260 / 519
雑賀家お家騒動
第226話:鬼ごっこと女子トークと影の薄い男子たち
しおりを挟む
「あっはっはぁ~、待ってくれよぉ~」
充希は、言いながら街中を走っていた。
それはまるで、恋人同士が砂浜で追いかけっこしているような、例の光景のようであった。
一方、充希から追いかけられているその恋人はというと・・・・
「誰が恋人よっ!!あんたも、そんな紛らわしい追いかけ方しないでよっ!!」
茜は、誰にともなくつっこみつつ、後ろから追ってくる充希へと叫んだ。
これは、恋人同士の甘い時間などではなく、ストーカー一歩手前と化したシスコンから逃げる少女の必死の逃亡なのである。
「あっはっはぁ~。このくらいのスピード、体の力を使えば直ぐに追いつける、さっ!!」
その言葉と同時に脚へと体の力を集中させた充希は、一瞬の間に茜へと追いつき、
「つ~かま~えた!!」
そのまま彼女へバックハグをかました。
「このバカシスコンがぁっ!!」
茜は、後ろから抱きつく充希の鳩尾に、思いっきり肘を叩き込んだ。
「おごっ!!」
綺麗にきまった茜の肘に、充希は悶絶して膝をついた。
「ちょっとあんた!こんなところで力を使うなんて何考えてんの!?」
茜は充希へ向き直り、蹲る充希の頭に拳骨を振り下ろして鬼の形相で睨んだ。
流石は雅の一番弟子なのである。
「あぁっ!姉上にも怒られたことのない僕が、こうも簡単に怒られるなんて!これが、愛の鞭!!」
「あぁもう!頭痛くなってきたわ!!誰か助けてよ・・・」
茜がそう呟いていると・・・
「きゃぁ~~~!充希様が悶絶しているわっ!!」
「ちょっと離しなさいよ!私が充希様を癒やしてさしあげるのよ!!」
「あなた!抜け駆けなんて許さないわよっ!」
「悶絶している充希たんもまた、良きでんなぁ~」
女子プラス長宗我部氏が現れ、充希を取り囲んでいた。
「君たち~、僕は皆のものだよ~。僕のために争わないでくれたまへ」
そんな自身を取り囲む面々に充希は、先程のダメージなど無かったかのように、周りに笑顔を振りまいていた。
「と、とりあえずは助かったわね」
茜がその様子を見ながらその場を離れようとすると、
「あら茜、あなたも雑賀君の追っかけ??」
「市花!?」
茜の友人、相羽市花が声をかけてきた。
「あんな奴の追っかけだなんて、やめてよ!それにしても、市花、『あなたも』ってことは・・・」
「ち、違うわよっ!私は・・・」
そう言って市花は、充希を取り囲む一団へと乙女の表情を向ける。
「あっ、そっか。市花は長宗我部氏一筋だもんねぇ~」
「ちょっと、その呼び方は太郎左衛門君に失礼よ!」
「あー、はいはい、ごめんなさいねぇ~」
「もぉ~!それにしても茜、雑賀君の追っかけじゃなかったら、ここで何を―――」
「ちょ、みんな、そろそろ離してくれ!僕は茜とゆっくり話したいんだ!!」
「・・・茜、もしかして・・・」
「えっと・・・詳しくはここを離れてから話すわ」
ため息をついた茜はそう言って、市花と共にその場をそそくさと離れるのであった。
「あっ、ちょ、茜、待ってくれーー!!
っ!?今誰か僕の爪を切ったよね!?怖い!なんかちょっと怖くなってきた!!
ちょ、そこはダメ!ダメだから!!あぁー、姉上ぇーーーーっ!!」
充希のそんな悲痛な叫びを聞きながら。
「ふぅ~ん。あのイケメンがねぇ」
『喫茶 中央公園』の一般席で茜の話を聞いた市花は、納得したように頷いていた。
もちろん茜は、忍者部でのことについては一切触れず、ただ重度のシスコンにいきなり惚れられた(意訳)と説明しただけなのである。
「茜、とことん男運無いわね」
市花は、憐れむような目で茜を見ていた。
「いや、とことんって。わたしそんなに男運悪くないわよ!」
ムキになって言い返す茜に、市花はニヤリと笑みを返す。
「そう?光太郎君、芳正君―――」
「あぁー、もう!分かったわよ!
