おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
272 / 519
雑賀家お家騒動

第238話:にこやか男と間延び男

しおりを挟む
「えっ、おれ!?」
琴音に見つめられた重清は、焦った声をあげた。

「お、おい!琴音っ!!」

琴音の傍らで琴音を呼ぶ近藤の声を無視して、琴音は続けた。

「そうよ重清君っ!あなたさえいれば、必ずこの世から忍者を消滅させることができるはずなのよっ!!そう、ドウさんも言ってたもの!!
あなたは、必ず始祖の―――」

「はぁ~。まったく、何故私の弟子はこうも皆、直情的なのか・・・」
「弟子を見る目がないんじゃないのかなぁ~」

琴音の言葉を遮るように、そんな声とともに、2人の男が突然琴音の元へと現れた。

「っ!!」
現れるのと同時に、1人の男が琴音の頭へと手をかざし、そのまま琴音は糸の切れた操り人形のようにその場へと倒れ込んだ。

「こ、琴音ちゃん!?」
「おや、この期に及んでまだこの子を気にかけますか・・・」

もう一方の男が、琴音を心配する重清ににこやかに言った。

「あ、あんた達は!!」
その2人を見た重清は、声を上げた。

「して重清、こ奴らはちゃんと覚えておるのか?」
「オイラは、覚えてねー方に賭けるぞ」
現れた男達に警戒の色を強くするゴロウと、今なおのんびりしているプレッソが、重清へと声をかけた。

「いや、まぁ、名前は覚えてないけどさ。キャンプの時に襲ってきた人達だよ。頭領のじいちゃんとこの」
重清は、頬をかきながらゴロウへと答えた。

「まぁ、あの時はちゃんと名乗っていませんでしたからね」
にこやかに笑う男は、そう言って近藤へと目を向けた。

「ユキ、あなたの弟子も、対して役には立っていないようですよ?」
「な、何を―――」
男の言葉に、近藤が言い返そうとしていると、

「コウさぁ~、コトといるときは君がしっかりしないとダメじゃないかぁ~。この子、危うくとんでもない事言いそうになってたよぉ~。お陰で大事なストック1つなくしちゃったじゃないかぁ~」
髪を後ろに一括した男が、いつの間にか近藤の後ろへと移動し、間延びした声で言った。

「ちっ。悪かったよ」
一方近藤は、間延びした声に悪びれもせずそう答えていた。

「どうやら、弟子の見る目がないのはユキも変わらないようですね」
そんな近藤の様子に、にこやかな男が琴音を担ぎながらそう言ってユキと呼ばれた男へと笑いかけた。

「別に、コイツは最初からこうだってわかってたしぃ~」
ユキと呼ばれた男は、不貞腐れた表情でにこやかな男へと返していた。

「さてと。それはさておき、真っ直ぐ娘も確保しましたし、我々はこのへんで失礼しますか」
琴音を肩に担いだにこやか男は、そう言って重清達へと笑みを向ける。

「お主ら、どうせならばもう少し話さんか?」
ゴロウが、男へと言う。

「いえいえ、もうすぐそちらの援軍が到着するでしょう?流石に我々では、雑賀雅の相手は務まりませんので」
「ちっ、バレておったか。しかしお主、その言葉だと儂の事は眼中にないようじゃが・・・・」
そう言ったゴロウはその場から姿を消し、琴音を担ぐ男の背後へと現れた。

「儂をナメてはおらんか?」
言いながらゴロウが猫パンチならぬ犬パンチを繰り出すも、男は笑みを浮かべたままふっとその場から消え去った。

「流石、雑賀本家の具現獣。こんなに力強い体の力は、親父殿以外に感じたことがありませんよ」
そんな声が、近藤のいる方から聞こえてきた。

そこには、近藤とユキと呼ばれた男、そして、琴音を担ぐ男が揃っていた。

(なんじゃ今のは。あのユキとか言う男のように高速で動いたわけでもないようじゃ。これは面倒な)
ゴロウは、笑みを浮かべる男を苦々しく睨んでいた。

「ユキ、コトを頼みます。まだ少し時間があるようですから、少しだけ遊ばせていただきます」
そう言った男は、ユキへと琴音を渡すと、ゴロウへと向いた。

「いくら高速であろうとも、一瞬の前には亀と同じですよ、ワンちゃん?」
男はそう言ってにこやかに笑うとともに、再びその場から消えた。

直後にゴロウの目の前へと現れた男は、そのままゴロウを蹴り飛ばした。

「くっ。硬いですね。やはり私の体の力では、あなたの防御を破るのは難しいようですね」
ゴロウを蹴り飛ばした男は、足の痛みに堪えながらも笑みを浮かべていた。

「ふむ。その割には余裕のようじゃな。少しは年寄りに優しくして欲しいもんじゃわい。少し、稽古をつけてやろうか」
男に蹴り飛ばされながらも地に着地したゴロウが、そう言って男へと高速で接近した。


「なんか、始まっちゃったな」
そんなゴロウと男の様子を見た重清は、ボソリと呟いた。

「はぁ~。さっさと帰ればいいのにぃ~。まぁ~、確かにもう少し時間はあるみたいだし、こっちも少し、遊ばせてもらおうかなぁ~。ってことでコウ。お前、雑賀重清とってみてぇ~」
「ちっ、俺かよ」

「だって僕ぅ~、ドウからコトを頼まれたしぃ~。それに僕、後方支援担当だからさぁ~。ほら、サービスするからぁ~」
そういってユキは、担いだ琴音のスカートをチラリと捲くりあげた。

「ぶふぉっ!!」
そんなユキからのサービスショットは、離れた重清にダメージを与えていた。

その時。

「シゲ!!待たせたな!!」
(鼻血が・・・じゃない!もう援軍が!!)

突然の声に重清が振り向くと、そこにいたのは聡太と恒久であった。

親友2人の姿に、重清は思った。

(違う、今はこの2人ではない!)

と。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...