513 / 519
雑賀重清の目標
第463話:允行の最期?
しおりを挟む
重清達が元の世界へと戻る少し前のこと。
重清が、新しい契約書に『自分の意志で契約を破棄しても、忍者としての記憶を失わない』ことを追加する提案をし、それを始祖が契約書へと付け加えたのを確認した允行は、自身の契約書を具現化させた。
そしてそれを允行、躊躇うことなく破り割くのだった。
「ふむ。確かに記憶を無くしてはいないな。そして、やはりこうなったか」
そう呟いた允行の体は、次第にその存在ごと無くなるかのように薄くなっていた。
「えっちょ、なにこれ!?こうなるなんて、頼んでないよ!?」
消えゆく允行を見た重清は、始祖へと非難めいた視線を向けた。
「父上のせいではない。父上との契約によって得たこの不老不死の力。契約を破棄すればその力はもちろん失われる。そしてそうなれば、私の長い生を終えることが出来ることは想像が出来ていた」
自身のために父を避難がましく見つめる重清に、允行はそう言ってほほ笑んでいた。
「そ、そんな・・・死ぬと分かってて、何で契約を破棄するんだよっ!あんただって、反男君や他のひとたちみたいに、他の何かになれる可能性があったのに!
何でそれを捨てて、死のうとするんだよっ!」
「ん?どういうことだ?」
重清の叫びに、恒久は小さく呟いていた。
「あんた、分かっていなかったのね」
そんな恒久に呆れた声をかける茜に、
「なんだよ。お前は分かってたのかよ?」
恒久は若干恥ずかしそうに茜へと返していた。
「シゲはね、黒い忍力を持つ人達に、別の選択肢を用意したんだ」
聡太がそっと、恒久へと語りかけた。
「選択肢?」
「そう。シゲの言うとおりこの世界には、忍力の元になったこの力で、別の何かになっている人達がいる可能性は否定できない。それこそ魔法使いとかね。
シゲは、黒い忍力を持つ人達は、本来その別の何かになる可能性を秘めていると考えたんだと思うんだ。
だから敢えて、その人達が契約を破棄しても、忍者としての記憶を失うことがないようにした。
彼らが、別の可能性を探すことができるように。
記憶を失くしちゃったら、可能性があることすらも忘れちゃうでしょ?」
允行へと目を向けて悲しげに笑いなら聡太は、
「契約を破棄した允行さんがこうなることは、シゲも予想外だったと思うけどね」
そう、付け加えていた。
「なるほどな。シゲの奴、たまにクリティカルなアイデア出しやがるな」
「あんたは全然だけどね」
「うるせぇな。俺は、クリティカルなつっこみ専門なんだよ」
嫌味を返す茜も、口を尖らせながらもそれに返す恒久もまた、消えゆく允行を複雑な面持ちで見つめていた。
重清達一同のそんな視線を集めていた允行は、少し困ったように笑って重清を見つめていた。
「逃げるような形になって、あの娘には申し訳ないと思っている。お主の方から謝っておいてくれ。父を死に至らしめたことを」
「それでも、私は後悔してはいないがな」そう付け加えながら言う允行に、重清は小さく首を振った。
「最後のは余計だよ。それにそこまで言うなら、自分で言えばいいのに」
もはや允行の死を止めることが出来ないと覚悟した重清は、それでもなお允行に嫌味を言う事しか出来なかった。
「だから、申し訳ないと言っておるのだ」
そう重清へと返した允行は、始祖の方へと目を向ける。
「父上。短い時間でしたが、あなたに、そして皆に会えて良かった。
忍者の未来は、彼らに託し、私は先に逝かせていただきます。
皆も、息災でな」
そう言いながら向けられる允行の視線に、弟弟子達は微妙な顔を向けていた。
そしてそれは、始祖もまた同じであった。
死を迎えるというのに、涙すらない父や友の姿に、允行は嘲笑的な笑みを浮かべていた。
「ふっ。私には相応しい最期のようだ。
自身の目的のためだけに、人を殺め、陥れようとした私は、最後まで独りなのだな・・・・
これが、その報いか」
悲しい笑みを浮かべる允行の体が、更に薄くぼやけ、それは今にも消えそうなほどになっていた。
「では、さらばだ」
その言葉と共に、允行の体は光に包まれて辺りをまばゆく照らした。
あまりの眩さに目を覆った重清達が目を開くと、允行のいた場には・・・・
まだ允行がポツンと突っ立っていた。
重清が、新しい契約書に『自分の意志で契約を破棄しても、忍者としての記憶を失わない』ことを追加する提案をし、それを始祖が契約書へと付け加えたのを確認した允行は、自身の契約書を具現化させた。
そしてそれを允行、躊躇うことなく破り割くのだった。
「ふむ。確かに記憶を無くしてはいないな。そして、やはりこうなったか」
そう呟いた允行の体は、次第にその存在ごと無くなるかのように薄くなっていた。
「えっちょ、なにこれ!?こうなるなんて、頼んでないよ!?」
消えゆく允行を見た重清は、始祖へと非難めいた視線を向けた。
「父上のせいではない。父上との契約によって得たこの不老不死の力。契約を破棄すればその力はもちろん失われる。そしてそうなれば、私の長い生を終えることが出来ることは想像が出来ていた」
自身のために父を避難がましく見つめる重清に、允行はそう言ってほほ笑んでいた。
「そ、そんな・・・死ぬと分かってて、何で契約を破棄するんだよっ!あんただって、反男君や他のひとたちみたいに、他の何かになれる可能性があったのに!
