おれは忍者の子孫

メバ

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一息ついて

第331話:本当に、さようなら

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「ショウさんっ!!」
2中の正門前に、茜の声が響いた。

社会科研究部の部室を後にしたショウを追っていた茜は、今まさにショウを見つけ、呼び止めたのである。

この日は卒業式。
まだ正門前には、チラホラと最後の別れを惜しむ生徒達の人だかりが残っていた。

そんな場所で、茜はショウへと声を掛けたのである。

その瞬間、辺りからはドス黒い殺気が溢れ出していた。

それはショウからでも、ましてや茜からでもない所からの殺気であった。

その殺気は、ショウと茜を取り囲む、女子生徒達から溢れ出ていた。

(ちょっとあの子、まさか翔様に告白するつもりじゃないでしょうね)
(私だって翔様が出てくるの、ずっと待っていたのに!)
(足りない。制服の切れ端なんかじゃ足りない)
(あら、芥川君の着ていたシャツ、とてもいい匂いだわ)

ヒソヒソと囁かれるそんな声が、茜の耳にはしっかりと届いていた。

(しまった。ショウさんの人気のことを考えてなかった。私、今日死んじゃうかも・・・・)

茜は、一瞬だけそんなことを考えて、すぐに頭を切り替えた。

周りの事など関係ない。
今は自分の気持ちをショウに伝えることだけに、茜は集中することにしたのだ。

「あー、アカー。どうしたのー?」
周囲の殺気などものともせず、ショウはそう言って茜に笑いかけた。

「ショウさん!わたし・・・・」
茜が口を開くと、ザワリ、と辺りの殺気が膨れ上がった。

「わたし、もっと強くなります!!」

(ん??????)

殺気が、一気にクエスチョンマークへと変わった。

(え、強く?)
(告白じゃないの??)
(あの子、翔君と同じ社会科研究部の子よね?)
(あー、シャツだけじゃなくてズボンも盗るべきだったかしら)

漏れ聞こえるそんな声に耳を貸さず、茜は続けた。

「わたしの尊敬するみーちゃんと平八さんみたいに、わたしはショウさんの隣に立ちたい。
でも、今はまだ、ショウさんが遠すぎて、隣どころか後ろにも立てていない事に、今日改めて思い知らされました。
だからわたしは、まだショウさんに気持ちを伝えるつもりはありません!」

(やっぱり告白だったーーーっ!!)
(でもあの子、なんだかカッコいいわね)
(隣に・・・・素敵)
(あぁっ!あのジャージも剥ぎ取りたいっ!!)

「でも、わたしが気持ちを伝えられるようになるまで待ってくださいなんて、そんなことは言いません!
いつか、ショウさんを超えるくらい強くなってみせる!
わたしは、それを宣言しにきました!」
そう言う茜の顔は、どこか満足気であった。

「うん。アカらしいねー」
ショウは、茜の言葉に笑みを浮かべた。

「でもー」
ショウは笑みを消し、真剣な目で茜を見つめた。

「僕も、そう簡単にアカには負けないよー?僕は明日から、新天地で更に力をつけてみせる。お互い、次に会うときを楽しみにしようねー」
ショウはそう言うと、手を差し出した。

「っ!はいっ!!」
茜は満面の笑みでそう言うと、ショウの手を握った。

(か、カッコいい・・・・・)

それまでショウと茜の様子を伺っていた女子生徒達は、そんな言葉と共に熱い視線を送った。

ショウに、ではない。
茜にだ。

好きな男を1人のライバルと定め、それを超えるまで告白しないと宣言した茜に、女子生徒達は心を打たれていた。

「じゃぁ、またねー」
そう行ってその場を後にするショウを見つめる茜に、女子生徒達は完全に心を奪われていた。

本当は今すぐにでも告白したい、けれどそれは今じゃない。

茜の視線から漏れ聞こえるそんな声に、女子生徒達は感動すら覚えていた。

茜はその日から、影で『愛の戦士ヴァルキリー』と呼ばれ、女子生徒達から絶大なる支持を受けることとなる。

そんなこととは知らない茜は、ある日を境に突然見知らぬ女子生徒達から数多くの恋の相談を持ち掛けられることとなり、戸惑うことになる。

しかし恋する乙女の強い味方、茜はその全てに真剣に向き合い、雅との修行により培った全国に広がる女子忍者ネットワークを駆使し、持ち掛けられる全ての悩みを解決していくこととなる。

いつしか『2中の母』と呼ばれるようになり、茜の人気は盤石のものとなってくのである。

更に茜はその人気も相まって、3年生になる際には生徒会長へと祭り上げられることとなり、様々な改革を行なっていくのであるが、それはもう少し、先の話なのである。
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