おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
349 / 519
一息ついて

第311話:重清、ソウ、恒久 対 犬たち?

しおりを挟む
「「「うぉーーーーーーーっ!!!!」」」
重清と聡太、そして恒久が、忍者協会を囲む森の中を、叫びながら走っていた。

「おいシゲ!プレッソ達を呼んで、あいつらをどうにかしてくれよっ!!」
恒久はそう言いながら、背後へと目を向けた。

そこには、犬、犬、犬。
何十匹もの犬達が、重清達を追い回していた。

「ダメだぁー!何故かプレッソ達と話が出来ない!!」

重清は恒久に叫び返しながら、走り続けていた。

「ちぃっ!」
重清の言葉を聞いた恒久は、舌打ちしながら手裏剣を具現化させた。

「ツネ!ちょっと待って!」
そのまま手裏剣を犬の群れへ投げつけようとする恒久を、ソウが走りながら止めた。

「なんだよソウ!このままじゃどうしようもないだろ!?」
「で、でも、あの人、具現獣と心を通わせろって・・・」

「じゃぁなにか!?あいつらの気持ちになって、俺もお前らを襲えばいいのかよ!?」
「はぁ!?そんな事言ってないじゃん!なんでそうなるのさ!?」

恒久とソウが言い争いを始めていると、

「もしかしてさぁ」
重清が、犬から逃げながらも呑気な声を出した。

「もしかしてあいつら、本当におれ達と遊びたいだけだったりして」
「なんでそうなんだよっ!!どこをどう見たら、そうなるんだよっ!?」
重清の呑気な声に苛つきながら、恒久はそう叫んで後ろを振り向いた。

「・・・・・・・・・・・・めちゃめちゃ尻尾振ってるな」
恒久は呟いた。

そう。重清達を追っている犬達は皆、めちゃめちゃ尻尾を振りながら楽しそうに重清を追っていたのであった。

「それにあいつら、殺気、っていうか、敵意が全然無いんだよね」
「シゲ、それ本当!?」
ソウは重清に目を向けた。

3人の中で最も殺気に敏感な重清の言葉に、ソウはじっと考え込んだ。
もちろん、犬達から逃げながら。

「ツネ、もしかしたら、シゲの言うことが正しいかも」
「・・・・あぁ、そんな気がしてきた。クソ、俺としたことが、間違ったつっこみをやっちまった!」
伊賀本家とのゴタゴタ以来、つっこみにプライドを持ち始めていた恒久は、悔しそうに呟いていた。

「ツネ、全く危なくない手裏剣、具現化できる?」
「ん?まぁ、出来るけど、何する―――なるほどな」
そう返しながらソウの考えに気付いた恒久は、1枚の刃のない手裏剣を具現化した。

「ほら、これで遊んでろっ!」
そう言うと恒久は、後方に向かってその手裏剣を投げつけた。

犬達に向って飛ぶ手裏剣は、その群れの頭上を通り過ぎていった。

すると群れのうちの数頭が手裏剣に興味を示し、

「キャンキャン!!」
そう吠えながら楽しそうに手裏剣を追い始めた。

まるでフリスビーを追うかの如く。

「ビンゴ、だな」
恒久がそう言ってソウに目を向けると、ソウも恒久へと頷き返した。

「じゃぁ、あいつらと遊ぶってことで決定?」
重清は、得意げに2人へと言った。

「だな。どうする、ソウ?」
「ん~、まとまってても大変だから、別れようか」

「「りょーかい!」」

ソウの言葉に返事をした重清と恒久はその場に立ち止まり、向かってくる犬の群れへと向き直った。

「お前ら!こっちだ!!」
そう言って恒久は、刃のない手裏剣をいくつも具現化すると、

「取ってこいっ!武具分身の術っ!!」
そう言って手裏剣を放り投げた。

武具分身の術により無数に増えた手裏剣を見た犬達の一部が、手裏剣に向って走り出した。

「ほら、ほっちだよ~」
方やソウは、飛翔の術で犬の群れの頭上スレスレを飛び回り、空中にいるソウに飛び掛かる犬達を華麗に避けながら群れの一部を引き連れていった。

「おぉ~。ソウは飛翔の術かぁ」
重清はそう言いながら自身へと向かって来る犬達に目を向けた。

「あれ。おれこのパターンで使える術とかなくない?」
重清がそう呟くのと同時に、犬の群れが重清へと飛び掛かった。

「ぎゃぁーーーーっ!!」

重清の断末魔の叫びが、辺りに響いた。

「って死んでたまるかぁーーーっ!!」

重清は犬の群れから立ち上がりながら叫んだ。
体中、犬に抱きつかれたまま。

(おぉ。チーノ師匠のお陰で、体の力のつかい方もだいぶ上手くなってんじゃんおれ。全然痛くないや)

師匠って呼ばないで!

いつもならそんな声が聞こえてくるところだが、何故か今の重清はチーノ達と会話もできず、具現化すら出来なくなっていた。

「まぁ、それはあとでどうにかするとして。お前ら!たっぷり遊んでやるぞっ!!」
体の力を全開にして、重清は犬達に体でぶつかっていった。


そして、1時間後。


肩で息をしながらその場に倒れ込む、重清達の姿がそこにはあった。
もちろん、犬達にもみくちゃにされながら。

「「「犬の体力、半端ない・・・・・」」」

重清達はそう呟いて、そのまま意識を失ったのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

処理中です...