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雑賀重清の目標
第414話:甲賀ゴウの力
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「あなたが、お父様を殺したのねっ!?」
そう叫びながら繰り出された美影の拳を、ゴウは身動き一つせすつにその顔面で受け止めた。
「えっ?」
ゴウに拳を振るった美影は、声を漏らして自身の拳を見つめていた。
その拳は、確かにゴウの顔面へと届いていた。
にも関わらず、その拳には一切の手応えが無かったのだ。
「美影、離れろっ!」
重清の声が美影の耳に届いた時には、その額に強い衝撃が走り、美影はそのまま重清の方へと吹き飛ばされていた。
「ぐぇっ!」
美影をその身で受け止めた重清のそんな声を耳にしつつ、美影はゴウをにらみ続けていた。
デコピンで弾いた指を収めつつ、ゴウもまた、美影をじっと見つめていた。
「待って、美影」
再びゴウへと向かおうとする美影を抑えながら言う重清に、美影は振り向いた。
「離して重清っ!あいつは、お父様を―――」
「待ってって!あの人、そんな事言ってないだろ!?それに、あの人には何をしても無駄なんだよ!」
美影に言い返しながらゴウへと向けられた重清の視線を追った美影の目に、ゴウの体から溢れる黒い力が作り上げた文字が入った。
絶対無敵
捨て忍と呼ばれる甲賀ゴウが、その昔発現したのがこの力『絶対無敵』である。
その文字が表すようにこの力、無敵なのである。
ゴウのこの力の前では、どのような力も無力なのだ。
それは、あの雑賀雅も例外ではない。
事実ゴウは、一度雅の攻撃をこの力で防いでいた。
「雑賀重清の言うとおりだ。お前の攻撃など、この力の前では無力。しかし、お前を見ているとこの傷が疼くな」
ゴウはそう言って、数ある傷のうち右腕の火傷のような跡を擦った。
「これはお前の父、雑賀兵衛蔵がつけたものだ。
もう十年前以上前の話か。あの頃の儂は、この力でお前達忍者に、勝つことだけを考えていた」
突然、ゴウは昔を語りだした。
「幾人もの忍者をこの力で沈め、この力で忍者共の目を覚ますことができると、信じてな。
そんな時儂は、ある若き天才忍者の噂を耳にした。
それがお前の父だった」
ゴウはそう言って、美影を見つめた。
その瞳には、優しくも悲しい色が滲み出ていた。
そんなゴウの目に、美影もそれまでの怒りを忘れ、ゴウの話に聞き入っていた。
「儂はすぐに、雑賀兵衛蔵に戦いを挑んだ。結果は、儂の圧勝だったがな」
そう言って懐かしそうな笑みを浮かべるゴウは、更に語る。
「しかしあの男は、儂との戦いの中でこの力を破る術を編み出しかけていた。この傷は、その時につけられたものだ」
言いながら傷を撫でるゴウを、美影はじっと見つめた。
「それが理由で、父を殺したの?」
「まさか」
美影の言葉に、ゴウは首を振って答えた。
「あの術が完成していれば、確かに儂は負けたかもしれない。だが、儂にはそれが嬉しかった。そしてあの男との再戦を、儂は強く願っていた。
だから儂は、この力だけに頼らず、心・技・体の力を更に極めようと思えたのだ。
あの戦いの直後、あの男が事故死したと聞いたときは、久々にこの目から涙が溢れたものだ」
ゴウの話を聞いていた美影は、じっとゴウを見つめ、そして強く頷いた。
「・・・あなたを、信じるわ。あなた、見かけほど悪い人には見えないし」
「・・・見かけほど、というのには多少引っかかるが・・・そう言ってくれると助かる」
ゴウは若干不服そうな顔をしながらも、美影に笑いかけた。
「ふむ。そろそろ潮時かな」
美影に頷き返したゴウは、近づいてくる気配を察知し、そう言葉を漏らした。
「ふん。そのとおりだよ」
ゴウの言葉に、面白くなさそうなそんな声が重清の背後から返ってきた。
「ば、ばあちゃん!?」
重清が振り向くと、そこには祖母雅と、ノリが居たのであった。
「雅殿。来るのが遅かったのではないですかな?」
ゴウは雅の姿に驚くことなく、声をかけた。
「どうやったかは知らないが、この子達の忍力を感知できなくてね」
雅は重清の元へと歩み寄り、その頭に手を当てながらゴウへと返した。
「で、誘われるように突然その忍力を感知して、ここにやって来たってわけだ」
雅に続いてノリが、そう言ってゴウを睨んだ。
「ふむ。これで役者は揃ったというわけだな。多少予定とは違うが、そろそろ幕を閉じるとするか」
雅とノリの登場を待っていたかのような言葉をゴウが告げると、その背後から1人の男がゆっくりとドウの前へと歩み出た。
「こんにちはぁ~。みなさぁ~ん、その場を動かないでねぇ~。この人がどうなっても知らないよぉ~」
間延びした声を出しながら出てきたのは、これまで隠れていたもう1人の捨て忍、甲賀ユキであった。
ユキは、その隣にいる人物に肩をかけ、その場にいる重清達を見回した。
「「はぁ!?」」
ユキの隣にいる人質に、重清とノリが叫び声を上げた。
そう叫びながら繰り出された美影の拳を、ゴウは身動き一つせすつにその顔面で受け止めた。
「えっ?」
ゴウに拳を振るった美影は、声を漏らして自身の拳を見つめていた。
その拳は、確かにゴウの顔面へと届いていた。
にも関わらず、その拳には一切の手応えが無かったのだ。
「美影、離れろっ!」
重清の声が美影の耳に届いた時には、その額に強い衝撃が走り、美影はそのまま重清の方へと吹き飛ばされていた。
「ぐぇっ!」
美影をその身で受け止めた重清のそんな声を耳にしつつ、美影はゴウをにらみ続けていた。
デコピンで弾いた指を収めつつ、ゴウもまた、美影をじっと見つめていた。
「待って、美影」
再びゴウへと向かおうとする美影を抑えながら言う重清に、美影は振り向いた。
「離して重清っ!あいつは、お父様を―――」
「待ってって!あの人、そんな事言ってないだろ!?それに、あの人には何をしても無駄なんだよ!」
美影に言い返しながらゴウへと向けられた重清の視線を追った美影の目に、ゴウの体から溢れる黒い力が作り上げた文字が入った。
絶対無敵
捨て忍と呼ばれる甲賀ゴウが、その昔発現したのがこの力『絶対無敵』である。
その文字が表すようにこの力、無敵なのである。
ゴウのこの力の前では、どのような力も無力なのだ。
それは、あの雑賀雅も例外ではない。
事実ゴウは、一度雅の攻撃をこの力で防いでいた。
「雑賀重清の言うとおりだ。お前の攻撃など、この力の前では無力。しかし、お前を見ているとこの傷が疼くな」
ゴウはそう言って、数ある傷のうち右腕の火傷のような跡を擦った。
「これはお前の父、雑賀兵衛蔵がつけたものだ。
もう十年前以上前の話か。あの頃の儂は、この力でお前達忍者に、勝つことだけを考えていた」
突然、ゴウは昔を語りだした。
「幾人もの忍者をこの力で沈め、この力で忍者共の目を覚ますことができると、信じてな。
そんな時儂は、ある若き天才忍者の噂を耳にした。
それがお前の父だった」
ゴウはそう言って、美影を見つめた。
その瞳には、優しくも悲しい色が滲み出ていた。
そんなゴウの目に、美影もそれまでの怒りを忘れ、ゴウの話に聞き入っていた。
「儂はすぐに、雑賀兵衛蔵に戦いを挑んだ。結果は、儂の圧勝だったがな」
そう言って懐かしそうな笑みを浮かべるゴウは、更に語る。
「しかしあの男は、儂との戦いの中でこの力を破る術を編み出しかけていた。この傷は、その時につけられたものだ」
言いながら傷を撫でるゴウを、美影はじっと見つめた。
「それが理由で、父を殺したの?」
「まさか」
美影の言葉に、ゴウは首を振って答えた。
「あの術が完成していれば、確かに儂は負けたかもしれない。だが、儂にはそれが嬉しかった。そしてあの男との再戦を、儂は強く願っていた。
だから儂は、この力だけに頼らず、心・技・体の力を更に極めようと思えたのだ。
あの戦いの直後、あの男が事故死したと聞いたときは、久々にこの目から涙が溢れたものだ」
ゴウの話を聞いていた美影は、じっとゴウを見つめ、そして強く頷いた。
「・・・あなたを、信じるわ。あなた、見かけほど悪い人には見えないし」
「・・・見かけほど、というのには多少引っかかるが・・・そう言ってくれると助かる」
ゴウは若干不服そうな顔をしながらも、美影に笑いかけた。
「ふむ。そろそろ潮時かな」
美影に頷き返したゴウは、近づいてくる気配を察知し、そう言葉を漏らした。
「ふん。そのとおりだよ」
ゴウの言葉に、面白くなさそうなそんな声が重清の背後から返ってきた。
「ば、ばあちゃん!?」
重清が振り向くと、そこには祖母雅と、ノリが居たのであった。
「雅殿。来るのが遅かったのではないですかな?」
ゴウは雅の姿に驚くことなく、声をかけた。
「どうやったかは知らないが、この子達の忍力を感知できなくてね」
雅は重清の元へと歩み寄り、その頭に手を当てながらゴウへと返した。
「で、誘われるように突然その忍力を感知して、ここにやって来たってわけだ」
雅に続いてノリが、そう言ってゴウを睨んだ。
「ふむ。これで役者は揃ったというわけだな。多少予定とは違うが、そろそろ幕を閉じるとするか」
雅とノリの登場を待っていたかのような言葉をゴウが告げると、その背後から1人の男がゆっくりとドウの前へと歩み出た。
「こんにちはぁ~。みなさぁ~ん、その場を動かないでねぇ~。この人がどうなっても知らないよぉ~」
間延びした声を出しながら出てきたのは、これまで隠れていたもう1人の捨て忍、甲賀ユキであった。
ユキは、その隣にいる人物に肩をかけ、その場にいる重清達を見回した。
「「はぁ!?」」
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