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-第一章-スプリングフィールド王国編-
-第一章二十八節 静寂の町と非道のカルト教団とまさかの再会-
しおりを挟むマサツグが辺りを警戒しながら街の中に足を踏み入れるとまず目に付いたのは
人影一つ無い町…まるでゴーストタウンに迷い込んだのかと思う位、静かな
クランベルズで二日前の活気溢れる蟻地獄みたいな接客風景は何処にも
見当たらない。そんな露店の店主達は勿論…町の人どころか外から来たであろう
人間や冒険者の人影すら無い寂しい光景が広がっているのだが、それでも町の
建物内には人は居るらしく、何処からとも無く建物の陰からこちらの様子を伺う
視線は少なからず感じる。
__コッ…コッ…コッ…コッ…
「………何なんだよコレ?…イベントにしても情報が少な過ぎる…
チラホラ視線を感じるけど姿は見えないし…
まだこの町についてあんまり知らないけどこの変わりよう…
明らかに最初の時と違って静か過ぎる!…今頃こんな道の真ん中を歩いていれば
トンデモナイ事になって居る筈なのに!…これだとスキップし放題じゃなぇか!?…
…視線は多分敵意じゃないが警戒はされている!……
とにかくギルドに行ってみるか……」
マサツグが迷いの森に出掛けて帰って来るまでの二日間…
一体何が有ったのかと思いつつもマサツグはメインストリートを歩き、
その町の変わり様に改めて驚きを隠せない様子で呟くと辺りを見渡す。
街並みを見る限り特段荒れている様子も無く、暴動が起きたとかでは
無さそうなのだが、マサツグが感じる視線は明らかにこちらを
警戒しており、雰囲気からして普通では無いと教えて来る。そんな有様に
マサツグはただ戸惑いつつギルドに向かい始めるのだが、その人気の無い
クランベルズの道はただ横に広く、自分一人だけが歩いて居ると孤独さを
感じさせると同時に不気味悪さも何処からとも無く感じてしまう。
更に背の高い建物が圧迫感を印象付け、嫌でも不意の出来事を想像させて
しまうとマサツグの警戒心を更に強めさせる。
__コッ…コッ…コッ…コッ…
「……人が居ないだけでこの町が不気味に感じるな……ッ…
…あの背の高い建物の屋根上に敵が待ち構えていて…
誰かがその下を通ると奇襲!…とか…
…駄目だ駄目だ!…これじゃあ完全にダークソ〇ルじゃねぇか…
…とは言え…不気味過ぎる!…こうも人が居ないだけで不気味さを
感じる街も早々無いと思うが…」
__……ッ……
「ッ!…声がする!?……ふぅ!…なぁんだ!やっぱ人いるんじゃねぇか!!…
驚かせやがって!……」
人が誰一人として居ない寂しい町並みはマサツグの目からは某プレイヤーの心を
圧し折るダークファンタジーゲームの廃墟街に似ており、そんな様子も相まって
マサツグの警戒心を更に揺さぶって居るとふと何処からともなく微かに声が
聞こえて来る。その声を聞いてマサツグが緊張の糸を緩めようとするのだが、
直ぐにまたその某ゲーム脳が働くとその声がする事を不審に考えてしまい、
その声の主を確認する事を躊躇ってしまう。
「ッ!?…待てよ?…何で急に声が聞こえたんだ?…
もしこのまま声の聞こえる方に向かって歩いて行って…敵だったら誘い込まれて
フルボッコみたいな事に?……えぇ~い!!どうなってんだ!?…」
__……ッ……ッ!……
「とは言え今はこの状態について少しでも良いから情報が欲しい!……
…となると答えは一つ!……潜入任務だな!…
……ダンボールが欲しい所だが……後ワニマスクと松明も欲しい所だ…」
マサツグが一人確認するかしないかで悩んでいる間もその裏から聞こえて来る声は
会話を続け、何やらこの騒動の原因の話をして居る事には違いないようである
のだが、マサツグの居る場所から幾ら耳を澄ましてもその会話が聞こえて来る事は
無い。その事にマサツグも気づいており、少しでもこの状態に関する情報が欲しい
マサツグは苦悩する事数分…結局バレないよう盗み聞きする事を決め、
某「儀式の人」を彷彿させるアイテムを口にしは足音を立てない様にその会話が
聞こえる方へと歩き出し始める。メインストリートから建物と建物の間の裏路地へと
入って行き、右に左にと角を曲がりつつその声の聞こえる方へと歩いて行くと
徐々にその会話が大きく聞こえ始める。
「おい!……だよ!!…こんなの……」
「と言って……も遅い!…」
「……ッ!?…あっぶなぁ~!!…危うく鉢合わせする所だった!…
…でも何でこんな所に?…何を話して居るんだ?…
…確かに人目の少ない丁度良い感じに袋小路みたいだが…」
徐々に大きく聞こえる会話は何やら揉めている様に聞こえ出し、その会話を
確かめる為にマサツグが角を曲がろうとするとそこは袋小路で逃げ場は無く、
声の主達とばったり鉢合わせしそうになる。その事に気が付き慌ててマサツグが
最期の角の陰に隠れるよう引き返し、その袋小路に居る者達の様子と会話を
確認すると、どうやらその話声の主達はあのカルト教団の仲間なのか頭から
白い布を被っては辺りを警戒した様子で話し合っていた。
「お…おい…やっぱり、不味いんじゃないか!?…この教団おかしいって!!…
最初は救世主様が俺達を救ってくれるって言っていたのに…
今やっている事は完全に犯罪者じゃないか!!」
「五月蝿い!!…そんな事は分かっている!!…
司祭様の命令はこの国中に居る女子供を教団本部に連れて帰る事!!…
これが只の誘拐だって事は十分、分かっている!!…」
「ッ!?…あん時のカルト教団!……それに話を聞く限り誘拐って……
ますます穏やかじゃねぇな?……とにかくこの町がここまで静かなのは
こいつらが原因だって事には間違いなさそうだ…」
如何やらこのカルト教団達は国中…つまりこの町の他にも村や里を襲っては
そこに居る女性や子供を誘拐する事を目的としているらしく、この町の静けさは
カルト教団の蛮行によって出来た現在警戒中のゴーストタウン化した
クランベルズらしい…そして目の前にいるカルト教団員もまだ教団に入って日が
浅いのか今行って居る事に対して疑問を持っている様に話しては辞めようと
話している様子なのだがその様子もどこかおかしい…
「ッ!?…だったら!!…」
「だが、この命令を拒否してみろ!?…今度は俺達の命が危ないんだぞ!!…
見たか!?あの司祭達の目を!!…あれは完全に逝っちまっている目だ!!…
歯向かったら間違いなく消されるんだぞ!?…」
「ッ!?…ッ!!!……クソ!!!…
何でこんな事に!!…
只、救世主様の誕生を心から祈るだけじゃなかったのかよ!!…
救世主様は俺達信者を苦痛の無い何にも縛られない国に導いてくれるんじゃ
無かったのかよ!!」
目の前のカルト教団の話を聞く限り、一度入れば逃げる事も出来ないのか、
力で言う事を聞かせているのか、反抗…或いは退団を許さないと言った様子で
そういった者は如何やら消されるらしい…それを目で感じ取ったもう一人の
カルト教団員が身を震わせ恐怖した様子で話してはもう逃げられないと話し、
その話を聞いた相手のカルト教団員が青ざめ始めては最初に聞いた教えと
違う!!…と教団に入った事を後悔し始める。その一連の話を聞いてマサツグが
納得した様子で頷いてはこの状況を飲み込み始めるのだが、ここである疑問が
湧いて来る。
{…この状態になったのは間違いなくカルト教団の仕業…
それは間違いないだろう…
…にしても二日前はただの行進している連中だったのに、
何でまた急にこんな事を?……こんな事をすれば国の方も黙ってはいない筈…
それにこの町の在り様も変だ…この町にも確か詰め所が有った筈…
なのに何で事態の収拾に動いていない?…警備兵は一体?…}
マサツグの中で湧き出て来た疑問とはカルト教団の目的と行動の他に、
この町を守って居る筈の警備兵が一人として居ない事であった。カルト教団は
マサツグが居ない二日間の間に如何やら謎の急成長を遂げ、先程のカルト教団
宜しく町や村に行っては人を誘拐しているらしい…勿論そんな事をすれば
王都であるストロべリンズにその蛮行が届き、王様が黙っている訳が無く
征伐の部隊を送り出し始める筈なのだが…しかし実際はこの町の警備に当たる
兵士たちすら動いていない始末…町に入った時人一人いない違和感はまさに
それが理由であった。そんなマサツグの中で色々な疑問が飛び交い一人悩んで
居ると、その目の前のカルト教団員達が動き出し始める。
「……そろそろ行くぞ!…
こんな所を誰かに見られたら不味いなんてもんじゃない!…」
「…ッ!?…ヤッバ!!…
逃げる!?…でも逃げた所で町をまだ完全には把握してないからヤバいし!!…
ッ~~!!……ッ!!…」
__バッ!!…
カルト教団員達が仲間の所に戻り始めようとマサツグの居る方へと歩き出し、
マサツグがそれに気が付くと慌て始める。マサツグが隠れている角は一方通行で
逃げるにも後ろ姿を見られると一発で盗み聞きしていた事がバレて面倒事に、
更に走れば走ったで結局はバレて面倒事に…更に逃げるにしても次の角まで
行き着くのに地味に距離が有る為、今から歩こうが走ろうがバレる可能性が
大の状態でピンチな事この上ない!しかしカルト教団員達はゆっくりこちらに
向かい歩いて来ては徐々に距離を縮め、更にマサツグを焦らせては正常な判断を
鈍らせるのだが、マサツグはある物を見つけるとその中へと駆け込む様にして
隠れるとカルト教団員をやり過ごす。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ………カパッ!…
「ふぅ~~!…何とかなった……
丁度良い所に大きいゴミ箱が有って更に下ろしたてと来たモンだから
汚れてもいない!……もしかしてこれが「超幸運」?…恩恵がショボ過ぎる!…」
マサツグが咄嗟に隠れた場所…それは民家のゴミ箱の中であった。
そのゴミ箱は周辺に住む住人達共同のゴミ箱なのか人一人が簡単に隠れる事が
出来る位に大きく、更に最近配置されたばっかりなのか新品同様で中に入って
隠れてもマサツグ自身は汚れてはいない。咄嗟にゴミ箱見つける事が出来た事と
自身が汚れていない事にマサツグがホッと安堵するのだが、これがマサツグに
とって初めて幸運に思えた事なのか超幸運のスキルと勘違いしてはショボいと
一人ショックを受ける。しかしカルト教団員達をやり過ごした事には変わりない
ので、とにかくギルドにこの事を伝えようと警戒した様子で先ほどやり過ごした
カルト教団員に警戒しつつ、元の道まで戻って行くのだがその途中…
メインストリートから突如として悲鳴が聞こえて来る!