どうせ私は、変な男子からばっかり言い寄られるわよっ!!」
「分かればよろしい!」
市花が、勝ち誇ったように茜に笑いかけた。
この2人、保育園からの付き合いであり、市花は茜のことであれば何でも知っているのである。
なお茜に言い寄った『変な男子』の中には、かの有名な長宗我部太郎左衛門氏も含まれているのだが、おそらく市花が茜に遮られなかったとしても、彼の名前が市花の口から出てくることはなかっただろう。
なぜならば、市花にとって長宗我部は『憧れの人』であり、決して『変な男子』ではないのだから。今は。
長宗我部が茜に言い寄ったのが縁で、市花は彼の魅力に気付くことになったのであるが、それはまた、いつかの機会に・・・語られることがあるのかは、誰にも分からないのである。
そんな幼馴染2人の女子トークは、充希の再突入があるまで繰り広げられるのであった。
そして、忍者専用席を陣取っていた恒久と聡太は、そんな2人の話に聞き耳を立てつつ、宿題に励んでいるのであった。
充希は、言いながら街中を走っていた。
それはまるで、恋人同士が砂浜で追いかけっこしているような、例の光景のようであった。
一方、充希から追いかけられているその恋人はというと・・・・
「誰が恋人よっ!!あんたも、そんな紛らわしい追いかけ方しないでよっ!!」
茜は、誰にともなくつっこみつつ、後ろから追ってくる充希へと叫んだ。
これは、恋人同士の甘い時間などではなく、ストーカー一歩手前と化したシスコンから逃げる少女の必死の逃亡なのである。
「あっはっはぁ~。このくらいのスピード、体の力を使えば直ぐに追いつける、さっ!!」
その言葉と同時に脚へと体の力を集中させた充希は、一瞬の間に茜へと追いつき、
「つ~かま~えた!!」
そのまま彼女へバックハグをかました。
「このバカシスコンがぁっ!!」
茜は、後ろから抱きつく充希の鳩尾に、思いっきり肘を叩き込んだ。
「おごっ!!」
綺麗にきまった茜の肘に、充希は悶絶して膝をついた。
「ちょっとあんた!こんなところで力を使うなんて何考えてんの!?」
茜は充希へ向き直り、蹲る充希の頭に拳骨を振り下ろして鬼の形相で睨んだ。
流石は雅の一番弟子なのである。
「あぁっ!姉上にも怒られたことのない僕が、こうも簡単に怒られるなんて!これが、愛の鞭!!」
「あぁもう!頭痛くなってきたわ!!誰か助けてよ・・・」
茜がそう呟いていると・・・
「きゃぁ~~~!充希様が悶絶しているわっ!!」
「ちょっと離しなさいよ!私が充希様を癒やしてさしあげるのよ!!」
「あなた!抜け駆けなんて許さないわよっ!」
「悶絶している充希たんもまた、良きでんなぁ~」
女子プラス長宗我部氏が現れ、充希を取り囲んでいた。
「君たち~、僕は皆のものだよ~。僕のために争わないでくれたまへ」
そんな自身を取り囲む面々に充希は、先程のダメージなど無かったかのように、周りに笑顔を振りまいていた。
「と、とりあえずは助かったわね」
茜がその様子を見ながらその場を離れようとすると、
「あら茜、あなたも雑賀君の追っかけ??」
「市花!?」
茜の友人、相羽市花が声をかけてきた。
「あんな奴の追っかけだなんて、やめてよ!それにしても、市花、『あなたも』ってことは・・・」
「ち、違うわよっ!私は・・・」
そう言って市花は、充希を取り囲む一団へと乙女の表情を向ける。
「あっ、そっか。市花は長宗我部氏一筋だもんねぇ~」
「ちょっと、その呼び方は太郎左衛門君に失礼よ!」
「あー、はいはい、ごめんなさいねぇ~」
「もぉ~!それにしても茜、雑賀君の追っかけじゃなかったら、ここで何を―――」
「ちょ、みんな、そろそろ離してくれ!僕は茜とゆっくり話したいんだ!!」
「・・・茜、もしかして・・・」
「えっと・・・詳しくはここを離れてから話すわ」
ため息をついた茜はそう言って、市花と共にその場をそそくさと離れるのであった。
「あっ、ちょ、茜、待ってくれーー!!
っ!?今誰か僕の爪を切ったよね!?怖い!なんかちょっと怖くなってきた!!
ちょ、そこはダメ!ダメだから!!あぁー、姉上ぇーーーーっ!!」
充希のそんな悲痛な叫びを聞きながら。
「ふぅ~ん。あのイケメンがねぇ」
『喫茶 中央公園』の一般席で茜の話を聞いた市花は、納得したように頷いていた。
もちろん茜は、忍者部でのことについては一切触れず、ただ重度のシスコンにいきなり惚れられた(意訳)と説明しただけなのである。
「茜、とことん男運無いわね」
市花は、憐れむような目で茜を見ていた。
「いや、とことんって。わたしそんなに男運悪くないわよ!」
ムキになって言い返す茜に、市花はニヤリと笑みを返す。
「そう?光太郎君、芳正君―――」
「あぁー、もう!分かったわよ!
どうせ私は、変な男子からばっかり言い寄られるわよっ!!」
「分かればよろしい!」
市花が、勝ち誇ったように茜に笑いかけた。
この2人、保育園からの付き合いであり、市花は茜のことであれば何でも知っているのである。
なお茜に言い寄った『変な男子』の中には、かの有名な長宗我部太郎左衛門氏も含まれているのだが、おそらく市花が茜に遮られなかったとしても、彼の名前が市花の口から出てくることはなかっただろう。
なぜならば、市花にとって長宗我部は『憧れの人』であり、決して『変な男子』ではないのだから。今は。
長宗我部が茜に言い寄ったのが縁で、市花は彼の魅力に気付くことになったのであるが、それはまた、いつかの機会に・・・語られることがあるのかは、誰にも分からないのである。
そんな幼馴染2人の女子トークは、充希の再突入があるまで繰り広げられるのであった。
そして、忍者専用席を陣取っていた恒久と聡太は、そんな2人の話に聞き耳を立てつつ、宿題に励んでいるのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる