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-第一章-スプリングフィールド王国編-
-第一章十節 マテリアルマニアと初の護衛の依頼と道具屋-
しおりを挟む「……さて、落ち着いたところで聞くけど…
何でそんなに毛皮の取れた場所を訪ねて来たんですかい?…
何かウサギに恨みでも?…」
「い、いえ…別にそんなピンポイントな恨みはありませんが……」
ギルド受付カウンターで受付嬢に迫られるも少ししてから互いが落ち着きを
取り戻し、マサツグが受付嬢の豹変具合に疑問を持つとその白熱した理由に
ついて尋ねると、受付嬢はマサツグの質問に戸惑い、その様子を周りで見ていた
他の冒険者も気になると言った様子で耳を澄ます。そのマサツグと受付嬢の話を
盗み聞きして居る様子に気が付いていない受付嬢は、少し恥ずかしそうにかつ
申し訳なさそうな表情をすると恐る恐るその理由を話し始める。
「……ッ…じ、実はですね?…わ、私…
私、マテリアルマニア(素材愛好家)なんです!…」
{…マテリアルマニア?…えらく変わった嗜好の持ち主だな?…}
「この仕事を始めて直ぐ位でしょうか?…
こう言う納品の依頼書に書いて有る素材が如何言う物なのかがまだ分からなくて…
簡単な物だったら分かったのですが…モンスターの素材となると全然で……
で、一度図鑑やその他の参考書を読んで勉強をして居たら次第に興味を持ち始めて…
それと同時にこうして業務を行って居ると毛皮や鉱石・モンスターの甲殻に鱗と
色々見ている内に気が付いたら…
素材に対して凄い愛着が湧く様になっちゃって!!…
特に良い物を見るとそれはもう!!!…
今では見ただけで産地・どの部位なのか等がわかるんです!!」
「そ…そうなんですか……」
受付嬢が自分の嗜好について説明し始めると、初めて聞く嗜好にマサツグが
不思議な表情をする。その説明をする受付嬢も最初のきっかけを恥ずかしそうに
話すのだが、自分の話をしている内に徐々にまたマテリアルフェチの熱が昂って
来たのかマサツグに詰め寄り、その素材に対する情熱を語り始める。そしてその
フェチが高じた特技を自信満々で語り、その受付嬢のテンションにマサツグが
また後ろに仰け反り始めると、後ろで盗み聞きをしていた冒険者の一人が席から
立ち上がっては受付カウンターに近付き、話し掛け始める。
「ほぉ…そいつはすごいな!…
じゃあこいつはどこで取れたもんだ?…」
__ゴトッ!…
「ッ!…う~ん…この透明度に色…カウンターに置いた時の音を察するに……
オータムクラウド山脈の紅葉化石洞窟中間道に在る鉱脈…マラカイト鉱石ですね!」
__どよ!?…
話を聞いてか茶々を入れに来た冒険者が懐から青い鉱石を取り出すと、
受付カウンターの上に置き「さぁ!当てて見ろ!」と言わんばかりのドヤ顔で
受付嬢にその鉱石が何処の何と言う鉱石かと尋ねると、受付嬢はその鉱石に顔を
近付ける事無くジッと見詰めて色や透き通り具合…更に冒険者がカウンターに
置いた時の音を思い出して、迷いが無い様子で冒険者の顔を見返し笑顔で答える。
そしてその答えを聞いた冒険者及びその周りの冒険者達が驚いた表情を見せると
一斉にどよめき立ち、答え合わせを待って居る様に受付嬢がその冒険者を見詰めて
居ると、その出題者の冒険者が戸惑いっぱなしの表情で答える。
「あ…当たりだ!…」
{ッ!?…ほんとに当てちゃってるし…
しかも、一切の迷いが無いし!?…}
「やった!!えへへ!!…
えっへん!!…どんなもんです!」
出題者が正解と戸惑いながらも受付嬢に答え、マサツグも隣で驚いた表情を見せて
受付嬢を見詰める。そして肝心の受付嬢はと言うと言い当たられた事に喜んで
見せてはぴょんぴょんと小刻みに飛んで見せ、マサツグの方に振り向いてドヤ顔で
胸を張り喜んで見せる。その様子にマサツグもただただ驚いて居ると受付嬢の
後ろから先輩らしき人物が荷物を抱えて出て来て、受付嬢を注意する。
「はいはい!…凄いのは分かったから!…よっと!!…
ちゃんと仕事しなさい?…この前みたいに受注ミスが無い様にね?…」
「ッ!…は、は~い…
えへへ…怒られちゃいました…」
先輩ギルド職員に注意を受けて受付嬢が慌てて振り返ると、その先輩職員に
頭を下げて了承する。するとその先輩職員は軽く溜息を吐いては少し呆れた様子で
