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雑賀家お家騒動
第233話:重清、動く
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「・・・うん。もしかしたらだけどわたし、美影様を襲った犯人、見たかも」
茜がそう言うと、雑賀本家の面々が、茜へと詰め寄った。
「一体、誰が美影様をっ!?」
「こら、そんなに詰め寄ったら、あっちゃんが話せないだろう?」
雅が、雑賀本家の面々を窘めた。
辺りが落ち着いたのを見計らって、茜は再び口を開く。
茜の口から出てきたその名に、重清は先ほど揺れたスマホを握りしめていた。
そんな重清の様子を、茜は心配そうに見ていた。
「・・・まだ犯人だと決まったわけではないが、今はそれくらいしか、証拠はない、か・・・」
雅が、そう呟いて、一同は静かに頷いた。
やけに神妙な面持ちの重清を除いて。
そんな重清は、『そういえば!』とでも言うように手を叩き、
「あ、もしかしたら家に帰ったら何かわかるかも!」
静寂に包まれた中で誰にともなくそう言うと、チラリと美影に視線を送り、そのまま玄関へと走り出した。
ちなみに重清から視線を送られた美影は、ただ舌打ちを返すだけであった。
「・・・・・」
そんな美影の様子に苦笑いを浮かべながらも重清は、雅の家から飛び出した。
「シゲ!!」
茜と、何故かゴロウを抱えた隠が追いかけてきた。
「アカ、隠君・・・」
足を止めた重清は、2人に向き直る。
「シゲ、あんた家には帰らないんじゃないの?」
茜が、刺すような視線で重清を見ていた。
「・・・・・・」
重清が無言のまま突っ立っていると、
「さっき、あんたのスマホ、鳴ってたわよね。あれって、誰から!?」
茜はそう言って重清へと詰め寄った。
「・・・・・・」
それでも何も答えない重清の胸ぐらを掴んだ茜は、
「あんた!今の状況わかってんの!?」
重清に怒鳴り声を上げた。
「・・・・・わかってるよ」
重清は、絞り出すように茜へと答えた。
「だったら―――」
「わかってるよ!!」
茜の言葉を遮って、重清が叫んだ。
「おれは!『全てを守る』なんて言いながら、おれなんかを好きになってくれた美影すらも守ってあげられなかったんだ!だから少しでも、美影のために何かしたいんだ!!」
そう叫んだ重清は、急に肩を落として囁くように、
「それに、もしかしたら犯人、違うかもしれないし・・・」
そう、呟いた。
そんな重清の蚊の鳴くような声を聞いた茜は、深いため息をついて重清の頭に拳を振り下ろした。
「いってぇーー!」
「あぁもう!あんたまだあいつのこと信じてるの!?どんだけ馬鹿なのよ、まったく!!」
重清の胸ぐらから手を離した茜は、呆れ顔で重清を見つめていた。
「そんなの、仕方ないじゃん。っていうか茜、どんどんばあちゃんに似てきてるな」
痛む頭を抑えながら、重清は恨みがましそうに茜を見返していた。
「まぁ、それはお褒めの言葉として受け取っておくけど!」
((褒めたつもりはない!))
