23 / 53
昔の話、今の話。
6
しおりを挟む
目が覚めたとき部屋は薄暗かった。
悠人はしばらくまどろみながら、まだ昨晩飲んだ酒の香りが残っている気がした。
同時に、誰と飲んでいたのかと思いだし、そして自分が言った言葉を思い出す。
「っ!」
慌てて身を起こして隣を確認する。だが純一はおらず、見知らぬ部屋には一人きりだ。
時間を把握しようと思ったものの、荷物は見当たらない。部屋に時計の類いはぱっとみたところ目に入ってこない。
慌ててベッドから降りる。
カーテンの隙間から日差しが入っているのを見て、少しだけめくって外を見た。
「まぶしっ……」
小さく呟いて、今がもう朝なのだと認識するとドアへと向かい、そっと開けた。
頭を出してリビングを見回すが、こちらもカーテンはぴっちりと閉まっており、遮光されて外の光はうっすらとしか入っていない。
静かにドアを開けてリビングへと足を進めると、ソファに純一が寝ているのが目に入った。
その近くに荷物も置いたままである。
足音を立てないように近づいていき、純一を覗き込んだがソファの上で少し窮屈そうに寝ていた。
少し迷ったが純一を起こさないまま、テーブルの上に置いたままのグラスを掴んでキッチンへ向かった。
グラスに直接水道水を注いでそのまま一気に飲んだ。ぬるい水が乾いた身体に入っていく。
二日酔いというほどの怠さなどはないが、身体のむくみがひどい。
少し汗臭いのではないかと着ていた服を掴んで匂いを嗅いでみる。
このまま帰りたいほど、昨夜の醜態を思い出すがこのまま帰るわけにはいかない。
図々しいのは承知の上で、とりあえずシャワーが浴びたいと思い、再びソファに向かって静かに歩みを進める。
寝ている純一の近くまで行って、どうやって声を掛けようかと悩んだ。
手を伸して触れようとして、悩んで手をひく。
口を開いては閉じてを繰り返し、どうするかと腕を組んだ。
そうしていると小さく笑うように空気が震え、純一が目を開けていた。
「お……起きてたのかよ」
「いま起きた。なんでそんな悩んでんの」
身体を起こして純一は身体を伸した。窮屈なところに寝ていたのだから、身体は痛いのではないかと悠人は不安になる。
「悪い……昨日はその、ベッド借りて」
「良いよ別に。最初からそのつもりだったし。で、どしたの?」
「あー……シャワー浴びたくて」
「ああ、そうだね」
そう言うと純一は立ち上がってバスルームへと案内した。
「コレ使って」
そう言って差し出されたのは着替えの一式だった。
下着はこの部屋に来る前にあったコンビニで買ってきたらしいパッケージで、いつの間にと思わず聞いていた。
「悠人が寝た後。シャツは俺のだからデカいかもしんないけど。オーバーサイズ似合いそうだから大丈夫でしょ」
そう言って純一は一通り、ソープやシャンプーなどを指差しで説明するとリビングに戻って行った。
一人残された洗面所で、悠人は小さく素直な感想を口にした。
「わからん」
まったく、何を考えているか分からない。
だが恐らくは、純一は昨晩言った通り本当に話がしたいだけなのだろうということは痛い程よく分かった。
渡された着替えを見つめて、ふと悠人は気になってしまいシャツに恐る恐る顔を近づけた。
少しだけ匂いを嗅いでみた。
ほんの少しだけ、あの甘い匂いがはりしたので小さなため息を吐いた。
悠人はしばらくまどろみながら、まだ昨晩飲んだ酒の香りが残っている気がした。
同時に、誰と飲んでいたのかと思いだし、そして自分が言った言葉を思い出す。
「っ!」
慌てて身を起こして隣を確認する。だが純一はおらず、見知らぬ部屋には一人きりだ。
時間を把握しようと思ったものの、荷物は見当たらない。部屋に時計の類いはぱっとみたところ目に入ってこない。
慌ててベッドから降りる。
カーテンの隙間から日差しが入っているのを見て、少しだけめくって外を見た。
「まぶしっ……」
小さく呟いて、今がもう朝なのだと認識するとドアへと向かい、そっと開けた。
頭を出してリビングを見回すが、こちらもカーテンはぴっちりと閉まっており、遮光されて外の光はうっすらとしか入っていない。
静かにドアを開けてリビングへと足を進めると、ソファに純一が寝ているのが目に入った。
その近くに荷物も置いたままである。
足音を立てないように近づいていき、純一を覗き込んだがソファの上で少し窮屈そうに寝ていた。
少し迷ったが純一を起こさないまま、テーブルの上に置いたままのグラスを掴んでキッチンへ向かった。
グラスに直接水道水を注いでそのまま一気に飲んだ。ぬるい水が乾いた身体に入っていく。
二日酔いというほどの怠さなどはないが、身体のむくみがひどい。
少し汗臭いのではないかと着ていた服を掴んで匂いを嗅いでみる。
このまま帰りたいほど、昨夜の醜態を思い出すがこのまま帰るわけにはいかない。
図々しいのは承知の上で、とりあえずシャワーが浴びたいと思い、再びソファに向かって静かに歩みを進める。
寝ている純一の近くまで行って、どうやって声を掛けようかと悩んだ。
手を伸して触れようとして、悩んで手をひく。
口を開いては閉じてを繰り返し、どうするかと腕を組んだ。
そうしていると小さく笑うように空気が震え、純一が目を開けていた。
「お……起きてたのかよ」
「いま起きた。なんでそんな悩んでんの」
身体を起こして純一は身体を伸した。窮屈なところに寝ていたのだから、身体は痛いのではないかと悠人は不安になる。
「悪い……昨日はその、ベッド借りて」
「良いよ別に。最初からそのつもりだったし。で、どしたの?」
「あー……シャワー浴びたくて」
「ああ、そうだね」
そう言うと純一は立ち上がってバスルームへと案内した。
「コレ使って」
そう言って差し出されたのは着替えの一式だった。
下着はこの部屋に来る前にあったコンビニで買ってきたらしいパッケージで、いつの間にと思わず聞いていた。
「悠人が寝た後。シャツは俺のだからデカいかもしんないけど。オーバーサイズ似合いそうだから大丈夫でしょ」
そう言って純一は一通り、ソープやシャンプーなどを指差しで説明するとリビングに戻って行った。
一人残された洗面所で、悠人は小さく素直な感想を口にした。
「わからん」
まったく、何を考えているか分からない。
だが恐らくは、純一は昨晩言った通り本当に話がしたいだけなのだろうということは痛い程よく分かった。
渡された着替えを見つめて、ふと悠人は気になってしまいシャツに恐る恐る顔を近づけた。
少しだけ匂いを嗅いでみた。
ほんの少しだけ、あの甘い匂いがはりしたので小さなため息を吐いた。
26
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者
みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】
リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。
ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。
そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。
「君とは対等な友人だと思っていた」
素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。
【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】
* * *
2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる