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雑賀家お家騒動
第244話:そして数日後
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「いや~、なんかもう雑賀本家、嵐みたいだったねー」
美影が琴音から襲われた2日後、部活帰りに寄った『喫茶 中央公園』で茜がしみじみと言った。
「あははは。確かにね」
聡太が、そんな茜の言葉に乾いた笑いを返した。
「・・・・・・」
そんな中、重清は1人考え事をしているかのように押し黙っていた。
「なんだよシゲ。お前、あの子が居なくなったから寂しいのか?」
そんな重清に、恒久がニヤニヤしながら声をかける。
「いや、そんなんじゃないけどさぁ・・・なんかおれ、美影にすっごく悪いことしたみたいな気がして・・・」
「あんたねぇ。そういうの、良くないよ」
落ち込んだ声の重清に、茜が厳しい口調で言った。
「どうせあんたは、フッたことであの子を傷つけたと思ってるんでしょ?」
「いや、まぁ、そうだけど・・・」
「そんなこといちいち気にしてたら、告白してくる人みんなと付き合わなきゃいけないじゃないの。それにね、別にあんたは美影ちゃんに、別に悪いことなんてしてないじゃないの。それなのにフッたこと気にするなんて、あの子に失礼よ」
そう言って茜は、手な持った紅茶をグイッと飲んだ。
その飲みっぷりは、それはそれは見事なものであったという。
「ぷはぁ~~!」
紅茶をひと飲みした茜はそう言って口を拭い、重清を見てニヤリと笑った。
「それにね。男なんかと違って女は切り替えが早いのよ。直ぐに、新しい恋を見つけるわよ」
「なははは。確かに、男は未練タラタラだなぁ」
重清は、そう言って琴音の顔を思い出していた。
「ふむ。茜ちゃんも言うように、美影もあぁ言っておったし、お主が気にすることはないさ」
そんな重清のテーブルの上で、1匹の亀が水っぽい何かを舐めながら、小声で言った。
「・・・・・あぁ、そうだよな」
重清は、その亀の言葉にそう呟いていた。
あのあと雑賀本家はどうなったのか。
そしてこの亀は一体なんなのか。
それを説明するためにも、1度時間を戻したい。
琴音を含めた一団が雅から逃げたあと、重清達一行は雅宅へと戻っていた。
美影は、急に記憶が戻ったショックから再び気を失っており、雅の診察でも特段美影に問題はないと判断され、さらに雅から一旦の終息宣言がなされたことで、一同はその日、そのまま解散となった。
翌日、休みであったその日の早朝、美影が1人、重清宅へとやって来た。
「ごめんなさいっ!!」
美影は、開口一番そう言って、まだ起きたばかりで眠そうな顔の重清へと頭を下げた。
「記憶を無くしていたとはいえ、私また重清に酷い事を・・・重清は、そんな私の為に1人で私を襲った犯人の元にまで行ってくれたというのに・・・・」
そう言って涙すら浮かべる美影には、もはや重清が初めて会った時のような分家を見下すような感情は、一切含まれてはいなかった。
「重清。あなたが犯人と会った時のこと、詳しく教えて貰えないかしら?」
そんな美影は、強い眼差しで重清を見つめていた。
「・・・・・・・・」
美少女に見つめられてしばし惚けてしまった重清は、頭を振って邪念を振り払い、美影へと頷いて、話し始めた。
あの日、何があったのか。
それを、重清の琴音に対する想いまで包み隠さず、重清は美影へと話した。
「・・・・・・そう」
重清の話を黙って聞いていた美影は、重清が話し終えるとポツリとそう、声を漏らしていた。
「色々と気になることはあるけど・・・・まず確認させて。重清、あなたはまだ、その琴音って子のことが好きなの?」
「・・・・・えっ、まずそこ?」
拍子抜けしたように、重清はつっこんだ。
「当たり前よ重清。恋する乙女にとって、それ以上の重要事項はないわよ」
隣で聞いていた智乃が、朝ごはんを頬張りながら言った。
「乙女、ハンパねーな」
玲央が、ミルクをグビッと飲んで、呆れていた。
「まぁ、そういうことよ。それで重清、どうなの?」
智乃と玲央の言葉に笑みを返した美影は、そう言って重清をじっと見つめた。
「・・・・・正直、よく分からない」
重清は、それだけ答えて黙ってしまった。
美影は、そんな重清に続きを促すように頷き返すだけで、口を開こうとはしなかった。
「おれさ、確かに前は、琴音ちゃんが好きだったよ。今も、嫌いにはなってない。美影にあんなことした人にそう思ってて良いのかわかんないけど・・・・」
「そのことなら、気にしないで」
言葉を濁す重清に、美影は言った。
「確かに負けたことは悔しいけど、でも、その原因が重清を巡ってのことだったら、私は気にしない。今度は負けないとは思うけど、琴音って子の事を、恨んだりはしていないわ。だから重清、本当の事を言って」
美影の言葉に、重清は強く頷いて、口を開いた。
美影が琴音から襲われた2日後、部活帰りに寄った『喫茶 中央公園』で茜がしみじみと言った。
「あははは。確かにね」
聡太が、そんな茜の言葉に乾いた笑いを返した。
「・・・・・・」
そんな中、重清は1人考え事をしているかのように押し黙っていた。
「なんだよシゲ。お前、あの子が居なくなったから寂しいのか?」
そんな重清に、恒久がニヤニヤしながら声をかける。
「いや、そんなんじゃないけどさぁ・・・なんかおれ、美影にすっごく悪いことしたみたいな気がして・・・」
「あんたねぇ。そういうの、良くないよ」
落ち込んだ声の重清に、茜が厳しい口調で言った。
「どうせあんたは、フッたことであの子を傷つけたと思ってるんでしょ?」
「いや、まぁ、そうだけど・・・」
「そんなこといちいち気にしてたら、告白してくる人みんなと付き合わなきゃいけないじゃないの。それにね、別にあんたは美影ちゃんに、別に悪いことなんてしてないじゃないの。それなのにフッたこと気にするなんて、あの子に失礼よ」
そう言って茜は、手な持った紅茶をグイッと飲んだ。
その飲みっぷりは、それはそれは見事なものであったという。
「ぷはぁ~~!」
紅茶をひと飲みした茜はそう言って口を拭い、重清を見てニヤリと笑った。
「それにね。男なんかと違って女は切り替えが早いのよ。直ぐに、新しい恋を見つけるわよ」
「なははは。確かに、男は未練タラタラだなぁ」
重清は、そう言って琴音の顔を思い出していた。
「ふむ。茜ちゃんも言うように、美影もあぁ言っておったし、お主が気にすることはないさ」
そんな重清のテーブルの上で、1匹の亀が水っぽい何かを舐めながら、小声で言った。
「・・・・・あぁ、そうだよな」
重清は、その亀の言葉にそう呟いていた。
あのあと雑賀本家はどうなったのか。
そしてこの亀は一体なんなのか。
それを説明するためにも、1度時間を戻したい。
琴音を含めた一団が雅から逃げたあと、重清達一行は雅宅へと戻っていた。
美影は、急に記憶が戻ったショックから再び気を失っており、雅の診察でも特段美影に問題はないと判断され、さらに雅から一旦の終息宣言がなされたことで、一同はその日、そのまま解散となった。
翌日、休みであったその日の早朝、美影が1人、重清宅へとやって来た。
「ごめんなさいっ!!」
美影は、開口一番そう言って、まだ起きたばかりで眠そうな顔の重清へと頭を下げた。
「記憶を無くしていたとはいえ、私また重清に酷い事を・・・重清は、そんな私の為に1人で私を襲った犯人の元にまで行ってくれたというのに・・・・」
そう言って涙すら浮かべる美影には、もはや重清が初めて会った時のような分家を見下すような感情は、一切含まれてはいなかった。
「重清。あなたが犯人と会った時のこと、詳しく教えて貰えないかしら?」
そんな美影は、強い眼差しで重清を見つめていた。
「・・・・・・・・」
美少女に見つめられてしばし惚けてしまった重清は、頭を振って邪念を振り払い、美影へと頷いて、話し始めた。
あの日、何があったのか。
それを、重清の琴音に対する想いまで包み隠さず、重清は美影へと話した。
「・・・・・・そう」
重清の話を黙って聞いていた美影は、重清が話し終えるとポツリとそう、声を漏らしていた。
「色々と気になることはあるけど・・・・まず確認させて。重清、あなたはまだ、その琴音って子のことが好きなの?」
「・・・・・えっ、まずそこ?」
拍子抜けしたように、重清はつっこんだ。
「当たり前よ重清。恋する乙女にとって、それ以上の重要事項はないわよ」
隣で聞いていた智乃が、朝ごはんを頬張りながら言った。
「乙女、ハンパねーな」
玲央が、ミルクをグビッと飲んで、呆れていた。
「まぁ、そういうことよ。それで重清、どうなの?」
智乃と玲央の言葉に笑みを返した美影は、そう言って重清をじっと見つめた。
「・・・・・正直、よく分からない」
重清は、それだけ答えて黙ってしまった。
美影は、そんな重清に続きを促すように頷き返すだけで、口を開こうとはしなかった。
「おれさ、確かに前は、琴音ちゃんが好きだったよ。今も、嫌いにはなってない。美影にあんなことした人にそう思ってて良いのかわかんないけど・・・・」
「そのことなら、気にしないで」
言葉を濁す重清に、美影は言った。
「確かに負けたことは悔しいけど、でも、その原因が重清を巡ってのことだったら、私は気にしない。今度は負けないとは思うけど、琴音って子の事を、恨んだりはしていないわ。だから重清、本当の事を言って」
美影の言葉に、重清は強く頷いて、口を開いた。
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