399 / 519
新学期と
第350話:今年の中忍体
しおりを挟む
「中忍体に出られないって、どういうことだよ!?」
『喫茶 中央公園』に、恒久の声が響いた。
『何嫌の術』により声が漏れないとはいえ、術者であるあけみ姉さんにはその声は筒抜けとなっており、その睨みつけるような強い視線が恒久達の席へと注がれていた。
鈴木家もとい、雑賀家(の、分家末席)で暴君の絶対的命令が下ったその日、重清は中忍体に出られなくなったことをどう説明しようかと悩みに悩んだ挙げ句、結局解決策も見つからないままトボトボと歩いていた。
気付くといつもの『喫茶 中央公園』へと足が向かっており、
「ま、とりあえずコーヒーでも飲んで考えよう」
と何も考えずにそこへ足を踏み入れたのが彼の運の尽きであった。
その日の忍者部での修行を終えた聡太と恒久そして茜、さらには最近彼らと同じく『喫茶 中央公園』を利用する優希と、重清は見事に鉢合わせしたのである。
(チーノ、皆がいたの気付いてたよね?なんで教えてくれなかったのさ!?)
心の中で重清は、チーノへと抗議した。
(あら。こういうのは、早めに言っておかないと後々禍根を残すわよ?)
チーノは笑いを堪えるような声で重清へと返答していた。
結局重清は、決心もつかぬまま中忍体へ出られなくなった事を彼らへと伝えることになってしまったのだ。
そして、冒頭の恒久の叫びなのである。
「いや、だからそれをこれから説明するんだって」
重清は肩を落としながら、恒久へと返した。
「実は・・・カクカクシカジカなんだ」
「あーうん、そっかぁ~ってなんねぇよ!なんだよカクカクシカジカって!ちゃんと説明しろよっ!」
「いや、今のはそれで理解する場面じゃん!」
「分かるかぁ~い!んなもん、小説だけの話なんだよっ!」
重清と恒久が言い合っていると、
「なるほど。同じ日に、大事な用事が出来ちゃったんですね」
タロットカードをテーブルへと並べていた優希が、カードをめくりながらそう呟いた。
「ほら。理解してる」
重清は得意げな顔で恒久を見返した。
「いや、あれは特殊過ぎんだろ!っていうか優希!お前宿題もせずに占いなんてして、大丈夫なのかよっ!」
「あっ、宿題もう終わりました」
「優秀かよっ!」
恒久のつっこみの矛先が優希へと向かうと、
「あっ。恒久先輩、重清先輩。もうすぐ2人に天罰が―――」
「「おごっ!!」」
優希の言葉と同時に、恒久と重清の頭にあけみ姉さんの拳が振ら降ろされた。
「あんた達!いくら他にお客さんがいないからって、少し騒ぎ過ぎだよ!この術も、大きすぎる声までは抑えられないんだからね!!」
「「ご、ごめんなさい」」
重清と恒久は、頭をおさえながらあけみ姉さんへと頭を下げた。
「まったく。あんた達はいつも騒ぎすぎなのよ」
あけみ姉さんがカウンターへ戻ると、茜が2人を咎めるように呟いた。
「ほら、ソウと優希ちゃんを見てみなさいよ」
そう言う茜の視線の先では、
「聡太先輩、近々新たな出会いがあるみたいですよ」
「新たな出会い、かぁ。もしかして、ぼくにも遂に恋人ができちゃうのかな?」
「う~ん。それとは違うみたいですね。っていうか聡太先輩、そういうの興味あったんですね」
「まぁ、無いわけでもないけど・・・とりあえず言ってはみたものの、シゲやツネほど、そういうのに貪欲ってわけじゃないかなぁ~」
「なんか、俺ら静かにディスられてないか?」
「だよね。ツネはわかるけど、おれはそんなに恋愛に貪欲じゃないよね?」
「あっ、お前それは卑怯だぞ!シゲの方が、色恋沙汰多いじゃねぇかよっ!」
「あんた達~」
「「ごめんなさいっ!」」
言い合う重清と恒久を再びあけみ姉さんが睨むと、2人はすぐさま頭を下げた。
「ほんと、あんた達は相変わらずね」
そんな2人に、茜が呆れた目を向けていると、
「でも、シゲが中忍体に出られないっていうのは一大事だよね。明日、ノリさんに相談しないとだね」
優希から新たな出会いを占われた聡太がそう言うと、一同は頷きあうのであった。
「あぁ、それね。知ってる知ってる」
「軽っ!!」
翌日、重清達が忍者部の部室でノリに前日の事を相談すると、ノリは雑にそう返した。
「そのことは雅様から相談を受けていたからな。まぁ、相談っていうよりも、命令だけどな」
ノリはため息混じりにそう言うと、
「シン、こっちに来てくれ。ケンとノブもだ。どうせだから今のうちに、今年の中忍体について話しておきたい」
シン達3人へと声をかけ、一同を集めた。
「今年の中忍体についてだが、重清は家庭の事情で出場できないことになった。そこで、今年中忍体に出るメンバーを今のうちに伝えておきたい」
ノリのその言葉に、一同は息を呑む。
そんな一同に、ノリは告げた。
「今回の中忍体だが、重清はもとより、優希にも出場は諦めてもらう」
『喫茶 中央公園』に、恒久の声が響いた。
『何嫌の術』により声が漏れないとはいえ、術者であるあけみ姉さんにはその声は筒抜けとなっており、その睨みつけるような強い視線が恒久達の席へと注がれていた。
鈴木家もとい、雑賀家(の、分家末席)で暴君の絶対的命令が下ったその日、重清は中忍体に出られなくなったことをどう説明しようかと悩みに悩んだ挙げ句、結局解決策も見つからないままトボトボと歩いていた。
気付くといつもの『喫茶 中央公園』へと足が向かっており、
「ま、とりあえずコーヒーでも飲んで考えよう」
と何も考えずにそこへ足を踏み入れたのが彼の運の尽きであった。
その日の忍者部での修行を終えた聡太と恒久そして茜、さらには最近彼らと同じく『喫茶 中央公園』を利用する優希と、重清は見事に鉢合わせしたのである。
(チーノ、皆がいたの気付いてたよね?なんで教えてくれなかったのさ!?)
