おれは忍者の子孫

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外伝〜始祖の物語〜

第7話:旅

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ある日、師は弟子達を集めた。

弟子達を前に、師である男は語り出した。

「お前たち、これまでよく私についてきてくれた。
ただ私の理想とする組織を作るという夢についてきてくれて、本当に感謝する」
そう言って頭を下げる男に、

「どうか頭をお上げください。師の、父の夢は、我々全員の夢でもあるのです。我々が感謝することはあっても、師が頭を下げる必要などありません」
一番弟子である允行とうぎょうがそう言うと、

炎空えんく「允行の言う通りだぜ親父。俺達は皆、親父の夢を自分の夢だと決め、自分の意志でここにいるんだ」

索冥さくめい「そうですよ父上。父上の夢は私達の夢。その夢を実現したくて、ここにいるんです」

りん「まぁ、他に夢なんて無いし。それに、こんなに面白そうな力、みすみす手放すわけにもいかないですからね」

角端かくたん「力の弱い僕みたいな人にも、強くなれる機会が与えられたんです。父様には感謝しかありません。だから、父様の夢は、僕の夢です」

丞篭しょうこ「わ、私は、少しでも人の役に立つことができれば・・・でも、師匠の夢、叶えたい、です」

「お前たち・・・・」
弟子達の言葉に、男は涙を浮かべ、しばし押し黙っていた。

そして顔を上げた男は言った。

「お前たちに言い渡す。これより1年後、お前達には旅に出てもらう」

「旅、ですか」
角端が、呟いた。

「そうだ。残り1年間、ここで皆と力をつけた後、お前達はここを出るのだ」

「こ、ここを出て、我々は何をすれば良いのでしょうか」
丞篭が、師の顔を覗き込んだ。

「何でも。好きに生きたら良い」
男はそう答えた。

「あの、それじゃわからないんですけど」
麟が、手を挙げてそう言った。

「ふむ。分かりにくかったか。
お前達は皆、私の夢を自身の夢だと言ってくれたな」
男の言葉に、6人全員が頷いた。

「うむ。であればその夢、後はお前達に叶えてほしいのだ。
そのために1度、それぞれが違う道を歩んで欲しい。そうすることで、様々な目を、培うことができるはずだ」
「でもよぉ、それだと全員が違った組織を作ることにならねーか?」
炎空が、他の弟子達に目を向けて言った。

「その通りだ。だから旅に出て5年後、改めてここに集まるんだ。そして、集まった者達で組織を作り上げてほしい」
「なるほど。そこで互いに意見を出し合って、組織を作るんですね」
索冥は納得したのように頷いた。

「そういうことだ」
男はうなずき返すと、言葉を続けた。

「どんな組織となるかは、その時に決めてくれればいい。
しかし願わくば、他者のために動く、そして皆が幸せになるような組織にして欲しい」

「なんだか、その時には父様はいらっしゃらないような口ぶりですね」
角端がそう言うと、男はニコリと笑った。

「そんなつもりはない。私も、共に考えるさ」
男の言葉に、角端は安心したようにため息をついていた。

「よ~し!あと1年しかねーんだ。さっさと修行始めようぜ!」
炎空がそう言って修行に向かうと、他の弟子達も次々とその場を後にし、残ったのは男と允行だけとなった。

「ふう。やはり角端は鋭いな」
そう呟いた男は、ひとり残っていた允行に声をかけた。

「お前は行かないのか?」
「いえ。私も行ってきます」
允行は慌てたようにそう返すと、そのまま他の弟子達の後についていった。

「・・・・・・・」

男は允行の背を無言で見守っていた。

允行が、組織の話になった途端押し黙っていたことに男は気付いていた。

允行が、日に日に開いていく他の弟子達との力の差に思い悩んでいた事も。

しかし男は、ただ允行を見守っていた。

最も信頼するこの一番弟子ならば、きっと自身の力でそれを乗り越えてくれるはずだと、信じていたのだ。

それは、将来允行と同じ力を発現させた者達を救うことにもなると、男は信じていた。


しかしその数日後、師から最も信頼される青年は、突然姿を消した。
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