笑みを浮かべ、またカウンターの奥へと姿を隠して行くと受付嬢はホッ…とした
様子で息を漏らす。そしてマサツグ達の方を振り向き、少し気まずそうに笑って
見せてその場の空気を誤魔化そうとする…そんな可愛らしい仕草をする中、
マサツグが釣られて苦笑いをすると脱線していた話を戻す。
「あははは…
と…とりあえずこれでクエスト達成出来るかな?…」
「え?…あ!はい…出来ますけど…良いんですか?…
これだけ良い物だと明らかに損をするし…
それに美品での追加報酬等も出ませんよ?…」
「別に良いよ。
持っていてもアイテム欄を圧迫するだけだし…
それにこれを使ってクラフトも出来ないし…そのまま達成で。」
「…ふふふ!…分かりました!
では少々お待ちください!…」
マサツグがウサギの毛皮の納品の話に戻すと、受付嬢が少し戸惑った様子で返事を
しては改めて大丈夫かどうかを確認する。マサツグが持って来たウサギの毛皮でも
納品は出来るがその分に見合った報酬は出ないと申し訳なさそうに話し、更に
追加の報酬が出ないとマサツグに話すのだが、マサツグは全く気にしないと言った
様子で返事をしてはクエストクリアの手続きを受付嬢に頼む。その答えを聞いた
受付嬢はマサツグに笑い掛けるとクエストクリアの手続きをし、一度奥に移動すると
報酬であるGの袋を取り出してはマサツグの元に持って行く。
「……お待たせしました!…報酬の4550Gです!」
__ジャラッ!…
「どうも!…ッ!……
あった!…ふぅ…」
受付嬢が奥から用意して来たお金をマサツグに手渡し、そのお金をマサツグが
受け取った瞬間お金は自動的にマサツグの財布へ送り込まれ、手元から消えて
無くなる。その仕様は王様から賞金を受け立った時にも起きていたのだが、
今回は手元に何も残らなかったので突然消えた事に戸惑って見せ、自分の財布の
中身を確認してまだこの仕様に慣れていない様子で一息吐く。そしてマサツグが
一人安心している所で最初に話していたもう一つの依頼書をマサツグの前に
差し出しては受付嬢がその依頼を受けるかどうかについて尋ね始める。
「…えへへ!…じゃあこっちの護衛依頼の方はどうしますか?
一応…依頼書の方はこうなっていますが…」
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護衛任務 スプリングフィールド王国~貿易都市クランベルズ
依頼レベル10
依頼内容:商人マルコ及び商品を目的の場所まで護衛する事。
期間 :およそ三日間。
王都からクランベルズまでの物資運搬に付き、護衛に六人の募集を
お願いします。報酬の受け渡しは目的地に着いてからの受け渡しで、
護衛として雇っている期間中に怪我をする事が有りましたら簡易的では
ありますが治療はやらせて頂きます。
勿論治療費等の請求もございませんので奮ってご応募お待ちしております。
報酬 150000 G
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「…目的地はクランベルズ……
クランベルズって?…」
「クランベルズはここから西に三日間進んだ所にある貿易・商業と言った
商人の町で、駆け出しの商人が商業の修行をする場所であり大手の商業家が
自らの手腕を競い合う!…
そんなまで活気に溢れる大きな町です!!……ただ難点が有るとするなら
商魂が逞し過ぎて過度なサービスをする事がある位ですかね…
でも、クランベルズに行けば大抵のものは揃うと言われている程、
物流の盛んな街です!!」
「なるほど…」
受付嬢に差し出された依頼書を受け取り、内容を確認して王都とは別の町の名前が
書かれてある事に気が付き、その行先の町について受付嬢に尋ねると、受付嬢は
笑顔でマサツグの質問に答え始める。その際カウンターにスプリングフィールド
大陸の全体地図を出してはクランベルズを指差し、マサツグに場所を教えるとどんな
街なのかも説明し始める。その説明を受けてマサツグが分かった様子で地図を見詰め
ながら頷くと頭の中で考え事をしては受けようかどうかと悩み始める。
{…依頼レベルは10……まぁ問題は無いだろうけど…
三日間か…結構長いな…でもこれって他の町に行く良いきっかけにもなるしな…
…ここは頑張って見るか?…}
「んん~…じゃあわかった…受けるよ。」
「ッ!…はい!分かりました!それでは受理しますね?
