314 / 519
一息ついて
第277話:わかってねぇな
しおりを挟む
「おばぁちゃーん!」
一同を引き連れた麻耶がそう言って入って行ったのはもちろん、雑賀雅の自宅であった。
「なんだい、麻耶かい。あら、ケン君に・・・あんた達はロキんとこの子達だね。どうしたんだい麻耶。こんなにぞろぞろと引き連れて」
麻耶たちを玄関に迎え入れた雅は、そこに立つ面々を見ながら首を傾げた。
「おばあちゃん、ちょっと修行場、貸してくれない?」
そんな雅に、麻耶が拝み始めた。
「急に来たと思ったらなんだい。ダメだよ。今日は休みの日だろう?ノリと公弘から、休みの日は休ませろと厳しく言われてるからね」
雅は、愛する夫の最後の弟子と可愛い孫に怒られるのを恐れ、麻耶の頼みを即座に断った。
そう言われるのが分かっていた麻耶は、そっと雅に耳打ちをした。
「私を巡って、2人の男が決闘するの。お願いおばあちゃん!」
「面白いっ!!ドンドン使いなっ!!こっちだよ!」
麻耶の言葉で一瞬にして脳内から愛する夫の最後の弟子と可愛い孫の顔は消え去り、雅は目を輝かせながら親指を立てて奥へと入って行った。
麻耶は、してやったりとでも言いたげに、剣へとウインクをしていた。
「ちっ」
麻耶にウインクをされて照れている剣を見たイチは、忌々しそうに舌打ちをしながら剣を押しのけ、雅の進んだ先へと入って行った。
「さっ、行くわよ」
麻耶もそう言いながら、雅の後へと続き、剣もそれに続いた。
残された一同は顔を見合わせながらも、見知らぬ老婆の家に入って行ったのであった。
「おい、皆雅さんの家に入って行ったぞ。どうする?」
「どうするもなにも。もう当たり前のように入って行くしかないだろ」
慎二の言葉に、信宏はそう言いながら雅の家へと入って行った。
「あーあ。せっかくの尾行が台無しだ」
そう言って、慎二は頭をかきながら信宏へと続いた。
「・・・お前ら、なんでここに」
いざ雅の作る修行場へと入ろうとしていた一同の中に何食わぬ顔で加わった慎二と信宏を、剣は睨みつけた。
「あははは。そう怒るなってケン。俺らはお前を心配してだな―――」
「すまん、ケン!シンがどうしてもお前を尾行したいと聞かなくて!!」
苦笑いしながら剣に返す慎二の言葉に被せるように、信宏は頭を下げながら剣へと謝った。
「ちょっ、ノブ!お前ズルいぞ!」
「何を言う!お前が尾行したいと言ったのは事実だろうが!!」
そんな醜い争いを始めた親友2人に、剣はため息交じりに口を開いた。
「もういい。お前らもついてこい」
「「おぉ!!流石はケン!!」」
そう言って慎二と信宏は、剣に抱きついた。
「・・・麻耶先輩、彼氏さんの友達、大丈夫でやんすか?」
茶番を見せられていたトクが、同情の混じった目を麻耶へと向けた。
「こいつらは、いつもこんな感じよ。それと、剣はまだ彼氏なんかじゃないからね」
少しだけ顔を赤く染めながら、麻耶はトクへと返した。
その麻耶の様子を苦々しく見つめていたイチを、雅は面白そうに眺めていた。
(良いねぇ~。恋する男の歪んだ欲望!こりゃ、面白いことになりそうだね!!)
孫の恋路を、まるでドラマを見ているかのように楽しんでいる雅は、ニヤけた顔を改めて一同を見渡した。
「それじゃぁ、役者も揃ったことだし、さっさと行くよ。ついておいで」
そう言いながら雅は、修行場へと続く光の扉を作り出し、そのままその扉をくぐって行った。
「さぁ、早速やろうぜ」
忍者部の修行に使われているのと似た森へとたどり着いた一同から一歩前へと進み出たイチが、ケンを睨みつけながら言った。
「あぁ」
ケンはイチへとうなずき返すと、スタスタと歩き始め、イチと距離をとって身構えた。
「俺が勝ったら、麻耶は俺のもんだ!わかったか!?」
「だから、それは麻耶さんが決めること。でも、もしも麻耶さんがお前のこと好きだったら、俺は潔く諦める」
「おいケン!そんな簡単に諦めていいのかよっ!!」
ケンの言葉に、シンが大声を上げた。
「と、お前のお友達は仰ってるけど?
でも確かにな。お前の麻耶への気持ちは、その程度だったってことかよ?
そんな気持ちだったら、今すぐ諦めちまえ!」
イチはそう叫びながら2本ナイフを具現化させ、術を発動させる。
(水刀の術っ!!)
水の刃に覆われた2本ナイフを逆手に持ったイチが、ケンへ向かって走り出した。
「わかってねぇな」
ケンはそう呟いて刀を具現化し、向かってくるイチに構えるのであった。
一同を引き連れた麻耶がそう言って入って行ったのはもちろん、雑賀雅の自宅であった。
「なんだい、麻耶かい。あら、ケン君に・・・あんた達はロキんとこの子達だね。どうしたんだい麻耶。こんなにぞろぞろと引き連れて」
麻耶たちを玄関に迎え入れた雅は、そこに立つ面々を見ながら首を傾げた。
「おばあちゃん、ちょっと修行場、貸してくれない?」
そんな雅に、麻耶が拝み始めた。
「急に来たと思ったらなんだい。ダメだよ。今日は休みの日だろう?ノリと公弘から、休みの日は休ませろと厳しく言われてるからね」
雅は、愛する夫の最後の弟子と可愛い孫に怒られるのを恐れ、麻耶の頼みを即座に断った。
そう言われるのが分かっていた麻耶は、そっと雅に耳打ちをした。
「私を巡って、2人の男が決闘するの。お願いおばあちゃん!」
「面白いっ!!ドンドン使いなっ!!こっちだよ!」
麻耶の言葉で一瞬にして脳内から愛する夫の最後の弟子と可愛い孫の顔は消え去り、雅は目を輝かせながら親指を立てて奥へと入って行った。
麻耶は、してやったりとでも言いたげに、剣へとウインクをしていた。
「ちっ」
麻耶にウインクをされて照れている剣を見たイチは、忌々しそうに舌打ちをしながら剣を押しのけ、雅の進んだ先へと入って行った。
「さっ、行くわよ」
麻耶もそう言いながら、雅の後へと続き、剣もそれに続いた。
残された一同は顔を見合わせながらも、見知らぬ老婆の家に入って行ったのであった。
「おい、皆雅さんの家に入って行ったぞ。どうする?」
「どうするもなにも。もう当たり前のように入って行くしかないだろ」
慎二の言葉に、信宏はそう言いながら雅の家へと入って行った。
「あーあ。せっかくの尾行が台無しだ」
そう言って、慎二は頭をかきながら信宏へと続いた。
「・・・お前ら、なんでここに」
いざ雅の作る修行場へと入ろうとしていた一同の中に何食わぬ顔で加わった慎二と信宏を、剣は睨みつけた。
「あははは。そう怒るなってケン。俺らはお前を心配してだな―――」
「すまん、ケン!シンがどうしてもお前を尾行したいと聞かなくて!!」
苦笑いしながら剣に返す慎二の言葉に被せるように、信宏は頭を下げながら剣へと謝った。
「ちょっ、ノブ!お前ズルいぞ!」
「何を言う!お前が尾行したいと言ったのは事実だろうが!!」
そんな醜い争いを始めた親友2人に、剣はため息交じりに口を開いた。
「もういい。お前らもついてこい」
「「おぉ!!流石はケン!!」」
そう言って慎二と信宏は、剣に抱きついた。
「・・・麻耶先輩、彼氏さんの友達、大丈夫でやんすか?」
茶番を見せられていたトクが、同情の混じった目を麻耶へと向けた。
「こいつらは、いつもこんな感じよ。それと、剣はまだ彼氏なんかじゃないからね」
少しだけ顔を赤く染めながら、麻耶はトクへと返した。
その麻耶の様子を苦々しく見つめていたイチを、雅は面白そうに眺めていた。
(良いねぇ~。恋する男の歪んだ欲望!こりゃ、面白いことになりそうだね!!)