何でそれを捨てて、死のうとするんだよっ!」
「ん?どういうことだ?」
重清の叫びに、恒久は小さく呟いていた。
「あんた、分かっていなかったのね」
そんな恒久に呆れた声をかける茜に、
「なんだよ。お前は分かってたのかよ?」
恒久は若干恥ずかしそうに茜へと返していた。
「シゲはね、黒い忍力を持つ人達に、別の選択肢を用意したんだ」
聡太がそっと、恒久へと語りかけた。
「選択肢?」
「そう。シゲの言うとおりこの世界には、忍力の元になったこの力で、別の何かになっている人達がいる可能性は否定できない。それこそ魔法使いとかね。
シゲは、黒い忍力を持つ人達は、本来その別の何かになる可能性を秘めていると考えたんだと思うんだ。
だから敢えて、その人達が契約を破棄しても、忍者としての記憶を失うことがないようにした。
彼らが、別の可能性を探すことができるように。
記憶を失くしちゃったら、可能性があることすらも忘れちゃうでしょ?」
允行へと目を向けて悲しげに笑いなら聡太は、
「契約を破棄した允行さんがこうなることは、シゲも予想外だったと思うけどね」
そう、付け加えていた。
「なるほどな。シゲの奴、たまにクリティカルなアイデア出しやがるな」
「あんたは全然だけどね」
「うるせぇな。俺は、クリティカルなつっこみ専門なんだよ」
嫌味を返す茜も、口を尖らせながらもそれに返す恒久もまた、消えゆく允行を複雑な面持ちで見つめていた。
重清達一同のそんな視線を集めていた允行は、少し困ったように笑って重清を見つめていた。
「逃げるような形になって、あの娘には申し訳ないと思っている。お主の方から謝っておいてくれ。父を死に至らしめたことを」
「それでも、私は後悔してはいないがな」そう付け加えながら言う允行に、重清は小さく首を振った。
「最後のは余計だよ。それにそこまで言うなら、自分で言えばいいのに」
もはや允行の死を止めることが出来ないと覚悟した重清は、それでもなお允行に嫌味を言う事しか出来なかった。
「だから、申し訳ないと言っておるのだ」
そう重清へと返した允行は、始祖の方へと目を向ける。
「父上。短い時間でしたが、あなたに、そして皆に会えて良かった。
忍者の未来は、彼らに託し、私は先に逝かせていただきます。
皆も、息災でな」
そう言いながら向けられる允行の視線に、弟弟子達は微妙な顔を向けていた。
そしてそれは、始祖もまた同じであった。
死を迎えるというのに、涙すらない父や友の姿に、允行は嘲笑的な笑みを浮かべていた。
「ふっ。私には相応しい最期のようだ。
自身の目的のためだけに、人を殺め、陥れようとした私は、最後まで独りなのだな・・・・
これが、その報いか」
悲しい笑みを浮かべる允行の体が、更に薄くぼやけ、それは今にも消えそうなほどになっていた。
「では、さらばだ」
その言葉と共に、允行の体は光に包まれて辺りをまばゆく照らした。
あまりの眩さに目を覆った重清達が目を開くと、允行のいた場には・・・・
まだ允行がポツンと突っ立っていた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる