344 / 519
一息ついて
第306話:仕事終わりの神楽さん
しおりを挟む
「お疲れ様でしたーっ!」
その日の仕事を終えた神楽は、店を後にした。
「・・・・・・・・」
そのまま道行く神楽は、突然振り向いた。
するとそこには、1人の青年が佇んでいた。
重清と聡太の2人が店を後にしたのと入れ替わりで入ってきた、黒ずくめの青年だった。
「さっきから俺のことつけてるみたいだけど、何か用なのか?」
神楽は青年に尋ねた。
「あー、ばれちゃったぁ。ここではなんだから、ちょっと人気の無い所に行きましょうかぁ。グラさん?」
「その名を知ってるってことは、お仲間か?まぁ、いい。話を聞こうじゃないか」
そんな会話をした2人は、そのまま人気のない路地裏へと入っていった。
「それで、俺に何の用だ?」
神楽は青年をじっと見据えた。
「まぁ、話はこれを返してからねぇ」
青年はそう言うと、指を鳴らした。
その途端、神楽は思い出した。
「お、お前は、あの時の!」
神楽は突然蘇る記憶に戸惑いながらも、青年に身構えた。
「思い出したぁ?まったくぅ。せっかく情報を与えてあげたのに、グラさん全然役に立たないんだからぁ」
青年は、そう言って笑っていた。
「う、うるさい!思い出したぞ!俺はお前に言われたとおり、俺はこの辺りで具現獣を3体も従えている中学生、雑賀重清に接触したじゃないか!」
神楽は青年、甲賀ユキへと怒鳴り返した。
「『具現獣狩り』だなんて呼ばれているくらいだからぁ、雑賀重清の具現獣の1体くらい狩ってくれると思ったのにぃ。とんだ期待外れだったよぉ」
そう言ったユキは大げさに肩をすくめ、続けた。
「まぁ、雑賀重清の元々の具現獣を狩らなかったのだけは、良かったけどねぇ」
「ちっ。他の具現獣が、雑賀平八と雑賀本家の具現獣だなんて、聞いてなかったぞ!お陰で俺は、相手にもされなかった。まぁ、あんな良い奴だと知っていれば、襲ったりもしなかったがな!お前、わざとその情報を隠していたな!?」
「あぁ、バレたぁ?本当は彼に恨みを持つ記憶を与えたかったところだけどぉ、生憎そんな記憶の手持ちがなくてねぇ」
「ふん。どんな手を使ったかは知らないが、残念だったな。しかし、約束は約束だ。妹の情報、頂こうか」
「えぇー。こっちのお願いが叶わなかったんだから、あの約束は無効だよぉ」
「ふざけるな!約束は、具現獣達を救ってやれ、ってことだったじゃないか!あの具現獣達はみんな、救いなんて求めてなんかいなかった!」
「ふざけてるのはそっちだよぉ。こっちのお願いを守れなかったくせに、情報だけ貰おうなんて虫が良すぎるんじゃないのぉ?」
「ぐっ」
ユキの言葉に、神楽は口を噤んだ。
「そこで、敗者復活チャーーンス。もう1つ、お願いがあるんだけどぉ」
「・・・・・なんだよ」
「グラさんは今、雑賀重清達と仲良くなってるよねぇ。このまま彼らとの仲を、深めて欲しいんだよぉ」
「・・・・それだけが狙いじゃないんだろう?」
「まぁー、その後のことはまた後日お願いするってことでぇ。それでぇ、どうかなぁ?」
ユキがそう言って神楽の顔を覗き込むと、
「悪いが、断る。お前らが何を企んでいるかは知らないが、これ以上あいつらに迷惑はかけられない」
神楽はそう、キッパリと言い切った。
そんな神楽の背後から、呆れたような声が聞こえてきた。
「ほら、だから言ったじゃない。兄さんが協力するはずないって」
「なっ・・・」
神楽はその声に振り向き、
「あ、愛具凛・・・」
そう声を漏らしていた。
「久しぶりね、兄さん」
愛具凛と呼ばれたチャイナ服姿の女、グリが神楽に笑みを浮かべるのと同時に、
「感動の再会を邪魔して悪いんだけどぉ、グラさんにはちょっと眠ってもらうよぉ」
いつの間にか神楽の元へと近づいたユキがそう言いながら神楽の頭へと手をかざした。
神楽はそのまま、声を漏らすことなく膝から崩れ落ちていた。
「ぐっ・・・」
対するユキもまた、自身の頭を抑えてその場にうずくまっていた。
「はぁ、はぁ。まったくぅ、記憶全部奪うのは、ほんとにキツいって言ってるのにぃ。親父も無茶言うよねぇ」
「我慢しなさい、ユキ。ゴウ様の命令よ」
「いやー、女は怖いねぇ。実の兄の記憶を奪ったっていうのにさぁ」
「余計な記憶以外はちゃんと戻すんでしょう?
だったら、これまで通りの生活は出来るでしょ。
それにいくら兄さんとはいえ、忍者は全て、私達の敵のはずよ」
グリはそう言って、さっさと歩き始めた。
「まぁ、そこは反対しないけどさぁ」
ユキはそう言うと神楽を担ぎ、グリのあとを追いながら思っていた。
(いやグリさん、僕が辛そうなの見てたのにお兄さん運ぶのは手伝ってくれないんだ)
と。
その日の仕事を終えた神楽は、店を後にした。
「・・・・・・・・」
そのまま道行く神楽は、突然振り向いた。
するとそこには、1人の青年が佇んでいた。
重清と聡太の2人が店を後にしたのと入れ替わりで入ってきた、黒ずくめの青年だった。
「さっきから俺のことつけてるみたいだけど、何か用なのか?」
神楽は青年に尋ねた。
「あー、ばれちゃったぁ。ここではなんだから、ちょっと人気の無い所に行きましょうかぁ。グラさん?」
「その名を知ってるってことは、お仲間か?まぁ、いい。話を聞こうじゃないか」
そんな会話をした2人は、そのまま人気のない路地裏へと入っていった。
「それで、俺に何の用だ?」
神楽は青年をじっと見据えた。
「まぁ、話はこれを返してからねぇ」
青年はそう言うと、指を鳴らした。
その途端、神楽は思い出した。
「お、お前は、あの時の!」
神楽は突然蘇る記憶に戸惑いながらも、青年に身構えた。
「思い出したぁ?まったくぅ。せっかく情報を与えてあげたのに、グラさん全然役に立たないんだからぁ」
青年は、そう言って笑っていた。
「う、うるさい!思い出したぞ!俺はお前に言われたとおり、俺はこの辺りで具現獣を3体も従えている中学生、雑賀重清に接触したじゃないか!」
神楽は青年、甲賀ユキへと怒鳴り返した。
「『具現獣狩り』だなんて呼ばれているくらいだからぁ、雑賀重清の具現獣の1体くらい狩ってくれると思ったのにぃ。とんだ期待外れだったよぉ」
そう言ったユキは大げさに肩をすくめ、続けた。
「まぁ、雑賀重清の元々の具現獣を狩らなかったのだけは、良かったけどねぇ」
「ちっ。他の具現獣が、雑賀平八と雑賀本家の具現獣だなんて、聞いてなかったぞ!お陰で俺は、相手にもされなかった。まぁ、あんな良い奴だと知っていれば、襲ったりもしなかったがな!お前、わざとその情報を隠していたな!?」
「あぁ、バレたぁ?本当は彼に恨みを持つ記憶を与えたかったところだけどぉ、生憎そんな記憶の手持ちがなくてねぇ」
「ふん。どんな手を使ったかは知らないが、残念だったな。しかし、約束は約束だ。妹の情報、頂こうか」
「えぇー。こっちのお願いが叶わなかったんだから、あの約束は無効だよぉ」
「ふざけるな!約束は、具現獣達を救ってやれ、ってことだったじゃないか!あの具現獣達はみんな、救いなんて求めてなんかいなかった!」
「ふざけてるのはそっちだよぉ。こっちのお願いを守れなかったくせに、情報だけ貰おうなんて虫が良すぎるんじゃないのぉ?」
「ぐっ」
ユキの言葉に、神楽は口を噤んだ。
「そこで、敗者復活チャーーンス。もう1つ、お願いがあるんだけどぉ」
「・・・・・なんだよ」
「グラさんは今、雑賀重清達と仲良くなってるよねぇ。このまま彼らとの仲を、深めて欲しいんだよぉ」
「・・・・それだけが狙いじゃないんだろう?」
「まぁー、その後のことはまた後日お願いするってことでぇ。それでぇ、どうかなぁ?」
ユキがそう言って神楽の顔を覗き込むと、
「悪いが、断る。お前らが何を企んでいるかは知らないが、これ以上あいつらに迷惑はかけられない」
神楽はそう、キッパリと言い切った。
そんな神楽の背後から、呆れたような声が聞こえてきた。
「ほら、だから言ったじゃない。兄さんが協力するはずないって」
「なっ・・・」
神楽はその声に振り向き、
「あ、愛具凛・・・」
そう声を漏らしていた。
「久しぶりね、兄さん」
愛具凛と呼ばれたチャイナ服姿の女、グリが神楽に笑みを浮かべるのと同時に、
「感動の再会を邪魔して悪いんだけどぉ、グラさんにはちょっと眠ってもらうよぉ」
いつの間にか神楽の元へと近づいたユキがそう言いながら神楽の頭へと手をかざした。
神楽はそのまま、声を漏らすことなく膝から崩れ落ちていた。
「ぐっ・・・」
対するユキもまた、自身の頭を抑えてその場にうずくまっていた。
「はぁ、はぁ。まったくぅ、記憶全部奪うのは、ほんとにキツいって言ってるのにぃ。親父も無茶言うよねぇ」
「我慢しなさい、ユキ。ゴウ様の命令よ」
「いやー、女は怖いねぇ。実の兄の記憶を奪ったっていうのにさぁ」
「余計な記憶以外はちゃんと戻すんでしょう?
だったら、これまで通りの生活は出来るでしょ。
それにいくら兄さんとはいえ、忍者は全て、私達の敵のはずよ」
グリはそう言って、さっさと歩き始めた。
「まぁ、そこは反対しないけどさぁ」
ユキはそう言うと神楽を担ぎ、グリのあとを追いながら思っていた。
(いやグリさん、僕が辛そうなの見てたのにお兄さん運ぶのは手伝ってくれないんだ)
と。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
くノ一その一今のうち
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
お祖母ちゃんと二人暮らし、高校三年の風間その。
特に美人でも無ければ可愛くも無く、勉強も出来なければ体育とかの運動もからっきし。
三年の秋になっても進路も決まらないどころか、赤点四つで卒業さえ危ぶまれる。
手遅れ懇談のあと、凹んで帰宅途中、思ってもない事件が起こってしまう。
その事件を契機として、そのは、新しい自分に目覚め、令和の現代にくノ一忍者としての人生が始まってしまった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる