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雑賀重清の目標
第428話:甲賀本家当主
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「ねぇみっちゃん。甲賀家って、どんなとこなの?」
恒久達が伊賀本家へと向かているのと同じ頃。雅と共に山奥にある甲賀本家へ向かう道すがら、茜は師であり女子会友達でもある雅へと尋ねた。
「そうだねぇ。体の力が得意だね。あとは・・・」
そこで言葉を止めた雅の顔を、茜が不思議そうに覗き込むと、
「ま、着いたらわかるよ」
雅は何かを誤魔化すように茜から視線を外し、そう答えた。
茜はなんとも中途半端な雅の態度に疑問を感じつつも、
「はぁ~い」
それだけ言って、そのまま静かに師の後についていった。
やがて2人は、一軒の小屋のような家へと到着した。
その前では、1人の甚兵衛姿の男が2人の到着を待つかのように佇んでいた。
「久しぶりだね、以蔵。甲賀本家当主が直々に出迎えとは、恐れ入るね」
雅のその言葉に、以蔵と呼ばれた男は恭しく頭を下げた。
「雅様がお訪ねになるとあっては、他の者に出迎えさせるわけにもいきませんからね」
そう笑みを浮かべる男を見た茜は、
(やだ、あの人良い男じゃない。それにあの筋肉っ!!・・・はっ!ダメよ!わたしにはショウさんがいるのにっ!)
と、1人悶絶していた。
茜がそう思うのも無理はなかった。
年は茜の父と変わらないであろうその男、笑みを浮かべるその顔は年に似合わず若々しく、それでいてダンディに整えられた髭を蓄えたその口元から溢れる笑みは、男の色気をふんだんに辺りに振りまいていた。
そしてその体は、普段から鍛えている事がひと目で分かるほどに逞しく引き締まっており、甚兵衛から覗かせる胸元も、茜を何人も受け止められそうな程に分厚いものであった。
(ウチのパパも、あの人の1億分の1くらいカッコよかったらいいのに)
以蔵の姿に見惚れていた茜は、なんとも可哀想に思える程に心の中で父をディスっていた。
「そちらが、噂のお弟子さんですね?はじめまして。私は現後が本家当主、甲賀以蔵と申します」
そんな茜に対し、以蔵は優しく微笑みかけた。
「あっ、はいっ!わ、わたしは甲賀アカです!」
以蔵のダンディスマイルに顔を赤く染めながら、茜は叫ぶようにそう言うと、若干の下心を込めつつ、遺族と握手すべく手を差し出した。
「ひぃっ!!」
その瞬間、それまで以蔵の顔に浮かんでいたダンディスマイルが消え去り、真っ青な顔で亀のように縮こまる以蔵の姿が茜の目に飛び込んだ。
「へ??」
あまりにも突然の落差に、茜が呆けた顔で以蔵を見つめていると、
「あんた、相変わらず女に触れられるのが怖いみたいだね。
そんなんじゃ、いつまで経っても跡取りができないよ?」
雅は呆れながら、そう言って以蔵に声をかけた。
「いやはや面目ない。お恥ずかしいところを・・・こればかりはどうにも治せなくて」
そう言いながら以蔵は、頭を掻いて立ち上がった。
「茜さんも、驚かせてしまって悪かったね」
以蔵の顔に再び浮かぶダンディスマイルに茜は、
(いや、ギャップ!ダメっ!もう脳が処理できないっ!!)
と、以蔵のあまりにもなギャップに混乱していた。
そんな茜の様子に困った顔を浮かべながらも、以蔵は雅へと向き直った。
「それよりも雅様。こちらへお越しになった理由については、事前に伺いました。甲賀に伝わる術、『朱雀の術』が欲しいとのことですが」
「おや、術の名までは知らなかったが・・・そう簡単に教えても良かったのかい?」
以蔵の言葉に、雅は笑みを浮かべた。
「えぇ。雅様達が『朱雀の術』を欲する理由、そして允行、でしたか。その男の目的についても、理解しました」
「それで、あんたの結論は?」
「流石に差し上げるという訳にはまいりませんが、お貸しするのであれば、問題はないかと」
「ほぉ。いいのかい?あたしらが、というかあたしの孫や弟子のあっちゃん達が失敗すれば、あんたら血の契約者だって、どうなるかわからないんだよ?」
「構いません。人の命がかかっているようですし・・・それに、雅様のお孫さんやお弟子さんに限って、失敗はないでしょうから。なんたって、雅様の、お孫さんや弟子なのですから」
「あたしも随分信頼されてるねぇ」
「それはもう。雅様と平八様は、我々忍者にとって、もはや伝説と呼ばれるほどの存在なのですから」
そう言いながらも、これまでダンディスマイルを浮かべていた以蔵の表情に、陰りが見えた。
「ですが、1つ問題がありまして・・・」
以蔵は言葉を濁しながら、家の方へと目を向けた。
「ちっ。やはり、まだ生きてやがったかい」
以蔵の視線に気がついた雅は、そう小さく呟いた。
その時。
「おやおや。誰かと思ったら雅ちゃんじゃないかい」
そんな声が、家の中から聞こえてきた。
恒久達が伊賀本家へと向かているのと同じ頃。雅と共に山奥にある甲賀本家へ向かう道すがら、茜は師であり女子会友達でもある雅へと尋ねた。
「そうだねぇ。体の力が得意だね。あとは・・・」
そこで言葉を止めた雅の顔を、茜が不思議そうに覗き込むと、
「ま、着いたらわかるよ」
雅は何かを誤魔化すように茜から視線を外し、そう答えた。
茜はなんとも中途半端な雅の態度に疑問を感じつつも、
「はぁ~い」
それだけ言って、そのまま静かに師の後についていった。
やがて2人は、一軒の小屋のような家へと到着した。
その前では、1人の甚兵衛姿の男が2人の到着を待つかのように佇んでいた。
「久しぶりだね、以蔵。甲賀本家当主が直々に出迎えとは、恐れ入るね」
雅のその言葉に、以蔵と呼ばれた男は恭しく頭を下げた。
「雅様がお訪ねになるとあっては、他の者に出迎えさせるわけにもいきませんからね」
そう笑みを浮かべる男を見た茜は、
(やだ、あの人良い男じゃない。それにあの筋肉っ!!・・・はっ!ダメよ!わたしにはショウさんがいるのにっ!)
と、1人悶絶していた。
茜がそう思うのも無理はなかった。
年は茜の父と変わらないであろうその男、笑みを浮かべるその顔は年に似合わず若々しく、それでいてダンディに整えられた髭を蓄えたその口元から溢れる笑みは、男の色気をふんだんに辺りに振りまいていた。
そしてその体は、普段から鍛えている事がひと目で分かるほどに逞しく引き締まっており、甚兵衛から覗かせる胸元も、茜を何人も受け止められそうな程に分厚いものであった。
(ウチのパパも、あの人の1億分の1くらいカッコよかったらいいのに)
以蔵の姿に見惚れていた茜は、なんとも可哀想に思える程に心の中で父をディスっていた。
「そちらが、噂のお弟子さんですね?はじめまして。私は現後が本家当主、甲賀以蔵と申します」
そんな茜に対し、以蔵は優しく微笑みかけた。
「あっ、はいっ!わ、わたしは甲賀アカです!」
以蔵のダンディスマイルに顔を赤く染めながら、茜は叫ぶようにそう言うと、若干の下心を込めつつ、遺族と握手すべく手を差し出した。
「ひぃっ!!」
その瞬間、それまで以蔵の顔に浮かんでいたダンディスマイルが消え去り、真っ青な顔で亀のように縮こまる以蔵の姿が茜の目に飛び込んだ。
「へ??」
あまりにも突然の落差に、茜が呆けた顔で以蔵を見つめていると、
「あんた、相変わらず女に触れられるのが怖いみたいだね。
そんなんじゃ、いつまで経っても跡取りができないよ?」
雅は呆れながら、そう言って以蔵に声をかけた。
「いやはや面目ない。お恥ずかしいところを・・・こればかりはどうにも治せなくて」
そう言いながら以蔵は、頭を掻いて立ち上がった。
「茜さんも、驚かせてしまって悪かったね」
以蔵の顔に再び浮かぶダンディスマイルに茜は、
(いや、ギャップ!ダメっ!もう脳が処理できないっ!!)
と、以蔵のあまりにもなギャップに混乱していた。
そんな茜の様子に困った顔を浮かべながらも、以蔵は雅へと向き直った。
「それよりも雅様。こちらへお越しになった理由については、事前に伺いました。甲賀に伝わる術、『朱雀の術』が欲しいとのことですが」
「おや、術の名までは知らなかったが・・・そう簡単に教えても良かったのかい?」
以蔵の言葉に、雅は笑みを浮かべた。
「えぇ。雅様達が『朱雀の術』を欲する理由、そして允行、でしたか。その男の目的についても、理解しました」
「それで、あんたの結論は?」
「流石に差し上げるという訳にはまいりませんが、お貸しするのであれば、問題はないかと」
「ほぉ。いいのかい?あたしらが、というかあたしの孫や弟子のあっちゃん達が失敗すれば、あんたら血の契約者だって、どうなるかわからないんだよ?」
「構いません。人の命がかかっているようですし・・・それに、雅様のお孫さんやお弟子さんに限って、失敗はないでしょうから。なんたって、雅様の、お孫さんや弟子なのですから」
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そう言いながらも、これまでダンディスマイルを浮かべていた以蔵の表情に、陰りが見えた。
「ですが、1つ問題がありまして・・・」
以蔵は言葉を濁しながら、家の方へと目を向けた。
「ちっ。やはり、まだ生きてやがったかい」
以蔵の視線に気がついた雅は、そう小さく呟いた。
その時。
「おやおや。誰かと思ったら雅ちゃんじゃないかい」
そんな声が、家の中から聞こえてきた。
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