おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
389 / 519
新学期と

第340話:性別違和

しおりを挟む
「お、女の子・・・・」
男子一同は、茜に抱きしめられる優希に目を向けながら、呟いた。

「優希ちゃん、大丈夫?」
茜は優しい声で、優希に声をかけた。

この忍者部において、未だかつて聞いたことのないような、慈愛に満ちた声で。

「は、はい・・・」
茜の胸から顔を上げた優希は、少し目を赤くしながらも、強い眼差しで茜を見つめ、そして残念な男子達へとその目を向けた。

「取り乱してしまって、ごめんなさい。茜先輩が言ってくれたとおり、私は、いわゆる性別違和というやつです。
元々は男の子として生まれました。
だけど、ある日気づいたんです。
私は、男じゃない。女なんだって。
だから、中学生になるこのタイミングで、私は私になろうと、決心したんです!」

そう強く発せられる優希の言葉に、男子一同は無言のまま俯き、

シゲ「なんか、ごめんね。茶化したみたいになっちゃって」
ソウ「本当にごめんなさい!」
シン「悪かったな」
ノブ「スマン!!」
ケン「・・・・すまなかった」

そう口々に謝罪の言葉を並べていた。

そんななか恒久だけは、1人自身の手を見つめていた。
そしてそのまま優希の前に進み出ると、深々と頭を下げた。

「本当に悪かった!俺、女のユウに気安く触っちまった!これじゃ、茜に殴られても仕方かなった!申し訳ない!!」

「え、いや、その・・・・」
「ふん!分かればいいのよっ!」

恒久の謝罪にオロオロする優希に代わって答える茜に、恒久は目を向けた。

「茜、お前最初から気付いてたのか?」
「当たり前じゃない」
恒久の問に、茜は事も無げにそう答えた。

「何でわかったんだ?
ショウさんは、弟だって言ってたのに」

「なんでって・・・女の勘よ」
「出たよ、女の勘。便利だな、それ」

「ってことは、これからはその女の勘の使い手が、1人増えるってわけか」
シンが呟くように言うと、

「しかも、ユウって占いもできるんでしょ?
それもう最強じゃん!」
重清がそれに乗っかった。

「確かに、女の勘と占いの組み合わせは、怖いね」
聡太も重清の言葉に頷いた。

「・・・俺達、女子2人の尻に敷かれるの決定」
ケンはそう言って頬をかいていた。

ちなみにケンは、既に麻耶の尻に敷かれまくっているのだが、それはそれで心地の良いケンなのである。

「いやちょっと、それだとわたしがみんなを尻に敷いてるみたいじゃないの!」

「「「「「「そうだけど?」」」」」」

一同がワイのワイのしていると、

「あ、あの・・・・」
優希がオズオズと皆の顔を見つめていた。

「あの、私が言うのもなんですけど・・・皆さん、私が女ってこと、受け入れるの早すぎじゃないですか?」
優希の言葉に、男子一同は視線を交わした。

そしてその視線は、そのまま茜へと注がれた。

「な、なによ皆して」
茜を見つめたまま黙り込む男子一同であったが、重清が決死の覚悟で口を開いた。

「だってさぁ、今まで忍者部にいた女子って、茜だけじゃん?
その唯一の女子だった茜はなんていうか・・・
そう、良い意味で男っぽい!」

「いや、シゲ。それは言い過ぎだぞ?
茜はあれだ。もう男みたいなもん―――ぐぉっ!」

「ぐへっ!!」

重清の言葉に乗っかった恒久が言葉を終える前に、恒久と重清は、いつの間にか忍者部部室の壁に、めり込んでいた。

「で?あんた達もそう思ってるわけ?」
茜は、残る4人へと目を向けた。

「「「「いえ、滅相もございませんっ!!」」」」

「「卑怯だぞっ!!」」

いとも容易く裏切ったシン達に、重清と恒久は抗議の声を揃えた。

(まったく。ほんと、バカばっかりだ。
が、良い奴らだよな、ほんと。
優希も、こいつらとなら、素の自分でいられるだろう)

それまで黙って彼らを見守っていたノリは、そんな一同に笑みを向けていた。

ノリは心の中で、喜んでいた。
優希を、何事もなく受け入れた彼らを、誇らしくも思っていたのだ。

「まっ、こんなバカばっかりだけど、楽しいところだから!優希ちゃんも、わたし達には気を使う必要なんて、ないんだからね!」
茜がそう言うと、

「はいっ!」
目に涙を浮かべた優希は、そう、満面の笑みを返していた。

「あっ、そうだ!更衣室の場所とか、教えてあげないと―――」
「あぁ、待てアカ」
茜の言葉を遮って、それまで黙っていたノリが前へと進み出た。

「その話が出たから、ついでに優希に対する、我が校の方針についても言っておこう」
そう言ってノリが優希に目を向けると、優希はコクリと頷いた。

「基本的に我が校は、芥川優希を女子生徒として扱う。ま、これは当然のことだな。
しかし、いくつか例外がある。それが、今アカが言った更衣室や、トイレだ」

「まさか、そこだけは男子用を使わせるなんて言うんじゃないでしょうね!?」
茜は、ノリへと食って掛かった。

「いや、そうじゃない。我々教師陣も、色々と考えた。
なるべく、優希には負担はかけたくない、とな。
しかし、いくら心が女性とはいえ、体はまだ男性のままだ。
他の女子生徒の中には、それに拒否反応を示す者がいる可能性も、考慮しなきゃならん」
「だったら、どうするっていうのよ?」

「優希には申し訳ないが、トイレと更衣室に関しては、職員用を使ってもらうことになった。もちろん、女性用のな。
これは彼女と、彼女のご両親の承諾も得ている」

「はい。私も、実はそこが心配だったので・・・
ご配慮頂いて、感謝しています」
優希はそう言うと、ノリへと頭を下げた。

「まぁ、優希ちゃんが良いならいいんだけど・・・」
茜は渋々ながらもそう呟くと、優希は茜に笑みを向けていた。

「と、まぁ優希の話は以上だ。
俺はこれから、松本君のことを、オウさんに報告しなきゃならん。
クソみたいな制度に則ってな。
だから今日のところは解散だ」

ノリの言葉で、その日は解散となった。

こうして2中忍者部に、1人仲間が加わったのであった。




------
あとがき

「性別違和」よりも、「性同一性障害」の方が分かりやすいのかな、とも考えたのですが、どうにも「障害」という言葉が嫌だったので、「性別違和」とさせていただきました。
使い方が間違っていたり、不快に思う方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。

あと、基本的にふざけた内容の本作ですが、彼女の性別についてネタにするようなつもりは一切ありません。
もしも今後、彼女の扱いについて気になる点がありましたら、そちらについてもご連絡いただけると幸いです。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

王女殿下は家出を計画中

ゆうゆう
ファンタジー
出来損ないと言われる第3王女様は家出して、自由を謳歌するために奮闘する 家出の計画を進めようとするうちに、過去に起きた様々な事の真実があきらかになったり、距離を置いていた家族との繋がりを再確認したりするうちに、自分の気持ちの変化にも気付いていく…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最弱王子なのに辺境領地の再建任されました!?無気力領主と貧困村を救ったら、いつの間にか国政の中心になってた件について~

そらら
ファンタジー
リエルは、王国の第五王子でありながら、実績も勢力も乏しい存在だった。 王位争いの一環として、彼は辺境の「エルウァイ領地」に配属されることになる。 しかし、そこは獣害や盗賊の被害が相次ぎ、経済も破綻寸前の“外れ領地”だった。 無気力な領主・ルドルフと共に、この荒廃した地を立て直すことになったリエルは、相棒の神聖獣フェンリルと共に領地を視察するが、住民たちの反応は冷たいものだった。 さらに、領地を脅かす巨大な魔物の存在が判明。 「まずは住民の不安を取り除こう」と決意したリエルは、フェンリルと共に作戦を立て、魔物の討伐に乗り出すことを決める。 果たして、リエルはこの絶望的な状況を覆し、王位争いに食い込むことができるのか!? 辺境の村から始まる、領地改革と成り上がりの物語が今、幕を開ける——!

処理中です...