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一息ついて
第308話:ひとまず術と契約してみよう
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「「「うぉーーーーーーーっ!!!!」」」
重清と聡太、そして恒久が、忍者協会を囲む森の中を、叫びながら走っていた。
「おいシゲ!プレッソ達を呼んで、あいつらをどうにかしてくれよっ!!」
恒久はそう言いながら、背後へと目を向けた。
そこには、犬、犬、犬。
何十匹もの犬達が、重清達を追い回していた。
「ダメだぁー!何故かプレッソ達と話が出来ない!!」
重清は恒久に叫び返しながら、走り続けていた。
そう。犬達から逃げるために。
何故彼らは大勢の犬から逃げているのか。
それを確かめるためにも、少し時間を戻したい。
それは、重清達が神楽に会った翌日のことであった。
ショウへの卒業プレゼントの準備のため、重清と聡太、そして恒久は放課後、重清の家へと集まっていた。
そんな彼らの目の前には、1枚の紙が置かれていた。
重清達が神楽からもらった、メモである。
そこには、こう書き殴られていた。
『忍:4、心:2、技:1、体:3』
「これが、『獣装の術』の、力の配分ってわけか」
恒久は、その紙を見つめながら呟いた。
「そ。それで、こっちがプレッソから聞いた、『変化の術』ね」
『忍:4、心:3、体:3』
そう言った重清は、汚い字でこう書かれている紙を聡太と恒久の前に差し出した。
「・・・・・シゲ、字、相変わらず下手だね」
「いやそこはいいじゃん!」
残念そうな顔を向ける聡太にそう返しながら、重清は2人を見渡した。
「それで、どうする?この2つと、ツネの『幻獣の術』を元にしたら、ショウさんへのプレゼントもなんとかなるとは思うんだけど・・・・」
「だな。とりあえず、全員でこの2つの術と契約するか」
重清の言葉に恒久が言うと、
「え?わざわざ契約する必要ある?」
聡太が恒久へと目を向けた。
「いや、変化の術だぞ!?こんなん使えたらお前・・・」
恒久は聡太に返しながら、イヤらしい笑みを浮かべた。
((あぁ、久しぶりに出ちゃったよ。ツネのむっつりが))
恒久を見つめながら、重清と聡太は顔を見合わせた。
そして、
「「でもまぁ、有りっちゃ有りだよね」」
直ぐにニヤリと笑って頷きあった。
彼らが一体どんな想像をしているかはわからないが、流石は男子中学生なのである。
もはや彼らの心は、完全に1つになっていた。
その時。
「やめておきなさい」
彼らに、智乃がそう声をかけてきた。
「なんだよ智乃。俺達の邪魔するつもりか?」
恒久が、血走った目で智乃を睨みつけた。
もはや彼は、変化の術を使うことに心を奪われているのである。
「別に邪魔して欲しくないなら邪魔はしないけれど・・・今のあなた達がその術と契約しようとすると、引っかかっちゃうわよ?」
そう言って智乃は、恒久をじっと見据えて、
「『青忍者育成契約』に」
そう、3人に告げた。
「「「あ、あれか・・・・・」」」
智乃の言葉に、3人は打ちひしがれていた。
『青忍者育成契約』とは、『健全な忍者を育てましょう(ノリ談)』という、雑賀平八が作った、若き忍者を縛る恐ろしい契約である。
やましい気持ちで術との契約をしようとした若き忍者がこの『青忍者育成契約』に引っかかってしまうと、時として恐ろしい罰を受けるという、多感な男子中学生忍者の天敵とも言える契約なのである。
「確かに今のお前ら、やましい気持ちの塊だもんな」
「ほっほっほ。若さとは良いものじゃのぉ」
打ちひしがれる重清達に、プレッソとロイが笑っていた。
「ふふふ。どうやら、諦めてくれたようね」
3人の様子に、智乃が笑っていると、
「「そりゃぁ、ねぇ・・・」」
重清と聡太は、じっと恒久に目を向けた。
この中で唯一、『青忍者育成契約』の犠牲となった、恒久に。
「こ、この術は、契約するの辞めておこう!」
恒久が冷や汗を流しながらそう言うと、重清と聡太も真剣な眼差しでそれに頷き返していた。
「ってことで、とりあえず『獣装の術』だけでも、挑戦してみる?こっちは大丈夫だよね?智乃?」
重い雰囲気を振り払うかのように、重清はそう言って智乃へと目を向けた。
「えぇ、そっちはおそらく問題はないわ。あんまりオススメはしないけど・・・」
「え?なに?後半よく聞こえなかったけど?」
「いいえ、気にしなくていいわ」
重清の言葉に、智乃はそう言って微妙な笑みを返していると。
「っていうかさ、俺とソウ、『獣装の術』と契約できんのかよ?
