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二章:共助/共犯

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「それ大丈夫なの?」
 部屋出て少し出かけることを告げると、ついさっき聞いたような台詞を返されて、ユーマはハチを見上げて「大丈夫」と答えた。ロスは仕事外で出会った存在であること、そして組織がらみの仕事は請け負っていないことを告げて尚、ハチは肩を竦める。
「結局何者なの、そいつ」
「セキュリティの穴をついて、いろんな企業から金を巻き上げてる奴だよ。もちろん金になりそうなところだけ狙ってるみたいだけど」
 そして逃げ足は速い。偶然出会ったのも、何かしら金にならないかとユーマをターゲットにしていたとロスから聞いた話だ。相手の行動、嗜好が分かれば揺さぶりを掛けることは不可能ではない。だからそうしようと思っていたものの、フタを開けるとユーマは組織の殺し屋だった。というのを知って手をひこうと思ったという。
 だが興味本位で行動をたどっていたところ、怪我をしたところを知った為にちょっとした手を貸しに出たというのが二回目の出会いだった。

「その道にはプロだよ」
「ふぅん。じゃあココもバレるかもしれないってことか」
「そこはちゃんとしてるんじゃないのかよ、お前も」
「してるよ、一応は。でもプロと素人じゃ違うでしょ。まぁいいや。車使う?」
 言われて頷くと鍵を渡される。受け取り、礼を言うと同時に軽く口づけられた。自然な流れの口づけに、ユーマはされるがままだったが、離れた後に少し睨みつけた。
「早く帰ってきてね」
 その言葉には何も返さずに、ユーマは部屋を出て行った。

 階段を降りて車に乗り込むとナビでこの場所を登録した。ここからロスの所までどうやって行くかを考える。
 ロスは郊外に住んでいる。とはいえここよりもまだ街寄りだ。とにかく街に向かおうとユーマはサイドブレーキを解除した。そうして来た道を街へ向かって戻る。殆どはまっすぐで、信号も車も人も居ないから速度を上げればあっという間に街に近づいていた。
 街をぐるりと巡る循環道路へと車を走らせ、ぐるりと巡る。ロスの住居は街の北側にあるので、街まで来てしまえばさほど遠くはなかった。

 ロスにはキュリアについて調べて貰いたいと思っている。それはハチを狙った男の正体を知るためにであり、ハチが請け負っていた仕事についてもしれたらという思惑があった。おそらくハチだって知っているのは「ターゲットを生かして連れてこい」というだけの情報だろう。必要以上のことを知りたがらないのが鉄則だし、それこそフリーランスが生きていくためには必要なことだ。
 そしてもう一つ知りたいことがあった。それこそがある意味でロスに頼る理由である。
 車は再び街へと戻った。街を出た頃よりも陽はくれていて、すでに夜の賑わいへと街は様変わりしていた。徐々に行き交う車の数も増えてくる道を進みながら、ユーマは近くの駐車場をナビから提示してもらう。提示されていた駐車場に車を停めると、ユーマはそこから歩いて数分の場所にあるマンションへと向かっていった。

 マンションは低層階が飲食店や医療モールとなっていて、日用品や食料品を取り扱うスーパーもある。その上がマンションとなっている。郊外とはいえ市街地には利便性がよく、それなりに賃料がする立地である。
 多くの人が行き交うモール地区を通り抜けて上へと向かうとエントランスがある。そこからは専用のフロアとなっており、登録された人間しか基本的には行き来出来ない。部外の人間が入る場合には、用事のある部屋へとコールすることが必要である。
 ユーマはエントランスの端末に向かうと手順通りに全ての認証を行う。すると自動ドアは簡単に開きユーマが入ることを歓迎してくれる。
 普段は入ることはもちろんできない。ただロスに連絡をすれば彼は臨時の入館許可をすぐに登録してくれる。それだけの情報は登録してあるからの気軽さであり、互いの信頼関係ともいえた。
 エレベーターに乗り込み、階数ボタンを押すと扉は閉まり動き始める。これも登録された場所にしか行けないようになっていて、セキュリティの面ではしっかりしている。だからこそ今ここにきても、安全だとユーマは踏んでいた。

 目的階に着くと、迷うことなく部屋に向かう。ワンフロアには十部屋ほどある。それなりに一室ごとも広いがロスが住んでいる部屋はフロアの中でも一番広い角部屋だ。
 部屋に着くと呼び鈴を鳴らした。別にここも入るだけの権限は付与されていて、ドアノブを握れば認証は済むが、いつもユーマはそれをしなかった。
 しばらくしてドアが開く。
「早かったじゃん」
「道路空いてたから」
 ロスは明るい金色の髪を後ろでくくり、シャツに短パンという姿でユーマを出迎えた。ユーマと同じ身長だが筋肉質なロスはそのままの姿で海に行っても似合うだろう。仕事のことを考えると全く見た目とそぐ合わないのが、彼らしいところでもある。
「季節感なさすぎだろ」
「そもそも、いまの時代季節感なんてないじゃん?」
 そういって笑いながらロスはユーマを迎え入れた。
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