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一息ついて
第258話:驚異のネットワーク形成
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忍ヶ丘第2中学校体育祭も終わり、夏の暑さもとうに過ぎ去った頃。
アカは雅の術によって作られたいつもの修行用空間で、とある女性と対峙していた。
その女性、忍名を風魔リコ、本名を薩摩梨子と言う。
そう、忍者である。
御年29となる中堅忍者が、何故アカと対峙しているのか。
それはひとまず置いておこう。
「さぁ、かかってきなさい!」
風魔リコが、アカに対して構えた。
「じゃぁ、いきますっ!!」
アカはリコへとそう答えて、火鎧の術を発動してリコへと向かって走り出した。
「水拳の術!」
リコは向かってくるアカにわざわざ聞こえるようにそう言いながら、拳に水を纏わせていった。
(わたしと同じ、近距離タイプ!?でも、向こうが水だと、わたしの方が不利ね!)
アカは走りながらも咄嗟にそう判断し、
(火弾の術っ!)
リコに向けて火の弾を飛ばした。
「へぇ、なかなか良い判断力じゃない。でもね!」
リコはそう言いながら、飛んでくる火の弾をその拳で撃ち落としていった。
「その程度の術で、私は止められ―――」
最後の火の弾を掴み取りながら、リコが前へと目を向けると、そこに既にアカの姿はなく、リコは言葉を止めて辺りを見回した。
「はっ!?」
リコが頭上に目を向けると、アカがリコへと上空から炎を纏った拳を振り下ろしていた。
「甘いわっ!!」
リコはそう言いながらアカの拳を受けはらい、そのままカウンターを繰り出した。
リコの拳がアカの胴体へとヒットしたかに思えた瞬間、その姿が消え、突如現れた木をリコは殴りつけていた。
(か、変わり身の術!?)
リコがそう思っていると、
「これで、終わりですっ!」
リコの背後へと現れたアカが、そう言いながら拳をふるった。
アカの拳がリコの顔面を捉えたかに思えたその時、リコがニヤリと笑い、アカの拳がリコの目の前で止まった。
「くっ!」
いつの間にか全身を水で覆われていたアカは、拳を突き出したまま動きを止められ成すすべもなく、リコの蹴りを受ける覚悟をした。
「そこまで!」
アカの目の前でリコの脚が止まった瞬間、雅のそんな声が辺りに響いた。
「あっちゃん、じゃなくてアカ。あんた、変わり身の術でリコを捉えた時、油断したね」
雅が近付きながら、そう言ってアカを見つめていた。
「は、はい・・・」
その身を拘束していた水から開放されたアカは、その場に膝を付きながら、俯き加減でそう答えた。
「でも、流石は雅様のお弟子さんですね。術の使い方が様になってました。まさか、『水牢の術』まで使うことになるなんて。本当は、この拳だけでねじ伏せるつもりだったのに」
リコが、笑いながら物騒なことを言っていた。
「まぁとにかく、これで約束どおり、あの術を契約させていただけますよね?」
リコは、笑みを消した真剣な表情で雅を見つめていた。
「あぁ、もちろんさ。ほれ、契約完了だよ」
その言葉と共にリコは術の契約書を取り出し、中身を確認すると満足そうに頷いていた。
「では、私はこれで」
「えぇ、リコさんもう帰っちゃうんですか?どうせだったら、このまま女子会しましょうよ!リコさんの恋バナ聞きたいし!」
先程まで俯き加減だったアカが、リコへと寄ってきた。
「茜ちゃん、ゴメンね。早くこの術を使って、アイツと別れなきゃいけないの。飛行機の時間もあるしね」
リコはアカへと笑いかけながらもそそくさと帰り支度を始め、
「では、雅様、茜ちゃん、ありがとうございました!雅様、私の連絡先は茜ちゃんと交換していますので、何かあったら何時でもお声掛けください!この御恩に、必ず報いてみせます!」
「そんなことは、まずあんた自身の問題を片付けてから言うんだね。ま、達者でね」
「リコさん、頑張って!」
「はいっ!茜ちゃん、恋バナはまた今度、ゆっくりとね」
リコは2人にそう返して、生き生きとした顔で雅宅を出るのであった。
「さぁてアカ、あんたは今の一戦を振り返りながら、もう少しあたしと修行だよ」
「はいっ!!」
アカの元気な声とともに、2人は再び修行へと向かうのであった。
風魔リコが、雑賀雅より契約を許された術の名は、『非恋の術』。雅が、少しだけショウにときめいてしまった際に作った術である(第131話参照)。
自身の思惑と違う恋を防ぐことのできるこの術、全国のダメ男に恋する一部の女性から圧倒的な支持を受け、一時期契約希望が殺到していた。
そこで雅は、その希望者一人ひとりとじっくりと向き合い、希望者が本当に術との契約を必要としているのかを見極めていった。
そして契約の必要性を認めた者には、茜との一戦を契約の条件としたのである。
特に茜に勝つ必要はなく、これはあくまでも茜の修行のためなのだが。
こうして茜は、時々全国の現役忍者と拳を交える機会を得ることとなり、その実力はメキメキと上達していくのであった。
更には、その相手全てと連絡先を交換していた茜は、全国各地に恋バナ仲間を作ることとなり、そのネットワークはどの忍者よりも強大なものとなっていくのであった。
アカは雅の術によって作られたいつもの修行用空間で、とある女性と対峙していた。
その女性、忍名を風魔リコ、本名を薩摩梨子と言う。
そう、忍者である。
御年29となる中堅忍者が、何故アカと対峙しているのか。
それはひとまず置いておこう。
「さぁ、かかってきなさい!」
風魔リコが、アカに対して構えた。
「じゃぁ、いきますっ!!」
アカはリコへとそう答えて、火鎧の術を発動してリコへと向かって走り出した。
「水拳の術!」
リコは向かってくるアカにわざわざ聞こえるようにそう言いながら、拳に水を纏わせていった。
(わたしと同じ、近距離タイプ!?でも、向こうが水だと、わたしの方が不利ね!)
アカは走りながらも咄嗟にそう判断し、
(火弾の術っ!)
リコに向けて火の弾を飛ばした。
「へぇ、なかなか良い判断力じゃない。でもね!」
リコはそう言いながら、飛んでくる火の弾をその拳で撃ち落としていった。
「その程度の術で、私は止められ―――」
最後の火の弾を掴み取りながら、リコが前へと目を向けると、そこに既にアカの姿はなく、リコは言葉を止めて辺りを見回した。
「はっ!?」
リコが頭上に目を向けると、アカがリコへと上空から炎を纏った拳を振り下ろしていた。
「甘いわっ!!」
リコはそう言いながらアカの拳を受けはらい、そのままカウンターを繰り出した。
リコの拳がアカの胴体へとヒットしたかに思えた瞬間、その姿が消え、突如現れた木をリコは殴りつけていた。
(か、変わり身の術!?)
リコがそう思っていると、
「これで、終わりですっ!」
リコの背後へと現れたアカが、そう言いながら拳をふるった。
アカの拳がリコの顔面を捉えたかに思えたその時、リコがニヤリと笑い、アカの拳がリコの目の前で止まった。
「くっ!」
いつの間にか全身を水で覆われていたアカは、拳を突き出したまま動きを止められ成すすべもなく、リコの蹴りを受ける覚悟をした。
「そこまで!」
アカの目の前でリコの脚が止まった瞬間、雅のそんな声が辺りに響いた。
「あっちゃん、じゃなくてアカ。あんた、変わり身の術でリコを捉えた時、油断したね」
雅が近付きながら、そう言ってアカを見つめていた。
「は、はい・・・」
その身を拘束していた水から開放されたアカは、その場に膝を付きながら、俯き加減でそう答えた。
「でも、流石は雅様のお弟子さんですね。術の使い方が様になってました。まさか、『水牢の術』まで使うことになるなんて。本当は、この拳だけでねじ伏せるつもりだったのに」
リコが、笑いながら物騒なことを言っていた。
「まぁとにかく、これで約束どおり、あの術を契約させていただけますよね?」
リコは、笑みを消した真剣な表情で雅を見つめていた。
「あぁ、もちろんさ。ほれ、契約完了だよ」
その言葉と共にリコは術の契約書を取り出し、中身を確認すると満足そうに頷いていた。
「では、私はこれで」
「えぇ、リコさんもう帰っちゃうんですか?どうせだったら、このまま女子会しましょうよ!リコさんの恋バナ聞きたいし!」
先程まで俯き加減だったアカが、リコへと寄ってきた。
「茜ちゃん、ゴメンね。早くこの術を使って、アイツと別れなきゃいけないの。飛行機の時間もあるしね」
リコはアカへと笑いかけながらもそそくさと帰り支度を始め、
「では、雅様、茜ちゃん、ありがとうございました!雅様、私の連絡先は茜ちゃんと交換していますので、何かあったら何時でもお声掛けください!この御恩に、必ず報いてみせます!」
「そんなことは、まずあんた自身の問題を片付けてから言うんだね。ま、達者でね」
「リコさん、頑張って!」
「はいっ!茜ちゃん、恋バナはまた今度、ゆっくりとね」
リコは2人にそう返して、生き生きとした顔で雅宅を出るのであった。
「さぁてアカ、あんたは今の一戦を振り返りながら、もう少しあたしと修行だよ」
「はいっ!!」
アカの元気な声とともに、2人は再び修行へと向かうのであった。
風魔リコが、雑賀雅より契約を許された術の名は、『非恋の術』。雅が、少しだけショウにときめいてしまった際に作った術である(第131話参照)。
自身の思惑と違う恋を防ぐことのできるこの術、全国のダメ男に恋する一部の女性から圧倒的な支持を受け、一時期契約希望が殺到していた。
そこで雅は、その希望者一人ひとりとじっくりと向き合い、希望者が本当に術との契約を必要としているのかを見極めていった。
そして契約の必要性を認めた者には、茜との一戦を契約の条件としたのである。
特に茜に勝つ必要はなく、これはあくまでも茜の修行のためなのだが。
こうして茜は、時々全国の現役忍者と拳を交える機会を得ることとなり、その実力はメキメキと上達していくのであった。
更には、その相手全てと連絡先を交換していた茜は、全国各地に恋バナ仲間を作ることとなり、そのネットワークはどの忍者よりも強大なものとなっていくのであった。
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