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雑賀重清の目標
第427話:反男の力
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伊賀本家へとやって来た恒久達は、現当主、伊賀宗時と、その息子であり時期当主、宗久にこれまでの経緯を説明した。
「なるほどな。お前達が来た理由については、理解した」
恒久からの話を聞いた宗時は、腕を組み、目を閉じたまま言った。
「じゃぁ、伊賀家に代々伝わる術ってやつ、貰えるんですね!?」
宗時の言葉を聞いた恒久が、反男に目配せをしながらガッツポーズをして宗時へと目を向けた。
「いや、理由はわかったが、それが伊賀家の術を渡す理由にはならんな」
目を開いた宗時は、じっと恒久を見つめて首を振った。
「そもそも、雑賀家を助けて、我々に何の利がある?
百歩譲って、小うるさいあの爺さんを助けて雑賀家に借りを作ったとしても、術を渡すことで我々忍者が消されるかもしれないのだぞ?」
「ぐっ・・・」
無表情で告げる宗時に、恒久は言葉を詰まらせていると、
「あなた達は、何を考えているんですか!?
人の命がかかっているんですよ!?」
反男が声を荒らげて宗時を睨みつけた。
「さっきから気になってたんだけどさ、そいつ誰?
伊賀じゃなさそうだけど」
宗時の息子宗久が、怒りを浮かべる反男を睨みつけた。
「こいつは、反男。俺の後輩で、話に出た黒い忍力を使う一人だ」
そう言って恒久は、当主の息子である宗久を睨み返した。
「なに?」
そんな恒久の言葉に反応したのは、宗時であった。
「恒久よ。確かに私は、あの雑賀雅にすらもつっこめる胆力を持つお前を気に入っている。以前お前に渡しても良いと言った術が、我ら伊賀家に伝わる術であることも認める。
しかし・・・捨て忍如きをこの本家に入れた愚行を、見逃すことはできんぞ?」
「如き、ねぇ・・・」
恒久はため息を漏らし、反男に肩をすくめてから宗時に視線を戻した。
「あの、俺の話聞いてました?こいつら黒い忍力を持ってる奴らは、みんな特殊な力を持ってるんですよ?それなのにそんな言い方、ないんじゃないですかね?」
「力のことは聞いてはいたが、私はそれを目の当たりにしたわけでもない。
この目で見ないことには、信じるわけにはいかないな。
それとも、彼がその力とやらを見せてくれるとでもいうのかな?」
そう言いながら向けられる宗時の視線に、
「別に俺は構いませんよ」
反男はこともなげに答えた。
「反男君、大丈夫なのか?」
未だ分からぬ反男の能力に不安を覚えた恒久は、心配そうに反男へと声をかけた。
「大丈夫ですよ。俺の力は、普通の忍者にも負けませんから」
「はっ!それは面白い!だったら、この俺が捨て忍のお前の相手をしてやるよっ!」
父の言葉に少しも怯む様子のない反男の態度に業を煮やした宗久が、そう言って前へと進み出た。
「息子さんはこう言ってますけど?」
そう言いながらも反男は、既に体を温めるべく準備体操を始めていた。
「ふっ。どうやら相当に自信があるようだな。宗久、相手をしてやれ。
ただし―――」
「わかってるよ。さっさと決めろっていうんだろ?」
「バカ者が。油断はするなといいたいのだ」
「はぁ?捨て忍相手に、何言ってるんだよ?」
「お前こそ、恒久の話を聞いていなかったようだな。あ奴ら捨て忍は、術が使えぬ代わりに心・技・体の力を磨いているのだぞ?
