おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
265 / 519
雑賀家お家騒動

第231話:目覚めを待って

しおりを挟む
「日立!お前が付いておりながら、何故こんなことになった!?」
雅宅で、雑賀本家当主雑賀六兵衛が怒鳴った。

「も、申し訳ございません!」
日立は六兵衛に対し、額を床につけて土下座していた。

その後ろでは、日立の妻日陰と、息子の隠も同様に土下座していた。

「六兵衛、もう許してやりな。日立は、あたしたちが拘束してたんだ。それに聞くところによると、日立が美影を追わなかったのは、美影自身の命令だったそうじゃないか。だったら、日立に非は無いはずだよ」
雅が、六兵衛に向かってそう告げた。

「し、しかし姉上・・・」
そこまで言葉を出した六兵衛は、雅に睨まれて口を閉ざした。

「ほら、顔を上げな」
六兵衛が黙り込んだのを確認した雅は、日立達にそう声をかけた。

日陰と隠が顔を上げる中、日立だけは頭を下げたままであった。
「雅殿はこうおっしゃってはおりますが、全ては私の責任です。どのような罰もお受けいたします」
日立は、頭を下げたままそう言った。

「今は責任の所在などに時間を割いている場合ではないだろう!」
雅が怒鳴った。

「まずは美影をこんな目に合わせた相手を探すのが先決だろう!?
全てが解決したうえで誰をどう罰しようとも、それは本家様で勝手にやればいいさ。
だがね、あたし住む街でこんなことが起きたんだ。まずはそっちの解決に注力してもらうよ!いいね、六兵衛!!」

「は、はいっ!」
雅の言葉に、六兵衛は姿勢を正し、そっと美影に目を向けた。

美しい顔の少女は、ただ静かに眠っていた。

着ていた制服はボロボロになっていたため、私服である和服に、雅と日陰の手で着替えが為されたその少女の眠る布団を、何人もの人間が取り囲んでいた。

そのうちの1人である雑賀雅を、雑賀日立は潤んだ目で見上げていた。

「雅様、私は、私は・・・・」
「泣くんじゃないよみっともない!爺の涙なんて、誰の得にもなりゃしない。美影の怪我は全てあたしが治療したんだ。直ぐに目を覚ますさ」
雅は、憎まれ口を叩きながら日立に笑いかけた。

「美影、ごめんな・・・おれがちゃんと一緒にいれば・・・」
遅れて駆けつけていた重清が、美影の枕元で呟いていた。

「あんたも気にするんじゃないよ。それにあんた、正式に交際を断ったんだろう?だったら、その後も一緒にいたほうがこの子にとっては辛かったさ」
雅が、そっと重清の肩へと手を置いた。

その場にいるもう1人の2中生徒である茜は、ただ深刻そうな顔でその様子を見つめていた。

現在その場には、雅、ノリ、重清、茜、そして雑賀本家の面々がいた。
事情を聞きつけて慌ててやって来た六兵衛が、開口一番日立を怒鳴りつけ、現在に至るのである。

茜は雅の弟子であることからこの場にいることが許されているが、それ以外の忍者部の面々には、まだこの事は伝えられてはいなかった。

そんな一同は、ただ、美影の目覚めを待っていた。

辺りが静けさに包まれる中、突然重清のスマホが小さな振動とともに着信音を響かせた。

「・・・・・ゴメン、友達だった」
画面にでる送り主を確認した重清は、中身も見ずにそっとスマホをポケットへとしまった。

それと同時に、重清の頬に衝撃が走った。

「ゴメンじゃねーよっ!!お前が!お前が姉上をふったりしなければ、こんなことにはならなかったんだぞ!!」
充希が、目を真っ赤にして重清を殴りつけ、叫んだ。

「・・・・・・ゴメン」
頬を抑えながら、重清は充希に目をやり、呟いた。

「充希、落ち着きなさい。姉上も仰ったように、重清君は悪くない」
「しかしお祖父様っ!!」

「落ち着きなさい」
六兵衛な強く言われ、充希は押し黙った。

「重清君、悪かったね。君は、全然気にしなくていいんだからね」
六兵衛は、そっと重清に微笑みかけた。

「はい、すみません」
「そんな顔をするな。お祖父様が生きてらっしゃったら、悲しむぞ?」

「じいちゃんを、知ってるんですか?」
「これでも姉上の弟だからね。それに、立場上公にはしていないが、私は彼の大ファンなんだ。息子にも、平八様の名前に寄せた名をつけたくらいだからね」

