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-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-

-第二章十節 RTA?と火竜の巣と火炎の吐息-

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マサツグが親玉ゴブリンを倒してから暫く…ゴブリン達との戦闘で負った

傷を癒しながらその場で休憩していると徐々にマサツグが殺意の衝動から

解放され始める。まるで自分では無い何者かに憑依されて居た様な感覚を

覚えるマサツグがハッ!とした様子を辺りを見渡すと、そこに有るのは

自分が倒して来たであろうゴブリン達が床に転がって居る姿で…地底湖に

浮いて居たりとただただ辺りが殺伐とした何とも恐ろしい!…

そんな火サスも裸足で逃げ出すレベルの殺人?現場が目に映るのであった。


「はぁ!…はぁ!……い、今だ息が切れて居るんだが?…

てか…うへぇ……かなり居たとは理解していたがここまでとは……」


__死屍累々~……


「……一…二…三……結構居る?…

まぁ…あんだけの大群で襲われたらこうなるか?…」


回復薬を片手に今目の前で倒れているゴブリンの数を数えただけでも

軽く30は有るだろうか?…ただでさえ血色も悪ければ気色の悪い顔を

していると言うのに、更にマサツグの手によって歪にゆがめられては

何も言わないまま洞窟の通路一杯に倒れている。余程ゴブリン達には

マサツグの一撃が辛かったのか有らぬ方向に腕や足が曲がっており、

いつもの様に倒し終えて光に包まれてその姿が消えて行くと、アイテムを

ドロップし始める。そのドロップアイテムの中には[魚の切り身]と言う

謎の…有る魚を連想させる物も有ったり、マサツグがそれらのアイテムを

手に取って回収し苦笑いをしていると、マサツグの耳にある通知を知らせる

効果音が入って来る。


__ピロリ~ン♪…ッ!…


[マサツグは拳闘術Lv.5を習得しました。]


「ッ!…え?…拳闘?…

…まぁ…さっき拳で戦ってたから間違いでは無いんだが…

え?…Lv.…5?…いきなり?……」


マサツグが通知の音に反応して顔を上げると目の前にはスキル獲得の通知…

それも先程殴る蹴るの戦いをしていたお陰かレベルもいきなり「5」と普通では

ちょっと考えられない状態で獲得すると、マサツグもそのスキルレベルに

戸惑いを覚える!本来いきなりLv.5で獲得するとなると自分よりレベルが高い

相手に最も不得意とする戦い方で勝利すると言った感じの難易度なのだが…

マサツグ自身肉弾戦はあまり不得意と言う訳では無く寧ろ得意と言うか…

とにかく獲得レベルが高い事に戸惑いを覚えていると、Lv.5を獲得するのに

通常どれ位の時間を消費するのだろうかと考えてしまう。


{…実際これ獲得するのって結構時間が掛かる筈だよな?……

具体的って言われたら辛いけど……でもまぁ…}


__チラッ……死屍累々~……


{……こんだけ倒せばこのレベルに到達するって事なのかもしれないな?…

逆にこれを利用してスキル獲得やレベル上げ?…

キツイけど多分これが一番速いと思います……みたいなRTAが出来るって

感じかね?…その度にこれを目にするのは色々と来るものが有ると思うが…}


実際に獲得するに当たってその時間を思わず考えたりする際、その獲得した

経緯を改めて確認するよう洞窟の通路にチラッと目を向けると、今だゴブリン達が

倒れて死屍累々と…見るに堪えない光景が広がっていた。それらを改めて

確認したマサツグがRTAが出来る?…みたいな事を考えながらも、ドロップ品の

回収を粗方終え…HPとTPの回復も済ませるとまた洞窟の奥に向かい歩き出す

のだが、その道中何やら嫌な予感を感じさせる!…


__コッ…コッ…コッ…コッ…ヒュオオオォォォォ!…


「ッ!?…クッサ!!……

このゲーム!…鼻が利き難いのにそれでもハッキリと分かるこの臭いは!?…

……焦げ臭い?…焦げ臭い様な物この先に有るのか?…とにかく先を…ッ!?…」


洞窟の奥に向かい辺りを警戒しながら歩き続けていると、突如として先に進む

道から風が吹いて来る。この風は一体何処から来ているのか?…そんな事を

考えようとした次の瞬間!…マサツグの鼻孔を何とも言えない焦げ臭さが駆け

抜けて行くとその臭いにマサツグが驚き、反射的に鼻を押さえてその臭いの

正体は何か?と悩みながら先に進み出すと、そのマサツグが行く洞窟の先には

件の竜にやられたのか焼け焦げた服やカバンがチラホラと散らばっていた。


__ヒュオオオォォォォ!……バタバタバタバタ…


「……明らかにこれ…焼かれてるよな?…どれ?…」


__ゴソゴソ…ボロォ…


「……如何やら盛大にBBQをされたみたいだな?…

確かにヤバそう…ッ!?…うわぁ!…」


マサツグが見つけた服やカバンは岩場に引っ掛かっては奥から吹いて来る風に

吹かれてはためいており、その光景を目にしたマサツグが違和感を覚えると

徐にその岩場に引っ掛かっているカバンの方へ歩いては手に取って中身を

確かめ始める。中身はやはり火竜に焼かれたのか黒く焦げては灰になっており、

そのカバンの状態から持ち主はトンデモナイ事になっていると想像していると、

カバンを元有った場所へと置いて置く。そして改めて進み出すとその答えは

曲がり角を曲がった途端に!…恐らくは冒険者で有ろう遺体がマサツグの目の

前に転がって居た。


「……まる焼け…

辛うじて人の形してるけど元はどんな人かはもう分からんな?…

やっぱり火竜が居るって事か……」


__ヒュオオオォォォォ!…


「……ッ!!…」


その遺体は黒く焼け焦げてただ洞窟の壁にもたれ掛かる様に息を引き取っており、

恐らく先程の服やカバンはこの焼け焦げた人の持ち物であろう…服を着て居ない

様子から察すると、マサツグはその火竜が近くに居る事を認識する。ただ洞窟の

先を見詰めるようマサツグが立ち尽くして居ると、威圧する様にその先の道から

風が吹き…細心の注意を払いつつその先の道を歩き出すと、あの黒焦げの遺体を

皮切りに色々な物を見つけ始める。先程の人同様焼けたカバンにガラス瓶…

被害は冒険者だけでは無いのかゴブリンの姿も!…更に奥へ行けば行く程、

焼け焦げた人の遺体が見つかり、徐々にその火力が増して行く様に…骨となった

人の姿まで見つかり始める!


__コッ…コッ…コッ…コッ……カランッ……


「……遂には骨か…一体どんな奴が住んでるってんだ!?…

人を骨にする程の熱量を持つブレスって!…自分も焼けたりしないのか?…」


ある者は壁にもたれ掛かり…またあるものは床に倒れたり…中には苦しんで

死んだ様子等…白骨死体のその最後の様子は某プレイヤーの心を折るダーク

ファンタジーゲームの様な光景に見える。何故そのポージングで固まって

居るのか?…その理由は恐らく付けていた装備で有ろう…装備の金属が

溶けてはその白骨死体に流れ掛かり、上手い具合に関節等に流れてそれが

接着剤となったのであろうと思われる…とにかくそこまで行く熱量を口から

吐き出す火竜に、マサツグは自分が焼けないのか?と思わず疑問を口に

するのだがその場に居る白骨死体は答えず…ただ辺りを焦げ臭いにおいが

充満する中先を目指しマサツグが進み出すと、遂にその場所に辿り着いたのか

妙に開けた場所に辿り着く。


__コッ…コッ…コッ…コッ……オオオォォォ!…


「ッ!…妙に開けた場所に辿り着いたなぁ……ってかここが最深部っぽいな?…

他に道は無いし壁際は地底湖だし……何なら中央にはボス戦とばかりに円形状の

足場が有るし!…そして中央にはいかにも感が有る妙な窪地!!……

完全にボスっぽいな?…」


---------------------------------------------------------------------------------

     「ホルンズヒルダンジョン・龍の血脈・火竜の巣」

  ホルンズヒルダンジョンの最深部…曲がりくねった洞窟の先にある

  大空洞には火竜が住んでいると言われており、中央の広場の窪地は

  竜の巣と言われている。更にその場所で取れる鉱石は希少な物

  ばかりと噂されており、それに目が眩んだ冒険者は何も知らずに

  入っては皆火竜の吐息に焼かれて灰燼に消えて行ったと言う…

  そうして焼かれた冒険者の亡骸は今だダンジョンに眠って居ると

  言われており、死して尚も苦悩している様な…そんな後悔している

  姿で残っていると言われている。

 ---------------------------------------------------------------------------------

モジャ男の工房から時間にして約2時間…空洞音を耳にしつつマサツグが

遂に迷わず最深部に到着すると、例の如く目の前に最深部に辿り着いたと

言う案内が表示される。軽く辺りを見渡すとそこはまるで大空洞…洞窟の

中なので当たり前ではあるのだが…ダンジョンボスが居るとばかりに

地下にしてはだだっ広く、壁際には炎焼対策の地底湖が設置されていて、

深いのか「ぴちぴち」が泳いでいる。中央には直径15~16mの円形状の

盆地が用意され、更にその中央には巣なのであろうか窪地が有り…

如何にも何かが出て来そうな気を感じてはマサツグが思った事を口にし

戸惑って居ると、その件の火竜…ダンジョンボスの羽音が何処からとも

無く聞こえて来る!


__……ブォン!!…ブォン!!…


「ッ!?…ヤッバ!!…帰って来た!?…えぇ~っと!!!…

…ッ!!…ウホッ!…近くに良い岩場!!…」


__バッ!!……チラッ…ッ!?…


マサツグは突如聞こえて来た羽根音に吃驚すると件の火竜が帰って来たと

戸惑い出し、慌てながらもまずは隠れる場所を探し始めると近くにあった

岩場を見つけてはそこへ身を隠す。その際バ〇ライカが聞こえて来そうな

セリフを口にするのだが、本人は至って真面目で!…何なら気が動転し

つつも岩場の影からその羽根音の正体を確認し始めると、そこに飛来して

来たのはダンジョンボスであろう火竜の姿であり!…お腹が空いていたのか

口には仕留めて来たばかりと言った獲物を咥えていた。そして自分の巣へと

帰って来た火竜は案の定その窪地に着地する。


__ブォン!!…ブォン!!…ドドォン!!……


「…うっひぃ!……あれがこのダンジョンのボスかぁ!…

…って、あん?…意外に小さい?…

何ならあのスケルトン達を作り出した本人様には見えないんだが?…

まぁ良い…鑑定アプレェィザァル!…」


__ピピピ!…ヴウン!…

 -----------------------------------------------------------------------

 「レッサーワイバーン」  

 Lv.35    ダンジョンBOSS

   HP 35000 ATK 340    DEF 260

        MATK   0   MDEF   0


 SKILL

 飛翔 Lv.14 火炎の息 Lv.12 激昂 Lv.10 噛み付き Lv.9
 -----------------------------------------------------------------------


「案の定火ぃ吹くってか!?……だとすれば接近戦が吉と言った所か…」


__チラッ……


赤黒いワイバーンの大きさは本体だけ約2~3m、羽を広げて5mと言った所か?…

岩陰からそのワイバーンの姿を確認しては面倒臭そうな表情をし、予想より

ワイバーンが小さい事に若干困惑して居ると、マサツグは疑問を感じつつも

まずは安定の初手から入り始める。バレない様に鑑定アプレェィザァル…そしてやはりと

言った具合に火を吹く事を理解しては更に面倒臭そうな表情を見せ、そこから

ワイバーンの動きに注意しつつ遠巻きから様子を見ていると、自分の巣に

戻って来たワイバーンは漸く落ち着いて食べれるとばかりに捕まえて来た

獲物バッファローを食べ出し、辺りに生々しい音を響かせてはマサツグに気付く素振りを

見せないで居た。


__バキィ!…ボリッ!…バリッ!…


「……おうおう…骨ごと行くか…食べ難くないのかね?…」


__ザッ…バッ!…スゥ~…


「…にしてもこの世界ゲームに来て初めての翼竜だな…

とにかく今はまだ気付かれていないし…静かに近付けば!…」


骨ごと食べているのか噛み砕く音が若干反響しながら聞こえて来るとその様子に

マサツグは戸惑い、思わず関係の無い疑問を口にしながら倒す為に行動を開始し

始めると岩場の影から影へと移動する。勿論スニーキング重視で中腰での移動、

相手の裏に回るよう素早く動いては岩場の影から次の岩場を探すのだが、間近で

ワイバーンの姿を目にするとこのゲームのリアルさ…臨場感に改めて驚きを

覚える。そうしてこの世界ゲームに来て初のワイバーンの姿に感動を覚えつつ、

静かな行動を心掛けているつもりだったのだが…ワイバーンの様子ばかりに

気が取られては足元がお留守になり…


__コッ…カラン!カラァン!…


「ッ!?…しま!!…」


自身の足元に有った動物の骨…恐らくは今まで食べて来た獲物の骨を

マサツグが蹴飛ばしてしまうと、大空洞内に反響するよう響き渡る!

どんな小さな音でもすかさず大きな音になってしまう!…

そんなステージギミックにしたのかマサツグがヤベッ!と言った表情を

見せて居ると、ワイバーンもその音に反応し!…振り返って音の元に

居るマサツグを見つけると、途端に羽を広げては敵意を見せて咆哮を挙げる!


__ッ!?…ゴギャアアアァァァァァス!!!…スゥ!!…


「ヤッベ!!…見つかった!!…とは言え退く訳には!!…」


__ゴバアアァァァ!!!…


「ッ!?…だあぁぁ!!…ちちちちち!!!…」


マサツグが見つかった事に慌てて居るとその間にワイバーンはその場で

息を大きく吸い出し、マサツグも突っ込むかどうかで判断が遅れていると、

鑑定に会った通りにマサツグに向かって火炎の息を吐き出して来る!

真っ直ぐマサツグに向かい!…まだワイバーンとの距離は大体5~6m有ると

行った所だったのだが、余裕でマサツグの居る場所までブレスが届いて

くると、マサツグは慌てて元居た岩場の影へと引き返す!その際そこそこ

ブレスに勢いが有ったのかマサツグは軽く炙られるとダメージを受けるのだが、

まだ道中で見たあのスケルトン達の様にはならないのか慌てながら岩場の陰で

火を消して居た!


「ちちちち!!…ッ~~~!!…アァ~熱!!…

まだ距離が有ったってのに!…まさかここまで届くのかよ!!…

…まぁ、何処かの一狩り行こうぜ!のゲーム宜しく火の玉で

飛んで来なかっただけマシなんだが…こっから如何するかね?…」


__ゴギャアアアァァァァァス!!!…スゥ!!…ゴバアアァァァ!!!…


「どわあぁ!!……完全に警戒されてるな!!…さて本当に如何する!?…

このままだとマサツグさん蒸し焼きにされて上手に焼けました~♪

…何て事になる!!…何か打開策は!!……ッ!…」


自身に点いた火を慌てて払い!…ワイバーンのブレスの射程距離に驚いては、

某有名火竜の様なブレスが飛んで来なかっただけ有難いと思うのだが…

依然ピンチなのには変わらず様子を伺おうと岩場の影から顔を出そうとすると、

ワイバーンはキッチリマサツグを警戒しているのかマサツグが顔を出し次第、

ブレスを吐いて近づけさせようとはしない!そしてそれは顔を出そうとした

マサツグもキッチリ理解したのか、目の前でブレスを吐かれた事に慌てては

岩場の陰に隠れ…最悪の展開を考えつつも何とか打開策は無いのかと近くに

使える物が有るかどうかを見渡し始めると、ふとある物が目に付く。


__ぴちょ~ん……バシャッ!!…


「ッ!?…あれは!…

…初見殺しのぴちぴち!!…は良いとして如何したものか?……

今アレに構っている暇は無い!…これでまたあいつ等が来たら面倒!……

…ッ!?…いや待てよ?…」


マサツグが見つけたのはステージ外周を囲む様に設置されてある地底湖で、

その地底湖をスイスイと泳いでは湖面を跳ねるぴちぴちの姿であった。

それを見たマサツグはあのゴブリン達の事を思い出すと、これ以上の面倒は

御免とばかりに跳ねるぴちぴちを無視しようとするのだが…

そのゴブリン達の事を思い出した事でふと気が付いた表情を見せると、

またこのサマーオーシャンの地でもあるマサツグの奇策が生まれて来る。

そしてそれを確認するようワイバーンの動きに警戒しつつ、ある事を確認し

始めるとマサツグは一瞬だけ岩場の陰から顔を出す!


__……チラッ?…ゴバアアァァァ!!!…


マサツグが岩場から顔を出すと案の定ワイバーンはマサツグに向かい火を噴く!…


「ぎゃああぁぁぁぁ!!!

すんませんでしたあぁぁぁ!!!…なんちゃって!!」


__バッ!!…ッ!?…


それを見たマサツグはワイバーンに理解出来るのか分からないまま謝り出すと、

また岩場の陰に隠れ…ブレスが落ち着いた所でまた直ぐに顔を出しワイバーンの

様子に目を向けると、そこにはマサツグが確認したかったある光景があった。

それはである!…さすがのワイバーンも連続でブレスを

吐く事は出来ないのか、一度ブレスを吐いた後息継ぎをし…マサツグがまた顔を

出した所でブレスを吐く!…それはまるでセンサートラップの様な動きなのだが

問題はそのタイムラグの方で、一度吐いてから息を吸いまた吐くまでの時間を

マサツグは見たかったのであった。もしこれでワイバーンが連続で息を吐けた

場合等考えていない突発的な作戦なのだが、マサツグの作戦は見事に功を奏し

そのワイバーンが息継ぎをする瞬間を目撃するのであった!


__……スゥ!!…ゴバアアァァァ!!!…


「ッ!!…息継ぎは約五秒!!…」


__スッ!!…ズシャアアアァァァ!!!……


「…ッ~~~!!……後はタイミングだな!!…さぁて!…」


マサツグがワイバーンの息継ぎからブレスまでの様子を目撃するとその息継ぎの

僅かな時間を数え始め、ブレスが自分に当たりそうになると慌てて岩場の陰に

引っ込みブレスをやり過ごす!するとワイバーンのブレスはマサツグの頭上を

掠める様に通り過ぎて行き、マサツグがその掠めて行ったブレスの様子に

ヒヤヒヤしながらも何とかワイバーンの息継ぎの時間を調べる事に成功すると、

岩場の陰に隠れて考えた作戦の次の行動に出始める!


__ジャコンッ!…ジャキッ!!…


「後は勇気が試されるだけ!!…タイミングを間違うなよぉ!…俺!!…

上手に焼かれるなら未だしもコゲ肉になるのは勘弁だぜぇ!…」


__グゴゴゴゴゴ!…


「……よし!!…」


マサツグが徐に大剣を抜き出すと次の岩場に向かい駆け出す体勢を整え、

独り言口にしながら自身に言い聞かせると飛び出すタイミングを伺い始める!

ワイバーンはワイバーンで余程神経質なのかマサツグが居る事で休まらないと

言った様子で、喉を鳴らして今だ警戒しており…恐らく獲物を横取りされると

誤解しているのか獲物を隠す様に仁王立ちして見せると幸いな事にその場から

動こうとはしない!ただ心配なのは本当にあの火炎ブレスだけで、マサツグが

意を決しフェイントを入れ始めると、それに反応してワイバーンがブレスを吐く!


__スッ……ッ!!…ゴバアアァァァ!!!………スゥ…


「ッ!?…今じゃあああぁぁぁぁ!!!!」


__バッ!!…タッタッタッタ!!…チラッ!…


マサツグがフェイントを入れた事でワイバーンのブレスが空振りに終わると、

マサツグの居た岩場は何回も熱された事でチリチリと焼けていた。そして

辺りにブレスの火が残留する中…またブレスが落ち着いた所でワイバーンが

息を吸い始める兆候を見せると、マサツグは吠える様に岩陰から飛び出して行く!

走る先は近くの地底湖!…狙うはぴちぴち!…何を思ってぴちぴちを狙うのかは

分からないものの、マサツグが地底湖に向かい走り出す際一旦ワイバーンの方に

振り返って様子を確かめると、ワイバーンは今だ息継ぎに時間を費やして居た。


__スウゥゥゥ!!…5…


「よし!!…思ったとおり!!…

さすがのワイバーン様も連続でブレスは吐けないみたいだな!!

この隙に!!……刹那!!」


__ヴウン!!…バッ!!…


五秒と言う短い時間の中で…マサツグは焦りながらも自身の考えが上手く

行っている事に安堵すると、思わず喜びの言葉を漏らし出す!自身の思惑が

スッと通るのは気持ちいいとばかりにワイバーンの様子を確かめていると、

更に保険のつもりか刹那を発動し…加速して地底湖まで辿り着いて見せると、

マサツグは着いたと同時に急ブレーキを掛けつつ大剣を振り被っては地底湖に

向かい雷撃刃を放つ!


「雷撃刃!!!」


__バシュウゥゥ!!!……ヴァチィィ!?!?……ぷかぁ~…4…


「ッ!!…いよっし!!…ここまでは順調!!!…

後はこいつ等を回収して後は!!…」


__ザバアァァ!!!…ザブザブ!!…3…ガッシ!!…2…


「逃げるんだよ~!!!」…1…


マサツグが放った雷撃刃がぴちぴちの居る地底湖の着弾すると、激しい衝撃音?…

それとも雷鳴音を立ててはぴちぴちを感電させ、湖面に腹を仰向けにした状態で

浮かんで来ると、マサツグは計算通りと言った様子で喜ぶ!そしてその浮かんで

来たぴちぴちを回収するよう地底湖に飛び込むと、慌てた様子で水を掻いては

感電したぴちぴちを数匹捕まえ…急いで陸に上がるとまた岩場の陰へと逃げ出し、

その間にワイバーンの方も息を吸い終えたのかマサツグの方に向かいブレスを

吐き出し始めると、スローモーションで迫って来るブレスの光景を目にする!


__スウウゥゥゥゥ!!…0…ゴバアアァァァァァァァ!!!…


「ッ!?…ウオオオオォォォォ!!!

間に合えぇぇぇぇえええ!!!」


__ザザアァ!!…ガッ!!…ダンッ!!…ズシャアアアァァァ!!!……


マサツグがカウントした時間通りにブレスが吐き出されるとこの時マサツグは

地底湖から上がって来た所で、それを見たマサツグが慌てて岩場に向かって

駆け出して行くと、最後の土壇場で滑り込む様にして岩場の陰へギリギリ避難する。

その際背中を叩き付ける様に岩場に背中を合わせると息を切らし、自身の心臓を

確かめるようぴちぴちを手に持った状態で確かめると、心臓はバクバクとかなり

緊張した様な心音を立てていた。


__…スッ…バクバクバクバク!!…


「ッ!!…はぁ!!…はぁ!!…あ、あぶねぇ~!!!…本当にあぶねぇ~!!…

今回ばかりは死んだかと!!…生きた心地がしなかったぞ!?…

…てか、はぁ!…はぁ!……も、もはや胸に手を当てなくても分かる位に

心音がヤバいな!!…はぁ!…はぁ!…スゥ~…ハァ~…とは言え…」


__ビチッ!…ビチビチッ!…


「これさえ有れば!…このステージだからこそ!!…

こっから逆転劇だ!!!」


先程の光景に対して死を覚悟した様子で言葉を漏らすと、もはや自身の胸に

手を当てなくとも分かるレベルに…心音が鳴っている事にマサツグは

息を切らしながらも戸惑っていると、とにかく息を整えようと軽く深呼吸を

し始める。そして今自身が持っているぴちぴちに視線を向けてはちゃんと

あの状況でも手放さなかった事を確認し、ぴちぴちはまだ雷撃刃の影響か

痙攣した様子で捕まり跳ねていると、マサツグはこれで逆転出来ると言った

様子で意気込んでは不敵な笑みを浮かべ始める。そしてそんなマサツグの

様子など知らないワイバーンは今だ岩場の陰に隠れるマサツグに注意を向け、

いつ出て来ても大丈夫な様にと息を吸った状態で待ち構えては、ただ自身の

取って来た獲物を護るよう…チョロチョロと動き回るマサツグに苛立ちを

覚えた様子で立ちはだかるのであった。


…さて?……例によってその頃…モジャ男とシロはと言うと…


「……ッ!!…何か聞こえたです?」


「んん?…いや…何も聞えた様な気はせんだったが?…」


もしかするとシロはワイバーンと戦っているマサツグの様子でも感じ取ったのか、

何か聞こえたと言うと辺りを見渡し…モジャ男はモジャ男で何も聞えなかったと

言うと、シロに解かれた知恵の輪を見てはシロ対策の知恵の輪を考案していた。

技術者としてのプライドか?…それともシロへの興味か?…ただ知恵の輪の構図を

考えては上の空でシロの言葉に返事をしていると、シロは一人マサツグが

心配なのか洞窟の先へ行こうとする。


「…嫌な予感がするのです!…やっぱりシロも!!…」


__タッタッタッタ!!…


「ッ!?…あぁ!!…イカンイカン!…お前さんまで行ったら大変な事になる!

入れ違いになったら面倒じゃぞ!?…心配なのは分かるが今は我慢せい!…」


シロがマサツグを追い駆けて洞窟の先に進もうとする際…その駆けて行く

足音に反応してモジャ男が慌てて止めると、重い腰を上げては一旦知恵の

輪の構図を考えるのを止めてシロを捕まえに行く。その際シロは素直に

モジャ男の言葉を聞き入れたのか不安そうな表情を見せながらも足を止め、

強引にとは言え一旦はシロを預かった身と、モジャ男もちゃんとその約束を

守るよう最悪の事態にならない様にシロへ言葉を掛けると、シロを思い

止まらせる。


「ッ!?…で、でも!!……ッ~~~~~!!!…」


「ッ!…あぁ~…そんな泣かんでも!……はぁ~…やれやれ…

この歳で子守りとは…何が起きるか分からんもんじゃ…」


ちゃんとモジャ男の言葉を聞いてシロは足を止めるのだが、マサツグが

心配なのには変わりなく…何とかモジャ男を説得して先に行こうと考えたのか、

律義に反論しようとするが先に不安が勝った様子で言葉より涙が溢れ出す。

そんな今にも泣き出しそうなシロの様子にモジャ男が吃驚した表情を見せると、

戸惑いながらもただただシロに歩み寄っては優しく抱き留めて宥め出し…

シロもシロでモジャ男のお腹に顔を埋めるとそのままグスグスと泣き始め、

その様子にモジャ男はまさかと言った様子で軽く溜息を吐くと自身の運命に

戸惑いを覚えるのであった。

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