おれは忍者の子孫

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一息ついて

第272話:龍と龍少年と龍神祭

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『では皆、達者でな』
目的を済ませたコモドドラゴンは、村へと戻ろうとする一同の背に声をかけた。

「なんだか、もう一生会えないような口ぶりね」
茜が、コモドドラゴンを見て言った。

「いつか、この子が生まれてきたら、会いに来てもいいですか?」
聡太は、おずおずとコモドドラゴンに目を向ける。

『いや、それは遠慮しておこう』
コモドドラゴンのそんな言葉に、聡太は悲しそうな表情で肩を落とした。

『そんな顔をするな。我は元々、主が死して後はヒトと関わらずに生きてきたのだ。これからも、我はここで、静かに暮らしたいのだ』
「そ、そんな・・・」
聡太は、手のひらの卵を撫でながら、小さく声を漏らしていた。

『安心しろ。お主とは、いずれまた相まみえる時が来よう。その時は、その子の顔を、じっくりと拝ませてもらおう』
コモドドラゴンは、そう言って聡太に微笑んだ。

「は、はいっ!約束ですよ!!」
聡太は、満面の笑みをコモドドラゴンへと返す。

『ところで。1つ頼みがあるのだが』
コモドドラゴンは、そう言いながらガクへと目を向けた。

『先程言うたように、我はここで静かに暮したい。ここでの事、他言しないでもらえぬか』
「・・・・・・・」
ガクは、その言葉にしばし沈黙した。

その場の一同は、じっとガクを見つめていた。

「・・・・わかりました。しかし、信用できる上司1人にだけ、話す事を許可いただきたい」
『承知した。感謝する』
ガクが頷くと、コモドドラゴンはガクへ深々と頭を下げた。


「では、我々はこれで」
「コモドさん!元気でね!いつか、絶対この子に会いに来てね!!」

その後、村へと戻って行った聡太達を見送ったコモドドラゴンは、フッと笑みを漏らした。

(本当に、主にそっくりの真っ直ぐな目をしている子であったな)

コモドドラゴンは、聡太の顔を思い出しながら、遠い記憶に想いを馳せていた。


―――師匠!何故木の力が緑なのですか!?五行で木は本来、木の力は青ではないですか!?―――
―――そう言うな。木は、やはり緑の方が分かりやすいではないか。青はどちらかと言うと水の方が近い―――
―――水の力は、黒のはずです!―――
―――お前は硬いなぁ。分かりやすい方が、後の者の為にも良いではないか。それに、黒い力は既に、あやつが使っているしな―――
―――しかし、あの者の力は―――


そんな、主とその師のやり取りを懐かしく思いながらも、コモドドラゴンはフッと笑みを浮かべて、1枚の紙を出現させた。

それは本来、具現獣が単独で持つはずのない、術の契約書であった。

主の死とともに自身の所有物となったその契約書に記された唯一の術に目を落とし、コモドドラゴンは安堵のため息をついた。

『これで、もう1つの約束も果たせるかもしれぬ。あ奴らならばきっと・・・』

そう呟いたコモドドラゴンの体が光り輝くと、その場からコモドドラゴンの姿が消え、緑の鱗に覆われた、巨大な一頭の龍が現れた。

龍は重清達の進んだ先に目を向けると、

『我が子よ、そして聡太よ。またいつか、会おうぞ。お主らならば、必ずやこの術を身に着けるほどの力を付けると、信じておるぞ』
そう言って、フッとその場から姿を消すのであった。


同時刻、たまたま森の付近を探検していた1人の少年は、鬱蒼と茂る木々の隙間から見えた光景に、呆然としていた。

「りゅ、龍だ!龍が出たぞーーーっ!!」

少年は、またたく間に村へと戻り、村人達に自身が見た光景を話して回った。

しかしその少年、以前から嘘ばかりついている問題児として有名であった。
大人達は少年の言う事に聞く耳を持たず、少年はその日のうちに狼少年ならぬ『龍少年』という不名誉なあだ名を付けられることとなった。

しかし翌日、重清達の帰宅後に突然村長が発した『動物達怯える事件』の終息を受けた人々は、少年の言葉を思い出し、事件の解決と少年の言葉を勝手に結び付けて口々に言った。

「龍伝説は、本当だったのか」
と。

翌年よりその村では、『龍神祭』という祭が執り行われることとなり、その主役には、不名誉なあだ名をつけられた少年が抜擢された。

『初代龍少年』という肩書とともに。

さらにこの初代龍少年の提案により龍神祭は仮装をメインとした祭へと進化を遂げる。こうして不忍村龍神祭は全国の勇者達が各々の好きな勇者の仮装で参列することとなり、村の一大イベントとして村おこしに一役買う事になるのであった。
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