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雑賀重清の目標
第426話:伊賀本家へ
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「はぁ。反男君よぉ。俺って、そんなに頼りねぇかなぁ」
ゴウの話を聞いた一同が解散したのち、『喫茶 中央公園』を後にする恒久は隣を歩く反男へと声をかけた。
「あんた達親子だけじゃ心配だから、その反男って子も連れて行きな」
帰り際にそう言った雅の言葉にモヤッとして気持ちを抱いた恒久は、我慢できずに後輩に不満を漏らしたのである。
「えっと・・・すみません。俺、忍者部にいるわけじゃないので、恒久先輩の立ち位置がよく分かってないです」
突然の、しかも入学式の日以来全くと言っていい程に接点の無かった先輩からの相談に、反男は元来の生真面目さで答えた。
「まぁそりゃそうだけどよぉ。あの婆さんも酷いとは思わねぇか?いくらなんでも、あんな言い方はねぇよな!あぁもう!うぜぇなぁ!!」
『婆さん』という言葉に反応するかのように突然現れた手裏剣をいとも容易く避けながら言葉を続ける恒久に、反男は驚きを禁じ得なかった。
避けられた手裏剣が、何事もなかったかのように霧散する様子を見つめながら、
「で、でも、俺は恒久先輩、凄いと思います」
(多分あの雅って人の手裏剣なんだろうけど、それを平然と避けるなんて、忍者部恐るべし、だな)
反男は内心で恒久に敬意の念を懐きつつ、そう返した。
2中忍者部において最も口の悪い恒久は、これまで幾度となく雅への陰口を叩いていた。
もちろんそれは、雅にも大いに原因はあるわけだが、そんなことは雅には関係ない。
雅は、恒久が自身に対して陰口を言うたびに『異空手裏剣の術』で恒久を攻撃していた。
当初は威嚇のために敢えて外されていた手裏剣も、一向に反省の色を見せない恒久に対し、近頃はしっかりと当たるようになっていた。
もちろん、傷はつかない仕様になってはいたが。
しかし、幾度も『異空手裏剣の術』をその身に受けた恒久は、ついにそれすらも避けるようになっていた。
もはや陰口から『異空手裏剣の術』発動は、恒久と雅の影の遊びになっていたのである。
1つだけ言っておきたい。
威嚇のためとはいえ、手裏剣を人に向けて投げるのは忍者以外の人はしてはいけないのである。
そんな恒久は、反男の言葉に満足し、ニッと笑みを浮かべながら飛んでくる手裏剣を避けた。
「だよな!反男君、わかってんじゃん!」
恒久はそう言いながら、反男の背をバンバンと叩いていた。
(あー、なんかこの感じ・・・部活って感じだな。
俺も、忍者部にいられたら、先輩達とこうやって楽しく話しながら帰ったりできたのかな)
反男は、そんなことを思いながら悲しそうに笑っていた。
手裏剣がそこかしこから飛んでくる現状を『楽しく』と思っているあたり、反男もゴウ達に厳しく修行を受けていたようである。
そんな2人は、そんな調子で恒久宅へと到着した。
そこでは、恒久の父、恒吉が2人を待っていた。
「やっと来たか。大体のことは雅様から聞いている。君が、反男君だね?私は、このバカ息子の父、恒吉だ」
「挨拶はいいから、さっさと本家に行こうぜ。美影の命かかってるし、あの婆さん待たせるとうるせぇだろ?」
そう面倒くさそうに父に言いながらも、恒久は飛んでくる手裏剣を避けた。
「うぉっ!おい恒久!ウチでは雅様の悪口は言うなって言ってるだろ!?
俺までとばっちりがくるじゃないか!!」
「うるせぇな。このくらい避けろよ、バカ親父」
『バカ息子』呼ばわりされた腹いせとばかりに恒久が笑っていると、反男が厳しい目で恒久を見た。
「先輩、お父さんにそんな態度は駄目ですよ」
後輩からのそんな言葉に、恒久は不機嫌そうな表情を浮かべ、直後にそれを反省した。
反男の父は既に亡くなっており、こんな会話すらも既に交わせないことに、気がついたからであった。
「あ、あぁ。悪い」
「謝るんなら、お父さんに、です」
きぜんとした態度でそう言う反男に、恒久は頭をかきながらも頷くと、
「あー、なんだ、その・・・悪かったよ」
バツが悪そうに恒久は父の目を見ずに謝罪の言葉をあげた。
「つ、恒久が謝った!?反抗期終了!?」
そんな息子の態度に混乱する恒吉であったが、
「あの・・・自分で言っておいてなんですが、今はそれどころじゃないのでは・・・」
反男がそう申し訳無さそうに言う言葉に、恒吉はそれまでの表情を一変させて、息子と反男に目を向けた。
「あぁ、そうだった。
これから2人を、本家に連れて行く。本家には詳細な内容は伝えていない。というか、俺の口からはとても言えん。本家に伝わる術を寄越せなどと・・・」
「ってことはなにか?その説明は、俺にやれってことか?」
「頼むぞ、息子よ」
「頼むぞ、じゃねぇよ!息子に頼ってんじゃねぇよっ!」
「先輩」
「いや、違うぞ反男君!今のはつっこみであってだなぁ!」
「言い訳は聞きませんよ?」
「いや~、反男君がいると、息子が真っ当になってくれるようで助かるなぁ」
そんな会話をしながら、3人は伊賀本家へ向かうべく、井田家に飾られた掛け軸の向こうへと進むのであった。
ゴウの話を聞いた一同が解散したのち、『喫茶 中央公園』を後にする恒久は隣を歩く反男へと声をかけた。
「あんた達親子だけじゃ心配だから、その反男って子も連れて行きな」
帰り際にそう言った雅の言葉にモヤッとして気持ちを抱いた恒久は、我慢できずに後輩に不満を漏らしたのである。
「えっと・・・すみません。俺、忍者部にいるわけじゃないので、恒久先輩の立ち位置がよく分かってないです」
突然の、しかも入学式の日以来全くと言っていい程に接点の無かった先輩からの相談に、反男は元来の生真面目さで答えた。
「まぁそりゃそうだけどよぉ。あの婆さんも酷いとは思わねぇか?いくらなんでも、あんな言い方はねぇよな!あぁもう!うぜぇなぁ!!」
『婆さん』という言葉に反応するかのように突然現れた手裏剣をいとも容易く避けながら言葉を続ける恒久に、反男は驚きを禁じ得なかった。
避けられた手裏剣が、何事もなかったかのように霧散する様子を見つめながら、
「で、でも、俺は恒久先輩、凄いと思います」
(多分あの雅って人の手裏剣なんだろうけど、それを平然と避けるなんて、忍者部恐るべし、だな)
反男は内心で恒久に敬意の念を懐きつつ、そう返した。
2中忍者部において最も口の悪い恒久は、これまで幾度となく雅への陰口を叩いていた。
もちろんそれは、雅にも大いに原因はあるわけだが、そんなことは雅には関係ない。
雅は、恒久が自身に対して陰口を言うたびに『異空手裏剣の術』で恒久を攻撃していた。
当初は威嚇のために敢えて外されていた手裏剣も、一向に反省の色を見せない恒久に対し、近頃はしっかりと当たるようになっていた。
もちろん、傷はつかない仕様になってはいたが。
しかし、幾度も『異空手裏剣の術』をその身に受けた恒久は、ついにそれすらも避けるようになっていた。
もはや陰口から『異空手裏剣の術』発動は、恒久と雅の影の遊びになっていたのである。
1つだけ言っておきたい。
威嚇のためとはいえ、手裏剣を人に向けて投げるのは忍者以外の人はしてはいけないのである。
そんな恒久は、反男の言葉に満足し、ニッと笑みを浮かべながら飛んでくる手裏剣を避けた。
「だよな!反男君、わかってんじゃん!」
恒久はそう言いながら、反男の背をバンバンと叩いていた。
(あー、なんかこの感じ・・・部活って感じだな。
俺も、忍者部にいられたら、先輩達とこうやって楽しく話しながら帰ったりできたのかな)
反男は、そんなことを思いながら悲しそうに笑っていた。
手裏剣がそこかしこから飛んでくる現状を『楽しく』と思っているあたり、反男もゴウ達に厳しく修行を受けていたようである。
そんな2人は、そんな調子で恒久宅へと到着した。
そこでは、恒久の父、恒吉が2人を待っていた。
「やっと来たか。大体のことは雅様から聞いている。君が、反男君だね?私は、このバカ息子の父、恒吉だ」
「挨拶はいいから、さっさと本家に行こうぜ。美影の命かかってるし、あの婆さん待たせるとうるせぇだろ?」
そう面倒くさそうに父に言いながらも、恒久は飛んでくる手裏剣を避けた。
「うぉっ!おい恒久!ウチでは雅様の悪口は言うなって言ってるだろ!?
俺までとばっちりがくるじゃないか!!」
「うるせぇな。このくらい避けろよ、バカ親父」
『バカ息子』呼ばわりされた腹いせとばかりに恒久が笑っていると、反男が厳しい目で恒久を見た。
「先輩、お父さんにそんな態度は駄目ですよ」
後輩からのそんな言葉に、恒久は不機嫌そうな表情を浮かべ、直後にそれを反省した。
反男の父は既に亡くなっており、こんな会話すらも既に交わせないことに、気がついたからであった。
「あ、あぁ。悪い」
「謝るんなら、お父さんに、です」
きぜんとした態度でそう言う反男に、恒久は頭をかきながらも頷くと、
「あー、なんだ、その・・・悪かったよ」
バツが悪そうに恒久は父の目を見ずに謝罪の言葉をあげた。
「つ、恒久が謝った!?反抗期終了!?」
そんな息子の態度に混乱する恒吉であったが、
「あの・・・自分で言っておいてなんですが、今はそれどころじゃないのでは・・・」
反男がそう申し訳無さそうに言う言葉に、恒吉はそれまでの表情を一変させて、息子と反男に目を向けた。
「あぁ、そうだった。
これから2人を、本家に連れて行く。本家には詳細な内容は伝えていない。というか、俺の口からはとても言えん。本家に伝わる術を寄越せなどと・・・」
「ってことはなにか?その説明は、俺にやれってことか?」
「頼むぞ、息子よ」
「頼むぞ、じゃねぇよ!息子に頼ってんじゃねぇよっ!」
「先輩」
「いや、違うぞ反男君!今のはつっこみであってだなぁ!」
「言い訳は聞きませんよ?」
「いや~、反男君がいると、息子が真っ当になってくれるようで助かるなぁ」
そんな会話をしながら、3人は伊賀本家へ向かうべく、井田家に飾られた掛け軸の向こうへと進むのであった。
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