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第二章

16.脱衣

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 僕は制服の上着を脱ぎ、ワイシャツ、その下のTシャツを素早く脱いだ。男は泳ぐときも上半身裸が普通なのでここまでは全然恥ずかしくはない。
 股間はしっかりと膨張してしまっているので、ズボンを脱ぐのはためらいがあったが、森谷にはそれもバレているので今更気にする必要はないだろう。
 そう自分を納得させつつズボンを脱ぎ、黒のボクサーブリーフ一枚になると、とりあえずは準備は完了だった。
 対する森谷は紺のニーハイソックスとプリーツスカートを脱いでほっそりした生足を披露しているものの、上半身はまだブラウスを着ていて、ようやく第一ボタンを外し始めたところだった。
 彼女は女の子らしく恥じらいの表情を浮かべて頬を染め、僕のほうにチラチラと視線をさまよわせている。
「うぅ、さっきは勢いで脱いじゃてたけど、こうしてお互いに見せ合いっ子するみたいに脱ぐのって、はずかしいなぁ……」
 つぶやきながらボタンを外し終え、ブラウスを脱ぎ去ると、森谷は僕を少し不安げに見つめた。
 ショーツと同じライトイエローのブラジャーは、左右のカップの上端がピンク色のリボンが飾られた中央に向かって緩やかなカーブを描いており、乳房の上部がのぞいている。
 ブラで寄せられているからなのか、しっかりと谷間ができていて予想以上のボリュームだった。
 小柄で華奢な体型の森谷のことだから胸もAカップくらいだろうと勝手に推察していたが、嬉しい誤算だった。僕はついつい谷間のほうを凝視してしまう。
「あー、春クン、いやらしい顔してる。おっぱいばかり見ないでよ。ボクだってあんまりおっきくないのわかってるさ。でもまだ発展途上なの。そのうちもっと大きくなって見返してやるんだから」
 ブラのストラップのズレを直しながら見咎みとがめる森谷。僕はさり気なく視線を胸の谷間から肩のあたりに移動させる。
「な、なに言ってるんだよ。僕は鎖骨フェチだし。華奢な女の子の胸の上にくっきりと浮かび上がる凹凸。首と肩をつなぐ僧帽筋そうぼうきんのなだらかなライン。それに二の腕も柔らかそうで……あれ、森谷って見かけによらず引き締まった体をしてるね。お腹とか余分な脂肪もなくてスタイルもいい。筋トレとかしてるの?」
 動揺のあまり早口で語ってしまったが、これではただの筋肉フェチだ。ドン引きされてないか心配だったが、森谷は胸の前で腕を交差させたまま楽しげに応じてくれた。
「春クン、女の子の体を視姦しかんしながら性癖を語るなんて、ヘンタイの所業しょぎょうだよ。ふふっ、でも褒めてくれてありがと。ボクはインドア派だけど運動も好きなの。走るのだって運動部の子にも負けないからね」
 指摘されたとおり僕の発言は変態的だったが、褒めまくったのがよかったのか、森谷は上機嫌だった。
 今のやり取りで羞恥心も薄れたらしく、彼女は谷間を隠していた腕をほどき、右手の二の腕の筋肉を見せるように腕を曲げて見せる。細い腕なのにしなやかな筋肉がついているのがわかる。そういえば前世の森谷も運動神経抜群だった。

