おれは忍者の子孫

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雑賀家お家騒動

第216話:雑賀本家の事情 雑賀美影、充希姉弟の場合

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雑賀美影とその弟充希は、幼いころから雑賀本家の血を引く忍者として育てられていた。

血の契約者といえども中学に進学するまでは契約を許されなくなった現代において、雑賀家のように古くからある忍者の血筋と、それに仕える家系には、忍者の存在とそれに関わる知識の伝達のみ、幼少の頃より行うことが許されていた。

そのため美影と充希は幼い頃より、自身が将来忍者となることを知っていた。

その教育を行ったのは、雑賀隠の父、雑賀日立であった。

日立は、美影と充希が幼少の頃より契約忍者を見下す教育を行ってきた。

本家以外の忍者は全て、その存在自体が本家のためにあるものであり、それ以外に価値はない。

そう教えられ続けた2人が、重清達を見下すのは必然なのであった。

そんな彼らには、唯一の友人がいた。

日立の息子、隠である。
日立から、隠も中学に進学した暁には契約忍者となり、2人を支える存在となることを聞かされていた。

しかし、そんなことは2人にとってはどうでも良かった。

彼らの周りには、他に子どもはおらず、隠だけが2人の友人であった。

もちろん小学校には、少なからず同世代の子はいた。

雑賀本家の有る山奥では、小学校と言っても全学年で30人もいない小規模な小学校であった。

また雑賀本家は、昔からある由緒正しい家柄と言われており、周りの子どもたちは美影と充希のことを、『よくわからないけど良い家の子達』と認識しており、結果として子ども達は2人にあまり近づかず、2人には友人と呼べる存在がいなかったのであった。

また隠も、その大人しい性格もあり、美影と充希以外には友人がいかった。

それもあって、3人はいつも一緒にいた。
日立の教育によって契約忍者を既に見下していた2人も、隠だけは見下してはいなかった。

3人はよく、雑賀本家にいたという天才美少女忍者、雑賀雅の話で盛り上がっていた。

一体どんな人なのか。
何故、雑賀雅は、本家から姿を消したのか。

既に雅の情報は隠されているわけではなかったのだが、3人は特に雅のことを調べることなく、ただ妄想で盛り上がっていた。

美影はいつしか、妄想の中の雅を追うようになっており、叶うならば弟子になりたいとまで思うようになっていた。
彼女にとって雅は、憧れの存在へとなっていたのであった。

また充希も、そんな憧れの存在アイドルを追う美影を美しく感じ、少しずつシスコンの道をまい進し始めていた。

そんな彼らは、中学に進学するのと同時に、忍者となった。
美影と充希は、血の契約者として、そして隠は、契約忍者として。

それぞれ過程は違えど同じく忍者となった3人は、それまでと同じく3人仲良く修行を積むこととなった。

雑賀本家の血を引く美影は、次期当主ということもあり、直ぐに雑賀家固有忍術『百発百中の術』との契約を許されていた。

また充希も、自身の武具であるスリングショットと相性の良い術を覚えることに成功していた。

そんな2人の修行相手は、もちろん隠であった。
本来2人よりも実力のあった隠は、父の言いつけもあり、いつも2人にギリギリのところで負けるようにしていた。

その結果、2人は考えるようになっていた。

美影「やっぱり私は強い。契約忍者や分家ごときに、私は負けない!」

充希「僕、結構強いかも。そんなことより、姉上益々綺麗になっている!ちょっとそろそろ何かが我慢できない!!」

と。

そんな2人と隠は、雑賀本家当主である雑賀六兵衛の指示により、別の中学校へと転校することとなった。

そこで美影と充希は、運命的だと本人たちは思った出会いを遂げた。

充希は、自身を完膚なきまでにあっさりと破った甲賀アカに、惹かれた。
しかも彼女はあの雑賀雅の弟子であるという。
これまで姉しか見ていなかった充希にとって、それは非常に新鮮なものであった。

「人類は姉上とそれ以外」が信条であった充希が、初めて姉以外の女性に目を向けた瞬間であった。

姉以外の女の存在を意識した充希は、翌日初めて気づくこととなる。

「僕、もしかして、結構モテる?」
と。
事実、その見た目と人当たりの良い外面により、充希は転校初日から女子に人気があったのだ。
しかし姉以外に興味のなかった彼は、初日はそのことに気づいてはいなかった。

が、転校2日目にして彼は、自身がモテるということに気づいてしまったのだ。

結果充希は、翌日からモテ男としてはっちゃけることとなるのであった。


一方の美影は、それまで見下し続けていた雑賀重清に、完全に恋をしていた。
日立が助けに入る直前まで自身に勝つほどの力を見せた末席の忍者に既に心を動かされていた美影は、その末席が雑賀雅の孫と聞き、「もうこれは運命以外の何物でもない」と、そう結論付けた。

自身のそれまで感じたことのない感情に、美影は歓喜した。

「私、恋する乙女!」
と。
しかも美影の中では、重清は彼女と付き合うことを承諾したことになっていた。

事実はそうではないのだが、思い込んだらそれ以外のことを綺麗に聞き流してしまう都合の良い美影の頭の中は、既に完全なるお花畑となっていた。
もちろんそのお花畑では、美影と重清が追いかけっこをしているのである。

結果美影は、翌日から恋する乙女としてはっちゃけることとなるのであった。

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