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一息ついて
第275話:初デート
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「ケン、あんた楽しんでる?」
麻耶が、不機嫌そうな顔で剣を見ていた。
「うん」
手に持ったクレープで顔を隠しながら、剣はただそう答えた。
現在麻耶と剣は、デート中なのである。
と言っても2人はまだ付き合っているわけではなく、ただ友人として休日を2人で過ごしているのである。
(それでも、これはデート!初デート!!)
剣は、麻耶から遊びの誘いを受けたときにそう考え、必死に準備をした。
茜に頼み込み、麻耶の好物がクレープであることを聞き出した剣は、死にものぐるいで美味しいクレープ屋を調べ、この日麻耶をそこへと連れてきたのだ。
麻耶は喜んでくれるはずだ。
そう信じて連れてきたはずの剣であったが、麻耶の不機嫌そうな顔を見て心配になっていた。
(何がダメだった?ここのクレープじゃ、麻耶さんの口には合わなかったか?)
剣は必死になって、今までの自分を振り返っていた。
何か不手際があったのか、そう、自身に問いかけながら。
そんな剣の苦悩を知ってか知らずか、麻耶は一息にクレープを食べると、剣を見つめて言った。
「クレープ、美味しかった!でも、あんたがそんなに悩んだ顔してたら、一緒にいる私も全然楽しくない!」
「あ・・・・」
剣は、麻耶のそんな言葉に声を漏らした。
「俺、麻耶さんに楽しんでもらうことしか考えてなくて。すみません」
剣はそう言いながら麻耶に頭を下げた。
「うん、その気持ちは嬉しいんだよ?でも、せっかく遊びに来てるんだから、あんたも楽しまなきゃ!
2人で遊んでるのに、私だけ楽しんでも意味ないじゃん!」
「いや、俺麻耶さんといれるだけで充分楽しい」
「その割に、全然楽しそうに見えないわよ?」
「元々、こんな顔」
「あっ、今笑った!あんたの表情、少しだけわかるようになったかも。まぁ、あんたが楽しんでるならいいんだけどさ。
ほら!じゃぁ次はあそこに行くわよっ!」
そう言って手を引く麻耶に、剣は顔を赤らめながら引っ張られていった。
そんな2人の様子を、物陰から怪しげな男達が覗いていた。
「くぅ~!!ノブ!ケンの野郎デートなんかしてやがるぞ!」
「そんなもん、見りゃわかる。それよりもシン、この格好どうにかならんのか?」
ほっかむり姿の、慎二と信宏である。
「だって、尾行つったらこれだろ?」
「これは泥棒のスタイルだ。周りを見てみろ」
信宏の呆れ声に慎二が周りを見渡すと。
「指差しちゃダメっ」
そう言って子どもの手を引き、急いでその場を離れる母親の姿や、ヒソヒソと慎二達を見て話しているオバ様方が目に入った。
「見てみろ。どう考えてもこっちの方が目立つだろ」
「あぁ、うん。みたいだな。仕方ねーな」
慎二はそう言いながら、頭に被ったほっかむりを外した。
「まぁ、尾行はこんなの無しでもできるしな」
「いや、そもそも尾行自体俺は反対なんだがな」
「なんでだよノブ!俺らの友達が大人の階段登ろうとしてんだぞ!?これを追わないで、お前は何を追うっていうんだよ!!」
「別に何かを追いたいとも思っとらん!シン、お前はケンを暖かく見守ろうという気持ちはないのか?」
「いや、だからこうして見守ってんじゃねーかよ!」
「ホントに見守る必要が、そもそもないんだ。俺らはただ、遠くからケンを応援しとけばいいだろ!?」
「いや、だからこうして、離れて応援してんだろ?」
「堂々巡りだな」
信宏は、ため息交じりに首を横に振った。
「ノブ、お前なんでそんなに落ち着いていられるんだよ!?俺ら、大人の階段の1番下に、置いていかれてるんだぞ!?もうケンに追いつくには、エレベーター使うしかないんだぞ!?」
「もう、言ってる意味がわからん―――ん?」
信宏は頭を抱えながらも、剣と麻耶の様子を見るべく2人に目を向け、声を漏らしていた。
「なんだよノブ。まさかあの2人、き、キスとかしちゃってんのか!?」
信宏の様子に焦った慎二も、2人へと慌てて目を向けた。
「おいおい、ありゃぁ・・・」
剣達の方向へと目を向けた慎二は、2人の前に立ちはだかっている人物を見て、そう呟いていた。
「おい麻耶!!」
慎二達の視線の先にいた剣と麻耶の前で、1人の少年が仁王立ちしていた。
「あぁ、イチ。久しぶりね」
麻耶は、面倒くさそうに目の前の少年に、そう返した。
「俺を差し置いて、なんでこんな奴とデートなんかしてんだよっ!!」
麻耶の中学の同級生であり、1中忍者部3年風魔イチは、そう言いながら剣を押しのけて麻耶の肩を掴み、そう言うのであった。
麻耶が、不機嫌そうな顔で剣を見ていた。
「うん」
手に持ったクレープで顔を隠しながら、剣はただそう答えた。
現在麻耶と剣は、デート中なのである。
と言っても2人はまだ付き合っているわけではなく、ただ友人として休日を2人で過ごしているのである。
(それでも、これはデート!初デート!!)
