おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
273 / 519
雑賀家お家騒動

第239話:駆け付けた友

しおりを挟む
「シゲ、大丈夫!?」
聡太が、重清へと駆け寄ってきた。

「あ、いや、うん。大丈夫なんだけど・・・2人とも、どうしたの?」
「あ?なんだよその『お前らじゃない』ってツラは!せっかくソウが、変な忍力感知したから駆けつけたっていうのによ!」
恒久が、的確に2人の状況を説明した。

「あれ?あの人って、優大君をイジメてた・・・それにキャンプの時に襲ってきた人もいるし・・・えっ!?あれ田中さん!?」
聡太は聡太で、状況を瞬時に見渡して狼狽えていた。

「あー、うん。とりあえず説明が面倒くさいからそれはあとで。なんかおれ、あの近藤って人と戦う流れになっちゃってるんだけど・・・」
重清は、ため息交じりに友人達に告げた。

「シゲ、その役俺に代わってくれ!」
その時、恒久が見事な挙手と共に前へと進み出た。

「うぉっ、どうしたのさ急に」
「そうだね。来て早々ぼくも状況がよく分からないのに、よくそんなに積極的に出られるね」
重清と聡太が、呆れ混じりに恒久を見ていると、

「最近、俺の出番が無さ過ぎるっ!!」
恒久は切実な悩みを叫びだした。

確かに最近、雑賀本家絡みの出来事が多く、上を目指すと豪語する恒久は本家との諍いを避けるために非常に出番が少なくなっていたのである。

決して、忘れられていたわけではないのである。

「「あー、じゃぁ、お願いします」」
そんな恒久の悲痛な叫びに、重清と聡太はただ、そう返すのであった。

「いいのかよ、そんな理由で・・・」
プレッソだけが、ボソリとつっこむのであった。

「んだよ、雑賀のクソガキじゃねーのかよ」
対する近藤は、やる気のない声でそう答えながら、体を伸ばし始めていた。

どうやら、やる気にはなっているようである。

「ツネ。その人、ショウさんと同じくらいの強さらしいから気をつけてね!」
聡太が恒久へそう声をかけていると、

「はっ。あんな奴と同じくらいだとは、俺も見くびられたもんだな」
近藤が、聡太の言葉を小馬鹿にしたように笑っていた。

「・・・ウチの部長を馬鹿にしないでもらえませんかね?あんな尊敬できるモテ男、この世に他にいないんで。
俺もショウさんからあんたの事は聞いてるけど、あんたが部長じゃなくてよかったって、今心底思ったよ!!」
恒久が、カッコいいような情けないような事を言いながら、近藤に対して構えた。

そう、恒久にとって、モテ男は敵なのである。

後日、琴音が重清に告白したと聞いた恒久は、例のごとく
『のぉ~~~~~!』
と叫びながら重清への恨みを打ち消すべく、自ら『真(リアル)よっちゃんの刑』へと身を投じたとかなんとか。

そんなことはさておき。

「あんなグズが、よくもまぁこれだけ後輩から慕われたもんだ。まぁいい!アイツとの格の違いってやつを、可愛い後輩に叩き込んでやるよ!!」
そう言った近藤の姿が、ふっとその場から消えた。

「ぐぉっ!!」

その直後、恒久は声を上げながら吹き飛んでいた。
瞬時に恒久の元へ移動した近藤が、殴り飛ばした恒久を見つめてニヤニヤと笑っていた。

「あっ、伊賀の子ぉ~、気をつけてねぇ~。そいつ、ホントに強いからぁ~」
ユキが、琴音を抱えたまま着地した恒久へと語りかけた。

「ちっ。どっちの味方だよ」
近藤が。そんなユキへと忌々しそうな目を向ける。

「いやぁ~、師匠として、弟子への激励的なぁ~?」
「はいはい、そうですかっ!!」
それだけ答えた近藤は、再び恒久へ向かって見えないほどのスピードで迫った。

(くっ、雷速らいそくの術っ!!)
近藤の姿が見えなくなる直前、恒久は雷速の術を使ってその場を離れた。

「いやいや、それで術使ってんのかよ」
「なっ!?」
目の前から聞こえてくる近藤の声に、恒久は声を漏らしながらも伊賀家固有忍術『幻刀げんとうの術』を発動させて応戦しようとする。

「遅ぇよっ!!」
近藤は、恒久が
出した幻刀ごと、恒久の腹を殴りつけた。

「ぐぁっ!!」
恒久はそのまま再び吹き飛ばされていく。
しかし近藤は、追撃せずその場で恒久を殴った手へと目を落としていた。

「ちっ。すり抜けたと思ったら、刀に切られてねーのに切られたような感覚だ。面倒な術持ってんじゃねーか。けどな・・・」
そう言ってニヤリと笑った近藤は、心の力を腕に纏っていく。

「そりゃ心の力で出来てんだろ。だったら・・・」
そう言った近藤は、そのまま恒久へと迫った。

「クッソがぁ!!」
そう叫びながら恒久は、瞬時に自身へと迫る近藤に幻刀を振り下ろした。

「なっ!?」
しかし幻刀は、近藤の拳に真っ二つにへし折られた。

「いやいや、ボーッとしてんなよっ!」
幻刀を折られたことで動揺していた恒久は、そのまま近藤の回し蹴りを受け、後方の木へと叩きつけられるのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?

ラララキヲ
ファンタジー
 姉と下に2歳離れた妹が居る侯爵家。  両親は可愛く生まれた妹だけを愛し、可愛い妹の為に何でもした。  妹が嫌がることを排除し、妹の好きなものだけを周りに置いた。  その為に『お城のような別邸』を作り、妹はその中でお姫様となった。  姉はそのお城には入れない。  本邸で使用人たちに育てられた姉は『次期侯爵家当主』として恥ずかしくないように育った。  しかしそれをお城の窓から妹は見ていて不満を抱く。  妹は騒いだ。 「お姉さまズルい!!」  そう言って姉の着ていたドレスや宝石を奪う。  しかし…………  末娘のお願いがこのままでは叶えられないと気付いた母親はやっと重い腰を上げた。愛する末娘の為に母親は無い頭を振り絞って素晴らしい方法を見つけた。  それは『悪魔召喚』  悪魔に願い、  妹は『姉の全てを手に入れる』……── ※作中は[姉視点]です。 ※一話が短くブツブツ進みます ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

処理中です...