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雑賀重清の目標
第424話:甲賀ゴウの師
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「申し訳ございませんでしたっ!!」
雅に見つめられたオウは、素早く見事なまでの土下座を披露した。
「あたしは別に、謝れとは言っていないんだがねぇ」
そう言いながらも、雅が仁王立ちのままオウを冷たい目で見下ろしていると、
「お、おじいちゃん・・・」
「「「オウさん・・・」」」
聡太と、重清、恒久、茜は不安そうな目でオウを見ていた。
「オウさん、一体なんで・・・」
ノリもまた、驚きの目でオウを見て呟いていると、
「ほれ。自慢の弟子も不安そうじゃないか。さっさと白状して、楽になっちまいな」
もはや悪人面の雅が、まるで取調室でカツ丼を出す直前の刑事のごとく、オウに優しく語りかけた。
オウはその身を震わせながらも、顔を上げて聡太を見つめ、雅へとその視線をうつして口を開いた。
「あの、ゴウと呼ばれる男。あれは、友なのです」
そして、オウは語りだした。
「私は、皆から『雑賀平八の一番弟子』などと呼ばれておりますが、それは違います。本当は、あの男こそが、平八様の一番弟子になるはずだったのです。
当時私らの中学で教師1年目として着任した平八様に声をかけられた彼と共に、私は平八様との契約を結びました。
平八様が弟子にと考えたのは、彼の方だったのです。
しかし彼は、あの黒い忍力を発現させた。
当時の私には、それが何かは分かりませんでした。
翌日、姿を現さない彼を迎えに行こうとする私に、平八様は捨て忍の事を教えてくださいました。
そしてそのまま平八様の前に姿を見せなくなった彼に代わり、私だけが平八様から教えを受けるようになったのです。
私の方も、平八様から捨て忍の話を聞かされてからは、彼に負い目を感じるようになり、いつしか彼と距離を取るようになっていました。
そのまま中学を卒業した私は、それ以降彼とは疎遠になっていました。
そして私はいつしか『雑賀平八の一番弟子』などという身の丈に合わない字名で呼ばれるようになりました。
それから何十年も経った頃、突然彼は私の前に現れました」
「まさか、その時におじいちゃんがあの人と契約を?」
これまで黙って聞いていた聡太が、オウの顔を覗き込んだ。
その顔には、複雑な表情が浮かんでいた。
それは、重清達も同じであった。
もしも友が捨て忍となり、再び自身の前に現れたとき、もしかすると自分ならば、その友と契約を結び、再び忍者にするかもしれない。
そう、彼らは想像していたのである。
しかし、そんな彼らの想像をノリが打ち砕いた。
「いや、それは不可能だ。我々忍者は、誰かと契約をした場合、その全てを協会に報告する義務がある。
これは、他者との契約が出来るようになった際に協会と結ばされる契約だがら、例外はありえない」
「その通りだ。私の前に現れた彼は、その時既に再び忍者となっていた」
ノリの言葉に、オウが頷いて答えた。
「それで、ウチの情報をペラペラと話したってわけかい」
雅は呆れながら、オウを見つめていた。
「私は、嬉しかったのです。彼と再び友に戻ることが出来たような気がして」
オウは俯き、消えそうなほど小さな声で呟いた。
「まぁ、気持ちはわかるよね。おれだってソウがもし捨て忍だなんて呼ばれておれの前から居なくなっちゃったら、絶対に見つけ出して契約したいもんな」
重清が笑いながらそう言うと、
「ぼくも、そうかも」
聡太も笑顔で頷いた。
「じゃぁ、あの男が誰と契約をしたのかは分からないわけかい」
重清達の言葉に笑みを浮かべながら、雅はそう言って肩をすくめた。
「それについては、儂から話しましょう」
その時、店の奥から声が聞こえてきた。
「親父っ!」
「剛ちゃん・・・」
フラフラと壁にもたれながらもやって来たゴウの姿に、弟子達4人と共にオウが声を出して駆け寄った。
「扇ちん。すまなかったな、扇ちんだけ責められる形になってしまって」
そう言ったゴウは雅を見つめた。
「雅殿。扇ちん―――甲賀オウには私が無理やり話を聞きだしました。あまり責めないでいただけると」
「責めるもなにも、もう終わったことだからね。オウにはちょっとあたしの修行に付き合ってもらうくらいの軽い罰を与えるつもりしかないよ」
((いやそれ、かなりの罰だから))
雅の言葉を聞いた重清とプレッソは心の中でつっこんだ。
「それよりあんた、もう傷は良いのかい?」
孫たちからのつっこみなど知る由もない雅からの問いに、
「ええ、おかげさまで。お前たちにも、心配かけたな」
ゴウはそう答えて弟子達へと頷いた。
「そうかい。それならば答えてもらおうか。あんたの師は、誰なんだい?」
そう言ってゴウを見る雅の瞳には、何か覚悟のようなものが込められていた。