依頼人は商人のマルコさんです!…多分ギルドの何処かに居ると思うのですが…」
{…マルコ?シルクロードから来たのかな?それとも三千里?
案外踊るポン〇コリン?…}
悩んだ結果マサツグはその依頼を受ける事にし、その旨を受付嬢に伝えると受付嬢は
笑顔で返事をしてマサツグの依頼受領の手続きをし始める。そして依頼人の名前を
口にして合流するよう居場所をギルド内と説明するのだが、当然マサツグが
そのマルコと言う人物が如何言う格好をしているのかを知る筈も無く、受付嬢も
辺りを見渡してそのマルコを探すのだが中々見つからない。その間にマサツグが
マルコの名前を聞いて色々連想しては一人で笑っているのだが、受付嬢がハッ!と
気が付いた様子でマサツグの後ろを見てはマサツグに話し掛ける。
「あっ、いらっしゃいましたよ!…」
「ん?…わかった…じゃあ、何処に行けば会えるかな?」
「大丈夫ですよ?…既にマサツグさんの後ろに…」
「え?…」
受付嬢がマルコを見つけたと笑顔で答え、その言葉を聞いたマサツグがやる気を
見せて何処に居るのかと尋ねると、受付嬢は笑顔で大丈夫と答える。その大丈夫と
いう言葉にマサツグが驚き如何言う事かと尋ねようとするのだが、受付嬢は続けて
マルコはマサツグの後ろに居ると説明すると、マサツグは困惑しながら振り返る。
するとそこには恰幅の良いトル○コ風の男性が立っており、マサツグの事を
見上げて待っていたと言わんばかりの表情で突然自己紹介を始めるのであった。
「依頼を受けて頂きありがとう御座います!…
私がマルコ・ボウロです。」
「でゅわあぁ!!!…居たぁぁ!?…」
「はっはっは!!…驚かせてしまい申し訳ない…
何分自分の身長が低いせいでこの通り中々視界に入らず…
見つけて貰う時間が掛かってしまうので…
こうして私から会いに来た次第です。」
「…あぁ!…ッ!?…え?…えぇ~っと……マサツグ…です…
…何と言いますか…色々と…盛大に驚いてしまってすいません…」
何の気配も無く突如後ろに現れたマルコにマサツグが声を挙げて後ろに仰け反り、
驚いた表情を見せて居るとマルコは少しだけ笑って見せては直ぐに後ろに立った事…
驚かせた事に対して謝罪をし、その理由をマサツグに説明し始める。そしてその
理由を聞いたマサツグが改めてマルコの身長を確認すると受付嬢より低い、
155cm位しかなく、それらを確認して思わず納得してしまうとマサツグはハッ!と
確認した事・驚いた事と反省してマルコに頭を下げて謝る。そのマサツグの態度に
マルコは少し驚いた様子を見せるが直ぐに笑って見せると、とある方を振り向いては
呼び掛ける様に声を掛ける。
「ッ!……ふむ…いや、はっはっはっはっは!!!…
まぁお互い様と言う事で…これで全員ですかな?」
「え?…」
__ガタッ!!…ゾロゾロゾロゾロ…
マルコがギルドに設置されて在る団体用円卓席の方に向かって声を掛けると、
その席に座っていた冒険者達が一斉に立ち上がってはマサツグの居る方に
歩いて来る。マサツグと同じヒューマンの男二人にエルフの女性が一人、
恐らくホビット族なのだろうが男女何方とも言えない幼い人と、最後はゴブリンと
変わり種パーティが集まって来る。その集まって来たパーティにマサツグが
戸惑って居ると、マルコは改めて集まった人数を確認する様子でそのパーティの
人数を数え始める。
「ひい、ふう、みい、よお、いつ、む…
うん!依頼通りだ!!…他の方々も自己紹介を…」
「俺の名はマトック!
