おれは忍者の子孫

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新学期と

第345話:大人達の報告会

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優希が2中に入学し、忍者部へと入部して1週間が経った。

その日はノリの後輩であるガクが、ノリの隣で忍者部員達の修行を眺めていた。

「しかしあのショウ君の弟、いや、妹、ですか。お兄さんと比べても遜色ない程の才能ですね」
ガクは優希を見つめながら、隣のノリへと話しかけた。

「だろ?あのショウですら2日かかった最初の試験を、たった1日でクリアしたからな」
ノリはそう言いながら、優希の動きを見ていた。

「たった1日とは。しかし、力の使い方だけでなく、あの武具もなかなか面白いですね」
そう言うガクの視線の先では、優希が1枚のコインで鉄玉となったプレッソを防いでいた。

「今使っているのは、ユウが言うところの小アルカナ、コインのエースだな。ありゃ、自動で相手の攻撃を防ぐ能力があるみたいだ」
「ってことは、他にも?」

「まぁ見ていろ」
そう面白そうに言ったノリからガクは目を逸らして優希に再び目を向けると、優希は1枚のカードを具現化し、直後にそれは、1本のつえへと変化した。

「あれは・・・ワンド、ですか」
「詳しいな。まぁ、そうだ」

ガクの言葉にノリが頷いていると、優希はワンドの先を重清へと向け、その先から水の砲弾を発射した。

「彼女も、お兄さんと同じ水の忍力ですか。って、今重清君の鉄壁の術を弾きましたよ!?」
「うるせぇな。わかってるよ。あのワンドは、忍力との親和性が高いみたいでな。あれを通して術を使うと、通常よりも強い威力が出るみたいなんだよ」

「な、なるほど。ってことはもしかして、さっきのコインは、技の力が?」
「まぁ、そういうことだ。あれとは別に、ソードってカードがあるが、ありゃ体の力が元らしい」

ノリがそう言っていると、重清の放った弾丸の術が、優希へと直撃した。

全身に重清の弾丸の術を受けた優希は、その姿を霧のように無惨させ、その場から消失した。

「あのカップは、心の力ですか」
カップから溢れ出た水による優希の幻術が霧散していくのを見ながら、ガクが呟いた。

「そういうことだ。具現獣が得意とする心の力のみでの簡単な幻術が、あのカップの水では可能だそうだ」
「あの子1人で、なんでも出来ちゃいますね」
ガクがそう言うと、ノリは苦笑いを浮かべる。

「お陰であいつらも、追い抜かれないように必死になってるがな」
その言葉と同時に向けられた他の生徒達にガクが目を向けると、修行に力のこもったシン達が目に入った。

「どうやら、お兄さんに負けず劣らず、周りに良い影響を与えているみたいですね」
ガクは笑ってそう言いながら、言葉を続けた。

「しかし、小アルカナってことは、大アルカナも出せるんですか?『死神』とか」
「・・・・お前、発想が重清と同じだな」

ノリはそう言って笑った直後、真剣な眼差しを優希へと向けた。

「ありゃ、バケモンだぞ」
「そ、そんなにですか」
ノリの言葉にゴクリと唾を飲んだガクに、

「ユウは既に、小アルカナのエースカードだけならば、任意で具現化が可能だ。
だが、それ以外、特に大アルカナのカードに関しては、完全にランダムなんだよ。
1度だけ、試しにユウに大アルカナカードを具現化させてみた。
出てきたのは『愚者』ってカードだったらしいが・・・」

「な、何が起きたんです?」
「記憶がないんだよ」

「へ?」
「その『愚者』が具現化され光った直後、俺は混乱してあいつらを手当たり次第に襲ったらしい。
気が付いたときには、影で見守っていた雅様にボコボコにされていたよ」

「相手を混乱させる力、ですか。しかし、まさかノリさんですらもとは・・・」
「あぁ。さすがに俺も油断していた。今ユウには、大アルカナカードの具現化は禁止している。
力を限りなく抑えた上で、自在に具現化できるようになるまではな」

「・・・・なんというか、相変わらず2中は規格外の集まりですね」
「いや、そこまで言うか?」

「だって、事実でしょ?
ノリさんが直接修行をつけるほどの才能を持ったショウ君に、その妹で、これまたノリさんすらも圧倒する武具を持つユウちゃん。
それに今の3年生だって、3人揃えばショウ君すらも倒すことのできる力を持つんですよ?そして極めつけは、あの4人」
ガクはそう言って、重清達2年へと目を向ける。

「中学生どころか、俺よりも遥かに多くの忍力を持ち、さらには具現獣の子どもという謎だらけの卵を持つソウ君。
あの雑賀雅の史上初の弟子となったアカちゃん。
伊賀本家から、本家しか許されないはずの術をもらった恒久君。
そして、あの伝説の2人の孫にして、あの年で3体の具現獣を持つ重清君。
周りを見ても、まともなのは俺だけじゃないですか」

「おいこら待て。それだと、俺まで規格外みたいじゃないか」
「いや、ノリさんも十分規格外なんですからね?
あの雑賀平八様の弟子が、規格外じゃないなんて言わせませんよ?
あの子達は、ノリさんの力が分かってないだけなんですよ」

「まぁあいつらとの修行で、本気を出すわけにもいかねぇからな」
ノリはそう言うと、苦笑いを浮かべていた。

「それよりもガク。あの件はどうなった」
ノリは真面目な顔に戻って、ガクへと問いかけるのであった。
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