ソウは微妙かもしれないけど、俺は具現獣なんていないぜ?」
恒久が手を小さく挙げてそんなことを言ってきた。
「あ、確かに」
聡太も頷きながら、懐へと手をやった。
「そういえばソウ、その卵、調子はどうなんだ?」
重清が、聡太を見て脱線し始めた。
「もう、元気も元気。毎日寝る前に、ぼくの忍力を限界まで食べてるよ。まぁ、いつ生まれてくるかはさっぱり分からないけどね」
聡太が苦笑いを浮かべながら言うと、
「しかし、そのお陰でお主の忍力量は以前よりもかなり増えておるようじゃな」
ロイがそう言いながら、聡太を見つめていた。
「おい、重清のせいでまた脱線しちまってるぞ?
それで、どうすんだよ?重清だけ契約するか?」
脱線し始めたその場を収めるべく、恒久がそう言って一同を見渡した。
「あ、わりぃ。とりあえずさ、2人も一緒にやってみてよ。もしかしたら契約だけできるかもしれないしさ。それに、おれだけだと契約できるかわかんないし」
「「まぁ、シゲだけに任せるのも不安だね(な)」」
重清の言葉に、聡太と恒久か頷き合い、3人は『獣装の術』と契約すべく、神楽のメモを頭に叩き込んで、力の調整を始めるのであった。
重清と聡太、そして恒久が、忍者協会を囲む森の中を、叫びながら走っていた。
「おいシゲ!プレッソ達を呼んで、あいつらをどうにかしてくれよっ!!」
恒久はそう言いながら、背後へと目を向けた。
そこには、犬、犬、犬。
何十匹もの犬達が、重清達を追い回していた。
「ダメだぁー!何故かプレッソ達と話が出来ない!!」
重清は恒久に叫び返しながら、走り続けていた。
そう。犬達から逃げるために。
何故彼らは大勢の犬から逃げているのか。
それを確かめるためにも、少し時間を戻したい。
それは、重清達が神楽に会った翌日のことであった。
ショウへの卒業プレゼントの準備のため、重清と聡太、そして恒久は放課後、重清の家へと集まっていた。
そんな彼らの目の前には、1枚の紙が置かれていた。
重清達が神楽からもらった、メモである。
そこには、こう書き殴られていた。
『忍:4、心:2、技:1、体:3』
「これが、『獣装の術』の、力の配分ってわけか」
恒久は、その紙を見つめながら呟いた。
「そ。それで、こっちがプレッソから聞いた、『変化の術』ね」
『忍:4、心:3、体:3』
そう言った重清は、汚い字でこう書かれている紙を聡太と恒久の前に差し出した。
「・・・・・シゲ、字、相変わらず下手だね」
「いやそこはいいじゃん!」
残念そうな顔を向ける聡太にそう返しながら、重清は2人を見渡した。
「それで、どうする?この2つと、ツネの『幻獣の術』を元にしたら、ショウさんへのプレゼントもなんとかなるとは思うんだけど・・・・」
「だな。とりあえず、全員でこの2つの術と契約するか」
重清の言葉に恒久が言うと、
「え?わざわざ契約する必要ある?」
聡太が恒久へと目を向けた。
「いや、変化の術だぞ!?こんなん使えたらお前・・・」
恒久は聡太に返しながら、イヤらしい笑みを浮かべた。
((あぁ、久しぶりに出ちゃったよ。ツネのむっつりが))
恒久を見つめながら、重清と聡太は顔を見合わせた。
そして、
「「でもまぁ、有りっちゃ有りだよね」」
直ぐにニヤリと笑って頷きあった。
彼らが一体どんな想像をしているかはわからないが、流石は男子中学生なのである。
もはや彼らの心は、完全に1つになっていた。
その時。
「やめておきなさい」
彼らに、智乃がそう声をかけてきた。
「なんだよ智乃。俺達の邪魔するつもりか?」
恒久が、血走った目で智乃を睨みつけた。
もはや彼は、変化の術を使うことに心を奪われているのである。
「別に邪魔して欲しくないなら邪魔はしないけれど・・・今のあなた達がその術と契約しようとすると、引っかかっちゃうわよ?」
そう言って智乃は、恒久をじっと見据えて、
「『青忍者育成契約』に」
そう、3人に告げた。
「「「あ、あれか・・・・・」」」
智乃の言葉に、3人は打ちひしがれていた。
『青忍者育成契約』とは、『健全な忍者を育てましょう(ノリ談)』という、雑賀平八が作った、若き忍者を縛る恐ろしい契約である。
やましい気持ちで術との契約をしようとした若き忍者がこの『青忍者育成契約』に引っかかってしまうと、時として恐ろしい罰を受けるという、多感な男子中学生忍者の天敵とも言える契約なのである。
「確かに今のお前ら、やましい気持ちの塊だもんな」
「ほっほっほ。若さとは良いものじゃのぉ」
打ちひしがれる重清達に、プレッソとロイが笑っていた。
「ふふふ。どうやら、諦めてくれたようね」
3人の様子に、智乃が笑っていると、
「「そりゃぁ、ねぇ・・・」」
重清と聡太は、じっと恒久に目を向けた。
この中で唯一、『青忍者育成契約』の犠牲となった、恒久に。
「こ、この術は、契約するの辞めておこう!」
恒久が冷や汗を流しながらそう言うと、重清と聡太も真剣な眼差しでそれに頷き返していた。
「ってことで、とりあえず『獣装の術』だけでも、挑戦してみる?こっちは大丈夫だよね?智乃?」
重い雰囲気を振り払うかのように、重清はそう言って智乃へと目を向けた。
「えぇ、そっちはおそらく問題はないわ。あんまりオススメはしないけど・・・」
「え?なに?後半よく聞こえなかったけど?」
「いいえ、気にしなくていいわ」
重清の言葉に、智乃はそう言って微妙な笑みを返していると。
「っていうかさ、俺とソウ、『獣装の術』と契約できんのかよ?
ソウは微妙かもしれないけど、俺は具現獣なんていないぜ?」
恒久が手を小さく挙げてそんなことを言ってきた。
「あ、確かに」
聡太も頷きながら、懐へと手をやった。
「そういえばソウ、その卵、調子はどうなんだ?」
重清が、聡太を見て脱線し始めた。
「もう、元気も元気。毎日寝る前に、ぼくの忍力を限界まで食べてるよ。まぁ、いつ生まれてくるかはさっぱり分からないけどね」
聡太が苦笑いを浮かべながら言うと、
「しかし、そのお陰でお主の忍力量は以前よりもかなり増えておるようじゃな」
ロイがそう言いながら、聡太を見つめていた。
「おい、重清のせいでまた脱線しちまってるぞ?
それで、どうすんだよ?重清だけ契約するか?」
脱線し始めたその場を収めるべく、恒久がそう言って一同を見渡した。
「あ、わりぃ。とりあえずさ、2人も一緒にやってみてよ。もしかしたら契約だけできるかもしれないしさ。それに、おれだけだと契約できるかわかんないし」
「「まぁ、シゲだけに任せるのも不安だね(な)」」
重清の言葉に、聡太と恒久か頷き合い、3人は『獣装の術』と契約すべく、神楽のメモを頭に叩き込んで、力の調整を始めるのであった。
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