職業は戦士、よろしくな!」
-----------------------------------------------------------------------
「マトック」
「流離の戦士」
Lv.25
HP 2650 ATK 250 DEF 235 etc
-----------------------------------------------------------------------
男性のヒューマン。何処にでも居そうな感じのガタイの良いキャラで恐らくは
NPC…唯一個性が有るとするなら某機動戦士に出て来るメンタルの弱い男性艦長と
同じ髪形をしている所で、装備は見た感じブロンズ装備一式で武器は片手斧と
マサツグより若干強そうな感じを漂わせていた。そしてマトックの自己紹介が
簡単に終わると次はエルフの女性が自己紹介を始める。
「私はアヤよ!
職業は狩人、よろしく頼むわね!」
-----------------------------------------------------------------------
「アヤ」
「森の狩人」
Lv.18
HP 1550 ATK 185 DEF 190 etc
-----------------------------------------------------------------------
エルフの女性。白金髪の三つ編みで首元から前へ垂れる様にして緑のフードから
出ており、そのフードを被っていても分かる位の見事な美形、さすがエルフと
言ったモデルの様なスレンダー体系で狩人と言うだけあってか軽装。背中に弓と
矢筒を背負って上半身が緑のケープで下がミニスカとこのパーティの紅一点と
行った所か…そうしてアヤの自己紹介が終わると今度はお坊さんが手を合わせて
合掌しながらマサツグに挨拶をし始める。
「拙僧は、宗玄…
職業は、僧兵をやっておる。」
-----------------------------------------------------------------------
「宗玄」
「オータムクラウド国在住・玄安寺住職」
Lv.45
HP 5230 ATK 350 DEF 550 etc
-----------------------------------------------------------------------
特に言うことは無い…それ位にお坊さんの格好をしており、唯一言う事が有ると
するならまるで太陽拳でも撃てそうな位にピカピカの頭をして居る所と、目が
糸目と言う位…誰が何処を如何見てもお坊さん。格好も典型的なお坊さんの格好で
恐らく武器は背中に背負っている薙刀だろう…そうして宗玄の自己紹介が終わり
残り二人となって来ると次に自己紹介をし始めたのはホビットの人であった。
「僕は、ハリットです!
職業は魔法使いです!」
-----------------------------------------------------------------------
「ハリット」
「魔法使いの卵」
Lv.10
HP 550 MATK 135 DEF 90 etc
-----------------------------------------------------------------------
見た感じの年齢は大体11~12歳位のショタッ子?…に見えるのだが、髪型は
エルフのアヤと一緒の三つ編みで典型的な魔法使いの格好をしており、幼い顔立ちで
眼鏡を掛けて居る。背中には身の丈以上の杖を背負っており、良く見ると着ている
ローブはブカブカなのか袖が甘えんぼ袖になっている。
そんな何処と無くスリザ〇ンは嫌だと言いそうな見た目なのだが結局の処どっちか
判断が出来ず、そのハリットの紹介より性別の方が気になって仕方が無いと言った
様子で耳に入って来ない…そうしてマサツグが困惑した様子でその自己紹介を
聞いて居ると、最後にゴブリンの男がマサツグに挨拶をし始める。
「あっしの名はデクスター。
職業は…盗賊でやんす。」
-----------------------------------------------------------------------
「デクスター」
「無謀の盗賊」
Lv.22
HP 1100 ATK 200 SPD 350 etc
-----------------------------------------------------------------------
猫背のゴブリン男性。耳に鼻と妙に長く歯はギザギザで肌は緑色といかにも
ゴブリンと言った様子で、盗賊と言うだけあって頭にバンダナを巻いて来ていて、
シャツは目立ち難い無難な色で擦り切れており、穿いているズボンも汚れた模様の
絞り口のズボンと見た目からして盗賊を体現している。そして腰にはジャンビーヤ
を差しており、その他にもベルトに投げる用の小型のナイフを幾つも差してある。
その恰好からマサツグは思わずゴブリンで盗賊…裏切りとか無いよな?…と
疑ってしまうのだが、マサツグより先に集まったパーティ全員の自己紹介が
終わると、最後にマサツグが自己紹介をして一段落する。そうして全員の挨拶が
終わるのを待っていたマルコがマサツグ達に声を掛けると、先ほど他のメンバーが
座っていた円卓の方へと連れて行く。
「…では今回の依頼について詳しい説明をしますのでこちらへ……」
__ゾロゾロ…ゾロゾロ…ガタガタ…
「…えぇ~…では説明を…
依頼書にも書いて有ります様に貴方達への依頼はここ…王都からクランベルズまでの
荷物及び私の護衛になります…護衛期間は約三日…移動方法は馬車で、数は三台…
先頭馬車に私と側近、真ん中の馬車には積荷等が乗って…後尾の馬車には皆さんの
治療が出来る様に薬草を積んであります。そして護衛の陣形なのですが、これに
関しては皆様にお任せしようと思います。…何分私達は戦闘とは無縁でして…
如何言う風に組んだら良いのかが分からないのです…ですからご自由に陣形を取って
貰っても構いません…」
マサツグ達が案内されるままに席に着き、全員が座った所でマルコが軽く頷くと
依頼内容の詳しい説明をし始めるが、詳しいとは言ってもその説明も依頼内容に
書いて有ったものの再確認と言った様子で話し出し、追加で情報が有ったとする
なら当日の馬車の数とその場者それぞれに何が有るのかと言った事。そして護衛に
当たる際陣形等はマサツグ達の方で臨機応変に対応してくれと言う内容に、一人
疑問を持ったマトックがマルコに手を挙げて質問をする。
「…質問!……陣形は私達の方で決めていいのは結構なんだが…
それだと積荷を奪われると言った心配は無いのだろうか?…
…あっ!…疑う訳では無いのだが…如何にも気になってな?…」
「それにつきましては大丈夫です!…例え盗まれたとしても…
恐らくは扱えない上に直ぐに足が付くと思いますので…」
「ッ!…了解した!…」
マトックが手を挙げて質問した内容はその陣形を自由に取って良いと言う事に
付け込んだ泥棒行為であり、戦闘中のドサクサに紛れてその積荷が奪われない
のかと言うマトックなりの心配の質問であった。勿論それを聞いてピクっと
反応する者も居ては無言でマトックを見詰めたりと…中にはそれを聞いて同じ様に
悩んだり、自分が疑われていると悲しんだり、いきなり雰囲気が変わっては修羅場を
迎え掛けていた。そしてそれに気が付いたマトックも慌てた様子で宥めに掛かる
のだが、マルコはご尤もと言った様子で頷いてはマトックに大丈夫と答え、
その理由に奪われても直ぐにバレると答えると、何故かマトックや他のメンバーが
ハッ!と気が付いた様子で驚いては納得し始める。その納得する姿にマサツグが
不思議そうにして居るとマルコがクエストの説明を終えようとしていた。
「…では他に質問が無ければ、これで今日はお開きに…
護衛は明日の朝…集合場所は王都の玄関口にて集まってください…
時間は厳守で頼みますぞ?…」
__おう!!(ハイ!!)…
「ではこれにて…明日に備えて今日は無理をしないようお願いいたします…
…それでは、解散。」
__ガタッ…バラバラ…バラバラ…
「…さて、如何したものか……」
マルコが最後にクエストは明日の朝から…王都のゲート前に集合と護衛メンバーに
伝えるとメンバーが返事をし、そして最後にマルコが解散の言葉を言うと各々が
席を立っては散って行く。誰も何処に向かうか等言わずに解散して行く中、一人
マサツグが如何やって時間を潰そうかと悩んで居ると、エルフのアヤが徐に
マサツグの方へ一人歩いて来ては声を掛けて来る。
「「ねえ、貴方?…」
「え?…」
「えへへ♪…もし用事が無いならちょっと付き合ってくれないかしら?…」
「……え?何処に?…」
突然のアヤの呼び掛けにマサツグが少し驚いては声の聞こえた方を振り返ると、
そこにはマサツグの顔を少しの覗き込む様に優しく微笑むアヤの姿が有り、
マサツグに暇かどうかを尋ねると何か意味有り気にこの後の付き合いを
お願いし始める。その突然のお願いにマサツグが戸惑っては固まり、アヤの顔を
見詰めては恐る恐る質問をするのだが、アヤはマサツグに笑って見せると行先を
答える。
「ふふふ♪…何処って…道具屋よ?…矢と薬の補充!…
あっ!…後、携帯食料を少々ね!」
「あっ!…道具屋ですか……
なぁ~んだ!……って、これ全年齢対象…」
「……?
如何かしたの?」
「あ!…イエ、ナンデモアリマセン。」
アヤが少し勿体ぶった様子でマサツグに行先を告げ、用件も一緒に伝えると
マサツグが少しガッカリした様子で苦笑いをしては納得し、改めてこのゲームの
レーティングを思い出す。その様子にアヤが不思議そうな表情を見せては
マサツグに質問をするのだが、マサツグは戸惑った様子で反応すると何故か片言で
返事をしてしまう。そんなマサツグにアヤは不思議そうな表情を見せてはジッと
見詰めるのだが、フッと笑って見せると徐にマサツグの手を取りギルドを
後にし始める。
「……フッ!…おかしな人ね?…
とにかく!行きましょ!!…」
__パッ!…
「えぇ!?…ちょっと!?…」
アヤに引っ張られるままギルドを後にしたマサツグはただ戸惑って居るとそのまま
道具屋へと向かい歩き始め、マサツグが如何してこうなったのだ?と困惑した様子で
悩んで居ると、アヤはまるでマサツグの事を気に入った様子でフレンドリーに嬉々と
して話し始めては質問をする。
「貴方…今回が初めての護衛任務?」
「え?…あ、あぁ…そうだね…
まだ冒険者になって日が浅いし…」
「やっぱり!…じゃあ私の方が先輩ね!
…貴方を初めて見た時に私、絶対初心者だと思ったの!…」
「えぇ~…」
「…でも不思議…貴方の手からはまるで熟練者の様な…
オーラを感じる!…」
「え?…」
道具屋に向かう道中、アヤに手を引っ張られたまま質問をされるとマサツグは
戸惑いながらも正直にまだ駆け出しと答え、その答えを聞いたアヤが笑って
自分の方が先輩・自分の勘が当たったと喜び始める。その様子にマサツグが
戸惑った表情を見せて思わず声を漏らしてしまう。しかしアヤは直ぐに
マサツグの手を握って何かを感じ取ったのか、懐かしそうに笑みを浮かべては
マサツグの事を不思議…と話し、その言葉を聞いたマサツグが疑問の声を
漏らして居ると、二人は道具屋の前まで辿り着く。そして道具屋に辿り着いて
マサツグが漸く解放されるとアヤは道具屋の扉に手を掛け、先輩らしく振舞った
様子でマサツグの方を振り向くとアドバイスをし始める。
「じゃあ、入ろっか!
君も色々買っておいた方が良いよ?…
さっき言った携帯食料も要るし、回復系のアイテムとか?…
三日間の旅って結構物を消費するから!」
「え?…でも回復は馬車で…」
「あぁ!…違う違う!…傷とかは確かに大丈夫だと思うけど…
私が言っているのは毒とか麻痺とか…状態異常の方!
…多分あの調子だと…そっちの方は準備してないでしょうから
その点もね?…」
「…な…なるほど……そうだな!…
じゃあそうさせて貰いますよ、先輩?」
アヤのアドバイスを聞いてマサツグが回復は馬車で出来ると戸惑いながらも
口にすると、アヤはピクっと耳を動かしては苦笑いでマサツグに手を振り、
違うと答えては別の回復アイテムと話し始める。アヤもその馬車の話は
覚えて居ると言った様子で話し、その馬車でもさすがに状態異常とかは
配慮していないだろう…と話すと、その話を聞いてマサツグがハッ!とした
反応を見せてはアヤの言葉に納得する。そして少し考えた後、マサツグが
素直にアドバイスを聞く事にしてアヤの事を先輩と呼んで見せると、アヤは
パッと目を見開いては少し頬を赤く染め、恥ずかしそうにして誤魔化すよう
笑顔でマサツグに返事をする。
「ッ!!…ふふふ!…そう来なくっちゃ!!
じゃ!行きましょ!」
__カランカラン!…
「いらっしゃ~い!…」
アヤがマサツグに返事をした後、道具屋の扉を開けて中に入るとドアベルが鳴り響き、
その音に反応して店主がレジの前に立っては入って来たマサツグ達に挨拶をする。
店内には色々なアイテムが棚に陳列され、各アイテムの用途事に整頓されており、
それはまるで異世界版コンビニエンスストアに見えて来る。そしてこの言い方だと
現代版と何が違うのかと言う話になるのだが、現代に弓の矢は取り扱っていないし、
その他にも奇妙な魔石と言った霊感商法っぽいアイテムも取り扱っていない点が有り、
中でも極め付けがこれであろう…
「……ブリンクストーン商会製の大剣用研ぎ石…無料体験…
こんなのまで有るのか…」
壁に立て掛けるよう設置された巨大な研ぎ石…ゆうにマサツグの身長+αと言った
大きさで、既に誰かが数回使ったのか使用感が有る。若干凹んでいるのが見て取れ、
こんな物が置いて有るとしたら余程のホームセンターじゃないと見つからないぞ!?
…と現実に置き換えて思わず心の中でツッコミを入れる。そうして色々な物が
置いて有る道具屋の店内を歩きながらマサツグが驚いて居ると、アヤがマサツグを
呼び始める。
「あっ!…あったあった!…えぇ~っと…
貴方!!確かマサツグ?…だったわよね!?…こっちこっち!…」
「え?…あぁ!…はいはい!!」
「…ッ!…ここが状態異常を回復する為のアイテム類が置かれてある棚よ?…
自分が必要だと思う物を選んで買ってね?…後…隣が…そうね、携帯食料の棚ね!…
ここで三日分の食料を買って置くと良いわよ?…」
「あっ!…了解で~す。」
アヤがマサツグの名前を確認しながら呼ぶとマサツグはアヤに返事をして、
声の聞こえた所へと歩いて行く。そして呼ばれた場所に辿り着くとそこには棚の
商品と睨めっこするアヤの姿が有り、アヤがマサツグが来た事に気が付くと
さっきまで睨めっこしていた棚を指差してはマサツグにアイテムの場所を
教え始め、更に隣の棚を確認しては携帯食料も買うよう勧めて来る。
状態異常回復アイテムの棚の中にはRPGでは大概肥しとなる毒消し薬や
麻痺解除薬などのポーション類が色々置いて有り、それらを手にマサツグが
この先の旅で何が有るか分からないと言った様子で考え込んでは各状態異常
回復系アイテムを五本ずつ買う。その中に何故か二日酔い覚ましの薬も
有るのだが、この時のマサツグはとにかく何が有るか分からないと言った様子で
手に取って買ってしまうのであった。そうしてアヤに勧められた携帯食料や、
やっぱり戦闘中でも回復出来る様にとHPやTPが回復出来るポーションを
買い込むとアヤと共に明日の護衛任務の準備を終える。その後道具屋を後に
するよう店の扉を開けると同じ護衛の依頼を受けたメンバーと合流をするのだが、
何故か酒盛り集会をする事になるのであった。
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Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
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王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
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錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
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悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
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ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
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残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
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