もしも向こうが肉弾戦できたら、術にばかりかまけているお前では苦戦するぞ」
呆れながらそう言う宗時であったが、『苦戦する』というあたり、宗時自身もまた反男、ひいては捨て忍をまだ甘く見ていた。
そんな宗時の親心を小馬鹿にするように、
「んなわけあるかよ」
宗久は吐き捨てるようにそう言って反男を睨みつけた。
そんな宗久の態度に若干の怒りを覚えた反男は、自身を睨みつける宗久を挑発するように微笑みかけた。
「安心してください。最初の一撃は、譲りますよ。
思いっきり、術を使ってください。もしも俺が勝てたら、『伊賀家に伝わる術』ってやつについて、もう一度考え直してもらいますよ」
「ちっ。挑発のつもりかよ。だったら望み通り、一発で決めてやるよっ!」
額に血管を浮かべた宗久はそう叫ぶと、後方へと飛び、術を発動した。
「幻獣の術っ!!」
宗久の術によって作り上げられた麒麟の姿を見た宗時は、
「あのバカが。捨て忍如きにまたあの術を」
そう、小さく呟いて頭を抱えていた。
(おいおい。あの麒麟、俺とやったときより時よりも強そうじゃねぇか)
同じく麒麟の姿をみた恒久は、その様子に心の中で呟いていた。
以前手合わせした際に宗久が作り上げた麒麟よりも、一回りほど大きなその姿に、恒久は不安を感じたのである。
そんな恒久や父の想いをよそに、宗久は自信に満ちた表情で反男を指差し、叫んだ。
「行け麒麟!一発で終わらせろっ!!」
その言葉を待っていたかのように、麒麟は一直線に反男へと目にも留まらぬ速さで駆けはじめた。
そしてまたたく間に反男の目の前まで迫った麒麟は、いつの間にか反男から溢れる黒い忍力に触れると、その身を翻して宗久に向かった。
「なっ!」
宗久がそんな声を漏らした時には、既に麒麟は宗久の体を捉え、そのまま麒麟の突進を受けた宗久は吹き飛びながら、意識を失った。
「ま、こんなもんですかね」
そう言う反男の体を覆う黒い忍力は、小さく文字を作っていた。
『忍術反射』
その名の通り、忍術を反射させるこの能力で、反男は宗久の『幻獣の術』を、術者である宗久へと反射させたのである。
「うぉっーー!すげぇ!!反男君、凄ぇじゃねぇかよっ!
この力があれば、あの婆さんのうざってぇ術もなんてことねぇじゃんか!!
って、だからうざってぇんだよっ!!!」
そう言いながら反男に駆け寄りつつ、雅の『異空手裏剣の術』を避けながら、空へと叫んだ。
そんな恒久の姿に宗時は、
(あれは、雑賀雅の術・・・といあことは、あの雑賀雅にあれ程の暴言を・・・)
そんなことを考えながら、恒久を尊敬の眼差しで見つめていたのであった。
「なるほどな。お前達が来た理由については、理解した」
恒久からの話を聞いた宗時は、腕を組み、目を閉じたまま言った。
「じゃぁ、伊賀家に代々伝わる術ってやつ、貰えるんですね!?」
宗時の言葉を聞いた恒久が、反男に目配せをしながらガッツポーズをして宗時へと目を向けた。
「いや、理由はわかったが、それが伊賀家の術を渡す理由にはならんな」
目を開いた宗時は、じっと恒久を見つめて首を振った。
「そもそも、雑賀家を助けて、我々に何の利がある?
百歩譲って、小うるさいあの爺さんを助けて雑賀家に借りを作ったとしても、術を渡すことで我々忍者が消されるかもしれないのだぞ?」
「ぐっ・・・」
無表情で告げる宗時に、恒久は言葉を詰まらせていると、
「あなた達は、何を考えているんですか!?
人の命がかかっているんですよ!?」
反男が声を荒らげて宗時を睨みつけた。
「さっきから気になってたんだけどさ、そいつ誰?
伊賀じゃなさそうだけど」
宗時の息子宗久が、怒りを浮かべる反男を睨みつけた。
「こいつは、反男。俺の後輩で、話に出た黒い忍力を使う一人だ」
そう言って恒久は、当主の息子である宗久を睨み返した。
「なに?」
そんな恒久の言葉に反応したのは、宗時であった。
「恒久よ。確かに私は、あの雑賀雅にすらもつっこめる胆力を持つお前を気に入っている。以前お前に渡しても良いと言った術が、我ら伊賀家に伝わる術であることも認める。
しかし・・・捨て忍如きをこの本家に入れた愚行を、見逃すことはできんぞ?」
「如き、ねぇ・・・」
恒久はため息を漏らし、反男に肩をすくめてから宗時に視線を戻した。
「あの、俺の話聞いてました?こいつら黒い忍力を持ってる奴らは、みんな特殊な力を持ってるんですよ?それなのにそんな言い方、ないんじゃないですかね?」
「力のことは聞いてはいたが、私はそれを目の当たりにしたわけでもない。
この目で見ないことには、信じるわけにはいかないな。
それとも、彼がその力とやらを見せてくれるとでもいうのかな?」
そう言いながら向けられる宗時の視線に、
「別に俺は構いませんよ」
反男はこともなげに答えた。
「反男君、大丈夫なのか?」
未だ分からぬ反男の能力に不安を覚えた恒久は、心配そうに反男へと声をかけた。
「大丈夫ですよ。俺の力は、普通の忍者にも負けませんから」
「はっ!それは面白い!だったら、この俺が捨て忍のお前の相手をしてやるよっ!」
父の言葉に少しも怯む様子のない反男の態度に業を煮やした宗久が、そう言って前へと進み出た。
「息子さんはこう言ってますけど?」
そう言いながらも反男は、既に体を温めるべく準備体操を始めていた。
「ふっ。どうやら相当に自信があるようだな。宗久、相手をしてやれ。
ただし―――」
「わかってるよ。さっさと決めろっていうんだろ?」
「バカ者が。油断はするなといいたいのだ」
「はぁ?捨て忍相手に、何言ってるんだよ?」
「お前こそ、恒久の話を聞いていなかったようだな。あ奴ら捨て忍は、術が使えぬ代わりに心・技・体の力を磨いているのだぞ?
もしも向こうが肉弾戦できたら、術にばかりかまけているお前では苦戦するぞ」
呆れながらそう言う宗時であったが、『苦戦する』というあたり、宗時自身もまた反男、ひいては捨て忍をまだ甘く見ていた。
そんな宗時の親心を小馬鹿にするように、
「んなわけあるかよ」
宗久は吐き捨てるようにそう言って反男を睨みつけた。
そんな宗久の態度に若干の怒りを覚えた反男は、自身を睨みつける宗久を挑発するように微笑みかけた。
「安心してください。最初の一撃は、譲りますよ。
思いっきり、術を使ってください。もしも俺が勝てたら、『伊賀家に伝わる術』ってやつについて、もう一度考え直してもらいますよ」
「ちっ。挑発のつもりかよ。だったら望み通り、一発で決めてやるよっ!」
額に血管を浮かべた宗久はそう叫ぶと、後方へと飛び、術を発動した。
「幻獣の術っ!!」
宗久の術によって作り上げられた麒麟の姿を見た宗時は、
「あのバカが。捨て忍如きにまたあの術を」
そう、小さく呟いて頭を抱えていた。
(おいおい。あの麒麟、俺とやったときより時よりも強そうじゃねぇか)
同じく麒麟の姿をみた恒久は、その様子に心の中で呟いていた。
以前手合わせした際に宗久が作り上げた麒麟よりも、一回りほど大きなその姿に、恒久は不安を感じたのである。
そんな恒久や父の想いをよそに、宗久は自信に満ちた表情で反男を指差し、叫んだ。
「行け麒麟!一発で終わらせろっ!!」
その言葉を待っていたかのように、麒麟は一直線に反男へと目にも留まらぬ速さで駆けはじめた。
そしてまたたく間に反男の目の前まで迫った麒麟は、いつの間にか反男から溢れる黒い忍力に触れると、その身を翻して宗久に向かった。
「なっ!」
宗久がそんな声を漏らした時には、既に麒麟は宗久の体を捉え、そのまま麒麟の突進を受けた宗久は吹き飛びながら、意識を失った。
「ま、こんなもんですかね」
そう言う反男の体を覆う黒い忍力は、小さく文字を作っていた。
『忍術反射』
その名の通り、忍術を反射させるこの能力で、反男は宗久の『幻獣の術』を、術者である宗久へと反射させたのである。
「うぉっーー!すげぇ!!反男君、凄ぇじゃねぇかよっ!
この力があれば、あの婆さんのうざってぇ術もなんてことねぇじゃんか!!
って、だからうざってぇんだよっ!!!」
そう言いながら反男に駆け寄りつつ、雅の『異空手裏剣の術』を避けながら、空へと叫んだ。
そんな恒久の姿に宗時は、
(あれは、雑賀雅の術・・・といあことは、あの雑賀雅にあれ程の暴言を・・・)
そんなことを考えながら、恒久を尊敬の眼差しで見つめていたのであった。
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