447 / 519
新学期と
第398話:再会は脱線と共に
しおりを挟む
「あれ?ここは・・・」
いつの間にか周りを真っ白な世界に囲まれた重清は、キョロキョロと周りを見渡した。
いつの間にか雅や公弘達の姿はそこになく、重清1人が真っ白い空間に立っていた。
ふと重清が気がつくと、真っ白い世界の中に、一筋の光が見えた。
重清がそちらに目を向けるとそこには、ポツンとテーブルと椅子2脚がセットされており、そこで1人の老人が、小さなカップを持って重清を見つめて笑っていた。
「じいちゃんっ!!」
重清は、涙を浮かべて老人の元へと走った。
「やっぱり、当主は重清になったんだね」
重清の祖父、鈴木平八、忍名、雑賀平八が、にこやかに笑って重清を迎えた。
光る頭を撫でながら。
どうやら重清の見た光は、平八の頭から発せられたもののようである。
「じいちゃん、なんで?もしかして生き返ったの!?ばあちゃん!?ばあちゃんが生き返らせたの!?」
重清は目を輝かせて平八を見つめていた。
そんな重清に、平八は苦笑いを返した。
「いくら雅でも、流石にそれは・・・あっ。でも雅、私が病気になった時、術で私を具現獣にしようとか言い出してさぁ」
「おぉ。これが伝説の脱線。見事に話が逸れつつ、しかも先が気になる話題を出してきた」
平八の言葉に重清が呟くと、2人は顔を合わせて笑いあった。
「思い出すな、重清。いつも2人で脱線して、よく雅に怒られてたっけ」
「そうそう。いつも優しいばあちゃんが、その時だけは怖かったよね。まぁ、今はいつも怖いけど」
「はっはっは。雅は、忍者としての契約をしていない孫には、優しい祖母であり続けたからね。
どちらも本当の雅ではあるけれど、その怖い雅が、素の雅なんだよ。でも、あれで可愛いところもあるんだぞ?
あれは確か、結婚して間もない頃―――」
「じいちゃんとばあちゃんの惚気話への脱線は勘弁して。っていうか、そろそろ本題に入ろうよ」
重清が、話を本線へ引き戻そうとした。
あの重清が、である。
流石は脱線の本家本元、平八。
重清すらもその脱線には、完全にはついて行けないようなのである。
「それで・・・じいちゃん、ここはどこなの?じいちゃんは、本物のじいちゃんなの?」
重清の問いかけに、平八は困り顔を浮かべた。
「本物かと聞かれると、答えに困るな。じゃぁ、順を追って説明するけど、その前に。
重清、当主就任、おめでとう」
「あー、うん。別になりたくてなった訳じゃないけど・・・ありがと」
「おや?なりたかった訳じゃないのかい?
まぁ私としては、私の遺言どおりになって嬉しいんだけどな」
「じいちゃんの遺言?」
重清は、平八の言葉に首を傾げた。
「雅から聞いていないのか。重清、ここに来るまでの経緯を話てくれないかい?ここからでは、何が起きたかまでは分からないんだ」
平八がそう言うと、重清は脱線を繰り返しながらもその日起きたことを説明し、平八もまた脱線での相槌を繰り返しながら重清の話を楽しそうに聞いていた。
こうして、普通であれば10分程度で終わるはずの重清の話は、1時間程で現在へと至った。
「なるほど」
重清の話を聞き終えた平八は、
「やはり浩は、その責任感だけで当主を目指していたんだね。浩だけには、先に話させておいて正解だったよ」
そう言って笑顔で頷いた。
「ばあちゃんが浩兄ちゃんに先に当主の話をしたのは、公弘兄ちゃんから聞いたけど・・・それって、じいちゃんの差し金だったの?」
「差し金って言い方はひどいな。でも、重清の言うとおりさ。結果として当主は、第2案で選ぶことになったみたいだね」
「第2案?」
「そう、第2案。第1案、つまり私の本当の遺言は、重清を当主に、だったんだよ?」
「何でおれなの?浩兄ちゃんも、麻耶姉ちゃんも、それに公弘兄ちゃんや裕二兄ちゃんでもよかったじゃん」
重清は、不思議そうに平八を見つめていた。
「重清、太も忘れないであげてね?」
平八は小さく笑いながらそう言うと、重清をじっと見つめ返した。
「重清、お前は私によく似ている。似すぎていて、いつかお前にこの頭まで継がせてしまうかもしれないと思い悩むくらいにね」
平八は言いながら、不毛な頭を撫でつけた。
「え、おれもそんなにハゲちゃうの!?」
重清は平八の頭を見つめながら悲しそうに叫んだ。
「ハゲって・・・孫からハゲって言われちゃったよ・・・」
平八は重清の言葉に心を抉られ、1人地に膝をついて項垂れた。
ちなみに、天才忍者雑賀平八の膝を地につけさせたのは、後にも先にもその妻雑賀雅のみであり、重清は史上2人目なのである。
重清の場合は、クリティカルな精神攻撃ではあったが。
「あー、なんか、ごめんね?」
重清は、めちゃくちゃ落ち込んでいる祖父に、小さくそう声をかけるのであった。
いつの間にか周りを真っ白な世界に囲まれた重清は、キョロキョロと周りを見渡した。
いつの間にか雅や公弘達の姿はそこになく、重清1人が真っ白い空間に立っていた。
ふと重清が気がつくと、真っ白い世界の中に、一筋の光が見えた。
重清がそちらに目を向けるとそこには、ポツンとテーブルと椅子2脚がセットされており、そこで1人の老人が、小さなカップを持って重清を見つめて笑っていた。
「じいちゃんっ!!」
重清は、涙を浮かべて老人の元へと走った。
「やっぱり、当主は重清になったんだね」
重清の祖父、鈴木平八、忍名、雑賀平八が、にこやかに笑って重清を迎えた。
光る頭を撫でながら。
どうやら重清の見た光は、平八の頭から発せられたもののようである。
「じいちゃん、なんで?もしかして生き返ったの!?ばあちゃん!?ばあちゃんが生き返らせたの!?」
重清は目を輝かせて平八を見つめていた。
そんな重清に、平八は苦笑いを返した。
「いくら雅でも、流石にそれは・・・あっ。でも雅、私が病気になった時、術で私を具現獣にしようとか言い出してさぁ」
「おぉ。これが伝説の脱線。見事に話が逸れつつ、しかも先が気になる話題を出してきた」
平八の言葉に重清が呟くと、2人は顔を合わせて笑いあった。
「思い出すな、重清。いつも2人で脱線して、よく雅に怒られてたっけ」
「そうそう。いつも優しいばあちゃんが、その時だけは怖かったよね。まぁ、今はいつも怖いけど」
「はっはっは。雅は、忍者としての契約をしていない孫には、優しい祖母であり続けたからね。
どちらも本当の雅ではあるけれど、その怖い雅が、素の雅なんだよ。でも、あれで可愛いところもあるんだぞ?
あれは確か、結婚して間もない頃―――」
「じいちゃんとばあちゃんの惚気話への脱線は勘弁して。っていうか、そろそろ本題に入ろうよ」
重清が、話を本線へ引き戻そうとした。
あの重清が、である。
流石は脱線の本家本元、平八。
重清すらもその脱線には、完全にはついて行けないようなのである。
「それで・・・じいちゃん、ここはどこなの?じいちゃんは、本物のじいちゃんなの?」
重清の問いかけに、平八は困り顔を浮かべた。
「本物かと聞かれると、答えに困るな。じゃぁ、順を追って説明するけど、その前に。
重清、当主就任、おめでとう」
「あー、うん。別になりたくてなった訳じゃないけど・・・ありがと」
「おや?なりたかった訳じゃないのかい?
まぁ私としては、私の遺言どおりになって嬉しいんだけどな」
「じいちゃんの遺言?」
重清は、平八の言葉に首を傾げた。
「雅から聞いていないのか。重清、ここに来るまでの経緯を話てくれないかい?ここからでは、何が起きたかまでは分からないんだ」
平八がそう言うと、重清は脱線を繰り返しながらもその日起きたことを説明し、平八もまた脱線での相槌を繰り返しながら重清の話を楽しそうに聞いていた。
こうして、普通であれば10分程度で終わるはずの重清の話は、1時間程で現在へと至った。
「なるほど」
重清の話を聞き終えた平八は、
「やはり浩は、その責任感だけで当主を目指していたんだね。浩だけには、先に話させておいて正解だったよ」
そう言って笑顔で頷いた。
「ばあちゃんが浩兄ちゃんに先に当主の話をしたのは、公弘兄ちゃんから聞いたけど・・・それって、じいちゃんの差し金だったの?」
「差し金って言い方はひどいな。でも、重清の言うとおりさ。結果として当主は、第2案で選ぶことになったみたいだね」
「第2案?」
「そう、第2案。第1案、つまり私の本当の遺言は、重清を当主に、だったんだよ?」
「何でおれなの?浩兄ちゃんも、麻耶姉ちゃんも、それに公弘兄ちゃんや裕二兄ちゃんでもよかったじゃん」
重清は、不思議そうに平八を見つめていた。
「重清、太も忘れないであげてね?」
平八は小さく笑いながらそう言うと、重清をじっと見つめ返した。
「重清、お前は私によく似ている。似すぎていて、いつかお前にこの頭まで継がせてしまうかもしれないと思い悩むくらいにね」
平八は言いながら、不毛な頭を撫でつけた。
「え、おれもそんなにハゲちゃうの!?」
重清は平八の頭を見つめながら悲しそうに叫んだ。
「ハゲって・・・孫からハゲって言われちゃったよ・・・」
平八は重清の言葉に心を抉られ、1人地に膝をついて項垂れた。
ちなみに、天才忍者雑賀平八の膝を地につけさせたのは、後にも先にもその妻雑賀雅のみであり、重清は史上2人目なのである。
重清の場合は、クリティカルな精神攻撃ではあったが。
「あー、なんか、ごめんね?」
重清は、めちゃくちゃ落ち込んでいる祖父に、小さくそう声をかけるのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
無自覚魔力持ちの転職事情
中田カナ
ファンタジー
転職先を探すだけのはずだったのに、魔力持ちと認定されてしまった私は魔法の教育・訓練を受けることになってしまった。
※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。
向原 行人
ファンタジー
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。
とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。
こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。
土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど!
一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
異世界に転生したら狼に拾われました。
チャン
ファンタジー
普通の会社員だった大神次郎(おおがみじろう)は、事故に遭い気付いたら異世界に転生していた。転生して早々に死にかけたところを狼に救われ、そのまま狼と暮らすことに。狼からこの世界のことを学ぶが、学んだ知識は異世界では非常識なことばかりだった。
ご指摘、感想があればよろしくお願いします。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる