おれは忍者の子孫

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一息ついて

第306話:仕事終わりの神楽さん

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「お疲れ様でしたーっ!」
その日の仕事を終えた神楽は、店を後にした。

「・・・・・・・・」
そのまま道行く神楽は、突然振り向いた。

するとそこには、1人の青年が佇んでいた。
重清と聡太の2人が店を後にしたのと入れ替わりで入ってきた、黒ずくめの青年だった。

「さっきから俺のことつけてるみたいだけど、何か用なのか?」
神楽は青年に尋ねた。

「あー、ばれちゃったぁ。ここではなんだから、ちょっと人気の無い所に行きましょうかぁ。グラさん?」
「その名を知ってるってことは、お仲間か?まぁ、いい。話を聞こうじゃないか」

そんな会話をした2人は、そのまま人気のない路地裏へと入っていった。


「それで、俺に何の用だ?」
神楽は青年をじっと見据えた。

「まぁ、話はこれを返してからねぇ」
青年はそう言うと、指を鳴らした。

その途端、神楽は

「お、お前は、あの時の!」
神楽は突然蘇る記憶に戸惑いながらも、青年に身構えた。

「思い出したぁ?まったくぅ。せっかく情報を与えてあげたのに、グラさん全然役に立たないんだからぁ」
青年は、そう言って笑っていた。

「う、うるさい!思い出したぞ!俺はお前に言われたとおり、俺はこの辺りで具現獣を3体も従えている中学生、雑賀重清に接触したじゃないか!」
神楽は青年、甲賀ユキへと怒鳴り返した。

「『具現獣狩り』だなんて呼ばれているくらいだからぁ、雑賀重清の具現獣の1体くらい狩ってくれると思ったのにぃ。とんだ期待外れだったよぉ」
そう言ったユキは大げさに肩をすくめ、続けた。

「まぁ、雑賀重清の元々の具現獣を狩らなかったのだけは、良かったけどねぇ」
「ちっ。他の具現獣が、雑賀平八と雑賀本家の具現獣だなんて、聞いてなかったぞ!お陰で俺は、相手にもされなかった。まぁ、あんな良い奴だと知っていれば、襲ったりもしなかったがな!お前、わざとその情報を隠していたな!?」

「あぁ、バレたぁ?本当は彼に恨みを持つ記憶を与えたかったところだけどぉ、生憎そんな記憶の手持ちがなくてねぇ」
「ふん。どんな手を使ったかは知らないが、残念だったな。しかし、約束は約束だ。妹の情報、頂こうか」

「えぇー。こっちのお願いが叶わなかったんだから、あの約束は無効だよぉ」
「ふざけるな!約束は、具現獣達を救ってやれ、ってことだったじゃないか!あの具現獣達はみんな、救いなんて求めてなんかいなかった!」

「ふざけてるのはそっちだよぉ。こっちのお願いを守れなかったくせに、情報だけ貰おうなんて虫が良すぎるんじゃないのぉ?」
「ぐっ」
ユキの言葉に、神楽は口を噤んだ。

「そこで、敗者復活チャーーンス。もう1つ、お願いがあるんだけどぉ」
「・・・・・なんだよ」

「グラさんは今、雑賀重清達と仲良くなってるよねぇ。このまま彼らとの仲を、深めて欲しいんだよぉ」
「・・・・それだけが狙いじゃないんだろう?」

「まぁー、その後のことはまた後日お願いするってことでぇ。それでぇ、どうかなぁ?」
ユキがそう言って神楽の顔を覗き込むと、

「悪いが、断る。お前らが何を企んでいるかは知らないが、これ以上あいつらに迷惑はかけられない」
神楽はそう、キッパリと言い切った。

そんな神楽の背後から、呆れたような声が聞こえてきた。

「ほら、だから言ったじゃない。兄さんが協力するはずないって」

「なっ・・・」
神楽はその声に振り向き、

「あ、愛具凛あぐり・・・」
そう声を漏らしていた。

「久しぶりね、兄さん」
愛具凛と呼ばれたチャイナ服姿の女、グリが神楽に笑みを浮かべるのと同時に、

「感動の再会を邪魔して悪いんだけどぉ、グラさんにはちょっと眠ってもらうよぉ」
いつの間にか神楽の元へと近づいたユキがそう言いながら神楽の頭へと手をかざした。

神楽はそのまま、声を漏らすことなく膝から崩れ落ちていた。

「ぐっ・・・」
対するユキもまた、自身の頭を抑えてその場にうずくまっていた。

「はぁ、はぁ。まったくぅ、記憶全部奪うのは、ほんとにキツいって言ってるのにぃ。親父も無茶言うよねぇ」
「我慢しなさい、ユキ。ゴウ様の命令よ」

「いやー、女は怖いねぇ。実の兄の記憶を奪ったっていうのにさぁ」
「余計な記憶以外はちゃんと戻すんでしょう?
だったら、これまで通りの生活は出来るでしょ。
それにいくら兄さんとはいえ、忍者は全て、私達の敵のはずよ」
グリはそう言って、さっさと歩き始めた。

「まぁ、そこは反対しないけどさぁ」
ユキはそう言うと神楽を担ぎ、グリのあとを追いながら思っていた。

(いやグリさん、僕が辛そうなの見てたのにお兄さん運ぶのは手伝ってくれないんだ)

と。
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