おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
292 / 519
一息ついて

第255話:それぞれの取り組み

しおりを挟む
「なぁ、お前、誰が好きな人いないのかよ?」
「はぁ?急に何言い出すんだよ!?」

「じゃぁ、お前は?」
「い、いるわけないだろっ!」

「ねぇ、君は誰か好きな人いないの?」
「えっ、ちょ、ごめんなさいっ!」


「・・・・・ツネ、手当り次第だね」
聡太がボソリと呟いた。

その聡太の視線の先にあるのは、男女お構いなしに好きな人を聞いて回る、恒久の姿であった。

突然好きな人を聞かれて素直に答える者などいるはずもなく、恒久は聞く者全てに不審な目を向けられながら軽くあしらわれていた。

むしろ、最後の女子にいたっては、変な勘違いをされた挙げ句、思いっきりふられる始末である。

「あの作戦は、無しだな」
重清も、聡太の言葉に同意しながら頷いた。

そんな2人は、互いにため息をつきながらも頷き合い、自身の教室へと入り、目的の人物の元へと訪れた。

「そろそろ来るはずだと思っていましたぞ」
彼は、そう言って重清達を見て不敵に笑った。

「「ちょ、長宗我部氏・・・」」
重清と聡太は、目の前の人物、長宗我部太郎左衛門を見つめていた。

「そろそろ来ると思っていたって、どういうこと?」
聡太は、長宗我部を見つめて言った。

「何故だが君たち社会科研究部は、付き合いそうな人達を探しているご様子。であれば君たちが僕を頼ってきても、さほど不思議ではござらんよ」
「さ、さすが長曾我部氏・・・」
にやりと笑う長曾我部に、聡太は納得したような声をあげていた。

(え、普通に受け入れちゃうの?社会科研究部の動きまで見てるとか、もはや長曾我部氏こそ忍者じゃん!!)
長曾我部に尊敬の眼差しすら向け始めている聡太を見て、重清はそう思いながら長曾我部を見据えていた。

重清のそんな目を受けながらもそれを意に介さず、長曾我部は口を開いた。

「それで、お2人は拙者に、付き合いそうな人の情報を聞きに来たのですな??」

長曾我部の言葉に、2人は黙ってうなずいた。

「確かに、そう言った情報もなくはないのですが・・・お2人はその情報の対価に、何を差し出してくださるのですかな?」

「「えっ?」」

長曾我部の言葉に、重清を聡太は声を揃えた。

「まさか、情報をただで貰おうなどとお考えではないでしょうな?さすがに、それは少し都合がよすぎというものでは??」
呆れたように、長曾我部は首を振っていた。

「い、いくら必要なの?」
重清が、恐る恐る尋ねると、

「いやいや、お金などいりませぬ。情報には情報を。それが拙者の主義ですので」
長曾我部はそう言って笑っていた。

「じょ、情報・・・」
「そう、情報。例えば、風間氏の好きな人とか、鈴木氏と美影たんのその後、とか。あぁ、鈴木氏の場合、田中先生の娘さんとのその後も、興味がありますなぁ」
長宗我部は、そう言って意味深に笑っていた。

その笑みを見た重清は、恐れおののいた。

(長宗我部氏、一体どこまで知っているんだ)

と。

「わ、わかった」

重清は、長宗我部に頷き返して、口を開くのだった。


重清達が長宗我部と話している同時刻。

1年2組の教室では、茜が窓の外に目を向けて、1人黄昏れながらため息をついていた。

「茜、ため息なんてついちゃって、どうしたの?」
茜にそう声をかけてきたのは、親友の相羽市花であった。

「あぁ、市花」
茜は気のない返事で親友を迎えた。

「どうせまた、恋の悩みなんでしょー」
「違うわよ。わたしだって、色々とあるのよ」
ブスッとした顔を返した茜に対して、市花は笑みを返した。

「そんな顔しちゃ、せっかく可愛いのが台無しじゃない。私が相談乗ってあげるよ?」
「あぁ、うん。市花はさぁ、長宗我部氏と・・・」

「えっ、ちょ、茜の悩みって、長宗我部君の事なの!?」
「あ、いや・・・安心して。市花と長宗我部氏の邪魔なんて、しないから」

「長宗我部ね!」
「あー、はいはい」

市花へ雑にそう返した茜であったが、その心中は穏やかではなかった。

(わたし今、何を聞こうとしていたの?市花の恋をノリさんに報告なんて、できるわけないじゃない!
はぁ~、一瞬でもそんな事考えるなんて。
わたし、最低だわ・・・)

茜は1人、自己嫌悪に陥っていた。

「どうしたのよ、急に黙り込んじゃって。はっ!まさか茜、本当に長宗我部君のことを・・・」
「あー、ないない!それは絶対にないから安心しなさいって。いつも言ってるでしょ?わたしは、年上がタイプなのよ」

「それはそうだけど・・・茜可愛いから、絶対にライバルになんかなりたくないのよ」
「市花だって可愛いじゃん。わたしの次くらいに」
そう、フォローになっていないフォローを返す茜に、市花は笑みを浮かべた。

「ふふふ。やっと茜らしくなってきたわね」
「もう。市花の中で、私がどんなキャラになってるのか、一度じっくり聞かなきゃいけないみたいね」
親友の言葉に、茜も笑顔でそう返した。

「少しは、元気出たみたいね」
「えぇ、市花のお陰よ」
そう言った茜は、市花をじっと見つめた。

「市花の恋の邪魔なんて、絶対にさせないからね」
そう言う茜に、市花は首を傾げながらも、

「え?うん。ありがとう」
そう、顔を赤らめて返すのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...