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-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章十九節 スキルの実と奇妙な依頼書と妖精-

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まさかの出来事でマサツグがスキルの実を食べてしまい、何が起きたのかと戸惑った

様子を見せているとマサツグの感覚に異変が起き始める。何か気分が冴える様な…

何か頭がキリッとする様な…まるで頭の中でメンソールの様なスゥ~ッとした奇妙な

感覚を覚えていると、自身が持っていた筈のスキルの実が手の中に無い事に

気が付き、とにかく口の中で広がるこの香ばしい味の残留物を飲み込もうとする。


{……ッ!?…スキルの実が無い!?…それに妙に頭がスゥ~ッとする?…

そう言えばさっき…何かが口の中に入って来た様な?…それに…

この香ばしい味は一体?…何かモゴモゴとしてるし…とにかく飲み込んでみるか…}


__……ゴックン!……ドクンッ!!…


「ッ!!…げっほ!!ごっほがっほ!!…」


「え?…えぇ!?…

きゅ…急に如何したのですか!?…しっかり!…」


奇妙なまでに落ち着いたマサツグが噛み砕いたスキルの実の残留物を飲み込んだ

瞬間、今度は体が跳ねる様な衝撃を覚えると同時に何か違和感を覚えて体を

くの字に曲げて咽始め、マサツグが目の前でいきなり咽始めた事に受付嬢が驚いて

見せると、慌ててマサツグの背中を摩って心配をし始める。そして受付嬢に

介抱されマサツグが徐々にその突発的な咳を落ち着かせ始めていると、マサツグの

目の前に突如スキル獲得画面が出て来てはそのスキルに戸惑いを隠せないでいた。


[マサツグは「凄腕の魔物使い」を獲得しました。]


