おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
328 / 519
一息ついて

第291話:重清、生徒会長に絡まれる

しおりを挟む
「さぁて、我が校の伝統をバカにしたのは、あなたかしら?」
生徒会長、長宗我部卑弥呼が、重清へと目を向けた。

「え、あぁ、まぁ。っていうか、生徒会長って長宗我部氏の姉ちゃんなんだ」

(シゲ、今そこじゃない!)
重清のすっとぼけた言葉に、隣の席から聡太が小声でつっこんでいると、長宗我部氏が姉の足元へと跪いた。

「お姉様、彼は悪気があって言っているわけでは―――」
「おだまりっ!!」

長宗我部氏の言葉を、生徒会長、長宗我部が遮った。

「太郎左衛門!学校では生徒会長様とお呼びと言っているでしょう!?」
「も、申し訳ございません!生徒会長様っ!!」

(なんていうか、濃い姉弟だな)
姉弟の様子を見ていた重清が、聡太に小声で言っていると。

「ちょっとあなた!なにを呑気にお喋りなんかしてるのよ!?この私を前にして、いい度胸じゃない!」
長宗我部(姉)は、重清を睨みつけながら言った。

「え、あ、はい、すみません。でも、やっぱどう考えてもおかしいじゃないですか。3年生しか演劇できないなんて」
(おいシゲ!お前正気か!?相手はあの、生徒会長だぞ!?)

重清の背後でそう囁いている後藤の言葉を無視して、重清は続けた。

「おれは今年、演劇をやりたいんですよ!」

「な・・・この私を前にまだそんなことを。ちょっと!あなたからも言っておあげなさいっ!」
長宗我部(姉)はそう言いながら、教室の外へと目を向けた。

(ま、まさか。あいつまで来ているのか!?)
そう呟いた後藤に、重清が振り向いた。

(今度はどなたがいらっしゃるんでしょうか、解説役の正さん)
(誰が解説役だっ!って、そう言ってるうちに現れやがった。
生徒会長を裏で操る男。裏の生徒会長、芥川 翔が!)

「芥川・・・えっ!ショウさん!?」
後藤の言葉に重清が教室の扉に目を向けた。

「あー、シゲとソウだー。やっほー」
ショウが笑顔で手を振っていた。

「あら、あなたの知り合いだったのね」
笑顔のショウに、生徒会長がそう声をかけていた。

これまでの厳しい表情ではなく、乙女の顔で。

「社会科研究部の後輩なんだよー」
そんな生徒会長にショウは、笑顔でうなずき返した。

「そうなの。って、そんなことはいいのよ!あなたからも後輩に言ってあげなさい!我が校の伝統がいかに大事かを!」
「えー。僕、生徒会でもなんでもないのにー?」

「いや生徒会じゃないんかーい!」
ショウの言葉に、重清がたまらずつっこんだ。

「シゲ、相変わらずだねー。でも、2中の伝統を破ろうとするなんて・・・」

笑顔のまま、ショウは重清を見つめていた。

その視線に、重清はゴクリと喉を鳴らしながらショウの言葉の続きを待っていた。

「いいんじゃないかなー」

「「へ?」」

重清と生徒会長が、同時に声を漏らした。

「ちょっと芥川君!何を言っているのよ!?我が校の伝統を、何だと思っているの!?」
「うーん。古臭くて必要のないものー?
まさか長宗我部さん、こんな伝統、守るべきものだなんて思ってないよねー?」

「な、え、えぇ!もちろんよ!私はずっと待っていたのよ!こんな伝統を破ろうとする強者を!
そこのあなた!よくぞ言ってくれたわ!
演劇、頑張りなさいよねっ!」

そう言い捨てると、生徒会長は足早に教室を後にした。
去り際にちらりと、ショウへ乙女の顔を向けながら。

それを追うように教室の扉へと向かったショウは振り返り、重清に向かってウインクをして、そのまま教室をあとにしたのだった。

「うぉーーーーっ!!すげーぞシゲ!!」

クラスの多くのものが、席を立ち上がり重清の元へと駆け寄った。

ちなみに、席を立ち上がらなかった一部の女子達は、ショウの出ていった扉をうっとりとした表情で見つめていた。

罪深き男、ショウなのであった。

「やるじゃねーかシゲ!まさかあの伝統を打ち破るなんて!」
「いや、シゲはなんもしてないからね?」
後藤の言葉に、聡太がつっこんだ。

「でもシゲ。演劇やりたいなんて、どうしちゃったの?」
聡太は重清へと目を向けた。

「あー、ちょっとな。ねぇみんな!演劇でどんな話するか、おれに任せてくれないかな?」

「「「「えっ、シゲに?」」」」

重清の元へ集まった一同は、一歩引いて声を揃えた。

「いや、おれの信頼の無さよ!」

「まぁ、シゲだからね」
聡太のそんな痛烈な言葉に、一同が頷いた。

「失礼!みんな失礼!!
でも安心してよ。おれが考えるわけじゃないからさ!」
「どういうことだ?」
頬を膨らませながら言う重清に、後藤が問いかけた。

「まぁ、ちょっとアテがあってね」
重清が後藤に苦笑いを返すと。

「まぁ、伝統を打ち破ったのはシゲだしな。
なぁみんな!今度の文化祭、3組は演劇をやる。そして何をやるかはシゲに任せる。この案に、賛成の人!」
後藤がそう言ってクラスを見渡すと、クラス全員がしっかりと手を上げていた。

一部は、まだじっとショウの出た扉を見つめてはいたが。

「ってことで、全員賛成により可決!じゃぁシゲ、任せたぞ!」
「おう!任されろ!!」

重清は、笑顔で答えるのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

エリアスとドラゴンともふもふは、今日も元気に遊んでいます!?

ありぽん
ファンタジー
 アルフォート家の3男、エリアス・アルフォート3歳は、毎日楽しく屋敷の広い広い庭を、お友達のぷるちゃん(スライム)とウルちゃん(ホワイトウルフ)と一緒に走り回っておりました。  そして4歳の誕生日の日。この日は庭でエリアスの誕生日パーティーが開かれていました。その時何処からかエリアスの事を呼ぶ声が。その声を前に聞いた事があるエリアスは、声のする庭の奥へ、ぷるちゃんとウルちゃんと3人進んで行きます。そこでエリアス達を待っていたものは?  剣と魔法そしてもふもふの溢れる世界で、繰り広げられるエリアスの大冒険。周りを巻き込みながら、今日もエリアスはやらかします! *エリアス本人登場は2話からとなります。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

処理中です...