「息子・・・それって、美影のお父さん?」
「あぁ。もう亡くなってしまったがね」

「そう、なんですか・・・・」
「気にすることはない。それよりも、今は美影の目覚めを待とう。きっと、何か手がかりが掴めるはずだ」

「あの、そのことなんですけど・・・」
六兵衛と重清が話していると、茜がそっと手を挙げた。

「わたし、もしかしたら見たかも―――」

「美影様っ!」

茜の言葉を遮るように、隠が叫んだ。

その声に一同が美影へと目を向けると、布団から起き上がろうとする美影の姿があった。

「おぉ、美影・・・」
「美影っ!」

美影の元へ寄ろうとした六兵衛を押しのけるように、重清は美影に向かった。

「美影、ゴメン!」
そう言って美影に触れた重清の手は、

「気安く呼んでんじゃねーよ、末席」

美影によって払われた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

選ばれたのはケモナーでした

竹端景
ファンタジー
 魔法やスキルが当たり前に使われる世界。その世界でも異質な才能は神と同格であった。  この世で一番目にするものはなんだろうか?文字?人?動物?いや、それらを構成している『円』と『線』に気づいている人はどのくらいいるだろうか。  円と線の神から、彼が管理する星へと転生することになった一つの魂。記憶はないが、知識と、神に匹敵する一つの号を掲げて、世界を一つの言葉に染め上げる。 『みんなまとめてフルモッフ』 これは、ケモナーな神(見た目棒人間)と知識とかなり天然な少年の物語。  神と同格なケモナーが色んな人と仲良く、やりたいことをやっていくお話。 ※ほぼ毎日、更新しています。ちらりとのぞいてみてください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

くノ一その一今のうち

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
お祖母ちゃんと二人暮らし、高校三年の風間その。 特に美人でも無ければ可愛くも無く、勉強も出来なければ体育とかの運動もからっきし。 三年の秋になっても進路も決まらないどころか、赤点四つで卒業さえ危ぶまれる。 手遅れ懇談のあと、凹んで帰宅途中、思ってもない事件が起こってしまう。 その事件を契機として、そのは、新しい自分に目覚め、令和の現代にくノ一忍者としての人生が始まってしまった!

工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する

鈴木竜一
ファンタジー
旧題:工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する~ブラック商会をクビになったので独立したら、なぜか超一流の常連さんたちが集まってきました~ 【お知らせ】 このたび、本作の書籍化が正式に決定いたしました。 発売は今月(6月)下旬! 詳細は近況ボードにて!  超絶ブラックな労働環境のバーネット商会に所属する工芸職人《クラフトマン》のウィルムは、過労死寸前のところで日本の社畜リーマンだった前世の記憶がよみがえる。その直後、ウィルムは商会の代表からクビを宣告され、石や木片という簡単な素材から付与効果付きの武器やアイテムを生みだせる彼のクラフトスキルを頼りにしてくれる常連の顧客(各分野における超一流たち)のすべてをバカ息子であるラストンに引き継がせると言いだした。どうせ逆らったところで無駄だと悟ったウィルムは、退職金代わりに隠し持っていた激レアアイテムを持ちだし、常連客たちへ退職報告と引き継ぎの挨拶を済ませてから、自由気ままに生きようと隣国であるメルキス王国へと旅立つ。  ウィルムはこれまでのコネクションを駆使し、田舎にある森の中で工房を開くと、そこで畑を耕したり、家畜を飼育したり、川で釣りをしたり、時には町へ行ってクラフトスキルを使って作ったアイテムを売ったりして静かに暮らそうと計画していたのだ。  一方、ウィルムの常連客たちは突然の退職が代表の私情で行われたことと、その後の不誠実な対応、さらには後任であるラストンの無能さに激怒。大貴族、Sランク冒険者パーティーのリーダー、秘境に暮らす希少獣人族集落の長、世界的に有名な鍛冶職人――などなど、有力な顧客はすべて商会との契約を打ち切り、ウィルムをサポートするため次々と森にある彼の工房へと集結する。やがて、そこには多くの人々が移住し、最強クラスの有名人たちが集う村が完成していったのだった。

とある婚約破棄の顛末

瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。 あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。 まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。

2回目の異世界召喚~世界を滅ぼせる男女は旅をする~

初雪空
ファンタジー
西坂一司は、中学時代に異世界へ迷い込む。 半年後に戻ってきた彼は地元を離れ、都心にある東羽高校に通っていた。 衣川イリナという、芸名みたいな女子と共に。 何の変哲もない日常は、クラスごとの異世界召喚で終わりを告げた。 圧倒的なスキルを与えられつつ、勇者として使い倒される生徒。 召喚したイングリットが告げる。 「ノースキルの人は出て行ってください! もしくは――」 「ああ、分かった」 一司は、提示された再就職先も断り、1人で王城を出た。 その異世界を滅ぼしかねない存在であることを、本人とイリナだけが知っている状態で……。 この物語はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ないことをご承知おきください。 また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※ カクヨム、小説家になろう、ハーメルンにも連載中

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

処理中です...