「……さて、どうしようか?」
 お互いに服を脱いだものの、こういうときに僕はどうしたらいいかわからず、森谷に尋ねる。
「う~ん、じゃあとりあえず、えいっ!」
「うわっ、ちょっと、森谷」
 僕は突然抱きついてきた下着姿の女の子をなんとか受け止める。しなやかな筋肉のついた二の腕が背中に巻き付き、僕も華奢な背中に手を回した。
 お互いに下着は着けているものの、汗ばんだ皮膚と皮膚が吸い付くように密着し、胸板で押しつぶされる水風船のような感触に心臓が跳ねる。
 伝わってくる人肌のぬくもり。森谷の体がまるで自分の一部と錯覚してしまうほどの一体感。僕は初めての味わう抱擁ほうようの心地よさに溺れ、無意識に背中に回した手に力を込めてしまった。
「うぅ……ちょっと、苦しい……よ」
 少しかすれた声に慌てて力を緩めると、森谷はほっとしたように息を大きく吐き出す。熱い息が鎖骨の下の薄い皮膚に当たり、少しくすぐったい。
 僕は初めての経験にド緊張していたが、森谷はもっと緊張してるように思えた。その初々しい反応がかわいらしくなり、ショートボブの黒髪の頭頂部をそっとなでてやると、肩をビクンと跳ね上げた。
「……ウソ、これだけですごく気持ちいい。ボク、春クンに撫で撫でされるの好きかも。それにね、こうやってくっついてるとドキドキが止まらないの。硬いのもお腹に当たってて、すごくエッチな気分に……ねえ、春クン、ここ、そろそろ触ってもいいよね?」
 返事をする前に森谷は僕の下半身に手を伸ばした。小さな手のひらで股間の膨らみをそっと撫でられる。その大胆な手つきに僕はただ身を任せるしかなかった。
「ここすごくおっきくなってる……パンツの上から触っても形がわかるね。ここの根っこから元気に上を向いてて……ここが先っぽかな?下から上にこうやってゴシゴシすると気持ちいいの?」
 ぎこちないながらも下着越しに勃起ペニスを扱く森谷に肯定の返事をすると、僕の顔を上目遣いで見つめ、微笑みを浮かべる。
 そして、彼女は下着越しでもわかる異変を目ざとく見つけた。
「あっ、先っぽのあたりが濡れてるよ。これって出そうってことなの?」
 森谷はカウパー線液のことを知ってか知らずか、そんな無邪気な質問をしてきた。
 僕は我慢汁とも呼ばれるこの液体について短く説明し、まだ余裕はあるということを告げる。
 とはいっても、そう長くは持たないだろう。経験の浅い僕はずっと勃ちしっぱなしだったのだ。
「そうなんだ……本やネットで調べても経験ないとわからないことが多いよね。あ、そういえば、凛香先生は初めてのときはすぐに終わっちゃうから、セックスする前に一回出しちゃったほうがいいって教えてくれたの。春クン、どうする?」
「ど、どうするって……」
 養護教諭の凛香先生は、医学的知見から童貞男子との性交渉の際のアドバイスをしてくれていたようだが、男心についてレクチャーし忘れているようだ。
 森谷は根が真面目なのか、忠実に実行しようとしているのだろう。
 経験不足による早漏を指摘されているようで童貞男子としてはかなり恥ずかしい。
 大丈夫、我慢できるから。この気恥ずかしい状況はその一言で解決するはずだった。
 ところが、その言葉は発する寸前に森谷の一声で遮られた。
「よし、一回出しちゃおうよ。ボクも男子が射精するところ見てみたいしね」
 森谷は好奇心旺盛な幼子おさなごのように目を輝かせ、戸惑う僕の顔を見上げている。
 経験豊富な男ならここで主導権を取り戻すべく、逆に相手の体を触り返すくらいのことができるのかもしれないが、今の僕には到底無理な話だ。
 僕は根っからの受け身体質だということを実感する。むしろ初めての女子が一生懸命リードしようとしているところに興奮してもいる。
 経験不足の男がカッコつけても仕方がない。今はこの状況を楽しんだほうがいい。そう割り切りつつも素直に応じるのはしゃくなので、しゃに構えて言い返す。
「へぇ、森谷って初めてなのに意外と積極的なんだね。そんなことを言われたら世間一般の男はそれ相応の奉仕を期待するものだけど、森谷にはできるの?」
 森谷は不機嫌そうにヘの字に口を歪めた。
「むむっ、春クン、ボクのことバカにしてるなぁ。経験はないけど、ちゃんと予習はしてきたんだからね。ソーローの春クンなんか、すぐにドビュドピュッって出しちゃうよ」
「森谷さぁ……R18のエロ漫画で予習してるだろ。擬音語がなんかそれっぽいよ」
 僕のツッコミが図星だったのか、森谷は赤面しながら僕の股間を強く握った。
「もう、うるさいなぁ。せっかくのムードがぶち壊しだよ。早くパンツ脱いでそこのソファに座って。たっぷりご奉仕してあげるから」
 照れ隠しのように森谷はくるりと背後を振り向き、三人がけのソファーを指差す。
 衝立の裏のスペースは、こういう秘め事をするには最適なスペースだったが、部員たちが共有するソファーを使うことに対しては、さすがに気がとがめた。
 森谷が除菌消臭スプレーとウエットティッシュを持ってきていたから後で念入りに掃除しておかないといけないな。僕はそんなことをぼんやりと考えながらソファーのほうに移動した。
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