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新学期と
第381話:いざ、出陣
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七不思議騒動から時は経ち、2中忍者部はいよいよ中忍体を迎えることとなった。
『喫茶 中央公園』には、いつもの面々が集まっていた。
何故か、中忍体に出場しない重清も1人、優雅にコーヒーを嗜んでいた。
「みんな、頑張ってね」
「いやもうちょっとやる気出して応援しろよ!」
コーヒーを啜りながら忍者部一同を見送る重清に、我らがつっこみ番長恒久がいつものようにつっこんだ。
「おー。相変わらずキレがいいね」
重清は緊張感のない顔を恒久へと向けながら親指を立てると、
「うるさいだけだよ~」
聡太の首に巻き付いていたブルーメが、耳を折りたたみながら不機嫌そうに非難の声でそれに応えた。
「相変わらず、お前のところは騒がしいな」
そんな様子に笑顔を浮かべながら、オウが店の奥から姿を現し、ノリへと語りかけた。
「「あ、おじいちゃん!」」
オウの姿を見た聡太と、ここ最近オウを『おじいちゃん』と呼ぶようになったブルーメが声を揃えると、一瞬顔を緩ませたオウはすぐに真面目な顔に戻って聡太とブルーメに頷き返した。
「オウさんも、相変わらずですね」
ノリはそんなオウの様子に苦笑いを浮かべてそう返すと、
「それよりもノリ。お前に言伝がある」
オウはあからさまに話を逸らした。
「言伝?誰からです?」
突然の話題転換につっこみたい衝動を抑えつつ、ノリは怪訝な顔をオウへと向ける。
「言伝の主は伝えぬように頼まれておる。ただ、こう伝えてほしいと言っておった。『今回の中忍体は、2中と3中の一騎打ちになる。結果を楽しみにしている』とな」
「ほお、3中との一騎打ちですか。しかし、どうやってそれを・・・」
「そんなもの、それぞれの中学を調べればすぐにわかることだ」
「しかし、我々だけがそれを知っていて良いものでしょうか」
「安心しろ。3中側も既に知っておることだ」
「なるほど。つまりその言伝の主は、3中の新しい顧問というわけですか」
「さて。とにかく言伝は伝えたぞ」
オウはそう言うと、明逃げるように美姉さんの元へと歩いて行った。
「聞いたか、今回の相手は3中だけだってよ!」
オウとノリの会話を耳にしたシンが、満面の笑みで大声を上げた。
「え、3中だと何か良いことがあるんですか?」
唯一初めての中忍体となるユウが、そんなシンに首を傾げた。
「俺も去年は見ているだけだったけどよぉ、なんていうか3中って、そんなに強くなかったんだよ」
恒久がユウの疑問へと答えた。
「あー。そういえばおれ、最初に1人倒しちゃってたもんね」
重清が乾いた笑いとともにそう漏らしていた。
「そういえばそうだったな」
プレッソが、イヒヒと笑いながら重清の言葉に頷いていた。
「今回こそ、県大会いけんじゃね!?」
シンがそう言うと、一同はにわかに沸き立った。
「お前ら、油断するなよ。相手は他の中学校を調べる周到さを持っているんだ。
他にも何か作戦があるかもしれねぇだろうが」
「まぁ、それもそうね」
茜がそう言うと、
「油断、良くない」
「ですね」
ケンと聡太も茜に同調して頷いた。
「はっはっは!どんな相手だろうとも、全力でぶつかるだけだ!」
ノブが笑ってシンへと言うと、
「・・・・だな。みんな、油断するなよ!ライオンは、ウサギを狩るときにも全力を出すものだ!!」
シンはそれに応えるように拳を高くつきあげて言い切った。
「いやシンさん、全然油断が抜けきってないから!」
シンにつっこむ恒久のいつものつっこみに、忍者部員たちは声を揃えて笑いあっていた。
油断すべきでないとわかっている聡太や茜、ケンですらも、恒久たちとともに笑っていた。
この3人も、心の中では『勝てるかもしれない』という想いだけは捨てきることはできず、その先にある県大会が見えたことにより頬を緩めているのであった。
「じゃ、おれそろそろ行くね」
ひとしきり笑いあったのち、重清はそう言って立ち上がった。
「おう!シゲ、県大会ではお前にも頑張ってもらうからな!」
シンが重清へと笑顔を向けると、
「気が早いなぁ」
重清は苦笑いをシンへと返した。
「ブルーメ、ソウのこと頼んだぞ」
「いやシゲ、ぼくをなんだと――――」
「シゲに言われるまでもないね!パパはボクが全力で守るよ!」
重清の言葉に抗議の声を上げようとする聡太を遮って、ブルーメが聡太の首から飛び上がってそれに答えた。
「もう。シゲも頑張ってね」
聡太は不貞腐れたように呟くと、重清へとそう声をかけた。
「まぁ、頑張ることないんだけどね。ただウチの次の当主が発表されるだけだし」
重清は興味なさそうに欠伸をすると、出口へと向かった。
「シゲ、終わったらここ集合な!みんなで打ち上げだ!」
恒久の言葉に手を上げて答えた重清は、そのままプレッソとともに『喫茶 中央公園』を後にした。
「さ、俺たちも行くぞ。アケさん、お願いします」
重清を見送った一同にノリはそう声をかけ、明美姉さんへと向いた。
「はいはい。じゃぁみんな、頑張ってね」
明美姉さんがそう言って店の奥に掛かる小さな絵へと手をかざすと、その絵は仄かに光を帯びる。
「じゃぁみんな!いじゃ、しゅちゅじんだ!」
「いやめちゃめちゃ噛んじゃったよ!」
シンの情けない号令と恒久のつっこみを残し、忍者部一同は中忍体会場へと消えていくのであった。
『喫茶 中央公園』には、いつもの面々が集まっていた。
何故か、中忍体に出場しない重清も1人、優雅にコーヒーを嗜んでいた。
「みんな、頑張ってね」
「いやもうちょっとやる気出して応援しろよ!」
コーヒーを啜りながら忍者部一同を見送る重清に、我らがつっこみ番長恒久がいつものようにつっこんだ。
「おー。相変わらずキレがいいね」
重清は緊張感のない顔を恒久へと向けながら親指を立てると、
「うるさいだけだよ~」
聡太の首に巻き付いていたブルーメが、耳を折りたたみながら不機嫌そうに非難の声でそれに応えた。
「相変わらず、お前のところは騒がしいな」
そんな様子に笑顔を浮かべながら、オウが店の奥から姿を現し、ノリへと語りかけた。
「「あ、おじいちゃん!」」
オウの姿を見た聡太と、ここ最近オウを『おじいちゃん』と呼ぶようになったブルーメが声を揃えると、一瞬顔を緩ませたオウはすぐに真面目な顔に戻って聡太とブルーメに頷き返した。
「オウさんも、相変わらずですね」
ノリはそんなオウの様子に苦笑いを浮かべてそう返すと、
「それよりもノリ。お前に言伝がある」
オウはあからさまに話を逸らした。
「言伝?誰からです?」
突然の話題転換につっこみたい衝動を抑えつつ、ノリは怪訝な顔をオウへと向ける。
「言伝の主は伝えぬように頼まれておる。ただ、こう伝えてほしいと言っておった。『今回の中忍体は、2中と3中の一騎打ちになる。結果を楽しみにしている』とな」
「ほお、3中との一騎打ちですか。しかし、どうやってそれを・・・」
「そんなもの、それぞれの中学を調べればすぐにわかることだ」
「しかし、我々だけがそれを知っていて良いものでしょうか」
「安心しろ。3中側も既に知っておることだ」
「なるほど。つまりその言伝の主は、3中の新しい顧問というわけですか」
「さて。とにかく言伝は伝えたぞ」
オウはそう言うと、明逃げるように美姉さんの元へと歩いて行った。
「聞いたか、今回の相手は3中だけだってよ!」
オウとノリの会話を耳にしたシンが、満面の笑みで大声を上げた。
「え、3中だと何か良いことがあるんですか?」
唯一初めての中忍体となるユウが、そんなシンに首を傾げた。
「俺も去年は見ているだけだったけどよぉ、なんていうか3中って、そんなに強くなかったんだよ」
恒久がユウの疑問へと答えた。
「あー。そういえばおれ、最初に1人倒しちゃってたもんね」
重清が乾いた笑いとともにそう漏らしていた。
「そういえばそうだったな」
プレッソが、イヒヒと笑いながら重清の言葉に頷いていた。
「今回こそ、県大会いけんじゃね!?」
シンがそう言うと、一同はにわかに沸き立った。
「お前ら、油断するなよ。相手は他の中学校を調べる周到さを持っているんだ。
他にも何か作戦があるかもしれねぇだろうが」
「まぁ、それもそうね」
茜がそう言うと、
「油断、良くない」
「ですね」
ケンと聡太も茜に同調して頷いた。
「はっはっは!どんな相手だろうとも、全力でぶつかるだけだ!」
ノブが笑ってシンへと言うと、
「・・・・だな。みんな、油断するなよ!ライオンは、ウサギを狩るときにも全力を出すものだ!!」
シンはそれに応えるように拳を高くつきあげて言い切った。
「いやシンさん、全然油断が抜けきってないから!」
シンにつっこむ恒久のいつものつっこみに、忍者部員たちは声を揃えて笑いあっていた。
油断すべきでないとわかっている聡太や茜、ケンですらも、恒久たちとともに笑っていた。
この3人も、心の中では『勝てるかもしれない』という想いだけは捨てきることはできず、その先にある県大会が見えたことにより頬を緩めているのであった。
「じゃ、おれそろそろ行くね」
ひとしきり笑いあったのち、重清はそう言って立ち上がった。
「おう!シゲ、県大会ではお前にも頑張ってもらうからな!」
シンが重清へと笑顔を向けると、
「気が早いなぁ」
重清は苦笑いをシンへと返した。
「ブルーメ、ソウのこと頼んだぞ」
「いやシゲ、ぼくをなんだと――――」
「シゲに言われるまでもないね!パパはボクが全力で守るよ!」
重清の言葉に抗議の声を上げようとする聡太を遮って、ブルーメが聡太の首から飛び上がってそれに答えた。
「もう。シゲも頑張ってね」
聡太は不貞腐れたように呟くと、重清へとそう声をかけた。
「まぁ、頑張ることないんだけどね。ただウチの次の当主が発表されるだけだし」
重清は興味なさそうに欠伸をすると、出口へと向かった。
「シゲ、終わったらここ集合な!みんなで打ち上げだ!」
恒久の言葉に手を上げて答えた重清は、そのままプレッソとともに『喫茶 中央公園』を後にした。
「さ、俺たちも行くぞ。アケさん、お願いします」
重清を見送った一同にノリはそう声をかけ、明美姉さんへと向いた。
「はいはい。じゃぁみんな、頑張ってね」
明美姉さんがそう言って店の奥に掛かる小さな絵へと手をかざすと、その絵は仄かに光を帯びる。
「じゃぁみんな!いじゃ、しゅちゅじんだ!」
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