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一息ついて
第319話:1年生 対 甲賀ショウ(猫) その3
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チーノとロイが光となり、重清の体へと集まっていった。
主に、頭と背中に。
そしてそのまま頭には猫耳、背中には亀の甲羅を背負った重清が姿を現した。
「お、おぉ・・・なんていうか・・・」
少し離れた所から重清の姿を見た恒久は、声を漏らしていた。
(かっこ悪い)
ソウ達1年生だけでなく、この手合わせを見学していたシン達も同時に、重清の姿にそう思っていた。
自身に生えている猫の尻尾とじゃれついているショウ以外は。
「あんた、それ・・・」
凄くかっこ悪いわよ、という言葉を飲み込みながら、炎の鎧に身を包んだアカが、重清へと近づいて声をかけた。
「カッコいいだろ?苦労して手に入れた術、獣装の術だ!チーノの感知力と、ロイの防御力がおれのものになったんだ!ま、2人が力を抑えてるから、出力はボチボチなんだけどね」
「あぁ、そう」
アカは他に返す言葉もなく、なんとなしにそう返した。
アカの微妙な反応に少しばかり物足りなさを感じた重清は、言葉を続けた。
「さらにこの甲羅!なんと着脱可能になっておりますっ!!」
そう言って重清は、甲羅を背中から外して掲げた。
「「「・・・・・・・」」」
アカだけでなく、少し離れた所から見ていた恒久とソウも、何も返すことができずそれを無言で見ていた。
「あれ?チーノ、ロイ。なんか反応悪いぞ?」
「しょうがねぇよ重清。オイラが銃のままだからな。オイラまで加われば、あいつらだってきっと驚くさ」
マキネッタからそんな声が聞こえてくる。
(・・・・・えぇ、そうね)
(・・・・・ふむ、そうだな)
続けて重清の脳内に、チーノとロイの気のない返事が響いた。
「だよな!流石みんな、わかってるなぁ!」
具現獣達の言葉に、重清は満足そうに笑っていた。
(あぁ。なんで私がこんな姿に・・・)
(チーノはまだ良いではないか。儂など、甲羅なのだぞ?)
(何を言っているの。亀と言ったら甲羅しかないじゃないの)
(なにをぉ!?首もちょっと伸びるぞ!)
(いや、重清の首伸びたら気持ち悪いだろ)
何故か言い争うチーノとロイに、唯一重清の姿を本心からカッコいいと思っているプレッソが、つっこんだ。
((・・・・・・重清と同じ感性のプレッソが、もはや羨ましい))
チーノとロイは、諦めの気持ちでただ、そう思っていた。
「あっ、いつの間にかみんな、準備万端だねぇー」
尻尾とのじゃれつきを辞めたショウが、重清達を見てそう言い、構えた。
「じゃぁー、第2ラウンド、いくよー?」
そう言ったショウの姿が、フッとその場から消えた。
(来るっ!)
その瞬間そう感じた重清は、亀の甲羅を前へと付き出した。
「ガキィッ!」
いつの間にか重清の目の前に現れたショウの拳と甲羅が激突する。
甲羅はヒビ割れながらも、ショウの拳を受け止めていた。
(ロイの甲羅でも完全には防げないっ!?)
重清がそう思っていると、重清を四方からショウの杖が襲いかかった。
「くっ!鉄壁の術・柔っ!」
重清は、甲羅を柔らかい鉄壁で覆い、そのままショウの拳を包み込んで受け止めたままマキネッタを構え、杖を撃ち落としていった。
「はぁーーーっ!!」
腕を鉄壁の術で固定されたショウに、炎拳の術によって強大な炎を帯びたアカの拳が襲った。
ショウは腕を固定されたままアカの拳をヒラリと避け、腕に体の力を込めて鉄壁から腕を引き抜いた。
そのまま鉄壁ごと甲羅を蹴りつけて重清へとぶつけたショウは、自身を通り過ぎたアカへと標的を変えた。
「いっけぇっーー」
そんなショウに、恒久の麒麟といくつもの手裏剣が迫っていた。
「おぉー、なんかこの子、可愛いねー」
麒麟の突進を避けながらショウはそう言って、
(氷雨の術)
氷の雨をその場に降らせて手裏剣を次々と撃ち落としていった。
そこに、その氷の忍力を吸い上げながら成長していく花の種がショウへと迫り、人間大にまで成長したヒマワリが、ショウに抱きついた。
「そのまま、木縛の術っ!みんな、今だよ!」
ソウが叫ぶと、ヒマワリはグルグルとショウをその場に縛り付けた。
ソウの言葉に反応した一同は、
「大忍弾の術!」
そう言って重清は指先をショウへと向け、
「幻刀の術!」
恒久は幻刀を出しながら、
「炎拳の術!」
アカは拳に更に炎を纏わせて、ショウへと迫った。
「こっちも、木砲の術!」
ソウもそう言って術を発動させ、自身の腕に発現させた小さなヒマワリをショウへと向けて、その種を飛ばした。
そしてそれぞれの術が、身動きの取れないショウを襲った。
「やったか!?」
「うわー、ツネ、それ1番言っちゃダメなやつ!」
重清達の全力の攻撃で巻き起こる土煙のなか、恒久の言葉と重清のつっこみだけが、辺りに響いていた。
そんな中、土煙の中から、ショウが姿を現した。
ボロボロになりながらも、その顔に笑みを浮かべて。
((((マジですか))))
あまりダメージのなさそうなショウの表情に一同が絶望の声を心の中で漏らしていた。
ボロボロになりながらも笑顔を浮かべるショウはその場に膝を付き、
「いやー、みんな凄いねー。参ったよー」
そう言って、手を上げて、猫化の術を解くのであった。
------
あとがき
1年生組とショウのこの戦い。
何故か書いていて最終戦感が半端ないな~と思いました。
もはやショウがラスボスでもいいのではないだろうか。
すみません、何故か呟きたくなっただけでした。
主に、頭と背中に。
そしてそのまま頭には猫耳、背中には亀の甲羅を背負った重清が姿を現した。
「お、おぉ・・・なんていうか・・・」
少し離れた所から重清の姿を見た恒久は、声を漏らしていた。
(かっこ悪い)
ソウ達1年生だけでなく、この手合わせを見学していたシン達も同時に、重清の姿にそう思っていた。
自身に生えている猫の尻尾とじゃれついているショウ以外は。
「あんた、それ・・・」
凄くかっこ悪いわよ、という言葉を飲み込みながら、炎の鎧に身を包んだアカが、重清へと近づいて声をかけた。
「カッコいいだろ?苦労して手に入れた術、獣装の術だ!チーノの感知力と、ロイの防御力がおれのものになったんだ!ま、2人が力を抑えてるから、出力はボチボチなんだけどね」
「あぁ、そう」
アカは他に返す言葉もなく、なんとなしにそう返した。
アカの微妙な反応に少しばかり物足りなさを感じた重清は、言葉を続けた。
「さらにこの甲羅!なんと着脱可能になっておりますっ!!」
そう言って重清は、甲羅を背中から外して掲げた。
「「「・・・・・・・」」」
アカだけでなく、少し離れた所から見ていた恒久とソウも、何も返すことができずそれを無言で見ていた。
「あれ?チーノ、ロイ。なんか反応悪いぞ?」
「しょうがねぇよ重清。オイラが銃のままだからな。オイラまで加われば、あいつらだってきっと驚くさ」
マキネッタからそんな声が聞こえてくる。
(・・・・・えぇ、そうね)
(・・・・・ふむ、そうだな)
続けて重清の脳内に、チーノとロイの気のない返事が響いた。
「だよな!流石みんな、わかってるなぁ!」
具現獣達の言葉に、重清は満足そうに笑っていた。
(あぁ。なんで私がこんな姿に・・・)
(チーノはまだ良いではないか。儂など、甲羅なのだぞ?)
(何を言っているの。亀と言ったら甲羅しかないじゃないの)
(なにをぉ!?首もちょっと伸びるぞ!)
(いや、重清の首伸びたら気持ち悪いだろ)
何故か言い争うチーノとロイに、唯一重清の姿を本心からカッコいいと思っているプレッソが、つっこんだ。
((・・・・・・重清と同じ感性のプレッソが、もはや羨ましい))
チーノとロイは、諦めの気持ちでただ、そう思っていた。
「あっ、いつの間にかみんな、準備万端だねぇー」
尻尾とのじゃれつきを辞めたショウが、重清達を見てそう言い、構えた。
「じゃぁー、第2ラウンド、いくよー?」
そう言ったショウの姿が、フッとその場から消えた。
(来るっ!)
その瞬間そう感じた重清は、亀の甲羅を前へと付き出した。
「ガキィッ!」
いつの間にか重清の目の前に現れたショウの拳と甲羅が激突する。
甲羅はヒビ割れながらも、ショウの拳を受け止めていた。
(ロイの甲羅でも完全には防げないっ!?)
重清がそう思っていると、重清を四方からショウの杖が襲いかかった。
「くっ!鉄壁の術・柔っ!」
重清は、甲羅を柔らかい鉄壁で覆い、そのままショウの拳を包み込んで受け止めたままマキネッタを構え、杖を撃ち落としていった。
「はぁーーーっ!!」
腕を鉄壁の術で固定されたショウに、炎拳の術によって強大な炎を帯びたアカの拳が襲った。
ショウは腕を固定されたままアカの拳をヒラリと避け、腕に体の力を込めて鉄壁から腕を引き抜いた。
そのまま鉄壁ごと甲羅を蹴りつけて重清へとぶつけたショウは、自身を通り過ぎたアカへと標的を変えた。
「いっけぇっーー」
そんなショウに、恒久の麒麟といくつもの手裏剣が迫っていた。
「おぉー、なんかこの子、可愛いねー」
麒麟の突進を避けながらショウはそう言って、
(氷雨の術)
氷の雨をその場に降らせて手裏剣を次々と撃ち落としていった。
そこに、その氷の忍力を吸い上げながら成長していく花の種がショウへと迫り、人間大にまで成長したヒマワリが、ショウに抱きついた。
「そのまま、木縛の術っ!みんな、今だよ!」
ソウが叫ぶと、ヒマワリはグルグルとショウをその場に縛り付けた。
ソウの言葉に反応した一同は、
「大忍弾の術!」
そう言って重清は指先をショウへと向け、
「幻刀の術!」
恒久は幻刀を出しながら、
「炎拳の術!」
アカは拳に更に炎を纏わせて、ショウへと迫った。
「こっちも、木砲の術!」
ソウもそう言って術を発動させ、自身の腕に発現させた小さなヒマワリをショウへと向けて、その種を飛ばした。
そしてそれぞれの術が、身動きの取れないショウを襲った。
「やったか!?」
「うわー、ツネ、それ1番言っちゃダメなやつ!」
重清達の全力の攻撃で巻き起こる土煙のなか、恒久の言葉と重清のつっこみだけが、辺りに響いていた。
そんな中、土煙の中から、ショウが姿を現した。
ボロボロになりながらも、その顔に笑みを浮かべて。
((((マジですか))))
あまりダメージのなさそうなショウの表情に一同が絶望の声を心の中で漏らしていた。
ボロボロになりながらも笑顔を浮かべるショウはその場に膝を付き、
「いやー、みんな凄いねー。参ったよー」
そう言って、手を上げて、猫化の術を解くのであった。
------
あとがき
1年生組とショウのこの戦い。
何故か書いていて最終戦感が半端ないな~と思いました。
もはやショウがラスボスでもいいのではないだろうか。
すみません、何故か呟きたくなっただけでした。
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