孫の恋路を、まるでドラマを見ているかのように楽しんでいる雅は、ニヤけた顔を改めて一同を見渡した。
「それじゃぁ、役者も揃ったことだし、さっさと行くよ。ついておいで」
そう言いながら雅は、修行場へと続く光の扉を作り出し、そのままその扉をくぐって行った。
「さぁ、早速やろうぜ」
忍者部の修行に使われているのと似た森へとたどり着いた一同から一歩前へと進み出たイチが、ケンを睨みつけながら言った。
「あぁ」
ケンはイチへとうなずき返すと、スタスタと歩き始め、イチと距離をとって身構えた。
「俺が勝ったら、麻耶は俺のもんだ!わかったか!?」
「だから、それは麻耶さんが決めること。でも、もしも麻耶さんがお前のこと好きだったら、俺は潔く諦める」
「おいケン!そんな簡単に諦めていいのかよっ!!」
ケンの言葉に、シンが大声を上げた。
「と、お前のお友達は仰ってるけど?
でも確かにな。お前の麻耶への気持ちは、その程度だったってことかよ?
そんな気持ちだったら、今すぐ諦めちまえ!」
イチはそう叫びながら2本ナイフを具現化させ、術を発動させる。
(水刀の術っ!!)
水の刃に覆われた2本ナイフを逆手に持ったイチが、ケンへ向かって走り出した。
「わかってねぇな」
ケンはそう呟いて刀を具現化し、向かってくるイチに構えるのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました
yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。
二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか!
ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?
EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。
※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件
九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。
勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。
S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。
そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。
五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。
魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。
S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!?
「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」
落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

農業機器無双! ~農業機器は世界を救う!~
あきさけ
ファンタジー
異世界の地に大型農作機械降臨!
世界樹の枝がある森を舞台に、農業機械を生み出すスキルを授かった少年『バオア』とその仲間が繰り広げるスローライフ誕生!
十歳になると誰もが神の祝福『スキル』を授かる世界。
その世界で『農業機器』というスキルを授かった少年バオア。
彼は地方貴族の三男だったがこれをきっかけに家から追放され、『闇の樹海』と呼ばれる森へ置き去りにされてしまう。
しかし、そこにいたのはケットシー族の賢者ホーフーン。
彼との出会いで『農業機器』のスキルに目覚めたバオアは、人の世界で『闇の樹海』と呼ばれていた地で農業無双を開始する!
芝刈り機と耕運機から始まる農業ファンタジー、ここに開幕!
たどり着くは巨大トラクターで畑を耕し、ドローンで農薬をまき、大型コンバインで麦を刈り、水耕栽培で野菜を栽培する大農園だ!
米 この作品はカクヨム様でも連載しております。その他のサイトでは掲載しておりません。

エリアスとドラゴンともふもふは、今日も元気に遊んでいます!?
ありぽん
ファンタジー
アルフォート家の3男、エリアス・アルフォート3歳は、毎日楽しく屋敷の広い広い庭を、お友達のぷるちゃん(スライム)とウルちゃん(ホワイトウルフ)と一緒に走り回っておりました。
そして4歳の誕生日の日。この日は庭でエリアスの誕生日パーティーが開かれていました。その時何処からかエリアスの事を呼ぶ声が。その声を前に聞いた事があるエリアスは、声のする庭の奥へ、ぷるちゃんとウルちゃんと3人進んで行きます。そこでエリアス達を待っていたものは?
剣と魔法そしてもふもふの溢れる世界で、繰り広げられるエリアスの大冒険。周りを巻き込みながら、今日もエリアスはやらかします!
*エリアス本人登場は2話からとなります。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる