おれは忍者の子孫

メバ

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一息ついて

第277話:わかってねぇな

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「おばぁちゃーん!」
一同を引き連れた麻耶がそう言って入って行ったのはもちろん、雑賀雅の自宅であった。

「なんだい、麻耶かい。あら、ケン君に・・・あんた達はロキんとこの子達だね。どうしたんだい麻耶。こんなにぞろぞろと引き連れて」

麻耶たちを玄関に迎え入れた雅は、そこに立つ面々を見ながら首を傾げた。

「おばあちゃん、ちょっと修行場、貸してくれない?」
そんな雅に、麻耶が拝み始めた。

「急に来たと思ったらなんだい。ダメだよ。今日は休みの日だろう?ノリと公弘から、休みの日は休ませろと厳しく言われてるからね」
雅は、愛する夫の最後の弟子と可愛い孫に怒られるのを恐れ、麻耶の頼みを即座に断った。

そう言われるのが分かっていた麻耶は、そっと雅に耳打ちをした。

「私を巡って、2人の男が決闘するの。お願いおばあちゃん!」
「面白いっ!!ドンドン使いなっ!!こっちだよ!」
麻耶の言葉で一瞬にして脳内から愛する夫の最後の弟子と可愛い孫の顔は消え去り、雅は目を輝かせながら親指を立てて奥へと入って行った。

麻耶は、してやったりとでも言いたげに、剣へとウインクをしていた。

「ちっ」
麻耶にウインクをされて照れている剣を見たイチは、忌々しそうに舌打ちをしながら剣を押しのけ、雅の進んだ先へと入って行った。

「さっ、行くわよ」
麻耶もそう言いながら、雅の後へと続き、剣もそれに続いた。

残された一同は顔を見合わせながらも、見知らぬ老婆の家に入って行ったのであった。


「おい、皆雅さんの家に入って行ったぞ。どうする?」
「どうするもなにも。もう当たり前のように入って行くしかないだろ」
慎二の言葉に、信宏はそう言いながら雅の家へと入って行った。

「あーあ。せっかくの尾行が台無しだ」
そう言って、慎二は頭をかきながら信宏へと続いた。


「・・・お前ら、なんでここに」
いざ雅の作る修行場へと入ろうとしていた一同の中に何食わぬ顔で加わった慎二と信宏を、剣は睨みつけた。

「あははは。そう怒るなってケン。俺らはお前を心配してだな―――」
「すまん、ケン!シンがどうしてもお前を尾行したいと聞かなくて!!」

苦笑いしながら剣に返す慎二の言葉に被せるように、信宏は頭を下げながら剣へと謝った。

「ちょっ、ノブ!お前ズルいぞ!」
「何を言う!お前が尾行したいと言ったのは事実だろうが!!」
そんな醜い争いを始めた親友2人に、剣はため息交じりに口を開いた。

「もういい。お前らもついてこい」

「「おぉ!!流石はケン!!」」
そう言って慎二と信宏は、剣に抱きついた。

「・・・麻耶先輩、彼氏さんの友達、大丈夫でやんすか?」
茶番を見せられていたトクが、同情の混じった目を麻耶へと向けた。

「こいつらは、いつもこんな感じよ。それと、剣はまだ彼氏なんかじゃないからね」
少しだけ顔を赤く染めながら、麻耶はトクへと返した。

その麻耶の様子を苦々しく見つめていたイチを、雅は面白そうに眺めていた。

(良いねぇ~。恋する男の歪んだ欲望!こりゃ、面白いことになりそうだね!!)
孫の恋路を、まるでドラマを見ているかのように楽しんでいる雅は、ニヤけた顔を改めて一同を見渡した。

「それじゃぁ、役者も揃ったことだし、さっさと行くよ。ついておいで」
そう言いながら雅は、修行場へと続く光の扉を作り出し、そのままその扉をくぐって行った。


「さぁ、早速やろうぜ」
忍者部の修行に使われているのと似た森へとたどり着いた一同から一歩前へと進み出たイチが、ケンを睨みつけながら言った。

「あぁ」
ケンはイチへとうなずき返すと、スタスタと歩き始め、イチと距離をとって身構えた。

「俺が勝ったら、麻耶は俺のもんだ!わかったか!?」
「だから、それは麻耶さんが決めること。でも、もしも麻耶さんがお前のこと好きだったら、俺は潔く諦める」

「おいケン!そんな簡単に諦めていいのかよっ!!」
ケンの言葉に、シンが大声を上げた。

「と、お前のお友達は仰ってるけど?
でも確かにな。お前の麻耶への気持ちは、その程度だったってことかよ?
そんな気持ちだったら、今すぐ諦めちまえ!」
イチはそう叫びながら2本ナイフを具現化させ、術を発動させる。

(水刀の術っ!!)

水の刃に覆われた2本ナイフを逆手に持ったイチが、ケンへ向かって走り出した。

「わかってねぇな」

ケンはそう呟いて刀を具現化し、向かってくるイチに構えるのであった。
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