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雑賀家お家騒動
第218話:雑賀本家の事情 雑賀日立の場合 後編
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雑賀日立の問題。それは・・・
全然結婚できなかったのだ。
それは、適齢期に色恋に見向きもせずに修行に明け暮れていたことにも原因があった。
しかしそれ以上の理由が、彼の心の中にあった。
昔見た美女を越える女性と出会うことができなかったからであった。
彼にとって、名も知らぬその美女は大きな存在となっており、またそれ以上の美女と結婚することもまた、平八を見返すことにつながると考えていた日立は、どんな女性が目の前に現れても心が動くことはなかった。
それでも、雑賀本家を支える陰山家の跡取りを作るためにも、結婚は必要なことであった。
結局彼は、六兵衛に勧められるままに見合いをし、結婚することとなった。
それは彼が、40を超えた頃であった。
ちなみに彼の妻となった日陰、雅やシロ程とは言わずもかなりの美女であり、また40代の日立と結婚したころにはまだ20代前半であったことから、周りからはかなり羨ましがられていたのだが、比較対象がエロ姉ちゃんバージョンのシロであった日立はそのようなことに関心は持たず、妻の見た目を褒めたことなど一度もなかった。
対する日立の妻日陰は、それまで自身の美しい見た目から、男にはかなり苦労をしていた。
にもかかわらず夫となった日立は、自身の見た目に一切関心を持っていなかった。
結果として日陰は、
「ウチの旦那様、私を見た目でなく中身を見てくれている!しかも寡黙で努力家!かっこいい!!」
となったのである。
本当にどうでも良いのろけ話なのである。
そして日立が昔出会った女の正体に気づかぬまま月日は流れ、夫婦には、1人の息子が生まれた。
隠と名付けられたその息子は、中学校入学と同時に契約忍者となった日から、将来雑賀本家を支えるべく日立による英才教育が行われた。
そんな日々の中、日立は気付いてしまった。
「ウチの息子、天才じゃね?」
と。
時を同じくして生まれていた雑賀本家の血を引く美影、充希と比べても、息子である隠の才能は突出していた。
日立にとってそれは、非常に喜ばしいことであった。
これで雑賀本家の再興が図れるのではないか、と。
しかし同時に彼は、心配になった。
雑賀本家を陰で支える陰山家が、本家の血を引く2人を越えるべきではない、と。
結果として日立は、隠に実力を隠すよう指示した。
美影と充希の成長に合わせて少しずつ力を発揮するように、と。
それにより、美影と充希の実力も徐々にではあったが伸びてきていた。
しかし、雑賀本家当主である六兵衛が日立の教育に異議を唱え始めた。
修行は常に、美影、充希、そして隠の3人のみで行っており、多様性に欠けるのではないか、どこかの中学校へ転校し、忍者部に所属しても良いのではないか、と。
それは日立自身も感じていたことではあったが、それまで見下していた甲賀平八の作った教育カリキュラムが浸透する忍者部への入部に、日立は快く応じることができなかった。
また、六兵衛が付け加えるように言った、「美影に彼氏できたら、雑賀本家の跡継ぎもできて一石二鳥」という言葉も、日立の心には引っかかっていた。
雑賀本家に、別の血を入れることになるのかと。
しかし六兵衛の想定する美影の相手が、元々雑賀本家の血を引く雑賀雅の孫であるという話を聞き、それには多少なりとも納得していた。
それよりもやはり日立は、3人を今更現代の忍者教育へと触れさせることに、抵抗を感じていた。
が、それはもう、ほとんどただの意地であることに、日立も気づいていた。
気付いてはいたが、それを正すには、彼はもう年を取り過ぎていたのだ。
彼は、自身の想い違いを正してくれる誰かを、待っているのかもしれない。
結果として、六兵衛の命令という形で3人は転校することとなり、日立も警護という名目でついて行くこととなった。
そんな彼の心にあったのは、
「隠がどれだけ他の中学生忍者と比べて強いのか、見てみたい!」
という想いであった。
日立はことあるごとに隠に対し、躾という名の暴力を繰り返してきた。
それは、「雑賀家のために強くなって欲しい」という、親心ではあった。
もちろん、そんな親心など認められるわけもないのだが、日立にはそれしか息子に対しての愛情のかけ方が分からなかったのである。
そして3人が転校したその日のうちに、日立のテンションは爆上がりすることとなった。
それは、隠の実力を目の当たりにしたからであった。
「やっぱウチの息子、天才じゃん!」
そう思った日立は、その想いをひた隠しにして忍者部を後にした。
直後に美影と充希が「恋しちゃったかも」と言った際にも、彼はほとんど上の空でそれを聞き、言われるがままに美影たちを『喫茶 中央公園』へと案内していたのであった。
そこには、本家のために動いていた男の影は、もうほとんどなくなっていた。
息子:本家が、だいたい9:1くらいになっていたのである。
その結果、彼もまた、翌日からはっちゃけることとなるのであった。
全然結婚できなかったのだ。
それは、適齢期に色恋に見向きもせずに修行に明け暮れていたことにも原因があった。
しかしそれ以上の理由が、彼の心の中にあった。
昔見た美女を越える女性と出会うことができなかったからであった。
彼にとって、名も知らぬその美女は大きな存在となっており、またそれ以上の美女と結婚することもまた、平八を見返すことにつながると考えていた日立は、どんな女性が目の前に現れても心が動くことはなかった。
それでも、雑賀本家を支える陰山家の跡取りを作るためにも、結婚は必要なことであった。
結局彼は、六兵衛に勧められるままに見合いをし、結婚することとなった。
それは彼が、40を超えた頃であった。
ちなみに彼の妻となった日陰、雅やシロ程とは言わずもかなりの美女であり、また40代の日立と結婚したころにはまだ20代前半であったことから、周りからはかなり羨ましがられていたのだが、比較対象がエロ姉ちゃんバージョンのシロであった日立はそのようなことに関心は持たず、妻の見た目を褒めたことなど一度もなかった。
対する日立の妻日陰は、それまで自身の美しい見た目から、男にはかなり苦労をしていた。
にもかかわらず夫となった日立は、自身の見た目に一切関心を持っていなかった。
結果として日陰は、
「ウチの旦那様、私を見た目でなく中身を見てくれている!しかも寡黙で努力家!かっこいい!!」
となったのである。
本当にどうでも良いのろけ話なのである。
そして日立が昔出会った女の正体に気づかぬまま月日は流れ、夫婦には、1人の息子が生まれた。
隠と名付けられたその息子は、中学校入学と同時に契約忍者となった日から、将来雑賀本家を支えるべく日立による英才教育が行われた。
そんな日々の中、日立は気付いてしまった。
「ウチの息子、天才じゃね?」
と。
時を同じくして生まれていた雑賀本家の血を引く美影、充希と比べても、息子である隠の才能は突出していた。
日立にとってそれは、非常に喜ばしいことであった。
これで雑賀本家の再興が図れるのではないか、と。
しかし同時に彼は、心配になった。
雑賀本家を陰で支える陰山家が、本家の血を引く2人を越えるべきではない、と。
結果として日立は、隠に実力を隠すよう指示した。
美影と充希の成長に合わせて少しずつ力を発揮するように、と。
それにより、美影と充希の実力も徐々にではあったが伸びてきていた。
しかし、雑賀本家当主である六兵衛が日立の教育に異議を唱え始めた。
修行は常に、美影、充希、そして隠の3人のみで行っており、多様性に欠けるのではないか、どこかの中学校へ転校し、忍者部に所属しても良いのではないか、と。
それは日立自身も感じていたことではあったが、それまで見下していた甲賀平八の作った教育カリキュラムが浸透する忍者部への入部に、日立は快く応じることができなかった。
また、六兵衛が付け加えるように言った、「美影に彼氏できたら、雑賀本家の跡継ぎもできて一石二鳥」という言葉も、日立の心には引っかかっていた。
雑賀本家に、別の血を入れることになるのかと。
しかし六兵衛の想定する美影の相手が、元々雑賀本家の血を引く雑賀雅の孫であるという話を聞き、それには多少なりとも納得していた。
それよりもやはり日立は、3人を今更現代の忍者教育へと触れさせることに、抵抗を感じていた。
が、それはもう、ほとんどただの意地であることに、日立も気づいていた。
気付いてはいたが、それを正すには、彼はもう年を取り過ぎていたのだ。
彼は、自身の想い違いを正してくれる誰かを、待っているのかもしれない。
結果として、六兵衛の命令という形で3人は転校することとなり、日立も警護という名目でついて行くこととなった。
そんな彼の心にあったのは、
「隠がどれだけ他の中学生忍者と比べて強いのか、見てみたい!」
という想いであった。
日立はことあるごとに隠に対し、躾という名の暴力を繰り返してきた。
それは、「雑賀家のために強くなって欲しい」という、親心ではあった。
もちろん、そんな親心など認められるわけもないのだが、日立にはそれしか息子に対しての愛情のかけ方が分からなかったのである。
そして3人が転校したその日のうちに、日立のテンションは爆上がりすることとなった。
それは、隠の実力を目の当たりにしたからであった。
「やっぱウチの息子、天才じゃん!」
そう思った日立は、その想いをひた隠しにして忍者部を後にした。
直後に美影と充希が「恋しちゃったかも」と言った際にも、彼はほとんど上の空でそれを聞き、言われるがままに美影たちを『喫茶 中央公園』へと案内していたのであった。
そこには、本家のために動いていた男の影は、もうほとんどなくなっていた。
息子:本家が、だいたい9:1くらいになっていたのである。
その結果、彼もまた、翌日からはっちゃけることとなるのであった。
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