不自由で自由な僕たちの世界。

広崎之斗

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一章:終わりの始まり

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 浴室を出る時、腕を引かれなかった。
 いつも、逃げないように腕を引かれた。だから寧ろ、シャワーを浴びないことも多かった。ユーマはそれがイヤだったが、いつだって拒否権はユーマにはない。
 だから少しだけ新鮮な思いだった。
 大体逃げられるわけがない。
 一度絶頂を迎えたところで、足りないのだ。馴らされた身体は中を満たしてほしくて疼いている。最初よりも酷く疼いている。
 浴室を出て軽くタオルで皮膚の水分を取られた。髪は殆ど濡れたまま、ハチが歩けばユーマもベッドがある部屋へと向かう。
 ベッドの近くまで来たとき、ユーマは肩を掴まれてまた口づけられた。そのままベッドへと押し倒されると、スプリングが軋んだ音が部屋に響く。

 舌を絡めながらハチの手の平がユーマの肌を滑った。
 室内はほどよく温度が調整されていて寒くなかった。濡れたままの場合、安宿だと時々寒くたまらない。
 肌に唇を落とし、そしてユーマの胸元から下肢へと手が滑っていく。じくじくと下腹部に熱が溜まるのを感じながら、ユーマはまた、口の中に溜まった唾液を飲み込んだ。
 ハチの手が再び緩く形を変え始めたユーマの雄に触れた。輪郭をふんわりとなぞっていくと、ぴくりと震える。
 根元を軽く扱いて指は後ろへと滑っていく。ユーマは恥じらうこともなくその手を悦んで受け入れて、少しだけ足を広げた。
 ちらりとハチは視線を上げるとユーマを見やり、その視線をベッドの上に向けた。
「俺もアンタも難儀だね」
 そう言って、ハチは一度身を起こすとヘッドボードに手を伸ばして備え付けのジェルを掴んだ。パウチさたれそれを手のひらに広げながらユーマを見下ろす。
 少しだけ正気の色を浮かべた瞳を見てユーマは呟いた。
「難儀?」
「そ。お互いに、知らないことばかりだけどこれは分かる」
 何がわかるというのか。変に覚めることは言わないでほしいと思ったが、文句を言う前にハチの指が後孔に触れた。まだ解されていない入口はぴったりと閉じている。
 だが指先が触れ、少しだけ力を込めて中に押し込められると第一関節まではすんなりと飲み込んだ。
「っあ……」
「どうせ俺の仕事は失敗だ。あの時襲われたのも何か意味はあるんだろうけど」
「ああ……、っ、ぁ……」
 指が少しずつ中に入ってくる。ぐりんと襞を指の腹で擦り、広げるように動きながら入ってくる。
 何度も男の欲望を受け入れてきたソコは、排泄器官としての用途以上に性器として作り替えられている。指一本を簡単に飲み込むと、ずるりと掻き出されすぐに指が入ってくる。
 さっきよりも質量を感じて目を見開いた。指が中でバラバラと動く感触に開かれていくのが分かる。
「んあ……あ、ああ……ぁ」
 ぐいっと拡げるように指が左右に開くと身体がわなないた。閉じそうになった足をハチの手が押さえて開かせる。
 指が探るように奥を擦りながら、ハチの両目がじっとりとユーマの表情を見ていた。甘く高く嬌声を漏らして悩ましげに眉根を寄せてユーマは口を押さえた。
「んッぁ……、あ、ああ……ひ」
「ここ?」
「ッ――ぅ!」
 ぐっと刺激を与えられて、ユーマは声を殺して身体を震わせた。一気に目の前が白くなる。強い快感に、身体はもっと強い刺激を求めはじめる。
 強く突き上げてほしくて堪らない。中から抉り、突き上げ、犯してほしい。何も考えられないぐらい真っ白に快楽に塗り潰してほしい。
 目尻に浮かんだ涙で瞳を揺らしながらハチを見つめてユーマは小さく頷いた。
 それをみて満足げに微笑みハチは指を抜く。ずるり、と襞を擦り出て行く指の感覚に身体は物足りなくて切なく揺れる。

「あ」
「欲しいんでしょ?」
 ハチの言葉に頷く。
「ほ、しい……」
 唇を動かす。言葉の意味などほとんど気にしていない。ただ相手が望む言葉を紡ぐ為に唇を動かす。
「……それ、止めるにはイクしかないの? それとも、イッた上で気絶でもしないとだめなのかな」
 ハチは何か呟きながら自らの雄の先端を、解した入口へと宛がう。ぐっと入口を先端が拡げる。指とは違う、熱の籠もった圧迫感にユーマは歓喜の声を漏らす。
「ああ……ッ、ぁん」
「分かんないけど」
「あ、ああ……あ……ッ、ぅ」
 ゆっくりと先端の膨らみが入口を通り中の襞を抉る。少しだけ痛みが走り涙が目尻から溢れた。だがそれ以上に気持ちがいい。
 もっと奥へと入ってきてほしいと言わんばかりに、乞う瞳がハチを見つめていた。
「あとで、落ち着いたらゆっくり話しないとねぇ」
 ねっとりとした甘いユーマの声にハチは両手を伸し、首に回した。抱き寄せるようにして、更に奥へと誘う。そして近づいた唇に唇を押しつけて舌を自らねじ込む。
 ぐぐっと根元まで身体の中を熱で満たされる。舌を絡め、表面を擦り付けると気持ち良くて腰のあたりがぞわりとして、おのずと揺らしていた。
「奥……ッ、もっと、ほしい」
「どうしてほしい? ただほしいだけなら、これでよくない?」
 ハチがくすりと笑って言う。だがただ入れられただけでは満足出来るわけがない。ユーマは首を横に振って違うと呟く。
「いっぱい……突いて」
「どこを?」
「お、く……ッぁあああ」
 
 ぐいっと腰を押しつける。中を抉る熱が奥を抉り、突き上げる。ぐっぐっと、ゆっくりと奥を押し上げられると、ユーマはその度に意味をなさに言葉を漏らし、身体を巡る熱に身体を震わせる。
 突然、ずずりと中が掻き出された。
「ひぅ……ッ、ぁああ!」
 そして奥へ突き上げる。
 ゆっくりとした、でも強い突き上げを何度も繰り返す。その度にジェルと共に、屹立した雄の先端から溢れた蜜が茂みを伝い繋がった部分を泡立てる。ぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てては、肌が打ち付けられる音が響く。
「あ、ああ、……ひあ、あ、ああん……ッ」
 ハチは口角を上げて微笑み、時々身を屈めるとユーマの唇を舌で舐めた。すぐにユーマはそれに応えて舌を伸ばし絡める。
 突き上げる度に上顎を舌で擦るとぎゅっと中が締まって、ユーマもハチも蕩けたような吐息を漏らした。

「気持ち良い?」
「いい……きも、ち、いい……ああ」
「じゃあいっぱい、気持ち良くなってよ」
 笑うハチの言葉にユーマは快楽に濡れた笑みを浮かべて答える。
 一瞬、笑みを消したハチがまた奥を突き上げた。今度は強く、強く。そして指で解した時に触れた場所を突くように何度も執拗に。
「ひ、あああ……ッ、ぁあん、あああ……あ、あ、あ」
「いっぱいイッていいよ」
 低く掠れた声にユーマは震えた。自分を抱く男の欲情した声は下腹部の熱をぐんと強く熱くする。ぎゅぅっと中を締めつけて、肉襞はハチの精を絞り出そうと蠢く。
 そうしてユーマは高く声を上げ、身体を震わせると息を止めて小さく吐精した。
 強く蠢く肉襞の攻めに、ハチは眉根を寄せて息を飲む。
 先端からだらだらと透明な液体を吐き出しながら、萎えた雄は震える。その最中もユーマは中を擦られる度に身体を震わせた。
 目の前が真っ白になる。身体中が気持ち良くなり、肌に触れるハチの手の平に感じてまた達する。
 声さえもほとんど出なくなり、涙を流しながらユーマは箍が外れた身体の快楽に浸っていく。
「ッ、ぁ、は……がっ、……は」
「息、して……、死なないでよ?」
 いっそ死んでしまいたい。
 快楽に浸る身体に支配された意識の片隅で、ユーマは思った。だがすぐに快感の波にさらわれて、消える。そしてまた訪れる絶頂に身を震わせて、ただただ止まらない快感に涙を流した。
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