おれは忍者の子孫

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一息ついて

第283話:重清は三度つっこむ

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「少し遊んでやるよ!かかってこい!」
グラはそう叫びながら、重清達へと手招きをした。

「くぅー!大人の余裕っ!じゃ、ソウ、プレッソ!行くぞ!!」
「りょーかい!」
「あいよーっ!」

重清の言葉にソウとプレッソがそれぞれ返事をしながら、術を発動する。

(飛翔の術っ!)
(久々の、鉄玉の術!)

それと同時に、ソウは男の頭上へと飛び上がり、鉄の玉となったプレッソは、重清の手の中へと収まった。

「いっけぇーーーっ!!」

重清は鉄の玉プレッソをそのままグラへと投げつけた。

「具現獣を投げつけやがった!こんなもん、避けるまでもねぇっ!!」

グラはそう言って、白い忍力を放出し、それを腕へと集中させていった。

そのまま向かってくる鉄の玉プレッソを掴もうとしたグラは、それに触れた瞬間、

(重っ!!)

鉄の玉プレッソのあまりの重さに驚き、掴もうとしていた腕を引っ込めてその身を反らし、鉄の玉プレッソを避けた。

「へっへ~ん!避けるまでもなかったんじゃないのかよ!?」

鉄の玉から姿を戻したプレッソがそう言いながら、グラの周りへと心の力で小さな足場を作り出した。

「ちぃっ、早いじゃねーか!」

そのまま足場を縦横無尽に飛び回り始めるプレッソに、グラが身構えていると。

鎌鼬かまいたちの術)

上空から発動されたソウの鎌鼬の術によって発生した風の刃が、グラを取り囲むように渦を巻き始めた。

「からのー」
(火砲の術!)

立て続けにソウから放たれた火の砲弾が、グラを取り囲むの風の刃の渦に重なった。

風を取り込んだ火の砲弾は、相生によりその勢いを増し、強い炎となって風の刃とともにグラへと襲いかかった。

「名付けて、炎刃の舞!!」
中2臭い名を、恥ずかしげもなく中1のソウが言い放っていると。

「だぁっ!!熱っちぃ!!!」

炎と風の刃の渦からグラが上空へと飛び出し、ソウへと襲いかかった。

「オイラを忘れんなよっ!!」
しかしグラがソウへとたどり着く前に、グラの周りを飛び回っていたプレッソがそう言いながらグラの前へと飛び出し、金の忍力で強化した爪を、グラへと振り下ろした。

「ちっ!」
グラはプレッソの爪を、同じく金の忍力で強化した腕をクロスさせて防御する。

「キンっ!!」

金属同士のぶつかり合う音が辺りに響いた。

「くっ」

プレッソの爪を受けたグラは、その勢いに押されそのまま吹き飛ばされた。

その時。

「今度はおれの番だっ!!くらえーーっ!」

(弾丸の術!)

なかなか出番の無かった重清が、そう言いながら辺りにいくつもの弾丸を作り上げ、吹き飛ばされていたグラへと放った。

金属と雷によって作られた弾丸が、空中のグラへと直撃した。

「「「っしゃぁ!!」」」

重清達の喜びの声が、荒野に響いた。

空から重清の元へと降りてきたソウとプレッソは、重清とともにグラへと目を向けていた。

「ほぉ。なかなかやるじゃねーか、ガキども」

重清の弾丸の術を全身に浴びたグラが、全身に白い忍力を纏わせて地へと降り立って重清達にニヤリと笑いかけた。

「ダメージ無しかよっ!」
そんなグラに重清が叫んだ。

「いや、そうでもないよ」
そんな重清に、ソウは言ってグラをじっと見つめていた。

ソウの目線の先にいるグラは、笑顔で重清達を見ていた。
一見先ほどまでと変わらないように見えるグラも、所々小さいながらも傷を負っていた。

「まぁ、少しは傷つけてるみたいだけど・・・」
「ちりも積もればっていうからさ」
肩を落としてグラを見ながら言った重清の言葉に、ソウは笑いながら答えた。

「どんだけ高い山作るつもりだよ」
プレッソは、呆れた声でボソリとソウにつっこんでいた。

「ガキだと思って油断していたが、なかなかやるじゃないか。このままじゃ埒があかなさそうだな!
出てこい、お前ら!」

グラがそう言うと、その周りに砂塵が舞い上がった。

「こ、これは・・・具現獣か?」
その煙を見ていたプレッソが、呟いた。

「あの人も具現獣を・・・これって、やばくね?」
グラの方を見ながら、重清は冷や汗をかいていた。

「3対1でも少し傷つけるのが精いっぱいだったのに・・・」
ソウも、ごくりと喉を鳴らしながら巻き上がる砂塵をじっと見つめていた。

そして土埃が少しずつ収まっていき、そこから何かが姿を現した。

「ぐぉーーーーーー!!」
そこにいたのは、ゴリラだった。

「ゴリラ出ちゃったよ!」
「シゲ、まだいるよ!」
大声でつっこんでいた重清に、ソウはそう言って収まりつつある砂塵を見続けていた。

「バサッ!!」
砂塵から何かが上空へと舞い上がった。

「今度は鳩かよっ!!」
空を飛び回る鳩に、重清は再びつっこんだ。

「重清、まだいるぜ!」
プレッソは警戒しながら、薄れていく砂塵に身構えていた。

「アォーーーーーーン!!」
「今度はオオカミかよ!!!」

三度、重清はつっこんだのであった。
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