茜の言葉に、重清と、何故かプレッソがつっこんでいると、
「30分よ!30分だけ待ってあげるわ!」
茜は高らかに宣言した。
「チーノちゃんはここに置いて行きなさい!そして、何かあったら直ぐにチーノちゃんに連絡すること!いいわね!?」
「わ、わかった」
(りょーかいよ)
「うわっ、びっくりした!チーノ、聞いてたの!?」
突然聞こえてきたチーノの声に、重清が声を上げた。
(えぇ、バッチリ聞いていたわ。ちなみに、雅も聞いてるわよ。流石に声までは届けられないけど)
「うわぁ、マジか」
重清は、全てを見透かされていたことに頭を抱えていた。
(初めは私が付いていこうと思っていたけど、どうやらお節介な爺様がその役をやってくれるみたいよ)
「ふん。誰がお節介じゃ」
隠に抱えられたゴロウが、重清達にだけ聞こえるほど小さな声で言った。
(なんだよ爺さん、やっぱオイラ達みたいに、普通に喋れるんじゃねーか)
重清の頭に、プレッソの声が響いた。
「当たり前じゃ。儂は、今の雑賀家のバカ共と話すのが面倒だっただけじゃ。あそこでまともなのは、この隠と、母の日陰くらいなもんじゃ」
隠の腕から抜け出たゴロウが、小声で返した。
「っていうか、普通にプレッソの声が聞こえるんだな」
ゴロウの様子に、重清が不思議そうに言った。
本来、具現獣の声は具現者だけにしか聞こえず、プレッソやチーノの様に普段から他者と話しができる具現獣も、具現化されていない状態であれば具現者以外とは話すことができないのだ。
にも関わらずゴロウは、具現化されていないプレッソと当たり前の様に会話をしていた。
実際、その場にいた茜と隠から見たら、年老いた犬が独り言を言っているだけにしか見えないのであった。
普通に考えれば、それでも十分ぶっ飛んだ状況ではあるのだが。
「どれだけ長く生き永らえさせられたと思っておる。具現獣との会話など、儂にとっては造作も無いわ」
ゴロウは、鼻を鳴らして重清に答えた。
「年の功、ってやつだな。ま、それよりも、頼もしい護衛もついたし、おれ、行ってくる!」
重清は、そう言って茜と隠に目を向ける。
「えぇ。気をつけなさいよ。何かあったら直ぐに連絡すること!」
「・・・・なんか、ホントにばあちゃんと話してるみたいだ」
茜の言葉に、重清は苦笑いを浮かべた。
「あ、あの、気をつけてください!」
「おう!隠君、おれが言うのもおかしいけど・・・美影のこと、よろしくなっ!」
「は、はいっ!ゴロウ様も、どうかお気をつけて!」
「うむ」
ゴロウの返事を聞いた重清は、2人に頷いて走り出した。
自身を待つ、相手の元へ。
茜がそう言うと、雑賀本家の面々が、茜へと詰め寄った。
「一体、誰が美影様をっ!?」
「こら、そんなに詰め寄ったら、あっちゃんが話せないだろう?」
雅が、雑賀本家の面々を窘めた。
辺りが落ち着いたのを見計らって、茜は再び口を開く。
茜の口から出てきたその名に、重清は先ほど揺れたスマホを握りしめていた。
そんな重清の様子を、茜は心配そうに見ていた。
「・・・まだ犯人だと決まったわけではないが、今はそれくらいしか、証拠はない、か・・・」
雅が、そう呟いて、一同は静かに頷いた。
やけに神妙な面持ちの重清を除いて。
そんな重清は、『そういえば!』とでも言うように手を叩き、
「あ、もしかしたら家に帰ったら何かわかるかも!」
静寂に包まれた中で誰にともなくそう言うと、チラリと美影に視線を送り、そのまま玄関へと走り出した。
ちなみに重清から視線を送られた美影は、ただ舌打ちを返すだけであった。
「・・・・・」
そんな美影の様子に苦笑いを浮かべながらも重清は、雅の家から飛び出した。
「シゲ!!」
茜と、何故かゴロウを抱えた隠が追いかけてきた。
「アカ、隠君・・・」
足を止めた重清は、2人に向き直る。
「シゲ、あんた家には帰らないんじゃないの?」
茜が、刺すような視線で重清を見ていた。
「・・・・・・」
重清が無言のまま突っ立っていると、
「さっき、あんたのスマホ、鳴ってたわよね。あれって、誰から!?」
茜はそう言って重清へと詰め寄った。
「・・・・・・」
それでも何も答えない重清の胸ぐらを掴んだ茜は、
「あんた!今の状況わかってんの!?」
重清に怒鳴り声を上げた。
「・・・・・わかってるよ」
重清は、絞り出すように茜へと答えた。
「だったら―――」
「わかってるよ!!」
茜の言葉を遮って、重清が叫んだ。
「おれは!『全てを守る』なんて言いながら、おれなんかを好きになってくれた美影すらも守ってあげられなかったんだ!だから少しでも、美影のために何かしたいんだ!!」
そう叫んだ重清は、急に肩を落として囁くように、
「それに、もしかしたら犯人、違うかもしれないし・・・」
そう、呟いた。
そんな重清の蚊の鳴くような声を聞いた茜は、深いため息をついて重清の頭に拳を振り下ろした。
「いってぇーー!」
「あぁもう!あんたまだあいつのこと信じてるの!?どんだけ馬鹿なのよ、まったく!!」
重清の胸ぐらから手を離した茜は、呆れ顔で重清を見つめていた。
「そんなの、仕方ないじゃん。っていうか茜、どんどんばあちゃんに似てきてるな」
痛む頭を抑えながら、重清は恨みがましそうに茜を見返していた。
「まぁ、それはお褒めの言葉として受け取っておくけど!」
((褒めたつもりはない!))
