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新学期と
第375話:ツネとユウと月明りと追いかけっこ
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「恒久先輩・・・好きです!」
「ふぁっ!?」
突然のユウの告白に、恒久は変な声を上げた。
「い、今!?いや、じゃなくて、その、え?え?すき?は?なに?どゆこと!?」
「おおおおおお落ち着いてください恒久先輩っ!」
「いやいやいやいや、なんでユウまで慌ててんだよっ!」
「だだだだだって、勢いで告白しちゃってけど、冷静になったら・・・・」
そう言って顔を真っ赤にするユウを見た恒久は、少しずつ冷静さを取り戻していった。
「あー、え~っと・・・・ありがとな」
恒久は、ユウの顔も見ずに背を向けた。
(あ、恒久先輩顔が真っ赤だ。可愛い)
恒久が真っ赤になった顔を隠すために背を向けたにも関わらず、瞬時にそのことを見抜いたユウは1人、心の中で呟いた。
「まぁ、なんだ、その。告白なんてされたことねぇから、こういう時どうすれば良いのかわかんねぇんだけどよ・・・」
そう言いながら恒久はユウを見据え、思い悩んだように口を閉ざした。
ほんの少しの時間にも関わらず、その沈黙をユウは長く感じていた。
そして耐えきれなくなったユウは、笑みを浮かべて恒久の目を見つめた。
「恒久先輩の答えは、分かっているつもりです。
でも、ちゃんと恒久先輩の口から、聞きたいです」
ユウにじっと見つめられた恒久は、後輩であり、しかも自身に告白してくれた女子にそこまで言わせてしまった事に後悔の念をいだきながらも、小さく頷いた。
「悪ぃ。俺、ユウの気持ちには答えられねぇわ」
「そう、ですよね・・・」
ユウは消えそうな声を絞り出しながら、俯いた。
(分かってても、やっぱり悲しいや)
ユウは、溢れそうになる涙をこらえながら、恒久にも聞こえないほど小さな声で呟いて、顔を上げた。
「やっぱり、私が本当の女の子じゃないから―――痛いっ!」
ユウは突然走ったおでこの痛みに、言葉を止めた。
「まったくよぉ。俺がそんな理由で断ると、本気で思ってんのか?」
ユウのおでこを軽く指でデコピンした恒久は、不貞腐れた表情を浮かべていた。
「ふふふ。ごめんなさい。少し意地悪しちゃいました。
本当はちゃんと分かってます。恒久先輩も、忍者部の皆さんも、私の事を女の子として扱ってくれてること。
それに、恒久先輩が断る理由も・・・」
「ま、マジで??」
「マジです」
ユウはニコリと恒久に笑みを向けると、
「好きな人、いるんですよね?」
じっと恒久を見つめた。
「・・・・・・・・」
ユウの言葉に、恒久が口を閉じていると。
「茜先輩ですよね?」
ユウは、恒久を見据えたまま言った。
「・・・・・・なんで分かったんだよ。絶対、誰にもバレて無いと思ったのに」
恒久はようやく、気まずそうに口を開いた。
「多分、私以外は誰も気付いていないと思います。茜先輩も含めて」
「ユウはよく気が付いたな」
「だって、ずっと恒久先輩を見てましたから」
ユウはそう言ってはにかんだ。
「はぁ~。こんなに可愛いやつに告白されたのに断るなんて、俺史上最大の失敗になりそうだな」
健気に笑うユウに、恒久もまた、笑顔を返した。
「今ならまだ、クーリングオフ期間中ですよ?」
「いやそれ、普通返品の時に使う言葉だろ」
「あっ。私、初めて恒久先輩につっこまれたかも」
「ん?そうだったか?って、今それ関係なくね?」
「あ、連続でつっこまれちゃった」
「それもういいわ!」
恒久の3度目のつっこみとともに、目があった2人は小さく笑いあった。
「ありがとうございます。少し、気分が楽になりました」
「まぁ、なんだ。俺が言うのもおかしいけど、元気に出せよ?」
「はい!別に私、恒久先輩のこと諦めるつもりありませんし」
「まぁ、俺は俺で、諦めるつもりないからな。待っても無駄だと思うぜ?」
「大丈夫です。待つつもりなんてありません。絶対に、恒久先輩を振り向かせてみせますから」
「カッコいいこと言うじゃねぇか。だったら俺も、ユウを見習って頑張ってみるかな」
「えっ、ちょっ!今のナシです!恒久先輩は頑張らないでください!」
「おっ、ユウがそれだけ焦るってことは、俺も脈アリなのか?」
「あ~。多分茜先輩、恒久先輩のこと全く意識してませんよ?」
「いやいや、全くってことはねぇだろ・・・・え、ほんとに?全然まったく?」
「幸いなことに、じゃなくて、残念ながら」
「今『幸い』って言ったな!?」
「だって、私は恒久先輩が好きなんだも~ん」
ユウはそう言うと、小さく舌を出して走り出した。
「いや、可愛く言っても許さねぇぞ!おい待てこらっ!」
恒久はそう言うと、ユウの後を追って走り出した。
月明かりに見守られながら、恋する2人の追いかけっこは、しばしの間続いたのであった。
「ふぁっ!?」
突然のユウの告白に、恒久は変な声を上げた。
「い、今!?いや、じゃなくて、その、え?え?すき?は?なに?どゆこと!?」
「おおおおおお落ち着いてください恒久先輩っ!」
「いやいやいやいや、なんでユウまで慌ててんだよっ!」
「だだだだだって、勢いで告白しちゃってけど、冷静になったら・・・・」
そう言って顔を真っ赤にするユウを見た恒久は、少しずつ冷静さを取り戻していった。
「あー、え~っと・・・・ありがとな」
恒久は、ユウの顔も見ずに背を向けた。
(あ、恒久先輩顔が真っ赤だ。可愛い)
恒久が真っ赤になった顔を隠すために背を向けたにも関わらず、瞬時にそのことを見抜いたユウは1人、心の中で呟いた。
「まぁ、なんだ、その。告白なんてされたことねぇから、こういう時どうすれば良いのかわかんねぇんだけどよ・・・」
そう言いながら恒久はユウを見据え、思い悩んだように口を閉ざした。
ほんの少しの時間にも関わらず、その沈黙をユウは長く感じていた。
そして耐えきれなくなったユウは、笑みを浮かべて恒久の目を見つめた。
「恒久先輩の答えは、分かっているつもりです。
でも、ちゃんと恒久先輩の口から、聞きたいです」
ユウにじっと見つめられた恒久は、後輩であり、しかも自身に告白してくれた女子にそこまで言わせてしまった事に後悔の念をいだきながらも、小さく頷いた。
「悪ぃ。俺、ユウの気持ちには答えられねぇわ」
「そう、ですよね・・・」
ユウは消えそうな声を絞り出しながら、俯いた。
(分かってても、やっぱり悲しいや)
ユウは、溢れそうになる涙をこらえながら、恒久にも聞こえないほど小さな声で呟いて、顔を上げた。
「やっぱり、私が本当の女の子じゃないから―――痛いっ!」
ユウは突然走ったおでこの痛みに、言葉を止めた。
「まったくよぉ。俺がそんな理由で断ると、本気で思ってんのか?」
ユウのおでこを軽く指でデコピンした恒久は、不貞腐れた表情を浮かべていた。
「ふふふ。ごめんなさい。少し意地悪しちゃいました。
本当はちゃんと分かってます。恒久先輩も、忍者部の皆さんも、私の事を女の子として扱ってくれてること。
それに、恒久先輩が断る理由も・・・」
「ま、マジで??」
「マジです」
ユウはニコリと恒久に笑みを向けると、
「好きな人、いるんですよね?」
じっと恒久を見つめた。
「・・・・・・・・」
ユウの言葉に、恒久が口を閉じていると。
「茜先輩ですよね?」
ユウは、恒久を見据えたまま言った。
「・・・・・・なんで分かったんだよ。絶対、誰にもバレて無いと思ったのに」
恒久はようやく、気まずそうに口を開いた。
「多分、私以外は誰も気付いていないと思います。茜先輩も含めて」
「ユウはよく気が付いたな」
「だって、ずっと恒久先輩を見てましたから」
ユウはそう言ってはにかんだ。
「はぁ~。こんなに可愛いやつに告白されたのに断るなんて、俺史上最大の失敗になりそうだな」
健気に笑うユウに、恒久もまた、笑顔を返した。
「今ならまだ、クーリングオフ期間中ですよ?」
「いやそれ、普通返品の時に使う言葉だろ」
「あっ。私、初めて恒久先輩につっこまれたかも」
「ん?そうだったか?って、今それ関係なくね?」
「あ、連続でつっこまれちゃった」
「それもういいわ!」
恒久の3度目のつっこみとともに、目があった2人は小さく笑いあった。
「ありがとうございます。少し、気分が楽になりました」
「まぁ、なんだ。俺が言うのもおかしいけど、元気に出せよ?」
「はい!別に私、恒久先輩のこと諦めるつもりありませんし」
「まぁ、俺は俺で、諦めるつもりないからな。待っても無駄だと思うぜ?」
「大丈夫です。待つつもりなんてありません。絶対に、恒久先輩を振り向かせてみせますから」
「カッコいいこと言うじゃねぇか。だったら俺も、ユウを見習って頑張ってみるかな」
「えっ、ちょっ!今のナシです!恒久先輩は頑張らないでください!」
「おっ、ユウがそれだけ焦るってことは、俺も脈アリなのか?」
「あ~。多分茜先輩、恒久先輩のこと全く意識してませんよ?」
「いやいや、全くってことはねぇだろ・・・・え、ほんとに?全然まったく?」
「幸いなことに、じゃなくて、残念ながら」
「今『幸い』って言ったな!?」
「だって、私は恒久先輩が好きなんだも~ん」
ユウはそう言うと、小さく舌を出して走り出した。
「いや、可愛く言っても許さねぇぞ!おい待てこらっ!」
恒久はそう言うと、ユウの後を追って走り出した。
月明かりに見守られながら、恋する2人の追いかけっこは、しばしの間続いたのであった。
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