おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
476 / 519
雑賀重清の目標

第426話:伊賀本家へ

しおりを挟む
「はぁ。反男君よぉ。俺って、そんなに頼りねぇかなぁ」
ゴウの話を聞いた一同が解散したのち、『喫茶 中央公園』を後にする恒久は隣を歩く反男へと声をかけた。

あんた達親子恒久と恒吉だけじゃ心配だから、その反男って子も連れて行きな」
帰り際にそう言った雅の言葉にモヤッとして気持ちを抱いた恒久は、我慢できずに後輩に不満を漏らしたのである。

「えっと・・・すみません。俺、忍者部にいるわけじゃないので、恒久先輩の立ち位置がよく分かってないです」
突然の、しかも入学式の日以来全くと言っていい程に接点の無かった先輩からの相談に、反男は元来の生真面目さで答えた。

「まぁそりゃそうだけどよぉ。あの婆さんも酷いとは思わねぇか?いくらなんでも、あんな言い方はねぇよな!あぁもう!うぜぇなぁ!!」
『婆さん』という言葉に反応するかのように突然現れた手裏剣をいとも容易く避けながら言葉を続ける恒久に、反男は驚きを禁じ得なかった。

避けられた手裏剣が、何事もなかったかのように霧散する様子を見つめながら、

「で、でも、俺は恒久先輩、凄いと思います」
(多分あの雅って人の手裏剣なんだろうけど、それを平然と避けるなんて、忍者部恐るべし、だな)
反男は内心で恒久に敬意の念を懐きつつ、そう返した。

2中忍者部において最も口の悪い恒久は、これまで幾度となく雅への陰口を叩いていた。

もちろんそれは、雅にも大いに原因はあるわけだが、そんなことは雅には関係ない。

雅は、恒久が自身に対して陰口を言うたびに『異空手裏剣の術』で恒久を攻撃していた。

当初は威嚇のために敢えて外されていた手裏剣も、一向に反省の色を見せない恒久に対し、近頃はしっかりと当たるようになっていた。

もちろん、傷はつかない仕様になってはいたが。

しかし、幾度も『異空手裏剣の術』をその身に受けた恒久は、ついにそれすらも避けるようになっていた。

もはや陰口から『異空手裏剣の術』発動は、恒久と雅の影の遊び戦いになっていたのである。

1つだけ言っておきたい。
威嚇のためとはいえ、手裏剣を人に向けて投げるのは忍者以外の人はしてはいけないのである。

そんな恒久は、反男の言葉に満足し、ニッと笑みを浮かべながら飛んでくる手裏剣を避けた。

「だよな!反男君、わかってんじゃん!」
恒久はそう言いながら、反男の背をバンバンと叩いていた。

(あー、なんかこの感じ・・・部活って感じだな。
俺も、忍者部にいられたら、先輩達とこうやって楽しく話しながら帰ったりできたのかな)
反男は、そんなことを思いながら悲しそうに笑っていた。

手裏剣がそこかしこから飛んでくる現状を『楽しく』と思っているあたり、反男もゴウ達に厳しく修行を受けていたようである。

そんな2人は、そんな調子で恒久宅へと到着した。

そこでは、恒久の父、恒吉が2人を待っていた。

「やっと来たか。大体のことは雅様から聞いている。君が、反男君だね?私は、このバカ息子の父、恒吉だ」
「挨拶はいいから、さっさと本家に行こうぜ。美影の命かかってるし、あの婆さん待たせるとうるせぇだろ?」
そう面倒くさそうに父に言いながらも、恒久は飛んでくる手裏剣を避けた。

「うぉっ!おい恒久!ウチでは雅様の悪口は言うなって言ってるだろ!?
俺までとばっちりがくるじゃないか!!」
「うるせぇな。このくらい避けろよ、バカ親父」
『バカ息子』呼ばわりされた腹いせとばかりに恒久が笑っていると、反男が厳しい目で恒久を見た。

「先輩、お父さんにそんな態度は駄目ですよ」
後輩からのそんな言葉に、恒久は不機嫌そうな表情を浮かべ、直後にそれを反省した。

反男の父は既に亡くなっており、こんな会話すらも既に交わせないことに、気がついたからであった。

「あ、あぁ。悪い」
「謝るんなら、お父さんに、です」
きぜんとした態度でそう言う反男に、恒久は頭をかきながらも頷くと、

「あー、なんだ、その・・・悪かったよ」
バツが悪そうに恒久は父の目を見ずに謝罪の言葉をあげた。

「つ、恒久が謝った!?反抗期終了!?」
そんな息子の態度に混乱する恒吉であったが、

「あの・・・自分で言っておいてなんですが、今はそれどころじゃないのでは・・・」
反男がそう申し訳無さそうに言う言葉に、恒吉はそれまでの表情を一変させて、息子と反男に目を向けた。

「あぁ、そうだった。
これから2人を、本家に連れて行く。本家には詳細な内容は伝えていない。というか、俺の口からはとても言えん。本家に伝わる術を寄越せなどと・・・」
「ってことはなにか?その説明は、俺にやれってことか?」

「頼むぞ、息子よ」
「頼むぞ、じゃねぇよ!息子に頼ってんじゃねぇよっ!」

「先輩」
「いや、違うぞ反男君!今のはつっこみであってだなぁ!」

「言い訳は聞きませんよ?」
「いや~、反男君がいると、息子が真っ当になってくれるようで助かるなぁ」
そんな会話をしながら、3人は伊賀本家へ向かうべく、井田家に飾られた掛け軸の向こうへと進むのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。 そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。 しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。 世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。 そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。 そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。 「イシュド、学園に通ってくれねぇか」 「へ?」 そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。 ※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

処理中です...