おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
401 / 519
新学期と

第352話:甲賀ノリという男

しおりを挟む
「クソっ!ソウ、追手は!?」
「大丈夫!こっちには来てないみたい!」
「もうっ!ノリさんがあんなに強いなんて、聞いてないわよっ!」

聡太がレーダースマホを確認しながら答えると、アカが叫んだ。

現在彼らは、中忍体模擬戦の真っ最中なのである。

その相手とはもちろん、重清とその具現獣であるプレッソ、チーノ、ロイ、そして後輩であるユウ。

そしてそこに本人曰く『強力な助っ人』として参戦しているノリである。

これまでノリは、技術的な指導こそ行ってきたものの、ほぼ実践的な指導には手を出していなかった。

唯一ショウのみが、直接その指導を受けているのみなのであった。

だからこそ彼らは、ノリの力を侮っていた。

ショウからの証言によりノリの実力はある程度分かっていたはずの彼らも、普段あれだけぞんざいに扱っているノリの実力を大きく見誤っていたのだ。

結果として・・・

「まさか、ケンさんが一発とはな」

恒久は憎々しげに呟いた。

模擬戦開始早々、様子見とばかりに果敢にノリへと攻めたシン、ケン、ノブであったが、彼らもまた、ノリの力を見誤っていた。

彼らはショウに対するのと同じ感覚で、ノリへと襲いかかったのだ。


古賀 久則ひさのり、忍名を甲賀 ノリ。
この男は常々考えていた。

リア充爆ぜるべし、と。

見た目もそう悪くなく、職業も安定している。
にも関わらず彼は、未だ独身であった。
というよりも、彼は彼女というものが隣りにいたことすらなかった。

それは、彼が運命の相手との出会い方に物凄くこだわっているからに他ならないのだが、それでも彼は、リア充というものを酷く嫌悪していた。

ただの嫉妬である。

自分で決めた出会い方のせいで結婚できないのは明白であるにも関わらず、彼はリア充に嫉妬しているのだ。

それだけならばまだ良い。

彼は、ただ嫉妬するだけに留まらなかった。

彼は、教師である。

そして周りにいるのは、恋多き中学生達なのだ。
その結果、彼は幾度となく暴走した。

部内恋愛を禁止し、課題と称してリア充予備軍を部員達に探らせ、あわよくば教師の権限でそれを阻止しようと企んでいたのだ。

その企みは、雑賀雅という強大な力によって阻まれた。
その結果ノリは、非常にキツいお灸を据えられることとなった。

そして、甲賀ノリは沈黙した。

しかしその心の奥底では、リア充に対する嫌悪は、憎悪に近いものへと昇華されていた。

昇華、なのだろうか。

それまでノリの嫌悪の対象は、絶対者雑賀雅の孫である雑賀重清であった。
見た目がそう悪くはないとはいえ、基本的に何も考えていないあの雑賀重清が、何故かやたらとモテていたのだ。

しかし、雑賀雅の孫である以上、変に手を出すことは出来なかった。

そんなノリの前に、その少年は現れた。
いや、重清よりも前から忍者部に所属していたその少年は、突如としてリア充と化したのだ。

それが、ノリの弟子でもある甲賀ケンであった。

ケンはこともあろうか、あの雑賀雅の孫の1人である、雑賀麻耶と付き合い始めたのだ。

重清のようにただモテていたわけではない。
見事なまでに、リア充となったのだ。

ノリの中に、様々な感情が渦巻いた。

嫉妬、憎悪、そして、羨望。

しかし雑賀雅にしっかりと目をつけられているノリは、ケンに対し露骨に嫌がらせをすることはできなかった。

そしてそんなノリの目の前に、相手の力を見定めることなく、無謀に攻め込んでくるケンが映った。

ノリは思った。

これ、チャンスなんじゃね?

と。

いやこれはあくまで師匠として、やっぱ相手の力を見定める必要性を教えなきゃいけないわけじゃん?
無謀に攻めるとか、危ないじゃん?
俺が教えてあげないと、誰も教えてあげられないじゃん?

そんな言い訳をしつつ、ノリはケンを殴り飛ばした。

日頃の鬱憤晴らしつつ、相手の力を見極める大切さまで教えるなんて、一石二鳥!

とか考えながら。

そう。これはあくまでも、忍者としての教えも込められているのでセーフ・・・・

なわけはないのである。

一石二鳥とか考えている時点で、完全にアウトなのだ。

現在の教育会において、このような暴挙が許されるはずもない。
いくら忍者とはいえ、個人的な感情が込められた時点でその拳は、教育ではなく暴力なのである。

こんな教師を、このまま野ざらしになどできないのではないだろうか。

早く、誰かこの暴力教師を止めて欲しいのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...