剣は、麻耶から遊びの誘いを受けたときにそう考え、必死に準備をした。
茜に頼み込み、麻耶の好物がクレープであることを聞き出した剣は、死にものぐるいで美味しいクレープ屋を調べ、この日麻耶をそこへと連れてきたのだ。
麻耶は喜んでくれるはずだ。
そう信じて連れてきたはずの剣であったが、麻耶の不機嫌そうな顔を見て心配になっていた。
(何がダメだった?ここのクレープじゃ、麻耶さんの口には合わなかったか?)
剣は必死になって、今までの自分を振り返っていた。
何か不手際があったのか、そう、自身に問いかけながら。
そんな剣の苦悩を知ってか知らずか、麻耶は一息にクレープを食べると、剣を見つめて言った。
「クレープ、美味しかった!でも、あんたがそんなに悩んだ顔してたら、一緒にいる私も全然楽しくない!」
「あ・・・・」
剣は、麻耶のそんな言葉に声を漏らした。
「俺、麻耶さんに楽しんでもらうことしか考えてなくて。すみません」
剣はそう言いながら麻耶に頭を下げた。
「うん、その気持ちは嬉しいんだよ?でも、せっかく遊びに来てるんだから、あんたも楽しまなきゃ!
2人で遊んでるのに、私だけ楽しんでも意味ないじゃん!」
「いや、俺麻耶さんといれるだけで充分楽しい」
「その割に、全然楽しそうに見えないわよ?」
「元々、こんな顔」
「あっ、今笑った!あんたの表情、少しだけわかるようになったかも。まぁ、あんたが楽しんでるならいいんだけどさ。
ほら!じゃぁ次はあそこに行くわよっ!」
そう言って手を引く麻耶に、剣は顔を赤らめながら引っ張られていった。
そんな2人の様子を、物陰から怪しげな男達が覗いていた。
「くぅ~!!ノブ!ケンの野郎デートなんかしてやがるぞ!」
「そんなもん、見りゃわかる。それよりもシン、この格好どうにかならんのか?」
ほっかむり姿の、慎二と信宏である。
「だって、尾行つったらこれだろ?」
「これは泥棒のスタイルだ。周りを見てみろ」
信宏の呆れ声に慎二が周りを見渡すと。
「指差しちゃダメっ」
そう言って子どもの手を引き、急いでその場を離れる母親の姿や、ヒソヒソと慎二達を見て話しているオバ様方が目に入った。
「見てみろ。どう考えてもこっちの方が目立つだろ」
「あぁ、うん。みたいだな。仕方ねーな」
慎二はそう言いながら、頭に被ったほっかむりを外した。
「まぁ、尾行はこんなの無しでもできるしな」
「いや、そもそも尾行自体俺は反対なんだがな」
「なんでだよノブ!俺らの友達が大人の階段登ろうとしてんだぞ!?これを追わないで、お前は何を追うっていうんだよ!!」
「別に何かを追いたいとも思っとらん!シン、お前はケンを暖かく見守ろうという気持ちはないのか?」
「いや、だからこうして見守ってんじゃねーかよ!」
「ホントに見守る必要が、そもそもないんだ。俺らはただ、遠くからケンを応援しとけばいいだろ!?」
「いや、だからこうして、離れて応援してんだろ?」
「堂々巡りだな」
信宏は、ため息交じりに首を横に振った。
「ノブ、お前なんでそんなに落ち着いていられるんだよ!?俺ら、大人の階段の1番下に、置いていかれてるんだぞ!?もうケンに追いつくには、エレベーター使うしかないんだぞ!?」
「もう、言ってる意味がわからん―――ん?」
信宏は頭を抱えながらも、剣と麻耶の様子を見るべく2人に目を向け、声を漏らしていた。
「なんだよノブ。まさかあの2人、き、キスとかしちゃってんのか!?」
信宏の様子に焦った慎二も、2人へと慌てて目を向けた。
「おいおい、ありゃぁ・・・」
剣達の方向へと目を向けた慎二は、2人の前に立ちはだかっている人物を見て、そう呟いていた。
「おい麻耶!!」
慎二達の視線の先にいた剣と麻耶の前で、1人の少年が仁王立ちしていた。
「あぁ、イチ。久しぶりね」
麻耶は、面倒くさそうに目の前の少年に、そう返した。
「俺を差し置いて、なんでこんな奴とデートなんかしてんだよっ!!」
麻耶の中学の同級生であり、1中忍者部3年風魔イチは、そう言いながら剣を押しのけて麻耶の肩を掴み、そう言うのであった。
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