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雑賀重清の目標
第447話:約の術
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重清達の言葉とともに、具現獣達は光に包まれた。
それと同時に、チーノの居た場所には大きな鉄の塊が姿を現した。
まるで卵のような楕円型の鉄塊にヒビが入り、それを食い破るように中から一頭の大きな白い虎が飛び出てきた。
半端じゃない程の色気を振りまいて。
「あら。アレ抑えるの、忘れてたわ」
(あー、このエロさ久しぶりだな。
まさか虎に色気を感じることになるとは思わなかったよね)
エロ姉ちゃんバージョンのチーノ以来の、中学生には非常に毒となる色気を感じつつ、重清は苦笑いを浮かべてその様子を見つめていた。
その隣では大きな水柱が立ち上り、そこからノソノソの大きな生物が歩み出てきた。
「なんじゃ。結局亀じゃないか」
黒く大きな亀となったロイは、残念そうにそう呟きながら長く伸びた首をうなだらせていた。
(いや、十分凄い姿だけどね)
何故か落ち込むロイに、重清は心の中でつっこみつつ辺りを見回してみた。
聡太の隣には、いつの間にか大きな木がそびえ立っていた。
次の瞬間、その大木が龍の姿となり宙へと舞い上がった。
「オォォォン・・・・」
どことなく悲しげな叫びが辺りに木霊し、その声の主は聡太の全身に巻き付いた。
「これが、パパの力なんだねっ!」
その姿に似つかわしくない声に、聡太は優しく微笑んでブルーメの頭をそっと撫でた。
「カールゥァーーー」
その時、茜の目の前に立った火柱から微妙な鳴き声が轟いた。
それと同時に、火柱から黒い羽に炎を纏わせた大きな鳥が飛び出し、空中を大きく旋回し始めた。
「どうだハニー!?俺様のこの姿、惚れ直しただろう!?」
朱雀の術によって話すことが可能になったカーちゃんは、大きな瞳でウインクしながら茜へと語りかけた。
その言葉を聞いた重清と聡太は、茜がカーちゃんを『生理的に受け付けない』と言っていた理由に納得しつつ、カーちゃんを見つめていた。
「はいはい、格好いいねー」
(そのまま焼き鳥になってしまえばいいのに)
茜は心の中で呟きつつ、カーちゃんに雑にそう返していた。
茜に密かに想いを寄せる恒久だけは、
(ハニーだと!?アイツなんなんだよ!?)
と、心の中で毒づいていたりするのであった。
「はっはっは!力が湧いてくるぜ!!!」
そんな恒久の側に出来上がった小さな土の山から飛び出した近藤は、自身の黄金に輝く体を惚れ惚れした表情で見つめて叫んでいた。
((((うっわぁ~~~))))
重清達は、その姿をただ呆然と見つめていた。
伊賀本家忍術『幻獣の術』によって作り上げられる麒麟の幻想によく似たその出で立ち。
黄金の鱗に覆われた馬のような肢体、風になびくたてがみ、そそり立つ2本の角。
そして、近藤の顔面。
顔だけが近藤のままである麒麟の姿に、恒久は残念そうな表情を向けた。
「お前、今すげぇ気持ち悪いぞ」
「はぁ!?ふざけんなよ!?お前の術でこうなってんだろうがクソガキがっ!」
恒久の情け容赦ないつっこみに、近藤は叫び返した。
「準備は整ったようだな」
そんな緊張感の欠片もない一同をそれまで静観していた允行は、静かに言った。
允行は重清達を見つめながら、思っていた。
(少しは緊張感を持て)
と。
それと同時に彼の中には、懐かしさが湧き上がっていた。
師や弟弟子達と共に過ごした遠い昔、允行はよく同じような思いを抱くことがあった。
その昔、まだ允行が師の元を離れていない頃、彼は師の理想を叶えようと必死に修行にあけくれていた。
それは、弟弟子達もまた同じであった。
師の理想の実現。
新しい草とも言える組織を作り上げるその理想を実現するための力。
それは言い換えれば、人を殺めることすら可能とする力を磨くことに他ならなかった。
平等な組織を作り上げるために人を殺める力を磨く。
矛盾にも似たその想いは、允行のみならず他の弟弟子達も抱いていた。
それでも彼らが前を向き、ただ人殺しのために力を磨いているわけではないと自身に言い聞かせることができたのは、友とも呼べる存在があったからであった。
師を慕い、父と呼ぶ弟弟子達皆が集まると、独りで修行していた時に湧き上がる、力に対する仄暗い感情が薄れたのだ。
直前まで人を殺める程の力を磨く彼らも、一同に介せば目の前の重清達のように緊張感なく騒いでいた。
それを笑って諌める師の姿が思い出され、允行はほんのひと時、自身の行いを悔いた。
このような事を、師が望んでいたのかと。
しかし允行は、湧き上がる想いを振り払うかのように首を小さく振った。
もう、後戻りはできない。
もはや父の理想は、潰えたのだ。
その想いで心を塗り固めた允行は、重清達を見つめていた。
その目からは、涙が溢れていた。
「これで、条件は整った。
我が師より頂戴した唯一の忍術を使う時がついに来たのだ」
『約の術』
「ちょっ、心の準備が――――」
重清のその言葉を残し、辺りは静寂に包まれた。
その場には、突然支えが無くなって地面に倒れ込んだ美影と、允行に眠らされた琴音だけが残されていた。
それと同時に、チーノの居た場所には大きな鉄の塊が姿を現した。
まるで卵のような楕円型の鉄塊にヒビが入り、それを食い破るように中から一頭の大きな白い虎が飛び出てきた。
半端じゃない程の色気を振りまいて。
「あら。アレ抑えるの、忘れてたわ」
(あー、このエロさ久しぶりだな。
まさか虎に色気を感じることになるとは思わなかったよね)
エロ姉ちゃんバージョンのチーノ以来の、中学生には非常に毒となる色気を感じつつ、重清は苦笑いを浮かべてその様子を見つめていた。
その隣では大きな水柱が立ち上り、そこからノソノソの大きな生物が歩み出てきた。
「なんじゃ。結局亀じゃないか」
黒く大きな亀となったロイは、残念そうにそう呟きながら長く伸びた首をうなだらせていた。
(いや、十分凄い姿だけどね)
何故か落ち込むロイに、重清は心の中でつっこみつつ辺りを見回してみた。
聡太の隣には、いつの間にか大きな木がそびえ立っていた。
次の瞬間、その大木が龍の姿となり宙へと舞い上がった。
「オォォォン・・・・」
どことなく悲しげな叫びが辺りに木霊し、その声の主は聡太の全身に巻き付いた。
「これが、パパの力なんだねっ!」
その姿に似つかわしくない声に、聡太は優しく微笑んでブルーメの頭をそっと撫でた。
「カールゥァーーー」
その時、茜の目の前に立った火柱から微妙な鳴き声が轟いた。
それと同時に、火柱から黒い羽に炎を纏わせた大きな鳥が飛び出し、空中を大きく旋回し始めた。
「どうだハニー!?俺様のこの姿、惚れ直しただろう!?」
朱雀の術によって話すことが可能になったカーちゃんは、大きな瞳でウインクしながら茜へと語りかけた。
その言葉を聞いた重清と聡太は、茜がカーちゃんを『生理的に受け付けない』と言っていた理由に納得しつつ、カーちゃんを見つめていた。
「はいはい、格好いいねー」
(そのまま焼き鳥になってしまえばいいのに)
茜は心の中で呟きつつ、カーちゃんに雑にそう返していた。
茜に密かに想いを寄せる恒久だけは、
(ハニーだと!?アイツなんなんだよ!?)
と、心の中で毒づいていたりするのであった。
「はっはっは!力が湧いてくるぜ!!!」
そんな恒久の側に出来上がった小さな土の山から飛び出した近藤は、自身の黄金に輝く体を惚れ惚れした表情で見つめて叫んでいた。
((((うっわぁ~~~))))
重清達は、その姿をただ呆然と見つめていた。
伊賀本家忍術『幻獣の術』によって作り上げられる麒麟の幻想によく似たその出で立ち。
黄金の鱗に覆われた馬のような肢体、風になびくたてがみ、そそり立つ2本の角。
そして、近藤の顔面。
顔だけが近藤のままである麒麟の姿に、恒久は残念そうな表情を向けた。
「お前、今すげぇ気持ち悪いぞ」
「はぁ!?ふざけんなよ!?お前の術でこうなってんだろうがクソガキがっ!」
恒久の情け容赦ないつっこみに、近藤は叫び返した。
「準備は整ったようだな」
そんな緊張感の欠片もない一同をそれまで静観していた允行は、静かに言った。
允行は重清達を見つめながら、思っていた。
(少しは緊張感を持て)
と。
それと同時に彼の中には、懐かしさが湧き上がっていた。
師や弟弟子達と共に過ごした遠い昔、允行はよく同じような思いを抱くことがあった。
その昔、まだ允行が師の元を離れていない頃、彼は師の理想を叶えようと必死に修行にあけくれていた。
それは、弟弟子達もまた同じであった。
師の理想の実現。
新しい草とも言える組織を作り上げるその理想を実現するための力。
それは言い換えれば、人を殺めることすら可能とする力を磨くことに他ならなかった。
平等な組織を作り上げるために人を殺める力を磨く。
矛盾にも似たその想いは、允行のみならず他の弟弟子達も抱いていた。
それでも彼らが前を向き、ただ人殺しのために力を磨いているわけではないと自身に言い聞かせることができたのは、友とも呼べる存在があったからであった。
師を慕い、父と呼ぶ弟弟子達皆が集まると、独りで修行していた時に湧き上がる、力に対する仄暗い感情が薄れたのだ。
直前まで人を殺める程の力を磨く彼らも、一同に介せば目の前の重清達のように緊張感なく騒いでいた。
それを笑って諌める師の姿が思い出され、允行はほんのひと時、自身の行いを悔いた。
このような事を、師が望んでいたのかと。
しかし允行は、湧き上がる想いを振り払うかのように首を小さく振った。
もう、後戻りはできない。
もはや父の理想は、潰えたのだ。
その想いで心を塗り固めた允行は、重清達を見つめていた。
その目からは、涙が溢れていた。
「これで、条件は整った。
我が師より頂戴した唯一の忍術を使う時がついに来たのだ」
『約の術』
「ちょっ、心の準備が――――」
重清のその言葉を残し、辺りは静寂に包まれた。
その場には、突然支えが無くなって地面に倒れ込んだ美影と、允行に眠らされた琴音だけが残されていた。
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