「……え?…魔物使い?…」


ここでマサツグは自身がスキルの実を食べてしまった事に気が付くと、スキルの実で

開花された新しいスキル…「凄腕の魔物使い」に疑問を抱き始める。何故なら

魔物使いと言うのは文字通り魔物使いでないと覚えられない言わば専用スキルで、

職業をハイブリッド化させないと覚えられないからであった。更に驚くべきは

そのスキルのレベル…普通最初は「ひよっこ魔物使い」から始まるのだが、

マサツグが手にしたのはまさかの凄腕!…手っ取り早く説明すると最終レベル一歩

手前の物を獲得したのである!そしてマサツグ自身まだハイブリッド化は出来ない

ものの友人達からの説明で多少知っていた為、然程戸惑う事は無かったのだが

まさかの魔物使いのスキルが開花した事にマサツグが思わず不思議そうに呟いて

しまうと、受付嬢が心配した様子でマサツグに話し掛ける。


「…ッ!?…如何かしましたか!?…

やっぱり何か悪い事が!?…」


「え?…あぁ…大丈夫大丈夫…ありがとう…」


__チラッ…チラッ…


{やっぱり無い……と言う事はやっぱりさっき口に中にあったのは……

…でもそんな漫画みたいな事が起きるのか?……これもしかして超幸運の力?…}


受付嬢の心配した表情にマサツグが若干まだ苦しそうながらも笑顔で大丈夫と

答えて体を起こすと、介抱をしてくれた事にお礼を言っては自分の周りをチラチラと

見渡し、スキルの実が無い事を確認する。そして自分が食べたのはスキルの実で

ある事を一人確証し、起こったであろう出来事を想像しては自分でツッコミを

入れていると、受付嬢がマサツグの呟いた一言に興味を持ったのか、不思議そうな

表情で覗き込んで来ては質問をする。


「それに…魔物使いって?…」


「あぁ…ゴメン…なんでもな…い?…」


「……?…如何かしましたか?…」


受付嬢の質問に対してマサツグが何でもないとばかりに謝っては誤魔化そうとした

瞬間、マサツグがピタっ!とクエストボードの方を振り向くとそのままボードを

見詰めたまま硬直する。そして不思議と言うか疑問と言うか…

とにかく戸惑った様子でクエストボードを見詰めているマサツグの様子に

気が付いた受付嬢は釣られる様に戸惑いつつもマサツグに話し掛け、マサツグと

同じ様にクエストボードを見詰め始めるが何も違和感を感じない。


「……?…急に如何したんですか?…別に何も変なところは?…

…マサツグさん?…やっぱり何か具合が?…」


「……この依頼書は何?…」


「え?…どの依頼書ですか?…」


「いや、これ…」


受付嬢がいつもと変わらない掲示板と言った様子で変化がないとマサツグに話し

掛けてはマサツグの様子を更に心配し始め、その答えを聞いてマサツグが

不思議そうな表情で受付嬢の方に振り向き質問をすると、マサツグの言っている

言葉の意味が分からない受付嬢は若干恐怖を覚える。そんな受付嬢の表情を

見てかマサツグがクエストボードの真ん中辺りを指差し、受付嬢に質問をする

のだが、受付嬢の目にはやはり何も変わらない光景が移っていた。


「……何もありませんよ?…とくに変わった依頼書は?……ッ!!…

あぁ~!!…もしかしてさっきの仕返しですかぁ!?

そうは行きませんよ!!」


「……と言う事はやっぱり……あぁ~……」


「…ふっふっふ!!…甘いですよ?…マサツグさん!…」


マサツグが指差す所を受付嬢が目を細めて凝視するも何も見えず、再度何もないと

答えて見せてはマサツグが脅かしに来ていると誤解したのか、騙されないと