心の中で重清は、チーノへと抗議した。
(あら。こういうのは、早めに言っておかないと後々禍根を残すわよ?)
チーノは笑いを堪えるような声で重清へと返答していた。
結局重清は、決心もつかぬまま中忍体へ出られなくなった事を彼らへと伝えることになってしまったのだ。
そして、冒頭の恒久の叫びなのである。
「いや、だからそれをこれから説明するんだって」
重清は肩を落としながら、恒久へと返した。
「実は・・・カクカクシカジカなんだ」
「あーうん、そっかぁ~ってなんねぇよ!なんだよカクカクシカジカって!ちゃんと説明しろよっ!」
「いや、今のはそれで理解する場面じゃん!」
「分かるかぁ~い!んなもん、小説だけの話なんだよっ!」
重清と恒久が言い合っていると、
「なるほど。同じ日に、大事な用事が出来ちゃったんですね」
タロットカードをテーブルへと並べていた優希が、カードをめくりながらそう呟いた。
「ほら。理解してる」
重清は得意げな顔で恒久を見返した。
「いや、あれは特殊過ぎんだろ!っていうか優希!お前宿題もせずに占いなんてして、大丈夫なのかよっ!」
「あっ、宿題もう終わりました」
「優秀かよっ!」
恒久のつっこみの矛先が優希へと向かうと、
「あっ。恒久先輩、重清先輩。もうすぐ2人に天罰が―――」
「「おごっ!!」」
優希の言葉と同時に、恒久と重清の頭にあけみ姉さんの拳が振ら降ろされた。
「あんた達!いくら他にお客さんがいないからって、少し騒ぎ過ぎだよ!この術も、大きすぎる声までは抑えられないんだからね!!」
「「ご、ごめんなさい」」
重清と恒久は、頭をおさえながらあけみ姉さんへと頭を下げた。
「まったく。あんた達はいつも騒ぎすぎなのよ」
あけみ姉さんがカウンターへ戻ると、茜が2人を咎めるように呟いた。
「ほら、ソウと優希ちゃんを見てみなさいよ」
そう言う茜の視線の先では、
「聡太先輩、近々新たな出会いがあるみたいですよ」
「新たな出会い、かぁ。もしかして、ぼくにも遂に恋人ができちゃうのかな?」
「う~ん。それとは違うみたいですね。っていうか聡太先輩、そういうの興味あったんですね」
「まぁ、無いわけでもないけど・・・とりあえず言ってはみたものの、シゲやツネほど、そういうのに貪欲ってわけじゃないかなぁ~」
「なんか、俺ら静かにディスられてないか?」
「だよね。ツネはわかるけど、おれはそんなに恋愛に貪欲じゃないよね?」
「あっ、お前それは卑怯だぞ!シゲの方が、色恋沙汰多いじゃねぇかよっ!」
「あんた達~」
「「ごめんなさいっ!」」
言い合う重清と恒久を再びあけみ姉さんが睨むと、2人はすぐさま頭を下げた。
「ほんと、あんた達は相変わらずね」
そんな2人に、茜が呆れた目を向けていると、
「でも、シゲが中忍体に出られないっていうのは一大事だよね。明日、ノリさんに相談しないとだね」
優希から新たな出会いを占われた聡太がそう言うと、一同は頷きあうのであった。
「あぁ、それね。知ってる知ってる」
「軽っ!!」
翌日、重清達が忍者部の部室でノリに前日の事を相談すると、ノリは雑にそう返した。
「そのことは雅様から相談を受けていたからな。まぁ、相談っていうよりも、命令だけどな」
ノリはため息混じりにそう言うと、
「シン、こっちに来てくれ。ケンとノブもだ。どうせだから今のうちに、今年の中忍体について話しておきたい」
シン達3人へと声をかけ、一同を集めた。
「今年の中忍体についてだが、重清は家庭の事情で出場できないことになった。そこで、今年中忍体に出るメンバーを今のうちに伝えておきたい」
ノリのその言葉に、一同は息を呑む。
そんな一同に、ノリは告げた。
「今回の中忍体だが、重清はもとより、優希にも出場は諦めてもらう」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる