おれは忍者の子孫

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雑賀重清の目標

第406話:中忍体の結果と3中忍者部顧問

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「おつかれさぁ~ん!!・・・あれ?」
『喫茶 中央公園』へと到着した重清が、元気にそう言って中へと入ると、既に中忍体を終えていた2中忍者部一同は打ち上げをするでもなく、ただ静かに座り込んで肩を落としていた。

「え、なになに?なんでこんなに暗いの!?あ、もしかして、『負けたよ・・・なーんちゃって!』
ってノリ!?あ、ちょ、今の忘れて!ちゃんと引っ掛かるから!」
重清は1人でそう言って盛り上がると、わざわざ表情を暗くして、再び口を開いた。

「え、みんな、その雰囲気・・・もしかして、負けたの?」
暗い顔でニヤニヤする重清。
少しも引っ掛けるつもりなどないようである。

「・・・おい重清。なんだか様子がおかしいぞ」
いつもならば、『いや表情に感情ダダ漏れじゃねーかっ!』と恒久のつっこみが入るであろうこの状況にも関わらず、静かなままの忍者部の面々に、プレッソが小さくつっこんだ。

「ちょっとみんな~。なんでそんなに暗いのさ。まさか、本当に3中に負けたんじゃないよね?」
皆の様子に流石に違和感を感じた重清も、無理に笑って一同を見渡した。

「その、まさかだよ」
そんな重清に、シンが重い口を開いた。

「え、だって、あの3中だよ?去年はおれ達の方が、強かったじゃん」
「だからその3中に、コテンパンにやられたっつってんだろうがよっ!」
今なお呑気な重清に、恒久がイライラしながら叫んだ。

「シゲ、本当なんだ。3中の人達、去年とは比べ物にならなかったよ。完全に、ぼくらの完敗だったよ」
聡太が重清をじっと見つめて静かに呟くと、

「そ、そんな・・・」
親友の言葉に、2中が負けたことを実感した重清は、肩を落とした。

「だって・・・去年はそんなに強くなかったのに・・・ノリさん!?一体どういうことなの!?」
それでもまだ完全に信じきれない重清は、ノリに縋るような視線を送った。

しかしノリはそれに答えることなく、重清を、いや、重清の後方へとじっと目を向けていた。
そしてノリは、口を開いた。

「まさかとは思ったが・・・君だったか。君が、3中の新しい顧問なんだな?公弘君」

「へ?」

ノリの言葉に、重清だけでなく忍者部一同と、プレッソ達がそんな声を上げて公弘へと視線を向けた。

美影だけは、なんのことやらわからずただ重清の腕にしがみついて事の行く末をじっと見守っていた。

そんななか、一同の視線を受けた公弘はじっとノリを見据え、口を開いた。

「あの子達から連絡を受けて結果は知っていましたが、やはり我々が勝ちましたね」
公弘はそう言って、ノリに笑みを返す。

「き、公弘兄ちゃん、なんで・・・」
公弘をじっと見つめて呟く重清に、公弘は首を傾げる。

「なんで?何を言っているんだ重清。言っただろ?俺はじいちゃんの、雑賀平八の作り上げた忍者教育カリキュラムを超えるって」
「それは、そうだけど・・・」

「ま、流石にたった数ヶ月では全国優勝を目指せるまでには至っていませんが、2中に勝てるくらいには育てることが出来たみたいですね」
公弘は重清からノリへと目線を変えて、肩をすくめた。

「3中の子達は、ウチに勝つことに特化した成長をしているように感じたのは、間違いではないみたいだな」
ノリは舌打ちをしながら、公弘を睨みつけていた。

「流石はノリさん、気づかれましたか。今回の中忍体はウチと2中しか参加しないことが分かっていましたからね。2中の子達の力は去年来たときにある程度把握していたので、それに合わせた修行をつけたんですよ。
新入生である彼女が出なかったのは、こちらにとって幸いでした」
公弘はそう言って、優希に目を向けていた。

「我々教師が事前に他校の情報を入手するのは、タブーなはずだがな」
ノリのその言葉に、公弘は首を振った。

「まさか、そんなことしませんよ。ちゃんと彼ら自身に、調べさせたんですよ。
敵の情報を調べることも、忍者としては大事なことですからね。
しかし皆さん、あまりにも正直というか。忍者部イコール社会科研究部と考えているから、ウチの子達でも簡単に調べられましたよ。
ウチはわざわざ、忍者部でない子達も社会科研究部に入部させて情報を隠そうとしたのですが・・・そんな必要は無かったみたいですね」
嫌味なくそう言った公弘は、そのまま一同へと背を向けて歩き出した。

そして『喫茶 中央公園』の出口の前で振り向き、一礼した。

「今日は、ウチの生徒達がお世話になりました。今日のことは、彼らにとって大きな自信に繋がったと思います。来年も、よろしくお願いします」
公弘のその言葉に、シンが立ち上がった。

「重清の兄さん。来年はこいつらが3年になる!俺達よりも才能のあるこいつらは、絶対に3中には負けない!!」
シンの言葉にケンとノブが強く頷き、重清達後輩も頷き返した。

「今回はだまし討ちのような形になってしまい、君達には悪いことをしたと思っている。今日の悔しさを是非、来年我々にぶつけて欲しい。
ウチは今回、全国の1回戦までは行ってみせる。そこでの経験は、彼らを更に大きくするだろう。
来年を、楽しみにしているよ!」
そう言って、公弘は『喫茶 中央公園』をあとにするのであった。
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