃がさないと声を掛けられる。

初めて喋った人キメラにマサツグが恐怖し、慌てて後ろをチラッと確認すると

肉の塊の乳房の点滅感覚が短くなった事に気が付き、それと同時に肉の塊との

距離の差がほぼ無い事に気が付くと無言で青ざめては更に恐怖する!

しかしこの土壇場でマサツグがハッと何かを思い付いたのか、目も見開き

戸惑った様な表情を見せると慌ててモツの方に振り向き、ある事を指示し始める!


「ッ!!…モツ!!

飛べぇ!!!」


「ッ!?…言われなくても!!!!」


__バッ!!!…


「ッ!!!…火炎斬り!!!!」


マサツグが突発的にモツに悪あがきで飛ぶよう指示をすると、モツも同時に

同じ事を考えていたのか人キメラの群れを跳び越すよう幅跳びの容量で飛んで

見せ、マサツグもモツと同じタイミング・容量で飛んで見せては身を翻し

眼下に肉の塊を見据える。後ろからは相変わらず肉の塊がマサツグ達を追って

走って来ては手の伸ばし、その様子にマサツグが慌てつつも肉の塊目掛けて

火炎斬りを放つと、マサツグが放った火炎斬りは肉の塊に当たった瞬間!…

大爆発を巻き起こす!


__バシュウウゥゥ!!…カッ!!!!…ボガアアアアァァァァンンン!!!!…


「ッ!!!…うわあああぁぁぁぁ!!!……」×2


__ッ!!!!…………


文字通り爆弾が炸裂した様に巨大な爆風が巻き起こるとマサツグとモツは

その爆風に煽られ宙を舞い、マサツグ達の邪魔をしていた人キメラの壁は

その爆風に巻き込まれるよう吹き飛んで行くと、木々に叩き付けられ

絶命する。中にはそのまま吹き飛ばされては空中分解する等その爆風で

生き残った人キメラは一頭も居らず、その肉の塊が爆発した場所にクレーターが

出来上がって漸く落ち着きを見せ始めると、宙を舞っていたマサツグ達は

近くの低木の上に落下して来る。


__ヒュウウウゥゥゥ……バキバキバキバキッ!!…


「…ッ!!!……あ~たたたたた!!!…つぁ~~~!!!…

おい、ヤブ!?…無事か!?…」


「…アイツ…とんでもない勢いで爆発したな?…

爆撃機にでも搭載されてんじゃねぇかって位に…」


モツは低木の上に落ちた事で落下ダメージ等の大きな損傷を受ける事無く、

擦り傷程度に済ませて自身の頭を撫でては痛みに耐える声を挙げて、

徐にマサツグの方へ振り返って奇妙な光景を目にする。そして

マサツグの方はと言うと一応同じ様に低木がクッションとなり、

然程ダメージを受けた様子を見せないでは居るのだが、頭から低木に

突っ込んではまるで漫画の様な状態で低木に突き刺さっており、身動きが

取れない状態のままモツに話し掛けていた。マサツグはあの肉の塊の

爆破威力に驚いた様子で話すのだが、モツはそのマサツグの格好が

気になってか話してくれている内容が全く耳に入って来ない。


「……とにかく出てこい?…

そのままだと色々不便だと思うから…」


「……うん…」


__ウゴウゴ…ウゴウゴ……スポンッ!…


「…ふぅ~……抜けた!…

お陰で髪がボサボサ……元からだが…」


モツに低木から出て来るよう言われてマサツグが何とか苦戦しながらも低木から

抜け出すと、普段気にしない髪を直しモツと一緒にその肉の塊が爆発した場所へと

歩き出す。その途中爆心地から近い場所には人キメラ達が無残な姿で転がっては

消滅して行き、ドロップアイテムがその広場一帯に転がり始めるのだが、中身が

分かっている分感動が少なく、ただ淡々と歩き続ける。そして爆心地である

場所に辿り着くとそこには直径10m位のクレータが出来上がっており、見事に

地面を抉り込んでは空しい風が吹き込んでいた。それを見てマサツグとモツの

二人が青ざめ、回避出来た事に対して猛烈に感動を覚え始める。


「…今俺…これ回避出来て本当に良かったって思ってる!……」


「良く生きてるな…俺達…

…てか、本当にマサツグと旅してると退屈しないと言うか何と言うか…

……大変だな?…」


「………。」


__……ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……ッ!?…


良くあの状況化で軽傷で済んだなとマサツグがクレーターを見下ろしながら

感動して居ると、モツはマサツグの悪運の強さを褒めているのか一言…大変だなと

口にすると肩を叩き、それを聞いたマサツグが何も言わずに若干落ち込んだ様子で

項垂れると背後から気配を感じ始める。その気配にマサツグ達が気付きパッ!と

振り返るとそこには狼型の人キメラが集まり始めては、唸り声を上げて

またマサツグ達ににじり寄って来ていた。


__ア゛ア゛ア゛ア゛……


「ッ!?…ゲ!?…

また集まって来やがった!?…」


「本当にこいつらどれだけ居るんだよ!?…」


「モツ全力で逃げるぞ!?…」


集まって来た人キメラにマサツグとモツが戸惑い、逃げ出す体勢で森の奥へと

後退りし始めると人キメラは更にジリジリと詰め寄って来る。爆発の騒ぎで

更に人キメラは集まって来る中、これ以上は相手にしてられないと考えた

マサツグとモツはクルっと出口の方に向き直すと、森の奥地へと続く道がある方に

走り始めてはマサツグが閃光弾を取り出し、ピンを抜き後ろに捨てるよう後ろ手に

投げては振り返らず、一目散に人キメラから逃げ出す。


__ピンッ!…ポイ……バシュ!!…カッ!!ッ~~~~……


「ッ!!…今の内に!!…」


__ダッダッダッダッダッダッ……


{…マルコさん!!…

店主のミスとは言え閃光弾を置いててくれてありがとう!!!…}


マサツグ達の後ろで閃光弾が炸裂し、呻き声では無く悶え苦しむ様な声が

聞こえて来てはあの人キメラ達の足止めに成功した事を理解し、マサツグ達は

ただ他の人キメラに補足・捕まらないよう森の奥地に向かって走り続ける。

一応ながらに感知サーチを使用して何かに後ろから追って来ているか如何かの気配を

探ったりするのだが、敵性反応は遠ざかるばかりで他に気配は感じられず、

そのまま森の奥地へと続く道に逃げ込む事に成功する。その際マサツグとモツは

心の中で閃光弾を取り扱っていたマルコに対して感謝をしながら空を見上げると、

気のせいか空にマルコの表情が現れては笑顔でピースをする様子が

思い浮かんで来る。


__ピ~ス!!…


そうしてある程度走り完全に周りから敵性反応を感じない場所まで辿り着くと、

マサツグとモツは徐々に走る速度を緩めてはTPを回復させる為に、近くの樹の

陰へと逃げ込み息を整える。狼型の人キメラに追い掛けられ…先程の肉の塊に

よる大爆発…ここまでハードな冒険になるとは思わなかった様子でその場に

へたり込み、マサツグとモツが共に息を切らし参り始めて居ると、マサツグが

たまたま見つけた様子で一冊の手帳を見つける。


「はぁ!…はぁ!…し、しんど過ぎる!!…

瘴気の中だからまともに呼吸も出来ないのに!!…」


「はぁ!…はぁ!…」


__カサッ…


「…?……ナニコレ?…」


「はぁ!…はぁ!…え?……どした?…」


マサツグがその手帳を見つけると不思議そうにしながらも拾い、何が書かれて

あるか気になった様子で開いて中を確認すると、そこには誰かが書いて来たで

あろう冒険の記録がそこに書かれたあった。その旅は充実したものだったのだろう

その手記の前半は旅先で体験した事や経験した事などが書かれてており、

1ページ1ページには思い出が詰まっているのが良く伺える半面…

後半からはこの森についての記述が書かれて在りその内容に驚き黙読し始める。

その様子に息を切らしながらもモツも気が付き、マサツグの方に移動して来ては

何を読んでいるのかと覗き込んで見ると、そこに書かれてあったのは誰かが

書き残したであろう今までの体験を記した手記であった。

 ---------------------------------------------------------------------------------

 C / 15


 今日からこの森にあると噂されている光り輝く樹の捜索を開始し始める。

 予め近くにあった農村から必要な物資を集めて準備は万全!

 例え遭難したとしても数日は持つだろう保存食も用意した。

 …とまぁ、ここまで準備を整えてもこの森自体スプリング大森林に

 比べたら三倍は小さい…気楽に森を探索しようと思う。

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 C / 16


 この森に入って気付いた事がある。

 この森には瘴気が漂っている!まだそんなに濃くは無いが気を付けるに

 越した事は無い。だが如何にも気配がおかしい…森の動物達もまるで瘴気に

 侵された様子でこちらを見詰め、奇妙な人影らしき物まで見え始める!…

 この森に入った時から嫌な気配を感じてはいたのだが、まだ現時点では

 光り輝く樹を見つけてはいない…帰るにはまだ早い…

 もう少し探索をする事にする。

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 C / 17


 おかしい…たった一日で昨日より瘴気が濃くなっている…

 それに昨日の時点で見えていた奇妙な人影を更に見掛ける様になり始めた!…

 これは本当に不味いかも知れない!…この森は今までの森とは違って

 かなり危険な匂いがする!!…このままだと俺の命も危ないかもしれない…

 現時点においてまだ光り輝く樹を見つけてはいない…

 ここまでやって来て何の収穫も無いのは心苦しいが…今日を最後に探索を

 止めて一度村に引き返そうと思う…

 ----------------------------------------------------------------------------------

 C / 18


 何なんだあの化物は!?…狼の体に人の頭がくっ付いているだと!?…

 信じられない!?…あの化け物に見つかって追い掛け回されて道に

 迷ってしまった!!…クソ!!…実質遭難してしまった!!!…

 …ただ幸いな事にその化け物から無事逃げ切る事が出来た…

 鼻はそんなに良くないのか見失うともう追って来る様子は見られない…

 何とかあいつ等に見つからない様に出口に向かわないと!!…

 ----------------------------------------------------------------------------------

「……目的は俺達と一緒みたいだな?…」


「……そうだな…」


マサツグが読んでいるページには光り輝く樹の事が記入されており、それを探しに

来た一人の冒険者の記録が書かれてあった。最初の方ではちゃんと計画を立てて

いたのか準備に始まり、森に入ってからの異変や行動等が簡単にまとめられ記入

されてある。マサツグ達を追い掛けて来た人キメラの事等もしっかりと

書かれて在り、それらの化け物を見て自身の身が危ないと感じたのか、捜索を

打ち切る事を決断した様子までが手記から読み取れる。そして人キメラに襲われ

遭難したと…迷子になった様子が筆跡から分かる様に書かれてはマサツグ達は

同情し、冒険者と自分達の目的が一緒であった事を口にして若干悲しい気持ちで

最後のページを開く。するとそこには血の滲んだページが現れてはギリギリ読める

位のミミズ文字でその冒険者の最後が書かれてあった。

 ----------------------------------------------------------------------------------

 C / 19


 俺はもう駄目かもしれない…

 あの化け物に追い掛けられている最中人を見つけて助けを求めたが…

 その人影達も俺を見つけるなり襲い掛かって来やがった!…

 今俺の周りにはあの化物で溢れて更に良く分からない騎士の化け物まで

 徘徊している!…アレは何なんだ!?…えらくボロボロで何処の騎士かまでは

 分からないが…何処かで見た事の有る騎士だった…

 応戦してみたが桁違いに強すぎる!…

 おかげでバッサリやられて血が止まらない…だんだん意識も朦朧としてきた…

 …最後に書き記しておく…もしあの騎士と出会うことがあればたたかわずに

 …にげろ…あれはつよすぎる…

 -----------------------------------------------------------------------------------

「……ここで終わって居るな?…」


「…偉く壮絶な最後だな……

それに騎士の化け物?…」


「今の所見ては居ないけど気を付けた方が良いって事には違いないな…

恐らくはこの先に居るかもしれないし…」


「……途中で出会うとかか?…」


マサツグとモツが最後のページを確認して本当に終わりかどうかを確認し、

モツが読んだ感想を口にしては手記に出て来た騎士の化け物について

悩み始める。自分達が進んで来た道中にはそんな騎士っぽい敵は居なかったと

思い出しては悩み出し、マサツグがこの先で構えているかもしれない!と

警戒した様子で話すと道の先を見詰める。そしてその冒険者の手記を完全に

確認し終えてはそっと閉じ、アイテムポーチの中に仕舞うと二人揃って

立ち上っては感知サーチで辺りを探り始める。


__…ザッ…ザッ……スゥ……


感知サーチ!…」


__ピィ~ン!……


「…一応反応は無いな?…」


マサツグが目を閉じ感知サーチを使うと自身を中心に波紋が出る様な

感覚を覚える。しかし近くに居るのはモツだけで敵性の反応は無く、モツや

その他の存在は如何やら青色の光源で表記されるのが分かった位の情報しか

得られなかった。反応が無い事にマサツグが目を開けてはモツに結果を話し、

それを聞いてモツが若干悩んだ様子を見せては自身が感じている嫌な予感に

対して話し始める。


「…マサツグは今如何思う?…今俺は物凄い勢いで嫌な予感を感じるんだよな…

この手記が本当なら何か更に面倒になりそうな予感がするが……」


「……実は俺も…この先に進んだらその面倒な奴と会いそうな気がして

仕方が無いんだよな…

このまま何も無い事を願うんだが…」


「…本当にな?……」


冒険者の手記を見てからマサツグとモツの二人が嫌な予感を感じ、自分達が

進もうとしている道の先を見詰めては警戒した表情を見せる。その奥地へと

続く道からはまるで瘴気が量産されている様な気配と共に、妙に安心感を

覚える謎の雰囲気も感じ始める。その奇妙な感覚にマサツグとモツは不気味さを

覚えつつも休憩は終わりと樹の影から姿を現し、その道の奥へと進み始める。

鬼が出るか蛇が出るか…そんな警戒心と共に好奇心も覚えた様子で二人は

最初の時同様…剣に手を添え森の奥へと進み始めると、更に奥からは不気味で

陰鬱な雰囲気が漂って来る。


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


「更に不気味な雰囲気が漂って来るな!…いかにも出て来そうな…」


「……さっきから散々出会って居るけどな?…でも言いたい事は分かる!…

…ここまでの道中がお遊びだって…言われてる気がする…」


「……ッ!…でもこの道で間違いは無さそうだ!…ほら!…」


森の奥に進めば進む程に瘴気が増し…それに伴って負荷デバフが更に重くマサツグ達に

圧し掛かると、足取りを重くさせる。それでもマサツグ達は怯まずに先へと進み、

光り輝く樹を目指して歩き続けて居ると、微かだが青白い光が見え始める。それに

伴って先程までの人キメラの奇襲が嘘の様にパッタリと止み、まるで人キメラが

この光を嫌っている様に感じ始めるのだが、この時のマサツグとモツは光が

見える方に歩き続けて「あとちょっと!!…」と指を差しながら、その光が

見える方へと前進するのであった。

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嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

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