__キャアアアアァァァァァ!!!…
「ッ!?…悲鳴!?…さっきの話だと誘拐している連中が居るとか言ってたよな…
…仕方が無い!!行くか!!…」
__ダッダッダッダッダッダッ!!…
メインストリートから聞こえて来た悲鳴にマサツグが反応し、その聞こえて
来た方を見詰めるがまだ裏路地に居る為そこは壁。しかしハッキリと聞こえた
その女性の悲鳴に、マサツグが先ほど盗み聞きした話を思い出しては不穏な空気を
感じ始め、さすがに悲鳴を聞いて助けに行かないのは自分として如何なの?…と
ギルドに行くより人命救助を優先で考えてしまうと、辺りを警戒しながら先を
急ぐ心を抑えつつ、メインストリートへと駆けて行く。そしてマサツグがメイン
ストリート手前まで辿り着き、敵の数を確認する為に先ほど盗み聞きした時同様
建物の陰に身を隠しながら様子を伺うと、そこには家族ぐるみで襲われたか
父親らしき人がボロボロの状態で地面に倒れ、母親とその娘が先ほどのカルト教団の
二人に捕まっているのを見つける。その他にもその家族を取り囲むように数名…
まるで操られている様に虚ろな目をして倒れる人物の腕や足を踏みつけては身動きが
取れないよう拘束していた。
「う…うぅ…」
「貴方ァ!!…しっかりしてェ!!…
もういいから!!…もうやめて!!!…」
「いやあああぁぁぁぁ!!!…誰か!!誰か助けて!!!…
お父さんがァ!!!…お母さんがァ!!!……
誰でもいい!!…誰か助けてぇぇぇぇ!!!…」
地面に倒れるボロボロの旦那を見て半狂乱になりながら妻はもう旦那が傷付く姿を
見たくないと抵抗しない様に訴え、娘はそんな二人の姿を見て藻掻き抵抗するも
カルト教団から逃げる事が出来ず、ただ周りに助けを求める。しかしその助けを
呼ぶ声も今の状況ではただ空しく木霊するだけで誰一人として助けに入ると
言った事は起きず、無情に響いてはそのまま掻き消される。そんな様子にマサツグが
カルト教団に対して怒りを覚えるがまずは索敵と冷静に敵の数を確認して居ると、
そのカルト教団の中で妙に目立つ…他のカルト教団員より少し立派なローブを着て、
杖を手にするリーダー格が居る事に気が付く。
{…ッ!!…酷ぇ事しやがる!……ッ!…
…恐らくはアレがあのカルト教団のリーダー格か……
とは言ってもあの様子だと…あの部隊のリーダー格って言った所か…
教祖がこんな所をフラ付いているとは思えないし…何より格好が少し派手な位で
それっぽさが無い!…数があれだけなら刹那一回で行けるか?…}
「う…うぅ!……ぜぇ!…ぜぇ!…」
「ッ!?…」
「た…頼む!!…娘と妻を離してくれ!!!…
金が必要なら用意する!!!…何か必要なら用意する!!!…
だから…だから頼む!!…娘と妻を解放してくれ!!!…」
「………。」
マサツグが敵の数を確認し突撃のタイミングを見計らう中、地面に倒れた父親は
傷付き拘束されながらも必死にリーダー格に手を伸ばし始め、その様子に
マサツグが驚いて居ると父親は息絶え絶えの状態でリーダー格に妻と娘を離す様に
懇願する。欲しい物は何でも用意すると必死に訴え手を震わせながらでも
リーダー格に手を伸ばし続けるのだが、その様子をリーダー格はジッと黙って
見下ろし続けた後、俯きプルプルと震え始めては突如父親を嘲笑う様に父親の
伸ばす手を踏みつけ、グリグリと踏み躙る。
__スッ…グッ!……グリグリグリグリ…
「ッ!?…あ!あああぁぁぁ!!…」
「いやあああぁぁぁぁぁ!!!!…もう止めて!!!もう手を出さないで!!…
付いて行きますから!!!…付いて行くから旦那と娘だけはぁぁぁ!!!!…」
「お父さん!!!…お父さん!!!!…誰かだれかアアァァぁ!!!…」
リーダー格は父親の手を足で踏み躙っては笑みを浮かべ、父親がその痛みに
耐えようとするのだが悲鳴を上げると奥さんが更に泣いて許しを請い、娘も
喉が枯れる程に泣き叫んでは必死に助けを呼び続ける。そしてその様子を
楽しむようリーダー格が笑い出し、父親にお礼を言い始めると更に手を踏む力を
強め始める。
「クハハハハハ!!!…
貴方はさぞ悲しい事でしょう!!…
この様な不条理の世界に生まれ絶望に苛まれる!!…そんな日々を送って来て!!…
ですがご安心ください!…我々にこの奥様と娘様をお布施に頂いた事!!…
後悔はさせません!!!…
…貴方の奥様と娘様は我々の救世主様の復活の贄となって頂き!…
この世界を救済する為の礎となるのですから!!!」
「グッ!!…うぅ…」
まるで自分は正しい事の中に私は居る!と言った様子で高笑いをし、自分勝手な
ご高説を垂れ始めては奥さんと娘さんを贄にすると話して、嬉々として倒れる
父親を見下し続ける。まるで蟻を踏み潰すが如く高慢な態度にマサツグも更に
怒りを覚えると、剣に手を添え飛び出す用意を着々と整える!そしてリーダー格が
何を思ったか天を仰ぐ様に杖を掲げ、地面に倒れる父親を下に構えて見せると
これまた邪悪な笑みを浮かべ、もはや抵抗する力も残っていない様子で父親が
リーダー格に手を踏まれ続け、パタッ…と力無く手が地面に着いた途端、奥さんが
もはや正気を失った様子で取り乱し、必死に父親の事を呼び続ける。
「貴方!?…貴方あぁぁ!?…」
「では…良い夢を!…旦那さん?…」
「ッ!!…刹那!!…」
__ヴウン!!……バッ!!…
父親はその声に答える事は無くただ静かに涙を流しては歯を食い縛り、リーダー格が
その振り上げた杖を構えて笑みを浮かべたまま振り下ろそうとした瞬間、マサツグが
刹那を発動して建物の陰から一気に飛び出しリーダー格に向かって行く!
