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一息ついて
第255話:それぞれの取り組み
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「なぁ、お前、誰が好きな人いないのかよ?」
「はぁ?急に何言い出すんだよ!?」
「じゃぁ、お前は?」
「い、いるわけないだろっ!」
「ねぇ、君は誰か好きな人いないの?」
「えっ、ちょ、ごめんなさいっ!」
「・・・・・ツネ、手当り次第だね」
聡太がボソリと呟いた。
その聡太の視線の先にあるのは、男女お構いなしに好きな人を聞いて回る、恒久の姿であった。
突然好きな人を聞かれて素直に答える者などいるはずもなく、恒久は聞く者全てに不審な目を向けられながら軽くあしらわれていた。
むしろ、最後の女子にいたっては、変な勘違いをされた挙げ句、思いっきりふられる始末である。
「あの作戦は、無しだな」
重清も、聡太の言葉に同意しながら頷いた。
そんな2人は、互いにため息をつきながらも頷き合い、自身の教室へと入り、目的の人物の元へと訪れた。
「そろそろ来るはずだと思っていましたぞ」
彼は、そう言って重清達を見て不敵に笑った。
「「ちょ、長宗我部氏・・・」」
重清と聡太は、目の前の人物、長宗我部太郎左衛門を見つめていた。
「そろそろ来ると思っていたって、どういうこと?」
聡太は、長宗我部を見つめて言った。
「何故だが君たち社会科研究部は、付き合いそうな人達を探しているご様子。であれば君たちが僕を頼ってきても、さほど不思議ではござらんよ」
「さ、さすが長曾我部氏・・・」
にやりと笑う長曾我部に、聡太は納得したような声をあげていた。
(え、普通に受け入れちゃうの?社会科研究部の動きまで見てるとか、もはや長曾我部氏こそ忍者じゃん!!)
長曾我部に尊敬の眼差しすら向け始めている聡太を見て、重清はそう思いながら長曾我部を見据えていた。
重清のそんな目を受けながらもそれを意に介さず、長曾我部は口を開いた。
「それで、お2人は拙者に、付き合いそうな人の情報を聞きに来たのですな??」
長曾我部の言葉に、2人は黙ってうなずいた。
「確かに、そう言った情報もなくはないのですが・・・お2人はその情報の対価に、何を差し出してくださるのですかな?」
「「えっ?」」
長曾我部の言葉に、重清を聡太は声を揃えた。
「まさか、情報をただで貰おうなどとお考えではないでしょうな?さすがに、それは少し都合がよすぎというものでは??」
呆れたように、長曾我部は首を振っていた。
「い、いくら必要なの?」
重清が、恐る恐る尋ねると、
「いやいや、お金などいりませぬ。情報には情報を。それが拙者の主義ですので」
長曾我部はそう言って笑っていた。
「じょ、情報・・・」
「そう、情報。例えば、風間氏の好きな人とか、鈴木氏と美影たんのその後、とか。あぁ、鈴木氏の場合、田中先生の娘さんとのその後も、興味がありますなぁ」
長宗我部は、そう言って意味深に笑っていた。
その笑みを見た重清は、恐れおののいた。
(長宗我部氏、一体どこまで知っているんだ)
と。
「わ、わかった」
重清は、長宗我部に頷き返して、口を開くのだった。
重清達が長宗我部と話している同時刻。
1年2組の教室では、茜が窓の外に目を向けて、1人黄昏れながらため息をついていた。
「茜、ため息なんてついちゃって、どうしたの?」
茜にそう声をかけてきたのは、親友の相羽市花であった。
「あぁ、市花」
茜は気のない返事で親友を迎えた。
「どうせまた、恋の悩みなんでしょー」
「違うわよ。わたしだって、色々とあるのよ」
ブスッとした顔を返した茜に対して、市花は笑みを返した。
「そんな顔しちゃ、せっかく可愛いのが台無しじゃない。私が相談乗ってあげるよ?」
「あぁ、うん。市花はさぁ、長宗我部氏と・・・」
「えっ、ちょ、茜の悩みって、長宗我部君の事なの!?」
「あ、いや・・・安心して。市花と長宗我部氏の邪魔なんて、しないから」
「長宗我部君ね!」
「あー、はいはい」
市花へ雑にそう返した茜であったが、その心中は穏やかではなかった。
(わたし今、何を聞こうとしていたの?市花の恋をノリさんに報告なんて、できるわけないじゃない!