茜の言葉に、重清と、何故かプレッソがつっこんでいると、
「30分よ!30分だけ待ってあげるわ!」
茜は高らかに宣言した。
「チーノちゃんはここに置いて行きなさい!そして、何かあったら直ぐにチーノちゃんに連絡すること!いいわね!?」
「わ、わかった」
(りょーかいよ)
「うわっ、びっくりした!チーノ、聞いてたの!?」
突然聞こえてきたチーノの声に、重清が声を上げた。
(えぇ、バッチリ聞いていたわ。ちなみに、雅も聞いてるわよ。流石に声までは届けられないけど)
「うわぁ、マジか」
重清は、全てを見透かされていたことに頭を抱えていた。
(初めは私が付いていこうと思っていたけど、どうやらお節介な爺様がその役をやってくれるみたいよ)
「ふん。誰がお節介じゃ」
隠に抱えられたゴロウが、重清達にだけ聞こえるほど小さな声で言った。
(なんだよ爺さん、やっぱオイラ達みたいに、普通に喋れるんじゃねーか)
重清の頭に、プレッソの声が響いた。
「当たり前じゃ。儂は、今の雑賀家のバカ共と話すのが面倒だっただけじゃ。あそこでまともなのは、この隠と、母の日陰くらいなもんじゃ」
隠の腕から抜け出たゴロウが、小声で返した。
「っていうか、普通にプレッソの声が聞こえるんだな」
ゴロウの様子に、重清が不思議そうに言った。
本来、具現獣の声は具現者だけにしか聞こえず、プレッソやチーノの様に普段から他者と話しができる具現獣も、具現化されていない状態であれば具現者以外とは話すことができないのだ。
にも関わらずゴロウは、具現化されていないプレッソと当たり前の様に会話をしていた。
実際、その場にいた茜と隠から見たら、年老いた犬が独り言を言っているだけにしか見えないのであった。
普通に考えれば、それでも十分ぶっ飛んだ状況ではあるのだが。
「どれだけ長く生き永らえさせられたと思っておる。具現獣との会話など、儂にとっては造作も無いわ」
ゴロウは、鼻を鳴らして重清に答えた。
「年の功、ってやつだな。ま、それよりも、頼もしい護衛もついたし、おれ、行ってくる!」
重清は、そう言って茜と隠に目を向ける。
「えぇ。気をつけなさいよ。何かあったら直ぐに連絡すること!」
「・・・・なんか、ホントにばあちゃんと話してるみたいだ」
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「あ、あの、気をつけてください!」
「おう!隠君、おれが言うのもおかしいけど・・・美影のこと、よろしくなっ!」
「は、はいっ!ゴロウ様も、どうかお気をつけて!」
「うむ」
ゴロウの返事を聞いた重清は、2人に頷いて走り出した。
自身を待つ、相手の元へ。
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