開幕剣を抜きダッシュ斬りで更に加速しては他の信者など目も暮れずお構いなしに
まずリーダー格の信者に向かって行くのだが、その際マサツグが走って行く
メインストリートの反対側から同じ様に誰かが飛び出してはリーダー格に向かい、
走って行く人影を見つける!
「ッ!!…あれは!?…」
__ダッダッダッダッダッ…ッ!!……グッ!!…
「ッ!!…向こうもこっちに気が付いた!?……
しかもあの構えは……何となく了解!!!…」
「……ッ!?な、何だあれは!?…ぐあっ!?…」
反対側から突如現れた人影にマサツグが驚いて居ると、向こうもマサツグの
存在に気が付いたのか剣を手にダッシュ斬りを繰り出しては剣を下段に
構えて見せ、その構えにマサツグが覚えが有ると言った様子で一人納得して
構わずダッシュ斬りでリーダー格に向かって行く!そして二人がものすごい
勢いでリーダー格に向かって行く様子を漸く理解したのか周りの信者達が
慌て始めるのだが、慌て始める頃には既に二人は信者を押し退けリーダー格に
差し迫っており、マサツグが反対側から走って来た恐らく冒険者であろう
人物を飛び越える様に踏み込み、その冒険者の頭上を飛んでリーダー格に
斬り掛かって見せると、相手の冒険者はマサツグの下を潜る様に駆け抜け
リーダー格に斬り掛かる!
__バッ!!…バッ!!…ズバアァン!!!…
「グオァッ!?…な、なん!?…」
「……ッ!?…チィ!!…考える事は同じだったって事か!!…」
「ッ!?…マジか!?…」
マサツグと見知らぬ冒険者がリーダー格に斬り掛かるのだが互いに斬ったのは
リーダー格が持っていた杖であり、突然杖を斬られた事にリーダー格が
驚き戸惑っては後ろに仰け反って見せる。さすがに誰がどれを斬るまでは
分からなかった様子で、互いに戸惑った言葉を漏らしては信者達の輪の中で合流し、
武器を構えると父親を踏みつけ拘束する信者達を追い払う。
__シュタッ!!…チャキッ!!…フォン!!!…
「ッ!!…いつまで踏んでんだ!!…コラァ!!…」
「ヒ…ヒィィ!?…」
_どよどよ!…どよどよ!…
信者を追い払い父親の安全を確保した所で周りの信者に注意を向け武器を
構え始めると、互いに先程の攻撃を見て関心を持ち始めては背中合わせで
信者達に敵意を見せる。一歩でも近づいたらkill!…そんな様子を見せる二人に
信者達は戸惑いを隠せない様子でマサツグと冒険者を取り囲むのだが、互いに
やはり先程の動きが気になったのかチラッと互いのプレイヤーネームを確認する。
{……何処の誰だか知らないけど…さっきの攻撃…
良い動きだったなぁ…それにあの構えを知ってるって事は… ×2
多分…同じゲームを遊んだ事があんだろうな?…}
__……チラッ……あれ?…×2
「マサツグ」 Lv.20 (剣士)
「モツ」Lv.20 (万能冒険者)
互いが周りの信者に注意を向けつつ背中を預けている冒険者の名前を確認すると
見覚えの有る名前が表示される…そしてその名前を見た両者が互いに
不思議そうな表情を浮かべてはまさか?…と言った様子で今度は顔を見合わせ、
敵に囲まれていると言うにも関わらず緊張感が抜けた様子で出て来た言葉は、
互いの確認の言葉であった。
「えぇ~っと……間違っていたらスイマセン…