言い始める。そしてそれを聞いて理解したのか、マサツグは一言呟くと 落胆した

様子で右手で顔を押さえては息を吐き、その様子に受付嬢がやっぱりマサツグが

騙そうとしていたと改めて理解し胸を張って威張り始める。勿論マサツグが

おかしくなったと言う訳では無く…マサツグの目にはしっかりと有る物が目に

映っており、それはとある依頼書であった。

 ----------------------------------------------------------------------------------

            「Форма запроса」

              依頼レベル??

        Собирайте мед из волшебных цветов

              報酬 ????

 -------------------------------------------------------------------------------------

{……俺もさっきまではあんなに目立つ依頼書に全く気付かなかったが…

今になってはっきりと見える!……

これが見える様になったのはスキルの実を食べてからで……と言う事は…

あの依頼書は少なくともスキルがきっかけで見える様になったって事だろ?…

で、さっき手に入れたスキルが「凄腕の魔物使い」だから……

これってモンスター絡みの依頼書じゃん…}


クエストボードにはモンスター掃討・特定モンスターの素材納品・護衛、その他にも

特定エリアの到達、地質調査、生態系調査等々色んな職種の依頼書が有る中、

そのマサツグだけが見える依頼書はど真ん中に陣取るよう張られて、全く読めない

字で依頼が掛かれており、更に奇妙な事にその依頼書だけが謎にキラキラと輝いては

自己主張をしていた。その依頼書を前にマサツグは見える様になったきっかけを

思い出し推理しては依頼主の大体の目星を付け、それがモンスター絡みだと

識別すると一人困惑した様子でその依頼書を眺め続け、そして隣で胸を張る

受付嬢を尻目にマサツグが徐にその依頼書に手を伸ばそうとした瞬間!…


「貴方!!その依頼書が見えるのね!?…」


「え!?…」


「ッ!!…待って!!!お願いなのね!!…

戻さないでくださいなのね!!」


「え?…ど、何処から!?……何処にも居ない?…

…やっぱ護衛任務で疲れているのか?…」


妙にキラキラする依頼書を手に取ろうとすると何処からとも無く女の子の声が

突然聞こえ始め、その女の子の声にマサツグが驚き慌てて手を引こうとすると、

女の子の声は同じ様に慌てた様子でマサツグに縋るようお願いを口にする。

何処からともなく聞こえて来た女の子の声にマサツグが驚いた様子のまま辺りを

見渡すが何処にもそれらしき姿は無く、マサツグが幻聴か?と聞こえた声を

無かった事にしようとすると、また女の子の声が何処からとも無く聞こえて来る。


「お願いなのね!!…

私達の依頼を…受けてなのね!!」


「ッ?!…え!?また!?…一体何処に!?…」


__コッコッコッコッコッコッコッコッ…


また聞こえて来た女の子の声は完全にマサツグへその依頼を受けるようお願いを

して来てはマサツグを戸惑わせ、マサツグもまた聞こえて来た女の子の声に

戸惑っては再度辺りを見渡し始め、その声の主を探し出そうとするが見つけたのは

先ほどの先輩ギルド職員であった。先輩はマサツグ達の方に向かい急ぎ足で歩いて

来ては怒った様子で受付嬢の名前を呼んで説教を始めようとする!


「リン!!

貴方、まだ懲りてないの!?」


「ッ!?…ち…違いますよ!!

私はマサツグさんの補助に…!!」


「それにまだ貴方にはやって貰わないと困る事が!!……?

如何かしましたか?…」


先輩は受付嬢が反省していないと感じたのか真剣に怒った様子で向かって来ては

怒鳴り、その先輩の怒鳴り声に受付嬢が慌てた様子で言い訳をし始め、その言い訳に

先輩が更に文句を言おうとした次の瞬間そのお説教がピタッと止まる。周りに居た

他の冒険者プレイヤー達もまた始まったと言った様子で流そうとするのだが、その続きが

突如聞こえて来なくなった事に違和感を覚え、一斉に何があった?と言った様子で

その騒ぎ有った方を振り向くと、そこには先輩を細目で凝視するマサツグの姿が

あった。まるで奇妙な物を見る様に凝視し、その視線に先輩も戸惑った様子で

マサツグに訳を尋ねるのだが、マサツグはその問い掛けに対して開口一番

訳の分からない一言を口にする。


「お姉さん…

この世界にっているのかい?」


__どよっ!?…


「え?…えぇ…はい…居ます。

但し、妖精を見つけるには特殊なスキルが要るとかで殆どの人が

見た事が無いようですが…急に如何されたのですか?」


「ほぅ……ッ!…えっと…じゃあ…

これが見えますか?」


突然マサツグが先輩に妖精が居るかどうかについて尋ねると、その問い掛けを

聞いた先輩及び面々がどよっ!?とどよめき、先輩も戸惑った様子でマサツグに

返事をしては居ると答える。そしてその問い掛けに対してさすが先輩なのか

徐々に冷静さを取り戻し始め、妖精を見つけるのは難しいとスキルの有無を

踏まえてマサツグに説明する。そしてそれを聞いたマサツグが納得した様子で

頷き、思い出した様に先程のマサツグにしか見えない依頼書を手に取って先輩に

見えるかどうかについて尋ねると、先輩は眼鏡越しに目を細めてはマサツグが

差し出した依頼書を凝視し始める。


「ッ!……ッ!!……何ですか?それ?…

確かに何か薄っすらと見えるのですが?…」


「……やっぱり…一応依頼書みたいなのですが…

その依頼主らしき人物が丁度お姉さんの左肩に…」


「え?…嘘?…妖精?…」


__クルッ…クルッ…


マサツグが差し出した依頼書に顔を近づけては眉間にしわを寄せながら凝視し、

それでもハッキリとは見えないのかマサツグに物を尋ねて眼鏡をクイっと

掛け直す。その答えを聞いてマサツグが更なる確信を得た所で自分が見えている

光景を先輩に説明しては依頼書の主が先輩の肩の上に乗っていると説明する。

そしてマサツグが見たその依頼主の姿はと言うと、髪は若葉を思わせる黄緑の

ツインテールに服装は花をモチーフにしたワンピースと妖精らしい姿をしており、

表情は何処と無く某召喚騎士のゲームに出て来る妖精の顔立ちによく似ている。

そしてその妖精の背中からはトンボの様な羽が生えており、身長は大体20cm

程度しかない。そんな若干大きな妖精がお姉さんの左肩の上で滞空をしている

のだが、羽根音はしないのかお姉さんは全く気が付いていない様子で戸惑い、

自身の辺りを見渡し始める。


「…うぅ~ん……やっぱり見えないですね?…」


__ハァ…


「…でももしそれが本当なのでしたら色々とマスターに報告しないといけないですし…

それにその依頼書の内容も気になりますね……一応どの様に書かれているか

教えて貰っても?…」


先輩がマサツグの言葉をきっかけに自身の周りを見渡して確認するも、やはり妖精の

姿は見えないらしく何度か目の前にその妖精の姿を捉えられるよう構えるが、

そのまま素通りをしてしまうと妖精は諦めた様子で小さく溜息を吐く。それでも

先輩はマサツグの言葉を信じたのか、妖精がギルドに居る事を報告しないと!と

若干慌てた表情を見せ出来るだけ情報を集めようとマサツグだけが見えている

依頼書の内容について尋ねると、マサツグが遅れ気味に返事をしては

今の段階で分かる事を先輩に話し始める。


「え?…あぁ…はいはい…えぇ~っと…

一応依頼の件名と必要レベル…依頼内容は短い…と思います…

で、一応報酬も下に…でもこれも何を書いて有るのか全くで…」


「なるほどなるほど…

有難う御座います!…他には気になる点は?…」


「…多分苦労して書いたんじゃないですかね?……

依頼書に似せて有りますけど…

やっぱりよく見ると正規の手続きを踏んでないのが良く分かりますよ?…」


「あははは…」


マサツグは妖精が書いたと思われる依頼書を手に…今の段階で分かる事を先輩に

口頭で伝え始める。依頼の件名・クエストの適正レベル・依頼内容・そして報酬…

でれも妖精の言葉で書かれているのか分からないとマサツグが答えてはギルドの

依頼書に似せて書いて有ると先輩に伝え、その内容を聞いた先輩が頷きながら

聞くと手元に持っていた台帳の裏に細かくメモを取り始める。そしてメモを

取り終え少し悩んだ様子で何か先輩が思い付いたのか、その場でハッと気が付いた

反応を見せると先輩は思い出した物の名前を口にする。


「…ッ!…そう言えば確か…こう言う時の為に何か有った筈!…

うぅ~ん……ッ!…そうだわ!…映写機!!」


「……映写機?…」


「…はぁ~…

貴方、本当にここのスタッフなの?

魔法の映写機の事よ。」


「あっ!…あぁ~あぁ~!!…

あの埃を被った四角い台ですね!!

あれ、そんな代物だったんですね!!」


「……はあぁ~…」


先輩の言葉にマサツグと受付嬢が同じ反応で復唱しては首を傾げ、その様子に先輩は

受付嬢を見て呆れた様子で溜息を一つ吐いては、ギルドの備品を把握していない

受付嬢に如何言うものかを説明する。そしてその説明を聞いて思い出したのか

受付嬢が両手で臼と杵を作るとポンと叩いて思い出し、そんな物が有ったと

笑い始めて見せると、その反応に先輩は頭を抱えた様子でもう一回溜息を吐く。

そんな先輩の様子にマサツグが苦労してるんだなぁ…と心の中で考えては話を聞いて

いると、先輩は受付嬢に手伝うよう指示を出し始める。


「…とにかく!…ちょっと手伝って!…アレを一人だ運ぶの大変だから!!…

マサツグさん…?でしたっけ?…ちょっと待っててくださいね?」


「…では私も手伝って来ますので少々お待ちを~!…では!…」


__タッタッタッタッタッ…


先輩が運ぶのを手伝う様に受付嬢へ指示を出すと、マサツグに申し訳なさそうな

表情で手を合わせてはその場で待つよう声を掛ける。そしてカウンターの奥へと

先輩が足早に駆けて行くと今度は受付嬢がマサツグにまた後でと声を掛けては

先輩の後を追ってカウンターの奥へと姿を隠して行き、妖精と二人だけにされて

その場で待つ事になる。その間マサツグは妖精とどう接すれば良いのか分からず

困惑した様子で二人の帰りを待っていると、大体五分位でその「映写機」を

見つけて来たのか二人が重そうに…頭から埃を被った様子で出て来る。


__ガッシャ!ガッシャ!…ガッシャ!ガッシャ!…ガシャン!!…


「ケホッ!…ケホッ!…

お…おまたせ!…いたしました!…」


「ゲホッ!!…ゴホッ!!…

やっぱ煙たいですね…

あそこは一回大掃除した方が良いですよ?…」


「貴方が言わないでくれるかしら?…」


二人揃って頭から埃を被り…まるで将棋盤の様な古い木製の重そうな四角い台を

受付カウンターの上に置くと、先輩が咳き込みながらマサツグに待たせたと

声を掛けては、受付嬢も咳き込みながら倉庫の掃除を先輩に提案する。しかし

その提案を聞いた先輩が受付嬢に文句を言いながら振り返ると怒った表情を

して見せ、その表情に受付嬢もヤバッ!とばつの悪そうな表情を見せては

そっぽを向く。そんな様子にマサツグが苦笑いしながらも受付カウンターの方へと

歩いて行くと、その奇妙な依頼書が気になるのか他の冒険者の注目も集まり始める。


__ワイワイ…ガヤガヤ…パッパッ!…パッ!…


「…では電源を入れますね?」


__パチンッ!…パアアアァァァ…


マサツグや見物の冒険者達が受付カウンターに集まって来る中、先輩と受付嬢の

二人は自身が被っていた埃を払い、映写機の埃も払ってマサツグに電源を入れると

話すとその映写機の側面に有るスイッチを押す。すると四角い映写機の上部が

光りを放ち始めると同時に魔法陣を描き、その魔法陣が宙に浮かび全員の目に

映るよう高度を一定に保ち始め、それを見て先輩が軽く頷くとマサツグに

指示をする。


「これでよし!…さぁマサツグさん!…

先程の依頼書をこの光っている面に置いてみて下さい。」


「…ここでいいのか?…」


「はい!…後は…」


__フワアァ!…パアアアァァァ…


マサツグは先輩の指示を聞いてその件の依頼書を映写機の光を放つ上面に置いて

見せ、正しいかどうかと質問をすると先輩は笑顔で大丈夫と答える。そして後は

見守るだけと言った様子で光る上面に置いたその依頼書をジッと見詰めていると、

一分とも経たない内にその依頼書が独りでに宙に浮いては先に出て来た魔法陣の

中へと吸い込まれるよう消えて行く。その様子を初めて見たと言った様子の

マサツグや他の冒険者、更には受付嬢とその光る魔法陣の様子を見詰めていると、

魔法陣は依頼書の翻訳を終えたのかその依頼書に掛かれていた文字をマサツグ達にも

読める文字で投影し始める。


__パアアアァァァ…パシュゥゥゥ!!…カカカカカカカ!!…ヴヴン!!…


 -------------------------------------------------------------------------------------

                 「依頼書」

                依頼レベル25

            魔法の花の蜜を集めてください!!

                報酬 フェアリー

 ------------------------------------------------------------------------------------- 

__どよっ!?…


「ッ!?……え?…」


魔法陣から光のビーム的な物が放たれては空中に光の文字を描き出し、その依頼書に

掛かれてあった文字の翻訳文を書き出すとその内容に見ていた者一同が騒然とする!

何故ならそこに書いて有ったのは聞いた事の無いアイテム…と言うよりは該当する

アイテムの幅が大き過ぎると言った様子で書かれた依頼内容に、採取クエストに

しては意外と必要レベルが高い事…そして何より一同を驚かせた内容は勿論最後の

報酬欄…フェアリーと書かれている事であった。その依頼内容を見てマサツグを

含むギルド内の大半の冒険者が戸惑った様子で見詰め、先輩と受付嬢もその内容を

目にしては戸惑いの言葉しか出て来ない。


「報酬がフェアリー!?…如何言う事なの?…」


「先輩!…何やら事件の匂いがします!!」


「と…とにかく!この事をギルドマスターに!!…

リン!!後は任せたわ!!」


「えぇ~!?ちょ、ちょっとせんぱ~い!!…待ってください!!…

私一人に任せないで下さ~い!!!」


先輩も最後の報酬の内容…フェアリーに戸惑い若干後ろに仰け反って驚き、

受付嬢も同じ様に依頼書を見ては顎に手を当てまるで探偵の様に悩み始める。

そしてこの依頼内容に異変を感じた先輩がこの依頼書の内容をギルドマスターに

伝えに行こうとする際、この場の騒動を受付嬢に任せようとするだが受付嬢が

先輩の手を掴むと対処出来ないと嘆き始める。そんな受付嬢に先輩が少し慌てた

様子を見せて居る中、マサツグが依頼書を見てただ困惑して居るとその依頼書を

書いた本人らしき妖精が突如マサツグの視界に現れてはマサツグにお願いを

し始める。


__シュウゥゥン!…


「人間さん!!お願いなのね!!!」


「うわああああ!!!」


__どよっ!…


軽やかに羽根音を鳴らし、突如マサツグの目の前に飛んで来た妖精が必死の表情で

依頼を受けるようお願いをすると、突然視界に現れた妖精を見てマサツグが驚いては

後ろに仰け反って周りの冒険者を驚かせる。突如目の前にいた奴が仰け反り始めたと

驚いた様子で周りの冒険者達がマサツグを見詰める中、妖精はマサツグの周りを

飛び回り、そのマサツグの驚く様子に気が付いた先輩と受付嬢が心配をし始める。


「ッ!?…だ…大丈夫ですか!?…」


「だ…大丈夫…」


「お願いなのね!お願いなのね!!お願いなのね~~!!!」


「ッ!!…えぇ~い!!」


受付嬢が仰け反るマサツグを心配し、マサツグが大丈夫と返事をして体を起こそうと

するのだが、妖精がまたマサツグに詰め寄る様に飛んで来てはまたマサツグの周りを

飛び回り、お願いの言葉を連呼し始める。その際マサツグには妖精の声が五月蠅く

聞こえ、更に軽やかな羽根音までしっかりと聞こえて居るのに周りの冒険者達は

全く気付く素振りを見せない。そんな様子にマサツグが違和感を覚える中、恐らく

本人に取ってもそれだけ必死だと言う事なのだろうが…

周りでブンブン飛び回られる事にマサツグが若干の苛立ちを覚えると妖精が飛んで

来るであろうルートを先回りするよう手を伸ばして妖精を捕まえようとする。

そして案の定マサツグの読みは当たったのか妖精がマサツグの手に吸い込まれる様に

飛んで来てはガッシ!とマサツグに捕まってしまう。


__バッ!…ガッシ!!…


「むぎゅッ!!

な…何するのね!?」


「ちょっと黙っていろ!…

今ここでお前と喋れるのはどうやら俺だけなんだ。

ここで堂々喋ったら俺が変人に見られるだろう!」


一応誰にもバレないよう飛び回っていた妖精を捕まえたつもりで居るのだが、

やはりそこはギルド…マサツグより高ランクの冒険者がマサツグの不審な行動を

見ては何かを察した様子で見守り、マサツグに捕まった妖精はと言うと捕まるなり

マサツグに対して文句を言っては両手を子供の様に振り回す!その様子にマサツグが

呆れた様子で逆に文句を言い返し、この場で話は聞けないと更に妖精へ文句を言うと

その言葉を聞いてか妖精はマサツグにある事を話し始める。


「…じゃあ、

私の話を聞いてくれるなのね?…」


「……え?…そりゃまぁ…その方が話を聞きやすい…」


「わかったのね!…」


__パアアアァァァ!!……


マサツグの文句に妖精は俯き、その文句に対して改善をすれば話を

聞いてくれるのか?と訴え掛けるようマサツグに捕まりながら話すと、マサツグは

その妖精からの予想外の答えに戸惑ってしまいがらも妖精の質問を肯定する。

そのマサツグの返事を聞いてか妖精は分かったと答え、光りを纏い始めると

その光りは他の者達にも見えているのか、マサツグの周りの冒険者や受付嬢に

先輩と突如光を放ち始めたマサツグに戸惑った様子を見せては質問をする。


「ちょっ!…ちょっと!!

一体如何したのですか!?」


「ま…まぶし!!…」


__どよどよ!…


「女王様!…ゴメンなさいなのね!!」


マサツグも突然の光に怯んでは妖精から手を離し、手で目を守りながら

何が起きているのかと戸惑って居ると、その受付嬢の質問に答える事が

出来ずにただ眩しがる。他の冒険者達も突然の光に目を奪われ戸惑う

ばかりでどよめき、ギルド内が騒然とし始めていると妖精は一人女王様に

謝罪の言葉を口にしては光りを振り払う!そうして光が収まりマサツグが

受付カウンターの方に目をやるとそこには先ほどの妖精が無い胸を張って

立っており、マサツグに対してドヤ顔を決めてはこう答える。


「…ふふん!…どう?

これで文句無いのね?」


「ッ!!…文句無い云々の前に!…

一体何をし…」


「お…お取込み中の所すいません!……

今ここに居るのってもしかして…

先程マサツグさんが言っていた…妖精さんですか?…」


「そうですけど、それが………ッ!?…」


マサツグが妖精に対して文句を言おうとした瞬間…その話に割って入るよう先輩が

マサツグに声を掛けては酷く動揺…と言うよりは興奮気味?…にマサツグに

尋ねるよう受付カウンターに立って居る妖精を指差してはマサツグに確認を

取り始め、その問い掛けにマサツグは何も考えずに肯定をして話を進めようと

すると、先輩が妖精の姿を捉えて居る事に遅れて気が付く。先輩だけではない…

受付嬢に他の冒険者達とカウンターの上に立って居る羽の生えたフィギュアが

見えると言った様子で戸惑い凝視し、その姿をマジマジと観察していると先輩が

一際目を輝かせては手の持っていた台帳でその妖精の姿をスケッチし始め、

そんな様子の最中…妖精はマサツグを見詰めてこう話を切り出す。


「さぁ!…私の話を聞いて貰うのね!!」


__シャッ!シャベッタアアアァァァァァァァァァ!!!!!…


「凄い!!…これが妖精!?…初めて見ました!!!…」


「マサツグさん!…実はファンシー属性持ちだったんですか!?」


妖精が自身の話を聞いて貰おうとマサツグに話し掛けると冒険者一同が何処かで

見た事の有る反応を見せては改めて目の前の妖精に驚愕し始める。先輩はもはや

ギルドマスターに報告する事すら忘れた様子で初めて見る妖精のスケッチに没頭し、

受付嬢は妖精が見える事にマサツグをファンシー扱いし始める。もはやその場が

カオス空間になり、マサツグがその状況に困惑し思考停止でその場に固まって

居ると、妖精はマサツグの名前を知った様子で呼び捨てし始める。


「へぇ…貴方マサツグって言うのね!

さあ、マサツグ!…の依頼を聞いて貰うのね!!」


__カチ~~~ン!!…


「……?…マサツグ?…

お~~い!!マサツグ~~!!!返事するのね~~!!!…」


__トッ…ヒュゥゥゥン!…オオオオオォォォォォ!!!…


妖精が話を聞いて貰おうとマサツグの名前を呼ぶがマサツグは返事をせず…

ただ困惑した表情のまま硬直してはその場で立ち尽くしていると、妖精は

不思議そうな表情を見せてはマサツグの再度名前を呼び、マサツグの前へと

飛んで行き始める。目の前で飛んで見せる妖精の姿に冒険者達が更に

興奮した様子で歓声を上げ、妖精はそんなギャラリーの様子など気にしないと

言った様子でマサツグの周りを飛び回り始める!


__ヒュゥゥゥン!…


「マサツグ~~!!!返事するのね~~!!!

約束を守るのね~~!!!マサツグ~~~!!!!

マ~サ~ツ~グ~!!!…」


__……カチンッ!…


「だあああぁぁぁぁぁ!!!

えぇい!…周りでブンブン飛ぶな!!鬱陶しい!!!

話は聞いてやるから落ち着かんか!!!」


妖精がマサツグの周りを飛び回っては何度も呼び捨てでマサツグの名前を呼び、

返事を求めたり姿を見せた時の約束を守るよう耳元で文句を言ったりと

色々していると、マサツグもその状態等々に我慢の限界へ達したのか吠えては

妖精に文句を言い始める!そして落ち着くよう妖精を指差し話を聞くと文句

交じりに怒鳴りつけると妖精はそのマサツグの迫力に押されてかカウンターの

方へと静かに移動しては着地し、その場で正座するとマサツグに謝り始める。


「ご…ごめんなさいなのね…ようやく気付いて貰えた事が嬉しくてつい…

で…でも、分かって欲しいのね!…

今まで誰も依頼書に気が付いてくれない上に…

私の事が見える人にも合えなかったから…

それに…」


「……それに?…」


「…ッ!…じょ、女王様の命が危険で危ないのね!!」


「……え?…」


妖精はマサツグに気付いて貰えた事が嬉しかったのかその事を口にしては

謝罪をし始め、その様子にマサツグが溜息を吐いていると気が付けば

周りの冒険者達も静かになっていた。妖精の話を聞こうと思ったのか…

それともマサツグの怒声が聞いたのか…どちらにしても静かになった所で

マサツグが妖精の話に耳を傾け直すと、その妖精の口から女王様の単語が

出て来ては、命が危ないと言われる!それを聞いてマサツグが疑問の表情を

浮かべているとその妖精は切羽詰まった表情でマサツグを見詰め、その様子に

マサツグは更に戸惑い始めるのであった。

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