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新学期と
第399話:雑賀平八の最期の術
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「えっと・・・じいちゃん、なんか話が進んでるようで、全然進まないんだけど」
落ち込む平八に、重清はそっと声をかけた。
「あぁ、すまないな。う~ん。私と重清だと、全然大丈夫話が進まないね」
苦笑いを浮かべながら立ち上がった平八は、そう言って重清に目を向けた。
「じゃぁそろそろ、私が本物かどうかって話をしようか」
「うん。まぁ、今までのやり取りで、じいちゃんがじいちゃんだってことは既に分かったけどね」
平八の言葉に頷きながらそう返した重清に笑みを返すと、平八は口を開いた。
「まぁ、確かに私が雑賀平八であることには間違いない。でもね、現実での私は確かに死んでいて、ここにいる私は、言わばただの記憶に過ぎないんだよ」
「記憶?」
「そう、記憶。私は、死ぬ前の記憶を残したんだ。こうして、次の当主に会うためにね」
「もしかして、何か凄い術を教えるため、とか!?」
重清は期待に満ちた瞳で平八を見つめた。
「あ、ゴメン。ここではそういうことはできないんだ」
「え、じゃぁなんで・・・」
「可愛い孫に会いたかったから」
平八は満面の笑みを重清へと返した。
「会いたかったからって・・・まぁ、おれもじいちゃんに会えたから文句はないけどさ」
重清は、微妙な表情でそう呟いた。
その内心は、もしかしたら誰もが認める天才、雑賀平八から凄い術を教えてもらえるかもしれないという期待に満ちていたのだ。
「あ、でも、1つだけ教えられる術があるな」
「ほ、ほんと!?教えて!」
平八の言葉に、重清は食いついた。
「ん~、でも、オススメはしないよ?」
「じいちゃんから教えてもらえるんでしょ!?だったら絶対に凄い術じゃん!教えてよ!どんな術なの!?」
重清の期待に満ちた表情に、平八は悲しげな笑みを浮かべた。
「私が重清に教えてあげられる唯一の術。それはね、今こうして会えるようになった、この世界を作る術さ。でも、この術の効果はそれだけじゃない」
「おぉっ!一体どんな効果が!?」
もはやテレビショッピングばりのテンションで、重清が合いの手を入れた。
そんな重清を見た平八は、苦笑いを浮かべて重清を見つめた。
「その前に重清、当主になる条件って、分かるかい?」
平八の問いに、重清はしばし考えて答える。
「じいちゃんに、似てること?」
「それは、私の個人的な条件。そうじゃなくて、もっと一般的なものさ。」
「う~ん、わかんないや」
「それはね、前当主がその座を引き継ぐ時、もしくは亡くなった時点で、忍者であることさ」
「な~る。ってことは、おれはホントにギリギリだったんだね。じいちゃんが亡くなったの、おれが忍者になってすぐだったもん」
重清は、そう言って頷いた。
「重清、それ、偶然だと思ってる?」
「へ?そりゃ偶然でしょ?」
重清がそう言うと、
「この察しの悪さは、一体誰に似たんだろうね」
平八は苦笑いしながらそう呟いて、言葉を続けた。
「重清。私はね、本当はもっと早くに死ぬはずだったんだよ」
「えっ・・・」
重清は、言葉をつまらせて平八をただ見つめた。
「おそらく私の寿命は、重清が小学校を卒業する前に尽きるはずだったんだ。でも、それだと重清を当主に選べないだろ?だから私は、最後の力を振り絞って、この術を作ったんだ」
「それって、どういう・・・」
「この術はね、使用した時点でその者の記憶をこの世界に閉じ込め、その代わりに現実での体を、ただ生きるだけの存在にする術なんだよ。
私はね、どうしても重清に当主になって欲しかった。だから、重清が中学校に進学して忍者になるまで、どうしてもこの命を繋ぎ止めておく必要があったんだ」
重清は、平八の説明を聞いてただ押し黙っていた。
「この術の名は『今際の際の術』。寿命という神の理を無視し、更には愛する者を傷つける術なんだ」
「愛する者を?」
「そう。この術を使った時点で、私にはこの術の解除はできなくなる。私の意識は、その時点でほとんどなくなったようなものだからね。だから、誰かにこの術を解除してもらわなくちゃならない」
「それって・・・」
「私は、雅に頼み込んだ。重清が忍者になったら、この術を解き、私をこの術から解き放ってくれ、とね。
それはつまり、術で無理やりつなぎとめていた命を終わらせるということ。雅の手を血に染めないと誓った私が、最後の最後で雅に・・・」
平八はそこまで言って、俯いた。
「・・・・・・」
そんな平八を、重清はただ見守っていた。
しばらく経ったのち、平八は無理矢理作った笑みを浮かべながらその顔を上げた。
「ほんと、もうめちゃくちゃ怒られたよ。『最後まで責任持て!』ってね。でも、2人でいくら考えても、この方法しか思い付かなかった。重清を当主にするためには、ね」
「なんで・・・なんでそんなことしてまで、おれを当主になんかしたかったんだよっ!」
重清は、平八へと怒鳴った。
それは、2人の間で初めてのことであった。
「だから言っているだろ?重清は、私によく似ている、って。私も、そして雅も、重清ならば、私達を超える忍者になれると、心から信じているから。だから重清には、どうしても当主になって欲しかったんだ。
雅も、そのためならばと、最後には私の願いを聞き入れてくれたよ。本当に、雅には悪いことをしたと思っている。
きっと雅は、私のことを恨んでいるんだろうな」
そんな平八の後悔の念の詰まった声が、真っ白い世界に吸い込まれるように、響くのであった。
落ち込む平八に、重清はそっと声をかけた。
「あぁ、すまないな。う~ん。私と重清だと、全然大丈夫話が進まないね」
苦笑いを浮かべながら立ち上がった平八は、そう言って重清に目を向けた。
「じゃぁそろそろ、私が本物かどうかって話をしようか」
「うん。まぁ、今までのやり取りで、じいちゃんがじいちゃんだってことは既に分かったけどね」
平八の言葉に頷きながらそう返した重清に笑みを返すと、平八は口を開いた。
「まぁ、確かに私が雑賀平八であることには間違いない。でもね、現実での私は確かに死んでいて、ここにいる私は、言わばただの記憶に過ぎないんだよ」
「記憶?」
「そう、記憶。私は、死ぬ前の記憶を残したんだ。こうして、次の当主に会うためにね」
「もしかして、何か凄い術を教えるため、とか!?」
重清は期待に満ちた瞳で平八を見つめた。
「あ、ゴメン。ここではそういうことはできないんだ」
「え、じゃぁなんで・・・」
「可愛い孫に会いたかったから」
平八は満面の笑みを重清へと返した。
「会いたかったからって・・・まぁ、おれもじいちゃんに会えたから文句はないけどさ」
重清は、微妙な表情でそう呟いた。
その内心は、もしかしたら誰もが認める天才、雑賀平八から凄い術を教えてもらえるかもしれないという期待に満ちていたのだ。
「あ、でも、1つだけ教えられる術があるな」
「ほ、ほんと!?教えて!」
平八の言葉に、重清は食いついた。
「ん~、でも、オススメはしないよ?」
「じいちゃんから教えてもらえるんでしょ!?だったら絶対に凄い術じゃん!教えてよ!どんな術なの!?」
重清の期待に満ちた表情に、平八は悲しげな笑みを浮かべた。
「私が重清に教えてあげられる唯一の術。それはね、今こうして会えるようになった、この世界を作る術さ。でも、この術の効果はそれだけじゃない」
「おぉっ!一体どんな効果が!?」
もはやテレビショッピングばりのテンションで、重清が合いの手を入れた。
そんな重清を見た平八は、苦笑いを浮かべて重清を見つめた。
「その前に重清、当主になる条件って、分かるかい?」
平八の問いに、重清はしばし考えて答える。
「じいちゃんに、似てること?」
「それは、私の個人的な条件。そうじゃなくて、もっと一般的なものさ。」
「う~ん、わかんないや」
「それはね、前当主がその座を引き継ぐ時、もしくは亡くなった時点で、忍者であることさ」
「な~る。ってことは、おれはホントにギリギリだったんだね。じいちゃんが亡くなったの、おれが忍者になってすぐだったもん」
重清は、そう言って頷いた。
「重清、それ、偶然だと思ってる?」
「へ?そりゃ偶然でしょ?」
重清がそう言うと、
「この察しの悪さは、一体誰に似たんだろうね」
平八は苦笑いしながらそう呟いて、言葉を続けた。
「重清。私はね、本当はもっと早くに死ぬはずだったんだよ」
「えっ・・・」
重清は、言葉をつまらせて平八をただ見つめた。
「おそらく私の寿命は、重清が小学校を卒業する前に尽きるはずだったんだ。でも、それだと重清を当主に選べないだろ?だから私は、最後の力を振り絞って、この術を作ったんだ」
「それって、どういう・・・」
「この術はね、使用した時点でその者の記憶をこの世界に閉じ込め、その代わりに現実での体を、ただ生きるだけの存在にする術なんだよ。
私はね、どうしても重清に当主になって欲しかった。だから、重清が中学校に進学して忍者になるまで、どうしてもこの命を繋ぎ止めておく必要があったんだ」
重清は、平八の説明を聞いてただ押し黙っていた。
「この術の名は『今際の際の術』。寿命という神の理を無視し、更には愛する者を傷つける術なんだ」
「愛する者を?」
「そう。この術を使った時点で、私にはこの術の解除はできなくなる。私の意識は、その時点でほとんどなくなったようなものだからね。だから、誰かにこの術を解除してもらわなくちゃならない」
「それって・・・」
「私は、雅に頼み込んだ。重清が忍者になったら、この術を解き、私をこの術から解き放ってくれ、とね。
それはつまり、術で無理やりつなぎとめていた命を終わらせるということ。雅の手を血に染めないと誓った私が、最後の最後で雅に・・・」
平八はそこまで言って、俯いた。
「・・・・・・」
そんな平八を、重清はただ見守っていた。
しばらく経ったのち、平八は無理矢理作った笑みを浮かべながらその顔を上げた。
「ほんと、もうめちゃくちゃ怒られたよ。『最後まで責任持て!』ってね。でも、2人でいくら考えても、この方法しか思い付かなかった。重清を当主にするためには、ね」
「なんで・・・なんでそんなことしてまで、おれを当主になんかしたかったんだよっ!」
重清は、平八へと怒鳴った。
それは、2人の間で初めてのことであった。
「だから言っているだろ?重清は、私によく似ている、って。私も、そして雅も、重清ならば、私達を超える忍者になれると、心から信じているから。だから重清には、どうしても当主になって欲しかったんだ。
雅も、そのためならばと、最後には私の願いを聞き入れてくれたよ。本当に、雅には悪いことをしたと思っている。
きっと雅は、私のことを恨んでいるんだろうな」
そんな平八の後悔の念の詰まった声が、真っ白い世界に吸い込まれるように、響くのであった。
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