ひょっとして……ヤブ?…」
「ッ!!…て事はやっぱ!…本ちゃん!?…」
片方…モツと言うプレイヤーがマサツグに向かいあだ名らしき名前を口にすると、
その呼び方に覚えがあるマサツグは戸惑った様子を見せ、モツと言う名前を使う
人物にマサツグも覚えが有るのかその相手のあだ名を同じく口にする。その際
互いに驚いた様子でアバターの顔を指で差し合いその場で固まり戸惑って居ると、
信者達もその同窓会の様な雰囲気に困惑しただただ如何したら良いのかと
悩み始めるのだが、リーダー格がノックバックから復帰するとその驚き戸惑う
マサツグともうの二人に怒り心頭の様子を見せては信者を消し掛ける。
「……ッ~~!!…ッ!?…わ…私の杖が!?…おのれぇ~~~!!!…
皆さん!!…この異教徒を許してはなりません!!!…制裁を!!!…
我々には救世主のご加護が!!!…」
「マジか!!…こんな所で会うとは思わなかったぞ!?…」
「え?…」
「それはこっちの台詞だっての!!…何でまたこんな時のこの町に!?…
ヤブが始めたとしてもまだ掛かると思っていたのに!?…」
リーダー格が他の信者達にマサツグとモツへ襲い掛かるよう命令をするのだが、
マサツグがリーダー格の言葉をガン無視してモツと出会った事を喜び戸惑った
様子で話し掛け、マサツグの眼中にリーダー格が映っていない事に
そのリーダー格が戸惑いの言葉を漏らして居ると、モツもマサツグと出会った事に
喜び戸惑った様子で話し始める。モツのアバターはマサツグ同様ヒューマンの男で
同じ位の身長、髪も黒髪で所々マサツグと同じ点が有るのだが、違う点が有ると
するなら髪型と顔位でマサツグは某最終幻想七作目の二年後の主人公の髪型を
黒くした感じなのだがモツの場合、見た目は某最終幻想七作目の主人公の
親友・ザッ○スの2nd時の姿に似せて作っているのか、マサツグにはもうモツの
アバターはザッ○スにしか見えなかった。しかし名前はモツ…
そしてこの会話と会って最初の反応…間違いなくそこに立って居るのは
マサツグの親友…本ちゃんであった。
本ちゃんはマサツグ(リアル)の数少ない親友でこのゲームを紹介してくれた
友人の一人であり、性格は基本温厚だが怒ると中々に怖い…だが頭はキレるので
頼りになる親友である。そんな親友との奇妙な再会に互いがただ戸惑い地面に
倒れる父親を挟んで談話して居ると、自分がガン無視されて居る事に更に苛立ちを
覚えた様子でリーダー格が二人に魔法を唱え始める!
「ッ!!…何処までも虚仮にして!!……ッ!!!!…
《雷よ!!…我が目の前の敵に落ちてその身を焦がせ!!…ライトニング!!!》」
__ッ!?…バッ!!…ドガアァァン!!……ゴロゴロ…
「ふ……フハハハハハハハ!!…如何ですか!?…これが救世主より授かった力!!…」
リーダー格が魔法で雷雲を召喚してはマサツグとモツの頭上に移動させ、そして
合図をする様に手を振り下ろすと雷雲から二人に向かって雷を落とす。
刹那発動状態の二人がその雷に気付き慌てて回避すると、その雷を落とした事を
自慢げにリーダー格が高笑いして救世主の力と豪語するのだが、マサツグとモツは
全く堪えていない様子でまた顔を見合わせては話を続ける。
「いや、ホント久しぶり!!元気にしていたか!?