「誰もなにも・・・儂の師は、昔から代わってはいない。初めて契約をしたあの日から、儂の師はずっと、雑賀、いや、甲賀平八様以外にはおりません」
ゴウの言葉に、その場は静寂へと包まれた。
雅に見つめられたオウは、素早く見事なまでの土下座を披露した。
「あたしは別に、謝れとは言っていないんだがねぇ」
そう言いながらも、雅が仁王立ちのままオウを冷たい目で見下ろしていると、
「お、おじいちゃん・・・」
「「「オウさん・・・」」」
聡太と、重清、恒久、茜は不安そうな目でオウを見ていた。
「オウさん、一体なんで・・・」
ノリもまた、驚きの目でオウを見て呟いていると、
「ほれ。自慢の弟子も不安そうじゃないか。さっさと白状して、楽になっちまいな」
もはや悪人面の雅が、まるで取調室でカツ丼を出す直前の刑事のごとく、オウに優しく語りかけた。
オウはその身を震わせながらも、顔を上げて聡太を見つめ、雅へとその視線をうつして口を開いた。
「あの、ゴウと呼ばれる男。あれは、友なのです」
そして、オウは語りだした。
「私は、皆から『雑賀平八の一番弟子』などと呼ばれておりますが、それは違います。本当は、あの男こそが、平八様の一番弟子になるはずだったのです。
当時私らの中学で教師1年目として着任した平八様に声をかけられた彼と共に、私は平八様との契約を結びました。
平八様が弟子にと考えたのは、彼の方だったのです。
しかし彼は、あの黒い忍力を発現させた。
当時の私には、それが何かは分かりませんでした。
翌日、姿を現さない彼を迎えに行こうとする私に、平八様は捨て忍の事を教えてくださいました。
そしてそのまま平八様の前に姿を見せなくなった彼に代わり、私だけが平八様から教えを受けるようになったのです。
私の方も、平八様から捨て忍の話を聞かされてからは、彼に負い目を感じるようになり、いつしか彼と距離を取るようになっていました。
そのまま中学を卒業した私は、それ以降彼とは疎遠になっていました。
そして私はいつしか『雑賀平八の一番弟子』などという身の丈に合わない字名で呼ばれるようになりました。
それから何十年も経った頃、突然彼は私の前に現れました」
「まさか、その時におじいちゃんがあの人と契約を?」
これまで黙って聞いていた聡太が、オウの顔を覗き込んだ。
その顔には、複雑な表情が浮かんでいた。
それは、重清達も同じであった。
もしも友が捨て忍となり、再び自身の前に現れたとき、もしかすると自分ならば、その友と契約を結び、再び忍者にするかもしれない。
そう、彼らは想像していたのである。
しかし、そんな彼らの想像をノリが打ち砕いた。
「いや、それは不可能だ。我々忍者は、誰かと契約をした場合、その全てを協会に報告する義務がある。
これは、他者との契約が出来るようになった際に協会と結ばされる契約だがら、例外はありえない」
「その通りだ。私の前に現れた彼は、その時既に再び忍者となっていた」
ノリの言葉に、オウが頷いて答えた。
「それで、ウチの情報をペラペラと話したってわけかい」
雅は呆れながら、オウを見つめていた。
「私は、嬉しかったのです。彼と再び友に戻ることが出来たような気がして」
オウは俯き、消えそうなほど小さな声で呟いた。
「まぁ、気持ちはわかるよね。おれだってソウがもし捨て忍だなんて呼ばれておれの前から居なくなっちゃったら、絶対に見つけ出して契約したいもんな」
重清が笑いながらそう言うと、
「ぼくも、そうかも」
聡太も笑顔で頷いた。
「じゃぁ、あの男が誰と契約をしたのかは分からないわけかい」
重清達の言葉に笑みを浮かべながら、雅はそう言って肩をすくめた。
「それについては、儂から話しましょう」
その時、店の奥から声が聞こえてきた。
「親父っ!」
「剛ちゃん・・・」
フラフラと壁にもたれながらもやって来たゴウの姿に、弟子達4人と共にオウが声を出して駆け寄った。
「扇ちん。すまなかったな、扇ちんだけ責められる形になってしまって」
そう言ったゴウは雅を見つめた。
「雅殿。扇ちん―――甲賀オウには私が無理やり話を聞きだしました。あまり責めないでいただけると」
「責めるもなにも、もう終わったことだからね。オウにはちょっとあたしの修行に付き合ってもらうくらいの軽い罰を与えるつもりしかないよ」
((いやそれ、かなりの罰だから))
雅の言葉を聞いた重清とプレッソは心の中でつっこんだ。
「それよりあんた、もう傷は良いのかい?」
孫たちからのつっこみなど知る由もない雅からの問いに、
「ええ、おかげさまで。お前たちにも、心配かけたな」
ゴウはそう答えて弟子達へと頷いた。
「そうかい。それならば答えてもらおうか。あんたの師は、誰なんだい?」
そう言ってゴウを見る雅の瞳には、何か覚悟のようなものが込められていた。
「誰もなにも・・・儂の師は、昔から代わってはいない。初めて契約をしたあの日から、儂の師はずっと、雑賀、いや、甲賀平八様以外にはおりません」
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