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新学期と
第387話:当主押し付け、もとい当主争奪戦 開始前
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「さて、みんな準備はいいかい?」
マイクを通した雅の声が、辺りに響いた。
そんな雅の言葉に、それぞれが思い思いに頷いた。
「いや、結局全然準備なんてしてないけどね」
重清だけは、恨めしそうに兄2人を見つめながら呟いていたが。
そんな彼らが現在いるのは、雅の作り上げたリングである。
ご丁寧に天下一の何某かを決めるようなその広いリングには、周りを囲むように目に見えない結界まで張られていた。
その外からマイク片手に孫達に目を向ける雅はさながら、サングラス姿のあのレフェリーを彷彿とさせていた。
「一応、ルールを説明しておくよ。リングの周りの結界に触れたら、その時点でその者は失格とする。
結界は上空100メートルまでは伸ばしているが、それを超えても失格だからね!
あとは重清に合わせて、中忍体と同じルールだ。
みんなには中忍体用のスーツを着てもらっているから、そうそう怪我はしないだろうけど、中忍体同様過度に相手を傷つけないようにね!」
雅が、ノリノリでルール説明を行っていた。
ちなみに、中忍体用のスーツも、元は雅の術だったりする。
それはさておき。
「大丈夫だって重清。俺達を信じろよ」
重清の恨めしそうな目に、公弘は笑って答えた。
「そうだぞ。相手は全国大会の出場者だし、胸を借りるつもりでぶつかればいいさ」
裕二も公弘の言葉に頷いて笑った。
「え、待って。なんだか、おれだけぶつかるみたいに聞こえるんだけど」
そんな兄2人の言葉に、重清は怪訝な表情を浮かべた。
「まさか。重清だけをぶつけさせるわけ無いだろ?」
「そうそう」
「「ぶつかるのは、お前とプレッソだ」」
公弘と裕二が、声を揃えた。
「いやそれ、実質おれだけじゃん!プレッソはおれの一部みたいなもんなんだから!」
重清がそんな呑気な兄2人に言い返していると、頭上からプレッソが割って入ってきた。
「重清の一部とか、なんか嫌なんですけど」
「そこじゃないっ!!」
頭上のプレッソに、重清は恒久張りの勢いでつっこんだ。
「安心しろ、重清。お前はただ、何も考えずに突っ込めばいい」
「そ。フォローは俺達に任せとけって」
結局は重清だけに前線を任せるということなのだが、それをおくびにも出さずに公弘と裕二は重清へと満面の笑みを返していた。
「よかったじゃないか重清。何も考えない事にかけては、重清の右に出るヤツはいないぞ」
プレッソはニヤニヤしながら重清へと声をかけてきた。
「ねぇ。おれの周りに、味方はいないの?」
重清がため息混じりに呟くと、
「重清~っ!頑張ってね~っ!!」
外野から美影のそんな声援が重清の耳へと届いた。
「良かったな、重清。いたぞ、味方」
そう言ってニヤニヤに輪をかけたプレッソが、重清の足元へと飛び降りた。
「はいはい、良かったですよ~」
プレッソにそう返しながら、重清は声援のする外野へと目を向けた。
リングを囲む結界のすぐ側には、美影だけでなく両親や外の親戚一同がその場に敷いたレジャーシートな座り込み、急遽こしらえられたいくつかのおかずをつまみに、酒盛りを始めていた。
「ささ、美影様もどうぞ」
重清の父雅史は、そう言って美影にお酌をしていた。
「ちょっと、それお酒じゃないの。美影様、ジュースでよろしいですか?」
重清の母綾が、夫から酒を取り上げて美影にジュースの入ったコップを渡していた。
「ありがとうございます。お義理母様、お義理父様も、『美影様』だなんて、やめてください。いつかは、本当の娘になるんだし・・・」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるわね、美影ちゃん」
「お義理母様・・・」
「くぅ~っ!重清のやつ、一体どんな忍術を使ったら、こんな可愛い子から好かれるっていうんだよっ!!」
外野は外野で、大いに盛り上がっている模様なのである。
「重清、お前も隅に置けないな」
「まさか、あの美影様をあそこまで骨抜きにするなんて。重清、やるな」
そんな外野の様子を見ていた裕二と公弘が、重清へと話しかけてきた。
「いや、兄ちゃん達他人事だと思って―――」
重清が兄2人に言い返していると、
「まったく。お前達は相変わらず、緊張感が無いな」
浩が3人に声をかけてきた。
「浩さん。すみません、うるさくて。我々は、全国経験のある浩さんの胸を借りるつもりでいるので、あんまり緊張していないのかもしれませんね」
「そうそう。負けてもいいかなぁって思ってるからね」
そう言って笑う公弘と裕二に、浩も笑みを返した。
「じいちゃんとばあちゃんの才能を余すことなく受け継いだ2人がよく言うよ。
こっちこそ、2人との手合わせ、楽しませてもらうぞ」
浩はそう言って、麻耶たちの元へと戻っていった。
「おれ、浩兄ちゃんの眼中にないじゃん」
重清は浩の背を見つめながら、苦笑いを浮かべていた。
「「大丈夫!浩さんを見返す機会はたっぷり作ってやる!頑張れ!!」」
「いやめっちゃ他人事っ!」
公弘と裕二の言葉に重清が叫び、
「ホントに、こいつら大丈夫か?ってオイラ、何回これ言えばいいんだよ」
プレッソの前回と似たような呟きが、結界に吸い込まれるのであった。
マイクを通した雅の声が、辺りに響いた。
そんな雅の言葉に、それぞれが思い思いに頷いた。
「いや、結局全然準備なんてしてないけどね」
重清だけは、恨めしそうに兄2人を見つめながら呟いていたが。
そんな彼らが現在いるのは、雅の作り上げたリングである。
ご丁寧に天下一の何某かを決めるようなその広いリングには、周りを囲むように目に見えない結界まで張られていた。
その外からマイク片手に孫達に目を向ける雅はさながら、サングラス姿のあのレフェリーを彷彿とさせていた。
「一応、ルールを説明しておくよ。リングの周りの結界に触れたら、その時点でその者は失格とする。
結界は上空100メートルまでは伸ばしているが、それを超えても失格だからね!
あとは重清に合わせて、中忍体と同じルールだ。
みんなには中忍体用のスーツを着てもらっているから、そうそう怪我はしないだろうけど、中忍体同様過度に相手を傷つけないようにね!」
雅が、ノリノリでルール説明を行っていた。
ちなみに、中忍体用のスーツも、元は雅の術だったりする。
それはさておき。
「大丈夫だって重清。俺達を信じろよ」
重清の恨めしそうな目に、公弘は笑って答えた。
「そうだぞ。相手は全国大会の出場者だし、胸を借りるつもりでぶつかればいいさ」
裕二も公弘の言葉に頷いて笑った。
「え、待って。なんだか、おれだけぶつかるみたいに聞こえるんだけど」
そんな兄2人の言葉に、重清は怪訝な表情を浮かべた。
「まさか。重清だけをぶつけさせるわけ無いだろ?」
「そうそう」
「「ぶつかるのは、お前とプレッソだ」」
公弘と裕二が、声を揃えた。
「いやそれ、実質おれだけじゃん!プレッソはおれの一部みたいなもんなんだから!」
重清がそんな呑気な兄2人に言い返していると、頭上からプレッソが割って入ってきた。
「重清の一部とか、なんか嫌なんですけど」
「そこじゃないっ!!」
頭上のプレッソに、重清は恒久張りの勢いでつっこんだ。
「安心しろ、重清。お前はただ、何も考えずに突っ込めばいい」
「そ。フォローは俺達に任せとけって」
結局は重清だけに前線を任せるということなのだが、それをおくびにも出さずに公弘と裕二は重清へと満面の笑みを返していた。
「よかったじゃないか重清。何も考えない事にかけては、重清の右に出るヤツはいないぞ」
プレッソはニヤニヤしながら重清へと声をかけてきた。
「ねぇ。おれの周りに、味方はいないの?」
重清がため息混じりに呟くと、
「重清~っ!頑張ってね~っ!!」
外野から美影のそんな声援が重清の耳へと届いた。
「良かったな、重清。いたぞ、味方」
そう言ってニヤニヤに輪をかけたプレッソが、重清の足元へと飛び降りた。
「はいはい、良かったですよ~」
プレッソにそう返しながら、重清は声援のする外野へと目を向けた。
リングを囲む結界のすぐ側には、美影だけでなく両親や外の親戚一同がその場に敷いたレジャーシートな座り込み、急遽こしらえられたいくつかのおかずをつまみに、酒盛りを始めていた。
「ささ、美影様もどうぞ」
重清の父雅史は、そう言って美影にお酌をしていた。
「ちょっと、それお酒じゃないの。美影様、ジュースでよろしいですか?」
重清の母綾が、夫から酒を取り上げて美影にジュースの入ったコップを渡していた。
「ありがとうございます。お義理母様、お義理父様も、『美影様』だなんて、やめてください。いつかは、本当の娘になるんだし・・・」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるわね、美影ちゃん」
「お義理母様・・・」
「くぅ~っ!重清のやつ、一体どんな忍術を使ったら、こんな可愛い子から好かれるっていうんだよっ!!」
外野は外野で、大いに盛り上がっている模様なのである。
「重清、お前も隅に置けないな」
「まさか、あの美影様をあそこまで骨抜きにするなんて。重清、やるな」
そんな外野の様子を見ていた裕二と公弘が、重清へと話しかけてきた。
「いや、兄ちゃん達他人事だと思って―――」
重清が兄2人に言い返していると、
「まったく。お前達は相変わらず、緊張感が無いな」
浩が3人に声をかけてきた。
「浩さん。すみません、うるさくて。我々は、全国経験のある浩さんの胸を借りるつもりでいるので、あんまり緊張していないのかもしれませんね」
「そうそう。負けてもいいかなぁって思ってるからね」
そう言って笑う公弘と裕二に、浩も笑みを返した。
「じいちゃんとばあちゃんの才能を余すことなく受け継いだ2人がよく言うよ。
こっちこそ、2人との手合わせ、楽しませてもらうぞ」
浩はそう言って、麻耶たちの元へと戻っていった。
「おれ、浩兄ちゃんの眼中にないじゃん」
重清は浩の背を見つめながら、苦笑いを浮かべていた。
「「大丈夫!浩さんを見返す機会はたっぷり作ってやる!頑張れ!!」」
「いやめっちゃ他人事っ!」
公弘と裕二の言葉に重清が叫び、
「ホントに、こいつら大丈夫か?ってオイラ、何回これ言えばいいんだよ」
プレッソの前回と似たような呟きが、結界に吸い込まれるのであった。
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