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1.プロローグ

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「はぁ、はぁ……ん、あふっ、修斗しゅうと、あたし、もうダメ……」
「ふっ、んはぁ……香澄かすみ、お、俺ももう出そう……ぐっ」
「あぁ……まだ、もう少しぃ……今日もちゃんとイカせてよ」
「うっ、ん……わかってるって……ほらっ、ほらっ、イクまで思いっきり突いてやるから……んくっ」
修斗は湧き上がる射精感を歯を食いしばって我慢にしながら、女の腰のくびれを両手で掴み、上体を起こした正常位で腰を前後に激しく振った。長い肉棒で奥をめった刺しにされた香澄は、快感を堪えるように左右の乳房をそれぞれの手で掴み、嬌声を上げる。
「あ、あ、そこっ、いい、ヤバっ、んん、いいああああああぁぁぁん」
自然と腰が浮き上がり、蜜壺みつつぼがキュッと締まる。下腹部が小刻みに震え出し、香澄は恍惚を顔に浮かべながら腰を何度も突き上げた。修斗は肉棒への急激な圧迫に堪えきれず、うめき声を発する。
「あぐっ、イクっ!」
その宣言とともに肉棒が痙攣し、膨れ上がった先端から白い粘液の塊がドバドバと吐き出される。
しかし、彼の子種はラテックス製の避妊具に阻まれ、目的地に到達することはなかった。

性欲の塊の放出を終えた修斗は肉幹の根本を握ってゆっくりと腰を引き、慎重に引き抜いた。そして先端にたっぷりと体液が溜まったコンドームを慣れた手付きで外すと、端正な顔立ちに似合わない下卑げびた笑みを浮かべた。
「ふふっ、やっぱ俺ってセックスうまいだろ。今日もイッてたし、サイコーだろ俺って!」
「うん……そうだね。やっぱり修斗ってセックスがすっごく上手。今日で最後なのが惜しいくらい」
香澄は絶頂の余韻に浸るそぶりも見せず、不穏な笑みを浮かべていた。修斗は今まで抱いていた女の冷めた態度に気づかず、能天気に首を傾げた。
「最後って何?俺、もう一回くらいはできるぜ。今日こそは生でやらせてくれよ。ちゃんと外で出すからさぁ」
修斗は一度射精しても萎まない若々しい肉茎を誇らしげに見下ろした。香澄はそれを見てため息をつく。
「あたしたち、別れよっ……というか、元々あたしたちセフレみたいなもんだったよね?今日だって、保健室のベッドをラブホ代わりにしてさ……」
香澄は保健室の簡素なベッドから身体を起こし、枕もとに置いていたウエットティッシュで股間を面倒くさそうに拭うと、枕元に脱ぎ捨ててあったブラジャーを無言で身につけた。修斗はそれを唖然とした顔で見つめる。
「何でいまさらそんなこと言い出すんだよ。それは合意の上だろ。保健室でヤるのだって今回が初めてじゃないしさ……」
唐突な別れ話が本気だと悟り、修斗はにわかにうろたえ始める。しかし、香澄はけだるげにショーツを履きながら彼を鼻で笑った。
「ふぅん、あたしなんかに未練があるんだ」
「あるに決まってんだろ。今だってあんなに愛し合っただろ……なんでいきなり別れ話になるんだよ。唐突過ぎるだろ」
全裸のまま前のめりになって、必死に抗議する修斗。香澄は何も答えずにベッドから降りてブラウスを身につけると、ベッドを取り囲むベージュ色のカーテンを見ながら、ポツリとこぼす。
「ねえ、あたしって気持ちいい?」
「そんなの当たり前だろ。お前のま●こ、締りが良くて俺のち●こに絡みつく感じでサイコーだし……」
「それ本当?」
「ホントだよ。今までヤッた女の中でも最高ランクだし」
修斗は語気を強めて断言したが、香澄はちっとも嬉しくなさそうに顔をしかめた。
「ふぅん……そういうのって男をたらしこむ才能なんだろうね。あたしは身体も柔らかいし、フェラも得意だしね。あたしってエッチの才能ありすぎだよね……」
「うんうん、そうそう、お前のフェラチオってすっげー気持ちいいんだよなあ……あとさ手コキもさ……」
修斗はニヤニヤと下品な笑みを浮かべ、下劣な言葉を吐き続けた。
香澄は耳障りな騒音を黙殺しながらプリーツスカートを身につけ、居住いずまいを正すと、彼に冷たい視線を送った。
「修斗ってさ、あたしのこと本気で好きじゃないでしょ?誰が本命かわかんないけど他に女がいっぱいいるし……えっと、テニスサークルの望月さんとアイドル研究会の斉藤さん、あとは法学部の来生先輩とか……みんな可愛い子ばっかりだよね」
「……なんで知ってんの?」
修斗の顔からみるみるうちに血の気が引いていく。香澄は彼に蔑むような目を向けた。
「女子の情報網を甘く見ないほうがいいよ。多分、みんな知ってるのに修斗と付き合ってる。あなたがイケメンでセックスが上手だからかな?遊び相手として割り切ってるんだろうね」
「え?あ、いや、あの……違うって。俺はお前が……」
「無理して言い訳なんかしなくてもいいよ。じゃあ、あたし帰るから」
香澄は有無を言わさぬ口調で静かに言い放つと、彼に背を向けて保健室のベッドを取り囲むカーテンをくぐる。
「ち、ちょっと待てよ!」
修斗は慌てて追おうとしたが、自分が全裸であることに気づき、思いとどまった。香澄はカーテンの向うでスマホを操作しながらポツリと呟いた。
「あたし、修斗とセックスした後って、すごく虚しくなるんだよね……してる最中はあんなに熱かったのに終わると急に冷たくなるの……寒くて凍えちゃうくらいにね」
「香澄……」
修斗は優良な「セフレ」の一人に逃げられ、肩を落としていたが、ふいにカーテンが開き、スマホを構えた香澄が顔を出した。
「じゃあ、最後に記念撮影ね。パシャリ!」
「え……何やってんだよお前!」
「大丈夫、リベンジポルノとかそういうのしないから。ただの保険だよ。あたし、あなたのことそれなりに信用してるけど、男って別れた女とのエッチを武勇伝のように語りたがるものだから。ソフトな口封じって感じ。じゃね、他の女の子たちと幸せにね」
香澄の顔には笑顔が張り付いていたが、瞳の奥には悪意が浮かんでいた。従順だった女の思わぬ本性に慄然とする青年を置き去りにし、香澄は虚ろな目で保健室から出ていった。

保健室を出た香澄は、スマートフォンを操作しながら大きくため息を吐く。
「……あたし、いつまでこんなことをしているんだろ。こんなの無駄なことなのに……」
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