まさか、こんな形で再会するなんて思わなかったぞ!!」
「それはこっちのセリフだぞ!!…てかヤブも始めたんだ!!……
とまぁ…とりあえず…今更だけどリアルの名前禁止な?…色々面倒だから…」
「あっ!…了解で~す…」
魔法など全く大した事無いと言った様子で互いにリーダー格を更にガン無視し、
話を再開し始めてはマサツグが久しぶりの再会とばかりに意気揚々と声を掛け
始め、モツもそれに答えるようマサツグが同じゲームをやり始めた事に驚いた
様子を見せると笑みを浮かべる。しかし直ぐにスッと真顔になってはオンライン
ゲームでの暗黙のルールを口にしマサツグに注意を促すと、マサツグはその
注意を受けてハッとした表情を見せると、若干申し訳なさそうに一言分かったと
返事をして見せる。そして完全に相手にされていない事にリーダー格が更に
怒った様子で地団太を踏み始めると一向に動かない信者達に再度号令出し始める!
「ッ!?!?…こ!…この!?…何処まで私を馬鹿にすれば!!!…
えぇ~いい!!…皆さん何をしているのです!?!?…
早くその不届き者達を捕まえるのです!!!…」
__どよ!?……
「ッ!?!?!?!…えぇ~~いい!!…この後どうなっても良いのですか!?…
この件が教祖様や司祭様の耳に入れば!!…皆さんはおしまいですよ!?…」
__……ッ!!わ…わああぁぁぁぁ!!!…
リーダー格の号令に信者達が戸惑った様子を見せては互いに顔を合わせて
如何するか?…と言った反応を見せる。普通にマサツグ達に挑んだ所で
信者達も勝てないと悟っているのか誰一人として動き出す様子を見せず、
信者達がオロオロとして居るとその様子に更に怒りを燃やし檄を飛ばすよう
リーダー格が脅しの言葉を掛け始める。するとやはり恐怖心で従わせている
のか信者達が戸惑いだし、命令に従った様子で信者達がマサツグ達に
襲い掛かり始めると、マサツグとモツがその様子に気が付き改めて背中合わせに
なるよう振り返っては、武器を構え信者達を牽制し始める。
「ッ!?…はあぁ~…ゆっくり再会を喜び合う事も出来ねぇのかよ…」
「はは…まぁ…状況が状況だしな?……で、如何する?…
こっちは二人で相手は大多数…如何切り向けようか?…」
「…こう言うのは本ちゃんの方が得意だったと思うけど?…」
徐々に詰め寄る信者達を見詰めては剣を握り、マサツグがモツとの再会を
邪魔された事に溜息を吐いて居ると、モツは苦笑いをしては辺りを見渡し
打開策を考え始める。そしてマサツグにも意見を聞く様に信者達の動向を
確かめつつ話し掛けると、マサツグがモツの仕事では?…と冗談交じりで
返しては徐々に近づいて来る信者ではなく、後ろで構えているリーダー格を
見詰める。
__………。
「ッ!……じゃあ…手早くあのリーダー格を押さえる?…
然程難しくは無いと思うけど?…」
__……ニヤッ!…
「ッ!…OK!…んじゃ…おっぱじめますか!!…」
マサツグの様子にモツが気付いた様子で反応してはリーダー格をさっさと倒すかと
マサツグに笑って持ち掛け、それを聞いてマサツグもピクっと反応して見せると
静かにニヤッと笑って見せる。その様子をモツは同意と受け取り、マサツグに
始めると声を掛けると一緒に動き出すタイミングを計り始め、若干信者の波に乱れが
見えた所でマサツグと同じタイミングでリーダー格の信者に向かい走り出し始める!
__ゾロゾロ…ゾロゾロ……スッ……
「今だ!!!…」
__バッ!!……ッ!!…バババ!!!…
「ヴァカめ!!この数に勝てると思っているのですか!?
そのまま大人しく…」
マサツグがモツの合図の元…一気にリーダー信者の所目掛けて刹那の発動時間
ギリギリに信者達の隙を見て動き出すも、リーダー信者は抜かり無いとばかりに
信者達の肉の壁を瞬時に作り出しては自身を警護させ、向かって来るマサツグ達を
馬鹿にするよう罵り無駄だと言って止めるよう口にするのだが、マサツグは
関係ないとばかりに剣を下段に構えて肩を前に突き出し、止まる事無く信者達の
壁に向かってタックルを敢行し始める!
__グググッ!!…
「ッ!?…この人の壁が見えないのか!?…無駄だと!?…」
「無駄なのは!!!…」
__ドゴッ!!!…バッカアアァァァン!!!……ッ!?!?!?!?……
「どっちなんだろうな!?…」
構わずツッコんで来るマサツグにリーダー格の信者が戸惑いを露わにしては無駄だと
口にするが、やはりマサツグは止まる事無く寧ろ加速して見せては姿勢を低く、
勢い良く肩から信者達の壁に突っ込み無理やりにでも壁を突破して見せる!
ただ立って居る人間を吹き飛ばすのは容易とばかりにまるでイノシシが突進して
来たが如くマサツグが信者の壁を吹き飛ばし、その際突破出来る自信が有ると
ばかりに一言呟き、リーダー格が宙を舞う人の壁を見て驚きを隠せない様子で
見上げて居ると、マサツグの陰から出て来るようモツが飛び出してはリーダー格に
一太刀浴びせる!
__バッ!!!…ッ!……ズパアァァァン!!!…
「ッ!?…ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!!………って、あれ?…」
__ペタペタ…
「斬れていない?……ッ!?…さては仕留めたと勘違いして居るな!?…
フ…フハハハハ!!!…な…何だ!?どうした!?…
私はこの通り無事だぞ!!…如何したもう終わりか!?…えぇ!!…」
モツがリーダー格へ飛び掛かる様にして斬り掛かって行く際、何かに気が付いた
様子で一瞬違う方を確認しては直ぐにリーダー格の方を向き直し斬って見せる
のだが、モツが斬ったのはリーダー格が着ているローブだけであり、リーダー格
本人は無傷…それでもモツはまるで戦闘が終わった様に剣を鞘に仕舞っては
一息吐き、斬った事によりローブの裾部分が垂れ下がってただ下半身が丸出しの
状態で、見たくも無いリーダー格のパンツが見えている。自身が斬られたと誤解した
リーダー格は悲鳴を上げてその場にへたり込むのだが、それも痛くない事に
気が付き自身の身を触って確認しては、不思議そうな表情を浮かべる。そしてモツが
仕留め損ねたと誤解しては勢い付き始めるのだが、モツがその場にへたり込む
リーダー格の方に振り向いては呆れた様子で声を掛け始める。
「…はあぁ~……良くそれで部隊長みたいなのを任されたな?…
周りを良く見てみろ?…」
「え?…」
「確保おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
__わああああぁぁぁぁぁ!!!!…
モツがリーダー格に周りを見る様に声を掛け、そのモツの言葉に戸惑いを隠せない
様子でリーダー格が言葉を漏らした瞬間!…何処からか確保と言う言葉が聞こえて
来ては何処に隠れていたと言わんばかりに武装したギルド職員の他に、ギルドに
雇われた冒険者達が建物の陰や曲がり角から飛び出して来ては一斉に信者達を
捕まえ制圧し始める!それは瞬く間に圧倒的なもので、逃げようと戸惑う信者達を
ものの一~二分と掛からない内に、リーダー格及びそれに付き従っていた信者達を
拘束し、指揮を執っていたギルドの職員が連れて行くよう指示を出すと、
長蛇の列を成してその信者達を何処かへ連行して行き、拘束されていた奥さんに
娘さんも無事保護され、倒れていた父親は冒険者の手を借りて診療所へと
連れて行かれるのであった。
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