はぁ~、一瞬でもそんな事考えるなんて。
わたし、最低だわ・・・)
茜は1人、自己嫌悪に陥っていた。
「どうしたのよ、急に黙り込んじゃって。はっ!まさか茜、本当に長宗我部君のことを・・・」
「あー、ないない!それは絶対にないから安心しなさいって。いつも言ってるでしょ?わたしは、年上がタイプなのよ」
「それはそうだけど・・・茜可愛いから、絶対にライバルになんかなりたくないのよ」
「市花だって可愛いじゃん。わたしの次くらいに」
そう、フォローになっていないフォローを返す茜に、市花は笑みを浮かべた。
「ふふふ。やっと茜らしくなってきたわね」
「もう。市花の中で、私がどんなキャラになってるのか、一度じっくり聞かなきゃいけないみたいね」
親友の言葉に、茜も笑顔でそう返した。
「少しは、元気出たみたいね」
「えぇ、市花のお陰よ」
そう言った茜は、市花をじっと見つめた。
「市花の恋の邪魔なんて、絶対にさせないからね」
そう言う茜に、市花は首を傾げながらも、
「え?うん。ありがとう」
そう、顔を赤らめて返すのであった。
「はぁ?急に何言い出すんだよ!?」
「じゃぁ、お前は?」
「い、いるわけないだろっ!」
「ねぇ、君は誰か好きな人いないの?」
「えっ、ちょ、ごめんなさいっ!」
「・・・・・ツネ、手当り次第だね」
聡太がボソリと呟いた。
その聡太の視線の先にあるのは、男女お構いなしに好きな人を聞いて回る、恒久の姿であった。
突然好きな人を聞かれて素直に答える者などいるはずもなく、恒久は聞く者全てに不審な目を向けられながら軽くあしらわれていた。
むしろ、最後の女子にいたっては、変な勘違いをされた挙げ句、思いっきりふられる始末である。
「あの作戦は、無しだな」
重清も、聡太の言葉に同意しながら頷いた。
そんな2人は、互いにため息をつきながらも頷き合い、自身の教室へと入り、目的の人物の元へと訪れた。
「そろそろ来るはずだと思っていましたぞ」
彼は、そう言って重清達を見て不敵に笑った。
「「ちょ、長宗我部氏・・・」」
重清と聡太は、目の前の人物、長宗我部太郎左衛門を見つめていた。
「そろそろ来ると思っていたって、どういうこと?」
聡太は、長宗我部を見つめて言った。
「何故だが君たち社会科研究部は、付き合いそうな人達を探しているご様子。であれば君たちが僕を頼ってきても、さほど不思議ではござらんよ」
「さ、さすが長曾我部氏・・・」
にやりと笑う長曾我部に、聡太は納得したような声をあげていた。
(え、普通に受け入れちゃうの?社会科研究部の動きまで見てるとか、もはや長曾我部氏こそ忍者じゃん!!)
長曾我部に尊敬の眼差しすら向け始めている聡太を見て、重清はそう思いながら長曾我部を見据えていた。
重清のそんな目を受けながらもそれを意に介さず、長曾我部は口を開いた。
「それで、お2人は拙者に、付き合いそうな人の情報を聞きに来たのですな??」
長曾我部の言葉に、2人は黙ってうなずいた。
「確かに、そう言った情報もなくはないのですが・・・お2人はその情報の対価に、何を差し出してくださるのですかな?」
「「えっ?」」
長曾我部の言葉に、重清を聡太は声を揃えた。
「まさか、情報をただで貰おうなどとお考えではないでしょうな?さすがに、それは少し都合がよすぎというものでは??」
呆れたように、長曾我部は首を振っていた。
「い、いくら必要なの?」
重清が、恐る恐る尋ねると、
「いやいや、お金などいりませぬ。情報には情報を。それが拙者の主義ですので」
長曾我部はそう言って笑っていた。
「じょ、情報・・・」
「そう、情報。例えば、風間氏の好きな人とか、鈴木氏と美影たんのその後、とか。あぁ、鈴木氏の場合、田中先生の娘さんとのその後も、興味がありますなぁ」
長宗我部は、そう言って意味深に笑っていた。
その笑みを見た重清は、恐れおののいた。
(長宗我部氏、一体どこまで知っているんだ)
と。
「わ、わかった」
重清は、長宗我部に頷き返して、口を開くのだった。
重清達が長宗我部と話している同時刻。
1年2組の教室では、茜が窓の外に目を向けて、1人黄昏れながらため息をついていた。
「茜、ため息なんてついちゃって、どうしたの?」
茜にそう声をかけてきたのは、親友の相羽市花であった。
「あぁ、市花」
茜は気のない返事で親友を迎えた。
「どうせまた、恋の悩みなんでしょー」
「違うわよ。わたしだって、色々とあるのよ」
ブスッとした顔を返した茜に対して、市花は笑みを返した。
「そんな顔しちゃ、せっかく可愛いのが台無しじゃない。私が相談乗ってあげるよ?」
「あぁ、うん。市花はさぁ、長宗我部氏と・・・」
「えっ、ちょ、茜の悩みって、長宗我部君の事なの!?」
「あ、いや・・・安心して。市花と長宗我部氏の邪魔なんて、しないから」
「長宗我部君ね!」
「あー、はいはい」
市花へ雑にそう返した茜であったが、その心中は穏やかではなかった。
(わたし今、何を聞こうとしていたの?市花の恋をノリさんに報告なんて、できるわけないじゃない!
はぁ~、一瞬でもそんな事考えるなんて。
わたし、最低だわ・・・)
茜は1人、自己嫌悪に陥っていた。
「どうしたのよ、急に黙り込んじゃって。はっ!まさか茜、本当に長宗我部君のことを・・・」
「あー、ないない!それは絶対にないから安心しなさいって。いつも言ってるでしょ?わたしは、年上がタイプなのよ」
「それはそうだけど・・・茜可愛いから、絶対にライバルになんかなりたくないのよ」
「市花だって可愛いじゃん。わたしの次くらいに」
そう、フォローになっていないフォローを返す茜に、市花は笑みを浮かべた。
「ふふふ。やっと茜らしくなってきたわね」
「もう。市花の中で、私がどんなキャラになってるのか、一度じっくり聞かなきゃいけないみたいね」
親友の言葉に、茜も笑顔でそう返した。
「少しは、元気出たみたいね」
「えぇ、市花のお陰よ」
そう言った茜は、市花をじっと見つめた。
「市花の恋の邪魔なんて、絶対にさせないからね」
そう言う茜に、市花は首を傾げながらも、
「え?うん。ありがとう」
そう、顔を赤らめて返すのであった。
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